幼児共生精神病・脱力睡眠発作 (仮設自由損傷症候群)

《治療・養護・介護のための新療法による=在宅心理カウンセリング

 

1) 定義

主体性は無制限な自由を目的価値とする意志を持つ。乳児は生後3ヶ月頃から主体性を身体(本能)に組み込む努力を始める。本能は“感謝・愛・善・美“の調和価値を意志とする存在である。「自由の概念」の身体への組み込み困難性は、本能の不調和発動である“不安、絶望、混沌、恐怖”の“おそれとおののき”に由来する。本能の根本情態性が常に主体性の基本構造を揺るがせている。
 

 

                    〈自己主体性の理想生育史〉

                                                                           

  主体名│          発達段階    │  主体と本能の関係          │存在の様態

────┤0才  ────────┼───────────────┼─────

                我観発達期    │[言語記号+主観=自由の概念]│概念性   

  主観体│      (主観搖籃期)  │が産出され、我観は主観に所有、│         

                              │支配される。                  │存在性   

────┤三ヶ月  主観定立期  ─┼───────────────┼─────

                              │「自由」に基づく主体意志が、誘│半身体性 

  先主体│        分立二義期    │導図式と知感覚刺激によって本能│         

            (身体所有習練期)│統覚に侵入して、本能の存在性を│         

                              │奪い始める。主体は身体の完有 │     

                       │(母子分離期〜2才)を目指す。│半存在性 

────┤八ヶ月  母子分離期  ─┼───────────────┼─────

                              │本能は自己の統覚主導力を奪われ│身体性   

  原主体│    身体所有期   │、潜在化する。主体は身体を完全│         

              (自立葛藤期) │に掌握し、主体意志で自由に本能│         

                              │を翻弄できるようになる。身辺社│ 

                              │会での自立(四才)を目指す。 │潜存在性

────┤四才    第一反抗期  ─┼───────────────┼─────

    │               │扶養者の前意識的理念の下で、自│自立存在性

前意識的│     自立期     │前の存在観を確立し、成人に伍し│         

主体  │       (自律葛藤期) │て社会に自律することを目指す。│         

                              │本能はほぼその存在性を喪い、質│

                              │量的客体化を示す。            │反抗質量性

────┤十二才  第二反抗期  ─┼───────────────┼─────

                              │認識力が発達し、自由主観は自己│         

                              │内省が可能となる。主体は価値観│自律存在性

 意識的│                  │(アイデンティティ)を定立し、│         

  主体          自律期        │自律する。この強力な主体体制の│         

                              │下にあって、本能はモノ化され、│         

                              │調和の弁証法に生きる個体存在性│破壊質量性

                              │が抹殺される。                         

────┘死  ─────────┴───────────────┴─────

                                                                            

・「自己主体性」は精神疾患の一つである自由拡張症候群の主体の存在性である。
   ・人間の全ての精神疾患は、自由拡張症候群(自己主体性)に起因する。
      ・「存在の様態」は、各生育期の上が主体、下が本能の様態であり、共に主体の観点か  
        ら見られた様態を表わす。「破壊質量性」は本能が主体に完全に所有、支配されて、  
        認知症へと崩壊の過程にある様態である。認知症は自由拡張症候群の極限の発露である。         
        

 

 

 

 

「発病因」

 

  3〜8ヶ月の母子共生(先主体性)期が、この疾病群の病因期である。

先主体性は本能と身体を二分しており、主体性をまだ身体に仮設している段階という意味で、仮設主体性とも呼ばれる。本能の自我と主体の自己を等分に生きる主体性である。

 仮設自由損傷症候群本能と主体の分立二義存在にアイデンティティを持ち続けようとする疾病である。言い換えるなら、「自立(自律)してはならない」という命題(=暗黙の了解:意訳)の下に、分立主体と分立本能が共存している様態である。

                   

仮設自由損傷症候群の患者は、この疾患に罹患し続けているかぎり、成人になっても仮設主体性を主体性としている。

 

生後8ヶ月目の主体的な母子分離期を目指しているこの時期に、その生育環境が彼の本能を愛でる方向に向かうと、その主体性の発達におおきなプレッシャーがかかることになる。

 

てんかん、脱力睡眠発作幼児共生精神病は、主体的な発達の前に立ち塞がるこの過剰本能状態に原因し、主体性を立てるに足る自由量が充分とならずに、その主体性が神経症とおなじく損傷した様態に留まる精神疾患である。それゆえ神経症とおなじ症状も呈するこの疾患群を仮設自由損傷症候群と呼び、更に、てんかんを摂理神経症、脱力睡眠発作と幼児共生精神病を個体神経症と呼ぶ。

