今月の一枚


            谷内六郎




        


    昭和初期、東京恵比寿で9人兄弟の6男として生ま

    れ、見習い工員などしながら独学で絵を学んだ。

    1955年、「おとなの絵本」で文芸春秋漫画賞を受賞

    し、翌年から週刊新潮の創刊号から表紙絵を長く担

    当した。

    当時、心を病んでおり、この受賞を聞いたときは、

    うれしさのあまり、自分の腕を切りつけてしまったと

    いう。彼の絵は、独特である。いわゆる心象風景を

    描き、スケッチ等は一切しない。自分の幼いころに

    ある記憶の引き出しから、さまざまなものを組み合わ

    せて絵が出来上がっていく。

    幸せそうな絵を描く画家は山ほどいるが、大半はつ

    まらない。そんな絵は、幸せそうな明るい色ばかりを

    使い、みんな幸せそうに微笑んでいる。幸せというの

    は、哀しみの対極にあるものである。その対比を上手

    く表現してこそ、幸せになれる絵だと感じることができる。

    彼の幸せは、哀しみの風景の中に灯された小さな明か

    りのように、しみじみと心に伝わってくる。