ミルズは、スー族のインディアンである。インディアン保留地で育っ
たが、7歳の時に母親を亡くし、12歳の時に父親を失っている。そ
の後、インディアン寄宿学校に入れられ、陸上競技を始める。
そこで出会ったコーチから「人間性と誇りを失わないスポーツマン
シップこそがインディアンの道だ」との言葉に感銘を受ける。奨学金
を得て大学に進学し、多くのレースで優勝するも、その記録は無視
され、記念写真を撮るときに、優勝者である彼は、いつも白人の中
から外へ出された。社交クラブの入部も拒否され、親戚の話をする
と、インディアンの名前がおかしいと、笑いものにされた。
あまりの差別と嫌がらせに、大学を辞める決心をし、先のコーチに
電話すると、コーチが駆けつけ、「目的も楽しみも見つけられない人
間はたくさんいるというのに、逃げ出す君が悲しい」と号泣され、ビ
リーは、再び競技を続けることにした。
東京オリンピックのアメリカの選考会を2位で通過したミルズは、上
記の差別待遇のためにまったく無名であった。そして迎えた、
10000Mの決勝。伝説的ともいえる驚異的なラストスパートで、彼は
金メダルを手にするのである。