言わずとしれた、ローマの休日のヒロインである。
グレゴリー・ペック扮するアメリカ人の記者と成就されない恋に陥
いり、公式記者会見の時に、最後にお互い知らないもの同志とし
て、別れを告げる場面である。
皮肉にも、彼女の初主演が、生涯でもっとも評価された映画と
なった。その後の映画は、ほとんど評価されないというか、あくま
でローマの休日の延長上にあるもので、この映画なくしては、おそ
らく残ることはできなかっただろう。
彼女の美しさは、ピュアで新鮮なものだが、年月とともに失われ
るべきものでもあった。なぜなら、彼女の演技は、歌舞伎や能のよ
うに、修練の結果に身に着けたものではなかったからだ。
子供がもつ純粋なかわいらしさと同じように、彼女の美しさもま
た、無意識に身についていて、年月とともに失われる運命にあっ
た。だからといって、彼女のことを過小評価するつもりは毛頭な
い。彼女のこの映画は、何度見ても惹きつけられる。敢えて言え
ば、このラストシーンの数分間が、不滅の名作としての地位を築
いたと言ってもいいと思う。