 

個体神経症は主体の自由量が半分しかないことに加えて、認識力の未発達が罹患の原因となっている。てんかんでは認識力の未発達はない。

 

 

幼児共生精神病は第一反抗期に発病するので、小児個体神経症と呼ぶが、治癒しなければ当然、第二反抗期以後もそのまま罹患し続けることになる。仮設自由損傷症候群全体は、先主体性の生育期に病因を持ち、自立期、自律期を通して、主体性の本態を先主体性として維持し続ける。

 

先主体性は本能意志に仮設される主体性で、身体を二分して本能と主観が渡り合っている。この自由量が半量しかない状態は、先主体期には異常ではないが、自立期と自律期にとっては異常事態である。

 

自律期までに共生状態が解消された場合でも、自由量が存在の全量になお至っていなければ、自律期で脱力発作睡眠発作を起こす成人個体神経症に罹患する。

 

これとは別に脱力睡眠発作を初発症状とする成人個体神経症は、十五〜二十歳を「発症多発期」とする。

 

仮設自由損傷症候群の完全治癒は身体の全量を主観の配下に置いたときである。        

 

 

 

 

 「症状」

 

 

                     幼児共生精神病の症状

 

 

  幼児共生精神病の症状は根本情態性に侵襲されたときに認識力の不全に陥

て、パニックになり、扶養者にしがみつくという単純なものである。重い場合は

一時も扶養者の抱擁なしでは過ごせない状態になり、ほとんど完全な寄生状態

となる。このように重症の場合は、第二反抗期の社会的自律期を過ぎても、

扶養者の元で単純な手仕事を粉すことができる程度の生活を過ごすことになる。

これが昼間の覚醒時の主症状である共生症状である。

 

幼児共生精神病の二つ目の症状は、 睡眠時に起きる脱力睡眠発作である。

 

三つ目の症状は、仮設自由損傷症候群として、その主体性が常に自由損傷状態

にあるゆえの常態的な神経症症状である。

 

 

 

 

 

        脱力睡眠発作の症状

 

 

 成人で発症しても、成人個体神経症に罹患する主体はすべて、生育史上の

母子共生期の分立二義性を本態とする。自立期を分立二義存在に仮設される

「原自由」を以って乗り切るが、自律期に至って仮設主体性であることを隠蔽する

ことができなくなる。それほどに、自律は自立よりも厳密に力量を判定するからである。

 

 個体神経症の自律の破綻は、主体性、個体性を問わず本能の調和域の住み心

地がえもいわれないものであることを示している。その至福状態は、この疾病の、

また、てんかん発作の主体性崩壊で見る至福の幻覚のあたかも先取りのようである。

 

 

 仮設自由損傷症候群の主体性である「先主体性」は4つの本能の調和価値を

その「分立本能」に抱いているが、

「分立主体」の方は“所有・支配・権力・翻弄“の自己主体性理念か、

あるいは“感謝・愛・善・美“の精神主体性理念のどちらかに至ることになる。

 

しかし個体神経症主体では、主観、及び我観の脆弱性によって、

これらの価値概念を確固としたものにすることはできず、

また他方の世界観も不立に終わり、存在観を形成するに至ることができない。

 従って、自律内省は当然、失敗に終わり、自律するに至らない。

 

 

認識力の不全状態は意志を根本情態性へともたらす。

官能と感覚の判断は伸張・縮退で示される。意志はここで固縮してしまう。     

 

 分立本能の発動路と誘導路が閉じられ、その身体は「脱力状態」となる。

分立主体側では本能身体が主観に所有されて機能している。

 

 

 

 

 

 

2) 発病機序

 

       幼児共生精神病 (小児個体神経症)

 

脱力睡眠発作では発作契機は、自律期の主体的、あるいは個体的内省にあるが、

幼児共生精神病は自律(社会的)ではなく、自立(身体的)を契機として発症する疾病である。

 

過剰本能状態で且つ認識力が不全となった先主体性である病児は、

昼間の覚醒時に主症状として扶養者との共生症状を持つ

 

 

 先に幼児共生精神病の2つ目の症状として挙げた、

睡眠時に起きる脱力睡眠発作は、主体性の崩壊現象である。

またこの崩壊の二次的現象である幻覚などに患者は襲われる。

睡眠時に脱力発作と睡眠発作が起きるといえば不思議であるが、

身体が眠っていても主観や我観が活動しているレム睡眠では認識に関す

る脳は起きているので、こういうことが起きるのである。

 

