今月の一枚

             

             赤い靴





              


   
      赤い靴(くつ) はいてた 女の子

      異人(いじん)さんに つれられて 行っちゃった

      横浜の 埠頭(はとば)から 汽船(ふね)に乗って

      異人さんに つれられて 行っちゃった

   
    誰もが知っている歌であるが、どういう内容かと聞かれると、返

   答に困るのではないだろうか。この童謡は、実話に基づいて書か

   れたとされている。

    明治35年、岩崎かよは、未婚の母のまま娘きよを静岡で生む。

   その後、北海道にわたって入植してほかの男と結婚するが、生活

   は厳しく、アメリカ人宣教師の夫婦にきよを託すことになる。宣教

   師夫婦は、その後アメリカに帰国し、かよは二度と娘きよに会うこ

   とはできなかったという話を、当時北海道の新聞社に勤めていた

   野口雨情が、かよから直接聞いて、童謡として作詞したという。

    だが、この話は捏造だったとする説がある。かよとアメリカ人宣

   教師の間には、交流がなかったというのである。さらに、かよは、

   娘きよを2歳の時にすでに東京の孤児院にあずけたまま北海道

   に入植したので、宣教師夫婦とは会えるはずはなかったというの

   である。

    もしこれが真実であるとすれば、かよが美談として嘘をついた

   か、雨情がフィクションとして作り上げたか、どちらかということにな

   る。皮肉にも、この歌は時代を超えて受け継がれ、横浜の山下公

   園と姉妹都市のカリフォルニア、サンディエゴに、「赤い靴をはいた

   少女」の銅像が、今もたっている。