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死人探し屋ー携帯電話
「おまえはもう少し静かに喋れねーのかよ!!」
 家のドアを開けるといきなり猫の怒鳴り声が聞こえてきた。
 昨日より倍に不機嫌さを増している。
 リビングに行くと、リビングの電話で話している猫がいた。
 イライラが治まらないようで、リビング内を歩きながら受話器を持っている。
「あ、おかえり」
「ただいま…狐か?」
「そうだよっ…何?カルシウムとれ?大きなお世話だ!!」
 遂に猫は電話を切ってしまった。
 そのままふて腐れるよう自分の部屋に行った所ですかさずリビングの電話が鳴った。
「もしもし」
『ヨーッス!豹さん元気〜?』
「俺はいつも元気だ」
 予想通り狐からの電話だ。
 猫がどんな態度をとっても狐は全く性格を曲げようとしない。
『いや〜酷いね〜ネコ。絶対カルシウム不足だって』
「しょうがないだろ。死人が何も思い出さないんだから」
『俺は暇でしょうがないッスよ。それに、今日を入れてもう6日目だし、そろそろ諦めた方がよさそうだけどな〜』
「猫の性格だったら無理だろ」
『そうなんだよ!もう少しやるとか言ってさ〜』
 狐の仕事は猫が見付けて死人を掘り出す事だ。
 なので、猫が死人を見付けない限り狐には仕事が入ってこないのだ。
 っと、そんな時に猫の部屋から電話の鳴る音が聞こえた。
「死人から電話がかかってきたみたいだ。俺は様子を見る」
『了解!』
 電話を切り、素早く普段着に着替えてから猫の部屋を見た。
 相変わらず、部屋の中心に置いてある椅子に座ってジッと話し込んでいる。
「え?」
 と言う声と共に猫が俺の方を見た。
「?どうした?」
「…この死人、豹兄を見た事あるって言うんだ」
「俺を?」
 死人に見た事あると言われるのは初めてだ。
 しかし、俺はメモの内容を見て全くの他人である事を確認している。
「いつ見たんだ?…今日?今日見たんだって」
「今日…今日?」
 そう言われて思い浮かぶのはあれしかなかった。
 依頼人の多川氏の背後に見た影の事だ。
「今日会った依頼人に憑いていた影を見たが…」
「それだ!そうか、自分を知らなくても無意識に特定の人物の側にいるんだな」
 猫はその事を死人に言うと、何か手応えがあったようだ。
「豹兄、その依頼人の名前は?」
「言っていいのか?」
「本人の名前じゃなかったら大丈夫だ」
「…多川圭輔と言う52歳の男性だ」
 容易く依頼人の名前を教えてはいけないのだが、この場合しょうがない。
 多川氏の名前を死人に教えると、数秒で猫が思わず電話を遠ざける程の大声を出した…ようだ。
俺には死人の声は聞こえないが、猫のアクションで分かる。
 どうやら自分を思い出したようだ。
 
 猫と死人の弾むような会話を見て、これで少しは落ち着くと思い猫の部屋から出た。
 リビングに戻って時計を見ると…午後9時。
 夕食をすっかり忘れていた。
 炊飯器の中を見ると朝炊いたままの御飯が残っている。
 しょうがないので、簡単に出来るチャーハンを作ろう。
 まず、ニンジンとピーマンを細かく切り、それからベーコンも切る。
 それらを炒めてから御飯をどっさり入れる。
 味付けは塩コショウと決めてのカレー粉だ。
 具も味付けも大雑把だが、それで美味しく食べれるのがチャーハンだ。
 全体が混ざればカレーチャーハンの完成。
 小さい頃から作っているカレーチャーハンは猫にだけ人気な料理だ。
 何故かと言うと、雀と母は辛い物が嫌いだからだ。
「あ、カレーチャーハンだ」
 皿に盛っている時に猫が右目を押さえながらやって来た。
 空腹だったのか、猫は冷凍庫から取り出したアイスシートと一緒にカレーチャーハンをリビングに持っていた。
「どうだ、死人の居場所は」
「やーっと分かった」
 猫は物凄い勢いでカレーチャーハンを食べている。
 死人の居場所が分かったとは言え、死人を直に発見するまで猫の完全なる不機嫌解消はない。
まあ、先程よりは落ち着いているように見える。
「豹兄、その多川って人、注意した方がいいぜ」
「注意?」
「あの死人、その人に銃殺された挙げ句にコンクリートに閉じ込められているって言った」
 予想通りになったと言っていいだろう。
 多川氏を見た感じからヤクザや暴力団関係の人間のように見えていた。
 堅い顔つきに高そうな背広とコート、そして黒塗りの高級車。
 警察に行けない事情も理解出来る。
「もしかして、死人もそっち関係の人間なのか?」
「いや、単に事件を目撃して口封じに殺された一般人だ。よく携帯電話残ってたよな」
「その携帯電話はどうしたんだ?」
「阿部刑事経由で入手した」
 俺がやっとチャーハン半分を食べたと同時に猫は全部食べ終えた。
 急ぐ理由があるな、と思った時に電話が鳴った。
 俺より先に猫が電話に出た。
「分かったぞ、狐」
『おおっと!?何だ突然』
 成る程、狐からの電話を予知していたのか。