Fallen 5



「・・・・・・あ・・!」
度重なる放出にぐったりとシーツに身を沈める俺の身体を、屈強な腕がぐいと掴み上げる。
「・・・・や・・・やめ・・・!」
悲鳴のように訴えた。いったばかりの過敏な身体を、濡れそぼる熱い竿でまた貫かれる。
「・・・や・・・!!そんっ・・・・!あ・・・!!」
頭の中が白く霞んでいく。力なく空いた口の端から、とろりと唾液が垂れ落ちた。
カカシが遠慮なく腰を動かす。全身性感帯のようになっている俺の身体を、容赦なく突き上げる。
「!!ああ・・・っ!は・・・・あ・・・・!もう・・・も・・や・・・あ・・!」
先走りの汁が竿を伝い、俺の秘部をぐしゃぐしゃに濡らす。一層滑らかになった秘部に、カカシが、いい、と
興奮に掠れた声で喘ぐ。なす術も無く揺さぶられながら、嫌だ、と狂ったように首を振った。
「・・・っせんせ、苦しいの?もう一遍、いきたい?いかせて欲しい?」
乱れた息の合間から、カカシが矢継ぎ早に尋ねる。ぶんぶんと必死で首を横に振った。
「意地っ張り」
カカシが捻り込むように強く腰を突く。出すものの無い先端から、また透明な液体が滴り落ちた。
「!いや・・だ・・も・・もうやめ・・・あ・・・!ああ!!」
生理的な涙がポロポロと眼から零れ落ちる。馬鹿野郎。何が意地っぱりだ。いけるもんなら、とっくにいってる。
誰のせいだと思ってるんだ。散々嬲りやがって。このエロ野郎が。
泣きながら睨み付ける俺に、銀色の男が桃色に上気した顔でニッと笑う。
「ねぇ、いかせて欲しいんでしょ?いいよ。もう一回、最後までいかせてあげる。・・・だからね、」
涙に濡れる睫毛に楽しげに口付け、子供のような無邪気な口調で囁く。

「もう一度「助けて」って、言って?」

「・・・え・・・?」
涙に霞む視界でカカシを見上げた。カカシがニコニコと頬を染めて笑う。
「だって、俺、ほんとにあの時イっちゃいそうなくらい気持ち良かったもん。もう一遍、言ってよ。
今の姿のイルカ先生で、今の先生の声で、もう一度聞かせて?ね?」
甘い声で強請りながら、ついでのように乳首を舐める。が、今の俺にはその刺激すら辛い。快楽の涙がまた
眼から零れ落ちた。必死で回らぬ舌を動かした。
「・・・や・・です・・・も、むり・・で・・」
「・・・・嫌?・・・あんた、ほんとにケチだねー。」
カカシが呆れたように嘆息する。うるさい。ケチじゃないって言ってるだろうが。もう、これ以上いくのが
無理だっつってんだよ。
「・・・チじゃない・・・」
「え?何?」
「・・・おれ・・はケチじゃな・・・」
「じゃ言って。」
カカシがピンと先端を爪で弾く。ひっ、と声にならない悲鳴をあげた。
「ね・・・言って?下んない意地張らないで。ちゃんと、気持ちよくしてあげるから。」
頬に張り付く黒髪を指で優しく除けながら、カカシが艶かしく囁く。背筋がぞくりと震えた。
「・・・・あ・・・・」
「言って。」
冷徹な命令を下すように、異形の瞳の男が俺を見下ろして言う。今はもう禁忌となった黒い紋章が
深紅の瞳に妖しく蠢く。その蟲惑的な光景に、身体ごと引き擦り込まれそうになった。
「・・・カカシさ・・・・」
吸い寄せられるように、カカシの名を呼んだ。その途端、カカシが焦らすように腰を軽く揺さぶる。
思わず、ひ、と掠れた悲鳴をあげた。カカシの先端が、俺のポイントを引っ掻くように刺激していく。
涙がまた眼の奥から湧き上がった。
「!!・・・・ひ・・・っ・・・・あ・・・っ・・・ああ・・っ!」
「言って。そしたらココもよくしてあげる。だから、言って。」
カカシが指で俺の竿の先端を軽く嬲りながら言う。
「・・・やめ・・・あ・・あっ!や・・・っ・・だ・・めで・・・あ!」
強すぎる快楽が、瞼の裏を血の色に染める。目尻に溜まった涙が、またボロボロと零れだした。
自分の姿に、頭がおかしくなりそうだった。屈強な男に貫かれながら、淫乱な女のように快楽に啜り
泣いている。陵辱される女のように、助けを呼べと責められている。
その陵辱している、男自身に。

