この男、フライを始めてまだ一年というのにもかかわらず、とにかくよく魚を釣るわ釣るわ。 何かとてつもない伝説を作るのではないかという、強い予感がするほどだ。 私が確認しただけでも、かなりの数の魚を掛けているし、釣り上げている。 しかも魚のサイズは皆大きい。 とにかくこの男には、大きさ、数、共に圧倒されっぱなしである。
最近は、毛針を大きくして(#6ぐらいのドライフライで)大物を仕留めている。 ついこのあいだは、44cm、1.1kgのニジマスを釣ったといって、見せびらかしにやって来た。永田君は44cmといっていたが、まな板の上でメジャーをあてた写真を見ると、どう見ても46cm以下には見えない。 それに、腹を開いて重さを量ったので、実際はもっと重かったはずだ。
ちなみに胃袋の中には、10cmくらいのネズミが入っていたそうだ。 そのせいで、家族は誰も食べようとしないのだという。
かくいう私はどうかというと、先日、永田君の目の前でネットに入れる寸前で魚を釣り落とし、いささかムッとしていた。永田君が「今のは、でっけえなぁ。40cmくらいあったぜ」と言っていたが、私は「ちいさいちいさい、35cmくらいじゃないの」(実は、40cmは優にあった)と言って永田君を牽制した。
昨年は、二人ともどういうわけか、せっかく大きな魚を掛けても逃がしてしまうことが多かった。 なんとなくフックサイズを大きくし、毛針も大きく巻いたものを使いはじめたら、取り逃がすことが少なくなった。
ある日私が釣った36cmのニジマスを見たら、くちびるのわきの柔らかい部分が裂けかかって、今にも針が外れそうになっていた。 その後釣った40cmのニジマスの口を見ると、左側くちびるの、ちょうつがい部分が変形していたのででよく見ると、一度裂けた傷が治ったような跡がはっきりと見えた。 すかさず永田君は「俺の逃がした魚だ」と言ったが、逃がしている数は圧倒的に私の方が多かったから、それには取り合わなかった。
それ以後、二人ともその釣り場では#12以下の毛針は使わなくなった。
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