僕の犬はおあずけが好き
(『僕の犬のドSなご奉仕』おまけ&葵居ゆゆ10冊目記念お礼SS)









「十冊記念だそうなので」
 会社でチェックしきれずに、持ち帰った社内企画書用の資料を睨んでいたら、ふいに背後から服が捲り上げられた。素肌をさらりと撫でられて、桐波由鶴はびくっとして振り返った。
「な、なに? 記念?」
「そうそう、ちょうど十冊なんだそうです」
「なにが?」
 全然意味がわからない。由鶴を抱きしめた城田圭駕は妙に爽やかににっこりした。
「まあそれはどうでもいいんですけど、せっかく使えそうな記念を無視するのもなんだなってことで」
「え? え?」
「その仕事、明日でもいいですよね? だったら――俺に命令してくれませんか?」
 さわさわ腹を撫でながら言う城田はにこやかだが、手つきは思わせぶりで、由鶴は赤くなりながら唇を噛んだ。
 よくわからないけれど、なにか記念すべき事柄があって、だからえっちなことがしたい……ということのようだ。
「命令……わりといつもしてるだろ……」
 というか、えっちの最中にやむなく命令させられることが多い。ものすごくはずかしい台詞を言わされた記憶が蘇って、じぃん、と身体が熱くなった。下着の中で、あっけなく分身が芯を持つのがわかる。
「もっと本格的なやつです」
 背後から抱きしめつつ、城田は耳のすぐそばで笑う。唇がかるく耳朶に触れて、由鶴はひくっとしながら身をよじった。
「ほ、本格的って……はいつくばれとか……そういう、のっ?」
「んー……そうですね、それはまた今度」
 低い笑い声がくすぐったい。くすぐったくて気持ちいい。ぎゅっとされてお腹を撫でられて、「命令して」と言われただけでその気になってしまう身体が恨めしいけれど。
「城田くんは……どう、されたい?」
 いまだに訊かないと城田の望みもわからなくて、由鶴としてはそこも反省するポイントなのだが、城田は嬉しそうに由鶴の耳にキスしてくれた。
「俺は、お預けがいいですね」
「おあずけ」
「そう。焦らしてくれます?」
「い、いいけど……ど、どうやるの?」
 具体的な「おあずけ」の方法が、由鶴にはちっとも思い浮かばなかった。
(向かいあって座って見つめあうとか? それじゃあんまりおあずけっぽくないよなあ。僕はキスしたいなとか思っちゃうかもしれないけど、城田くんはそんな感じにならないで、あっさり我慢できそうだし)
 考えながら半分だけ振り向いて、城田を見つめると、城田は唇の両端を持ち上げて、にい、と笑った。
「もちろん、やり方は俺が教えてあげます」
 それはものすごく――ものすごくたちの悪い、獲物を前にして舌なめずりする、狼の笑みだった。



