あまい膝裏
(「あまい独り占め」同人誌「こころ独り占め」おまけSS)








 お互いが不安にならないように、お互いができる範囲で協力するということで、いちゃつき方にバリエーションをつけたらどうか、と貴裕が真顔で言い出したのは、晶真が帰ってきて風呂から上がった直後だった。
「ば、バリエーションて?」
 貴裕ってときどき不思議なこと考えるなあ、と思いながら晶真が聞き返すと、貴裕は「それは考え中」と言った。
「とりあえず、一回試してみない? 今から」
「うん……まあ、いいけど……」
 ためらいつつも、晶真は頷いた。
 正直、ちょっぴり不安もある。というのも、どうもやっぱり――自分は貴裕に弱すぎると思うのだ。「兄ちゃん」と呼ばれてねだられると断れないし、気持ちいいことをされると、我慢するほうが貴裕を不安にさせてしまうのだという意識も手伝って、身体がどんどん、快感を追いかけてしまう。
 ずっと、性的なことには淡白なほうだと思っていたのだけれど。
 大丈夫かなあ、また流されちゃうかな、と思いつつ、ちらりと貴裕の顔を窺うと、貴裕は嬉しそうに表情をほころばせた。
「じゃあ、下だけ全部脱いで」
「下だけ? なんか、それ全部脱ぐより嫌だよ」
「今日は乳首触らないから。乳首いじると、晶真すぐ達っちゃうし、疲れちゃうでしょ?」
「う……そ、う、かな……」
 言われただけでつきんと胸が――乳首が痛み、晶真は部屋着の上からそこを押さえて目を逸らした。そんな言い方をされると上を脱がないのは得策のような気がしてきてしまう。たしかに、ここは……触られると、どうしようもなくなってしまうから。
 じゃあ……としぶしぶつぶやいて、穿いたばかりのハーフパンツとパンツを脱ぐと、心許なさで顔が火照った。
 貴裕はいそいそとキスをしかけながら、晶真をソファーベッドに横たえる。
「今日は、脚だけいっぱい触らせて」
「脚だけ?」
「うん。ほら、太腿にだけキスマークつけたとき、それだけでも感じてくれたでしょ。あれ、嬉しかったから」
 本当に嬉しそうに言いながら、貴裕はすうっと足首から膝まで撫でた。ぞくっ、と震えが走って、晶真は思わず足を引いた。怯え気味の晶真の顔を見下ろして、貴裕は優しげに微笑む。
「大丈夫、跡はつけないから」
「そ、そう?」
「キスして、舐めるだけだから」
「だけって、あ、ちょ……あっ」
 ぱくん、と膝をくわえられ、びくんとしてしまう。貴裕は長い舌を伸ばして膝を丸く舐めると、浮いた踵を持ち上げて、うっとりと目を細めた。
「晶真、足も可愛いなあ」
「ふつーの足だよ、ね、まさか舐めたりしない、よ、……んっ」
 ぬる、と第一足指を含まれて嬌声が漏れかけ、晶真は慌てて口を押さえた。貴裕は晶真の顔をうかがいながら、舌を這わせてくる。
「んっ……ふ……、ん、」
 ちゅぷ、と指をしゃぶられ、指の又に舌を伸ばされて、くすぐったさとぬめる感触に震えが走った。足から尾てい骨へと登っていくのはまぎれもなく快感で、嘘だ、と思いたかった。
 足の指を舐められても気持ちいい、なんて嘘であってほしい。
「口の中で、晶真の指がきゅって丸まって、可愛い」
 れろ、と舐めて、貴裕が笑った。恥ずかしさに震えてなにも言えずにいると、貴裕は今度は足の裏に口づけた。
「んっ、くすぐった、……あ、は、あっ」
「くすぐったいだけじゃないよね、その声。こことかは?」
「あ、あーっ、や、あっ」
 かぷ、と踵を噛まれ、くるぶしのくぼんだところを舌でくすぐられて、どうしてこんな、と思うほど声が上ずった。離してもらおうと手を伸ばすと、貴裕はうっすら笑みを浮かべて、ぐい、と足を持ち上げた。
「ここは? 前も舐めたことあるけど」
「だ、や……ぅ、あ、ああっ……」
 指先で膝裏をくすぐられる。さすられ、かるく押されるとじんじんと熱が広がって、性器が疼いた。
「やっぱり、好きだよね。勃ってきた」
「あ……ん、……あっ」
 我慢しようと思うのに、腰が勝手にくねって、貴裕は勝ち誇ったようにそこに唇を押し当てた。ちろちろと、やわらかい皮膚の上を舌が行き来する。
「ああっ……やだあっ……あ、や、あ……っ」
 膝の裏でまで感じるなんて、ずっと内緒にしておきたかったのに。
 溶かすように舐められて、吸われ、唾液が太腿のほうに垂れた。隠すものもない股間でみるみる性器がしなっていく。足を高く持ち上げられてバランスを崩した晶真は、ソファーベッドの表面をひっかいて身悶えるしかない。強く膝裏を吸われるとごまかしようもない強い快感がほとばしり、晶真はせつない声で貴裕を呼んだ。
「も、だめ……足、やだ……ちゃんと、さわ、って……っ」
「もう? せっかく両足、全部舐めたいなあって思ってたのに残念だな……一回達ったら、また舐めさせてくれる?」
「ん、いい……いいよ、して……、」
「口で達かせてあげたいんだけど、いい?」
「うんっ……い、い、いいから……っ」
 ああ、どんどん我慢ができなくなっている気がする。これじゃまたいちゃついてるって店長に言われちゃうのに――そう片隅で考えても、突き上げるように湧いてくる欲しい気持ちはとまらなかった。
 貴裕は名残おしそうにふくらはぎに口づけ、それから大きく口をひらいて、晶真の震えるそれを含みこんだ。






END



同人誌「こころ独り占め」発行時に作成した豆本「豆ゆゆ」より再録です。
晶真しっかり!とつっこみたくなるような弟の暴走……。
兄が甘いのをいいことに、わがまま言い放題の弟、という構図は楽しいなあと思いながら書きました。ただのバカップル!
ちょっとでも「にやり」としていただけたら嬉しいです。



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