3名の美少年が磐梯高原秋元湖の湖畔からボートを失敬して中津川までやって来た。 そこから朱滝や熊落しの滝など45米から90米の滝の連続するV字形の渓谷を遡行しはじめた。
流れる水は冷たかったが、望める上空は狭く真青だが頭のてっぺんは焼け付くように暑かった。
背負うザックは現在のような立派なものでない、親が買出しに使ったようなオンボロ・ザックだ。
歩く度に鰯缶や鯨の大和煮がそのオンボロ・ザックの裂け目からポロンポロンとこぼれた。
急流に流されて、危うく滝壷まで落っこちそうになったりした。10時間程の悪戦苦闘の末、辿り着いたのはヤケノママ、 そこは小さな草ぶきの小屋があり、火山の地熱が天然のオンドルとなってビショ濡れの少年達の休息の場としては最高の場所だった。
炊飯はあちこちから噴出している水蒸気で出来た。 トリスを酌み交わし夜が更けるのも忘れて男のロマン???を語り合った。
翌日は湿地帯とオオシラビソの林の中を歩き吾妻山の縦走路を東にとって歩いた。道は30センチの幅しかなくそれでも迷う心配などなかった。 ただ、頭上から焼け付くような8月の太陽が遠慮なく照りつけた。小さな水溜りを見つければそこに口をつけて飲んだ。しこし、すっぱい感じがしたが、それでも美味しかった。
一切経山の下まで辿り着いたとき、遠くに女子学生を見とめた。少年達は大急ぎで吾妻の瞳と云われる五色沼の水辺に下りていった。もちろん、ほこりにまみれ塩の噴出した顔を洗うためである。何時間も縦走路を歩いてきたことを忘れさせるほど素早かった。 残念なことに彼女達には追いつくことはできなかった。
いや、少年達が縦走路にもどった時にはもうその姿は見えなかった。 残念だった。そして疲れがどっと出た。一切経を登り浄土平までの下りが今まで歩いてきたそれよりも何倍にも感じた。
秋元湖 遠くに見えるのは
安達太良連峰 鬼面山
中津川渓谷白骨八丁付近
吾妻の瞳と言われる五色沼
その夜、農業用ビニールシートのテントの中で自分達の成功をトリスで祝った。外は真っ暗闇の世界だが、上空を見上げれば満天の夜空に天の川がとてもきれいだ。 いや、上空を見上げると言う言葉は何か少し欠けている。 それは、少年達の今いる場所は天の川に手の届きそうな天上の楽園であり、北斗七星は水平方向に見ることができた。 北極星は45°に白く輝き、多くの星屑が今にも頭の上に降りそそぐようだった。 ただ、カーバイトのトーチランプで灯りをともす自分達の農業用ビニールシートのテントの明るさが異様に明るく、何か、幽玄の世界に入ってしまったような錯覚もおぼえた。
一切経山頂
次に
夏の日の想いで