原兄弟宅にはインターネット接続されている最先端パソコンがある。
ひきこもり気味な猫がよく使っていて、すでにプロ級ブラインドタッチだ。
インターネットでシロが住んでいる地域で起こった過去の事件を調べる事となった。
さすが田舎。なかなか情報が出てこなかったが、数分後に1件見つかった。
「ダム施設内で腐敗死体発見。検死結果で銃弾3発を体内から発見。
事件として捜査開始。2004年7月か。これだな」
「と言うと?」
「この地域はいい殺害場所になってるって事だ。
人が少ない分、死体が見つかるのも遅いし、見つからない事だってある。
初めて行った時から嫌な土地だと思っていたところだ」
「自殺名所ならぬ他殺名所か。
って事は、シロがいる場所では今まさに殺害実行されてるって事なのか?」
「そう思うしかないな。
シロが怒ってたから、多分シロがいる場所をずっと殺害場所として利用している同じ犯人だ」
「おいおいおい。
折角早く見付けられると思ったのに、そんなややっこしい事まで付いてくるのかよ」
「しょうがないだろ。成るように成れだ…っ痛」
猫が突然右目を押さえ始めた。霊と会話をした後は必ず右目だけ激痛を発するらしい。
フラフラと台所に行き、冷蔵庫から取り出したアイスシートを右目に当て、
居間のソファーに深々と座った。これがいつもの行動パターンとなっている。
「狐。阿部さんにシロが住んでいる場所に来るように言ってくれ」
「迎えに来てもらわないのか?」
「狐がここに遊びに来る時はいつも車に乗ってくるだろ、仕事道具積んだまま」
「よくご存じで。って事は、今すぐに行くって事だな」
「そう言う事。よろしく、相棒」
「了解、相棒」
俺の仕事には、馴染みの警察官阿部氏に電話をする事も含まれている。
死体捜索に立ち会ってもらう為に、数人の関係者を連れてきてもらっている。
しかし、今回は死体捜索だけではない。殺人者を逮捕してもらわなければならない。
…面倒だな〜。
意外にも阿部さんとの連絡はすぐについた。
阿部さんの手配は素早く、1時間後に現地に到着するように向かう、と言ってくれた。
で、俺達も現場に向かう為、俺の愛車に猫を乗せて原兄弟宅を後にした。
車中でも猫は右目にアイスシートを当てたままだ。
そんなに急いで向かわなくても、と言ったけど、シロを早く飼い主に返してあげたい、
と言って先に俺の車に乗り込んだ。こう言うところが頑固な猫だ。
1時間後、シロの飼い主の家に到着した。
田んぼに囲まれた昔ながらの農家で、家も農家らしい木造建ての大きな家だった。
車から降りた時、田んぼの方からバーンッと言うでかい音が鳴り響いた。何だ?
「あの空砲の音で田んぼに近づく鳥を追い払っているんだ。
どこで銃を撃っても気付かれないよな、これじゃ」
「あ〜なるほど」
「あら、ネコさん?」
家から畑仕事の姿のおばあさんが出てきた。70代後半といったところだ。
「お久しぶりです、藤さん」
「あらあらあら、本当に久しぶりね〜。どうぞ中に入って。あ、お友達も一緒に」
「あ〜その、今日はシロを探しに来たので」
「えっシロを?シロがいるの?」
「何じゃ、シロ帰ってきたのか?」
シロ、と聞いておじいさんも出てきた。
かなりシロの事を可愛がっていたと猫から聞いている。
「シロからこの電話に連絡がありまして。どうやらこの近くにいるようなんです」
「この近くに?生きてるの?」
「…残念ながら」
「そう。そうなの…」
「早くお二人の元に戻してあげたいので、これから周辺を探してきます」
「どうぞ宜しくお願いします」
「よろしくな、ネコさん」
猫が家の後ろにある山の行く合図をしたので、
俺は車からいつもの掘り道具を背負って山に向かった。
「ネコって依頼人からもネコって呼ばれてるよな」
「説明が面倒なんだ」
「覚えやすいもんな、ネコの方が。
ところで、あの夫婦からどうやって依頼を受けたんだ?」
「気晴らしに兄貴とドライブに来て、ここの犬小屋の中に玩具電話を見付けたんだ。
何で犬小屋に電話があるのかと思って話を聞いてみた」
「どこに行っても電話を見付けるプロだな、ネコは」 |