代表作が、晩年に描かれた、この「夕顔棚納涼図屏風」である。
もっとも国宝らしくない国宝と言われるくらい、地味な絵ではある。
夕顔の蔓が日差しを遮り、農夫らしい男と息子と娘がそばに寄り
添って涼をとっている。余計なものを一切描かず、素朴で幸せそう
な家族の姿が伝わってくる。
ある専門家は、この農夫は守景自身であり、そばにいるのは息
子と娘を描いたのではないか、と推測する。恵まれない家庭であ
ったが、親子三人が仲良く涼をとっているこの絵こそが、守景の叶
わなかった理想の家族であったのかもしれない。