「んっ……ん、う、」
 ベッドの上。
 下半身裸。
 上は城田から借りて着ていたTシャツを捲り上げて、胸を晒している。
 左手をその胸に這わせて、右手は膝を立ててひらいた脚のあいだで――
「もっとちゃんと動かしてくださいよ」
 羞恥で手をとめかけた由鶴に、城田がすかさず声をかける。だって、と由鶴は声を震わせた。
「こ、これ……はずかし……、」
「もう、はずかしいって言うの何度目ですかそれ。恥ずかしくないでしょ。犬に見せつけてるんだから、もっとやらしく、大胆にしてくれないと」
 うるんだ目で見つめた先、城田はベッドには上がらず、床に直接座って由鶴を凝視している。舐めるような視線が股間に移動して、由鶴は内腿を震わせた。
「う……や、だ……っ」
 薄々、予想はしていた。あの獰猛な笑みを見た瞬間から、きっとすごく恥ずかしいことを言わされるのだろうとわかって、「いいけど」なんて言わなければよかったと後悔したけれど――それでもこんな目にあわされるなんて。
 城田は服装ひとつ乱さず、涼しい顔で由鶴を眺めているだけで、由鶴一人が、半裸で、自分の手で自らを高める作業を、強いられている。
(こ、これじゃおあずけっていうより……ぼ、僕だけ恥ずかしいだけじゃないか……っ)
 ひくひく震えてしまう身体を持て余して城田を睨みつけると、城田は愉しげに微笑んだ。
「ん、睨む顔が色っぽくでかわいいですよ。それに、やだって言うわりに、先っぽから出てるじゃないですか……見られるの、気持ちいい?」
「、くないっ……これ、ほんとに、はずかし……」
「また言った。はずかしいって言うの禁止にしちゃいますよ? ほら、こすって。してみせてくれないと、おあずけにならないでしょう」
 仕方なさそうにため息をつかれて、由鶴はそろそろと手を動かした。
 どんなに訴えても、城田は絶対に諦めてくれないからだ。城田が満足するまで、「おあずけ」のためにオナニーして見せなければ、由鶴は触ってももらえない。
(犬のくせにっ……犬のくせに……)
 内心でなじりながら、きゅっとしなった自分のそれに、指を絡めて、上下に扱く。自分でするのなんて何回も経験しているはずなのに、脚を大きくひらいて、いたしているところを城田に見られていると思うと、どうしても手つきがぎこちなくなる。
「もっと、音させて。そんなに垂らしてるんだから、ぐしゅぐしゅして、遠慮しないで気持ちよくなって」
「ふっ……う、……っあ、」
「乳首もこりこりして。できますよね。俺がいつもしてあげるみたいに、中指でくりくりって動かすんですよ」
「わ、わかっ……あ、はぁっ……」
 城田に要求されるまま、左手の中指で、勃ち上がってしまった乳首をそっと転がす。かすかな痺れは走るものの、それでも、いつも城田にされるより、全然気持ちよくない。
「んぅ……は、……ふ、……っ」
 はずかしいのを我慢して、先走りで濡れた先端をくちゅくちゅと弄っても、気持ちよさは中途半端だった。身体は熱を持って欲情して、はしたないくらい勃起しているのに、弄ってもこすっても、快感より物足りなさが膨れ上がる。
「うわ、すごくたくさん出てきましたね。気持ちよくなってきた?」
 ちゅくっ、ちゅくっ、と音をたてて自慰をする由鶴の中心を眺めながら、城田は嬉しそうに訊いてくる。その声でまたとろりと先走りが零れて、由鶴は首を左右に振った。
「ぜんぜんっ……よくないよ……っ」
「そんなに漏らして、よくないってことはないでしょうに。よくなるまでして見せて? 俺はおあずけされてますから」
「や、いやだっ……」
 握りしめた分身がひくついて、由鶴は泣きそうになった。
「も……いいだろ……おあずけ終わりにしてっ……」
「おあずけは、犬が我慢できないくらいまでしないと、訓練にならないと思うんですけどねえ」
「が……がまん、も、できない……っ」
 意地悪く目を細める城田が憎い。息まで震えながらぎゅっと睨んで、由鶴は両手を脚のあいだにおいた。太腿に手をかけて、一番はずかしいところが城田に見えるように、ゆっくり押しひらく。
「も……して……おあずけ終わりっ……これ、め、命令、だからっ……」
「――ああ、まったく。由鶴さんはすぐ俺を煽る」
 ゆらっと城田が立ち上がった。片手で器用にウエストのボタンをはずし、ファスナーを下ろしながらのしかかられて、由鶴はほっとして背中をシーツにつけた。
 息を奪うような口づけが、襲ってくる。
「ふ……うんっ……んむ、っ……ふ、ぁっ」
「由鶴さんが命令だんだん上手になっちゃって、俺はどうしていいかわかりませんね」
「なっ……なんで怒ってるんだよっ……あッ」
「上手に振り回されて、めちゃくちゃ燃えちゃったじゃないですか。責任とってください」
「責任て、おあずけ……ふあっ……したいってきみが、あ、あ、んっ……」
 両方の乳首をきゅっきゅっと引っ張られ、さっき自分でしたのとは比べものにならない快感が湧き上がる。ぞくぞくしながら身体をくねらせれば、自然と下半身がこすれて、意識するまえに脚が左右に広がった。
「おあずけ、もっと楽しいと思ってたんですけどね」
 低い声に艶っぽい息をまぜて城田が笑う。「でもまあ、予想よりもさらに可愛い命令が聞けたんで、結果オーライってことにしときます」
 言うなりまた口づけられ、やんわりとお尻を揉まれて、由鶴の身体からはくたくたと力が抜けていく。
「あっ……あ、しろた、くんっ……あ、」
「あ、名前で呼びませんでしたね。その分余計にご褒美もらいますよ」
「あぁっ……ゆび、急に入れたら……あっ」
「ジェルたっぷりだから気持ちいいでしょう? あとおあずけで俺のこと煽りすぎた分ももらいます」
「ひゃ、う、あっそこ、……あっァ……ッ!」
「大丈夫、すごくやわらかいから。二本目もすぐ入りそうでしょ? 入れていい?」
「ん……、い、平気……っ」
 いつもより性急に指でほぐされながら、城田くんは勝手なことばっかり――と思ったけれど、それでも由鶴は城田の背中に手を回す。
 だってちっとも楽しくないおあずけをするより、こうして城田も触ってくれたほうがずっといいから――終わったら、城田には言おうと思う。
(僕はおあずけ好きじゃないから……今度は違う命令にさせてって……言わなくちゃ)
 そう言ったら、また城田のスイッチを入れてしまって朝まで眠れなくなることなどさっぱり思い至らない由鶴は、城田を抱きしめて、おとなしく二本目の指を受け入れた。





END



10冊目にあたる『僕の犬のドSなご奉仕』のお二人の、バカップル的桃色SS。
由鶴……しっかり……。
バカップルすぎて、ママとかに「いい加減にして!」って怒られそうな内容を書くのがとても楽しいです……。ベタなネタですが、楽しんでいただけましたら嬉しいです。



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