睡眠時には昼間に整理ができなかった意志や認識についての整理が行われる。

扶養者と共生している幼児共生精神病の幼児では、覚醒しているときには経験したことの

なかった主体的な自由に開かれた歓びもつかの間、自由を誘導できる認識力が追いつかず、

クラッシュしてしまう。これが病児に於いて睡眠時に引き起こされる脱力睡眠発作である。

 

 

 

 

脱力睡眠発作成人個体神経症)

 

成人するということはその人間の価値を決定する生きる方針を定めることで

ある。成人年齢に達していても本態を仮設主体性(先主体性)とする主体は、

ここで必然的な挫折に至ることになる。

 

 仮設自由損傷症候群全体は4つの本能の調和価値をその「分立本能」に抱い

ている。「分立主体」の方は“所有・支配・権力・翻弄“の自己主体性理念か、

あるいは“感謝・愛・善・美“の精神主体性理念のどちらかに至るが、しかし

主観、及び我観の脆弱(認識力の不全)はこれらの価値概念を確固としたものに

することはできず、また他方の世界観も不立に終わり、存在観を形成するに至ることができない。

 

 従って、自律内省は失敗に終わり、自律するに至り得ない。

 

 

認識力の不全状態は意志を根本情態性へともたらし、意志はここで固縮してしまう。     

 

 分立本能(分立主体側では本能身体が主観に所有されて機能している)の

発動路と誘導路が閉じられ、その身体は脱力状態となる。

この状態は後に述べるの睡眠状態とともに個体性の崩壊を示す。

この崩壊は分立本能を持つ人間と準主体性を持つ動物に共通するが、

分立主体を立てている人間の場合は、主体、本能、あるいはこの両者の同時の、

3つの契機によって崩壊に至る。

主体性と個体性のそれぞれの崩壊は、主観があるいは我観が瓦解するだけの相違

で、脱力睡眠発作自体は本能身体が引き起こす。

 

 

仮設自由損傷症候群に於いては「幻覚」、「妄想」が生じる「通常崩壊」に留まる。

脱力は認識力不全の状態像である。

幻覚、妄想は認識力が我観あるいは主観としての統合を喪った状態で生じる。

つまり、「観念」が自由気ままに生じて妄想となり、また「識覚」としての

視覚や聴覚や触覚が幻覚を見、聴き、感じる。

 

 

 身体の脱力状態はついで身体休息度の大きいレム睡眠に自然に誘(いざな)

われる。ここで統覚機能は脱力時よりも更に深い麻痺状態にはいったことを示す。

分立主体は崩壊状態にあり、睡眠にはいると主体の崩壊は「小児神経症」の

睡眠時崩壊に相を転移する。

 

 

 睡眠発作は数秒から二〜三分、長引くときは十〜二十分続くこともある。

睡眠発作に移行せず、脱力発作だけに留まることもある。

失禁(尿をもらす)、腰を抜かすなどは部分脱力である。

 

 

 

 発作は一般に、主体的、及び個体的自由が解放されたときと、根本情態性が

発動されたときに起こる。発作の起こる契機となる代表的なものに、

昼間睡魔、入眠、覚醒、笑い、興奮、驚き、光刺激などがある。

これらは「誘発契機」と呼ばれる。

 

忘れてならないのは、上述のことがらは自律期の内省が「発作契機」だということである。

文脈が許せば、誘発契機を発作契機と呼ぶこともあるが、

自律内省が発作をもたらし、発作の本体は過剰本能状態による認識力の未発達である。

 

 

 「昼間睡魔」と呼ぶ誘発契機では、目覚めているときに、仕事中であっても

[身体の休息―認識力が活動するレム期]に、脱力なしで一気に睡眠に入るよ

うな発作が起こる。これは脱力発作が短く睡眠発作が単独に現象するよう

にみえる発作である。発作が周期毎に規則正しく現れる患者もある。

 

クラッシュして脱力睡眠発作を起こし、その睡眠発作に続いてそのまま通常の眠りにはいる。

 

 

「覚醒」が誘発契機となるときは、「嗜眠症」を形成する。嗜眠症はまた

「過眠症」とも言われ、多いときには本来の睡眠をはさんで、一日に二十時間以上

も眠り続ける。患者は”とにかく眠くてねむくて”と訴えることになる。

覚醒刺激によって睡眠にはいった患者は、睡眠から目覚めると再び覚醒刺激

に襲われ、このサイクルを繰り返すことになるからである。

 嗜眠症の形成は、成人神経症(自由損傷症候群)と摂理神経症(てんかん)

の主観型の深崩壊でも起こる。その鑑別は、入眠時レム睡眠があれば成人

個体神経症である。

 

 

 

 


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