森のお医者さん

        

         ヘミングウェイ




            

   ジャーナリストをしていたころ、22歳のアーネスト・ヘミングウェイ

    1954年、55歳のヘミングウェイは、アフリカで飛行機事故を起こ

   して重傷を負ったが、同年ノーベル文学賞を受賞した。受賞の時、

   彼は新聞記者に、「もう5年以上は生きられない。急がなければな

   らない」と語った。

    それから6年後、かつて94キロあった体重は78キロに落ちてい

   た。顔色は悪く、舌はもつれ、足どりもおぼつかなくなり、自作にも

   自信を失い、世評ばかり気にしている、かつての鋼鉄の巨人のよ

   うなイメージは消えていた。

    その年、彼は糖尿病と高血圧の診断を受けていた。入退院を繰

   り返したのち、妻と山荘にすごしていたが、ある朝、妻は一発の銃

   声に目覚めた。駆けつけると、そこにはサンタクロースのような白

   髪のヘミングウェイが口とあごと頬の一部を残して頭部を粉砕して

   倒れていた。

    ちなみに、彼の父は33年前にピストル自殺をし、弟も彼の死後

   21年後に猟銃自殺をしている。