あまりの屈辱に、涙が止まらなくなった。
なんて酷い奴だろう。助けてやると言いながら、自ら俺を切り裂いていく。俺をここまで堕としていく。
こんな酷い奴、見たことがない。

カカシが俺の腰を掴んで、快感の源を掠めるように揺さぶり続ける。
断続的に与えられる刺激に、思考が滅茶苦茶に崩されていった。
「!や・・・や・・・・あ・・もう・・・ああ・・・っ!!」
「言って」
淫らな熱に爛れる脳に、カカシの声が冷たい水のように鮮烈に響く。
その瞬間、頭の中が空っぽになった。
乞われるままに震える指で手を伸ばし、カカシの頬を両手で引き寄せた。その引き締まった頬に触れた瞬間、
自分のプライドが音を立てて砕けていくのが判った。でも、もうそれを悔やむ理性は残されていなかった。
頼りなく震える唇で、男の薄い唇にキスをする。涙に濡れた眼で見上げ、掠れた声で囁いた。


「・・・・たすけて・・・・」


その途端、身体をぐいとうつ伏せに反転させられた。
そのまま両腕を引き上げられ、カカシの膝の上に突き落とされる。自身の重みでカカシを深々と銜え込まされ、
思わず悲鳴を上げた。
「・・・・・!!や・・・・・・・!!」
「動くな・・!」
カカシが一声叫んで俺の両腕をがっちりと抑える。
「・・・ごめん、おれ、いま動かれると駄目。ね、動かないで。」
唇から苦しげに熱い息を吐きながら言う。
「・・・・いま、ちょっと・・・ほんといきそうで・・・すっごくやばかった・・・・」
何とか波をやり過ごしたらしいカカシが、それでもまだ声を震わせて話す。
「・・・・あんた、ほんと意地悪だよね。これ以上、俺にみっともない真似させないでよ。」
恨めしげな口調で、嫌がらせのように俺の耳を強く噛む。
「・・・・なっ・・・・」
あまりの言い様に、首を捻ってカカシの顔を振り返った。何だそれ。何でこの状態で、そんな事がいえるんだ。
俺にこんなみっともない真似させといて。どっちが意地悪だ。絶対お前だろうが。この極悪エロ上忍。

涙でぐしょぐしょの顔で睨む俺に、カカシが、ああ、と今更気づいたような声を出す。
「ごめん。辛いよね。待っててね。」
にっこりと眼を細めて笑い、繋がったまま俺の背中を緩やかに倒す。俺を獣のように四つん這いにさせ、
ずるりと水音を立てて竿を動かす。一瞬収まっていた身体に、また容易く火がつくのが判った。
堪らず自身に手を伸ばすと、カカシがその手を上からぎゅっと抑えた。
「だめ。ぜんぶ俺がする。」
掠れた声で囁き、いきなり激しく腰を突き始める。同時に大きな手で俺のモノを激しく扱き出す。
「・・・・・・あ・・・・あ・・・ああああ・・・!!!」
シーツに顔を埋めて喘いだ。カカシの動きが一層激しくなる。貫かれる快感と、掌で嬲られる快感に
背筋がピンと張り詰めた。ああ、と一際大きな声をあげた瞬間、カカシが強く俺の最奥を突いた。
「・・・・・・・・・・・・!!!」
乳白色の液体が玉と散ってカカシの白い手を汚す。
「・・・っ・・、せんせといっしょにいくの・・・すごく・・・きもちいい・・・」
吐息のように囁くカカシの声を聞きながら、俺はゆっくりと意識を手放した。




「なんでいないの。」
以前と全く同じ台詞でカカシが口を尖らせる。
「だから、仕事だって言ってるじゃないですか。」
溜息を吐いて答えた。多分、次に続く言葉も全く同じだ。
「でも、今日は俺がいるって分かってたデショ?」
ほらな。
嬉しくもない予想的中に、益々肩が落ちる。が、問題はここからだ。カカシが一層不満げに唇をへの字に
ひん曲げる。
やば。来るぞ。
ギクリと身体を強張らせて身構えた。銀髪の上忍が憤懣やるかたない、といった風情でずいと詰め寄る。

