森のお医者さん

 

   怪僧ラスプーチン





               



    シベリアの貧しい農家の生まれである。小さい頃から霊能者とし

   て知られていた。彼を有名にしたのが、当時のロマノフ王朝の皇

   帝の息子が血友病を治したことである。当時、血友病は死の病と

   言われ、治療法がなかった時代である。

    このことで、彼は皇帝の信頼を得て、のちに国政を左右するほど

   の権限を与えられ、影の皇帝と異名をとった。世の常というか、自

   分たちの既存の権力に割って入った人間に嫉妬する人間はいつ

   の時代にも存在する。彼は、皇帝内部の人間に殺された。

    怪僧という異名は、彼の殺され方に由来する。彼は、食事に青

   酸カリを盛られたにも関わらず、平気だった。それで、ピストルで心

   臓を撃たれ、息絶えた・・・ところが、それでも生きていたので、手

   足を縛って川に投げ入れてようやく溺死した。

    ところが、彼は自分の当時治療法がなかった時代死を予期して

   おり、予言を残しておいた。自分は、来年(1917年)1月1日までに

   死ぬだろう。そして、わたしを暗殺するのが、ロマノフ王朝の手に

   よるものであれば、一族は2年以上生きるものはいないだろう、と。

     彼は予言通り、1916年の年の暮れ殺された。そして、300年以

   上続いたロマノフ王朝は革命によって崩壊し、一族は民衆によっ

   皆殺しにされてしまった。