| 感傷に浸っていると、俺の後ろにある電話が鳴った。 仕事柄、死者からの電話だ、と思ってしまうが、この電話はちゃんと電話線が繋がっている本物だ。 俺よりも先に豹が動き受話器を取った。 「もしもし、原ですが」 『あれ〜?豹さん仕事休み?』 「ああ、君か。今日は非番なんだ」 『めっずらし〜!休みでもこんな時間にはいないのに』 「…今日は外に出た時に気付いたんだよ」 『相変わらずおっちょこちょいだな〜。所で、ネコ生きてる〜?』 「まあ…生きてるな」 その受け答えだけで相手が誰だか分かった。 豹はコードレスの受話器を俺に手渡した。 「もしもし」 『よっス!元気か〜ネコネコ』 「…元気なわけないだろ」 『やっぱり?』 異様な明るさを放っている相手は、仕事の相棒である高橋狐20歳だ。 死人探し屋には必ず死人掘り屋と言う仕事人とコンビを組んで仕事をする。 単純に、探し屋が死者の居場所を見つけ、掘り屋がその場所を掘るのだ。 狐は勘が良く、俺の所に死者から電話があった後に必ず連絡してくる。 『今回を入れたら4回連続だもんな〜。俺は別に掘るだけだし、まだ若いから疲れないけど、ネコは大ダメージ食らうからまいるな〜』 とは言っているが、心がこもってない。 若いとは言っているが、俺の方は17歳で狐より3歳年下だ。 体力には自信があるが、探し屋にはあまり関係ないものかもしれない。 『で、どうよ?相手の反応は』 「3時間かけて思い出してみると言っていた。そんなに時間はかからないはずだ」 『そりゃいい!それじゃー俺は準備して待ってるから、分かったら電話しろよ』 「…電話しろって言うけど、いつも狐からかけてくるだろ」 『俺はいつもアンテナ伸ばして察知してるんだよ。じゃ、頑張れよ〜』 狐は俺の返事を待たずに電話を切った。 突然電話をかけてくる奴だが、切るのも早い。 「相変わらずだな、狐は」 豹の意見だ。そう、狐は何があっても自分の性格を変化させようとはしない。 「もう少し落ち着いた性格になって欲しいけどな…」 「無理だろ、それは」 「無理だな」 狐の話題を止め、俺は今日の電話相手である女性について少し調べる事にした。 事件当時、彼女はいつも通りに両親がいる実家に帰ろうとしていた。 家に着くまでは随分と時間がある。 仕事場である都会から電車に乗って地元に降り、駅からバスに乗って家近くに降りる。 まだ先があり、バス停から家までは海沿いの道路を30分程歩いて漸く家に着く。 しかも、海沿いの道路には街灯が数える程しかなく、夜は街灯があってもなくても全く変わらない暗さらしい。 海沿いだからなのか、家も遠く離れた場所にあり人気が全くない。 これじゃあ、狙われても簡単には他者には気付かれない。 海沿い…海? 「そう思えば…波の音がしたな…」 「波の音?」 「さっきの電話で、向こう側から聞こえてたんだ。あんなにはっきりと聞こえたのは初めてだけど」 「それは、その女性が海にいるって事なのか」 「そう考えていいな。実家近くに海があるから、多分そこにいる」 大体の予想はついたが、海と言っても広さが大規模だ。小さな海岸だったら時間かけて探せば何とかなるだろうが、俺が実際見たあの海岸の広さは半端ではない。 それに、海と分かってもこの女性の実家近くの海である保証もない。 これは電話を待つしかないな…。 |