「イルカ先生、あんたほんとに俺の事好きなの?ほんとに、恋人の自覚あんの?」


よりを戻してすぐ、俺は自分が大きな勘違いをしていたのに気付いた。
つまり、カカシはあれでも遠慮していたらしいのだ。
あくまでも「上忍」として、自分を抑えて振舞っていたらしいのだ。
残業の事だってそうだ。本当はアカデミーから引き摺ってでも連れ帰りたいのを、「中忍の仕事を邪魔しちゃ
まずい」と、「上忍」の判断でようやく抑えてたらしいのだ。

そんなカカシに言わせれば、以前の俺との暮らしは我慢の連続だったらしい。
(自分のした事を棚に上げて)あまりに過去の自分の不憫さを嘆くので、ある日「俺は別に、カカシさんに
冷たくしてたつもりはありません。」と憮然とカカシに言い返した。
その途端、間髪入れず「嘘だよ」と反論された。
「何言っても、「書類に不備があって申し訳ありません」みたいな顔して謝るだけで。今までの相手と
違う、って思い切って言ってみても、全然同じ事してくれないし。・・・だいたい、人を待たしといて
「寂しかったですか」の一言も無いし。全然冷たいでしょが。」
「はぁ?寂しい?」
驚いて尋ねた。カカシがムッと唇を尖らせる。
「当たり前でしょ。寂しいよ。寂しいに決まってるでしょうが。ずっと一人でアンタを待ってたんだよ?
なのにアンタときたら、「集合に遅れてすみません」みたいな感じで謝ったかと思うと、さっさと飯作りに
行っちゃうし。まるきり残業扱いでしょうが。冷たくしたつもりはない?嘘だよ。無茶苦茶冷たいよ。」
整った顔をふんと逸らして、恨みがましい口調で言う。

「ごめんなさいのキス一つ、してくれなかったくせに。」


全く、あんときは本気で眩暈が起きた。
がっくりと机に両手を付いて、目の前でふんぞり返る銀髪の男を眺めた。
心底、この男を教育した教師の顔を見たいと思った。
こんな甘ったれが里を代表する上忍なんて、代々の火影様に申し訳なくて火影岩の前で顔が上げられない。
特に、里の為に今の俺達と変わらない年代で命を落とされた四代目など、この有様をご覧になったら、
情けなさに涙を流される事だろう。
一体、どこのどいつが、この男をこんな甘ったれに育てたんだ。

まあとにかく、そんな訳で、もう「上忍としての配慮」をしなくていい、と知ったカカシの独占欲は
物凄かった。
仕事にも仕事仲間にも、果ては俺の生徒達にまで嫉妬しまくりだ。
その上、一度「別れましょう」と言われたのが相当こたえたらしく、事あるごとに思い出してはネチネチと
嫌味を言う。
カカシに言わせれば、これくらいしつこくアピールして当然なのだそうだ。
そうでないと、「未だにロクな口説き文句も言ってくれない」ような俺が、またどんな冷たい仕打ちをするか
判ったもんじゃない、と言うのだ。

別に俺だって、努力してないわけじゃないのだ。
この間、例によって帰宅の遅れた俺に、「アンタが忍なんかじゃなきゃいいのに」とカカシがむくれた。
その時、頑張って言ってみたのだ。
「俺もね、カカシさんが忍じゃなければいいと思ってますよ」と。
俺としては、凄腕の上忍なんかじゃなくてもカカシさんが好きですよ、と暗に伝えたつもりだった。
が、カカシは怪訝な顔をしただけだった。
そして、「あんたはともかく、俺が忍辞めてどうするの。そんな事したらこの里はどうなるの。」
と(カカシにとっては)至極当然の事を真顔で聞き返されてしまった。
後半はいいとしても、「あんたはともかく」部分を全く悪いと思って無いあたりが恐れ入る。
俺の精一杯の口説き文句は、天才上忍の鉄のプライドの前に、あっさりと砕け散ってしまったのだ。

まぁ、以前より改善された点もある。
カカシとよりが戻った俺に、周囲の反応が異様なくらい暖かいのだ。
原因は例の宴会だ。
「自分の女」を堂々と宴会場から連れ去ったカカシの姿は、一大センセーションだったのだ。
にもかかわらず、カカシは俺とも、よりを戻した。
はっきりとは言ってないが、受付で誰憚る事無く、鍵をくれだの、今日は何時までかかるのだの聞いて
くるようになったカカシ(これも今まで自分を抑えてたのだと、偉そうに自慢していた)に、俺達のよりが
戻ったのは誰の目にも明白だった。
それによって、うみのイルカは「上忍に遊ばれた可哀想な中忍」から、「遊ばれた上に、堂々と二股を
かけられてる可哀想な中忍」にめでたくランクアップしたのだった。

