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 私は、ハチに刺されて九死に一生を得た経験がある。といえば、話は大袈裟になるが、目覚めたときには、病院の処置室のベッドに酸素吸入器を顔に付けられて寝かされていた。という体験をした人はそんなにはいないだろう。

 2〜3年前の秋頃、夕方、自宅の近所を仕事で回っていると、蜂の巣を業者にとってもらったばかりの家の前で、近くの人たちと世間話をしていた所に、突然8センチ位のスズメバチが飛んできて、頭を刺されてしまった。

 かなり前にも刺されたことがあったが、前ほど痛くなかったので、ひょっとしたら危ないかもしれないと思って、うちの母に「医者に行く」といって出かけた。

 一件目の病院の医者は昼から留守で、二件目の病院に行く途中で気持ちが悪くなって、やっとの想いで病院の玄関先にたどり着いた。こんなに具合が悪くなるなら母と一緒に来ればよかった。と思った。

 医者が注射をして「具合はどうですか」いわれた。あまり調子はよくなかったが、休んでれば良くなると思った。

 治療費を払うまでの間、待合室で本を見てたら、目は開いているのにだんだんと物が見えなくなった。それでも、注射をした反動がきて具合が悪いのだ、落ち着けば良くなると思っていた。そうこうするうちに、支払い窓口で、呼ぶ声が聞こえたので、窓口で支払いをしようとしたら、バタッと倒れたらしい、何人か看護婦が出てきて、起こそうとしたようだ。車イスに載せられたところまでは何となく記憶があった。

 だが気を失ったらしく、それから看護婦の「血圧が上がらない」と叫ぶ声で目が覚めた。だが、まだ目は開かなかった。何も考えることが出来ず真っ暗だった。「そろそろ目を覚まして見せないといけないかな」と思って、何回か深呼吸をしながら、目を開けると、この小さな病院にこんなに看護婦がいたのか、というほど何人も私の周りで仕事をしていた。

 私が意識不明の状態を脱すると、あれほどいた看護婦が三人しかいなくなった。その内の一人が家に電話をかけて母と妹が来た。それと妹の亭主が私の車を自宅に届けたそうだ。二人ともそんなに驚かなかった。点滴の管が腕にくっついて、酸素を吸わされていたにも関わらずだ。

 私は医者に「今日中に家へ帰る」と言ったら「点滴がなくなれば、帰ってもいいでしょう」とその医者は言ったので、時間は掛かったものの何とかその日のうちに家に帰ることが出来た。


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