今や俺のあだ名は「木の葉一の健気中忍」だ。
注がれる同情の嵐の中でも、特に女達の同情ぶりは凄い。女というのは不実な男に厳しい生き物なんだな、と
つくづく思った。中には、受付に来る度俺への「励ましのお菓子」を持ってくるようになったくの一もいた。
しかし、それがまたカカシのいらぬ嫉妬をかう事になり、夜散々泣かされる羽目になった。
あまりに周囲に応援されるのも考え物だと、しみじみ思う。

女の同情、と言えば、例の俺の同僚もその恩恵を受けた一人だ。
次の日、あれからどうなった、と同僚に恐る恐る聞いた。
同僚の説明では、俺が連れ去れた後、名門女に猛烈に同情されたらしい。
女は不実な男に厳しいが、不実な女にはもっと厳しいものらしい。あんな尻軽女、気にする事は無い、と
延々と励まされ続けたと言う。
その上、今回の事で上官に嫌がらせされたら、あたしにすぐ言って、と力強く請合ってくれたのだと言う。
話してみると結構面白い女でさ、また飲みに行く約束をしたよ、と同僚がケロリと言う。
そういえばこの男は昔から、ああいう怒りっぽい相手を軽くいなすのが巧かった。
だからひょっとすると、その女と本当にそういう事になるかもしれないな、と何となく思った。

そんな健気中忍な日々を送る俺が、今一番恐れてる事。
それは七班の解散だ。
俺は今、木の葉の誰よりも七班の永続を願ってる男だと、心の底から断言出来る。

色々と話をするようになって分かったのだ。
カカシはどうも、カカシなりに七班の子供達を非常に可愛いと思っているらしいのだ。
猫探しとか、草むしりとか、心洗われちゃうよねぇ、と嬉しそうに言うし、あいつら三人、ちょっと複雑な
術使うと眼ぇ丸くするんだよね、と楽しそうに眼を細めたりする。
イルカ先生が遅くなりそうだなーと思うと、わざと居残りさせて修行させる事もあるんだよ、と言われた
事もある。
わざと?と聞き返す俺に、カカシがうん、とニコニコ笑っていう。
「だって寂しいでしょ?あいつらといれば、まぁ、中々楽しいしね。」

その中々楽しい七班が解散したらどうなるか。
考えるだけで怖い。いや。分かってはいるんだ。ナルトだってサスケだってサクラだって、何時までも
下忍じゃない。いつかは、それぞれ独り立ちしていく。特にサスケなんて、あれだけの実力の持ち主だ。
いつ独立したって、おかしくない。

が、出来ればその日が遠い事を切実に願う。
カカシは多分、自分で思ってるよりずっと寂しがりやな男だ。
今は俺以外に、子供達という対象があるからいい。が、それが無くなった時の事を考えると、本気で怖い。
今の独占欲に加えて、子供達がいなくなった寂しさまでぶつけられると思うと、戦々恐々だ。
ほんと、その時が来たら、身体もつんだろうか俺。


俺の心痛も知らず、カカシがぶちぶちと文句を言い続ける。
「冷たいよねぇ。まじで愛を疑うね。先生、実は俺に対する愛なんて無いでしょ。」
恨めしげに人を非難し、くるりと後ろを向いて座り込む。大袈裟な溜息をつき、広い背中をわざとらしく
深々と丸める。
どうしたもんかなぁ、と途方にくれて拗ねまくる銀髪の上忍を眺めた。
と、いきなり丸まった背中がぼそりと声を発した。

「・・・・・こんな寂しかった俺に、なんかする事あるんじゃないの?」


・・・あれか。

がっくりと床に両手を付いて思った。
あれか。あれやって欲しいのか。

はたけカカシ大推奨、『ごめんなさいのキス』か。


みるみる顔が赤くなっていく。
くそう。行為そのものが既に恥ずかしい(つか寒い)のに、更にこんな恥ずかしいネーミングしやがって。
そういう事するから、俺が身構えちゃうんじゃないか。
ガチガチに、緊張しちゃうんじゃないか。

カカシが素知らぬ振りでイチャパラをポケットから取り出す。
熱心に読み耽る真似をしながら、背中は期待のオーラ出しまくりだ。益々顔が赤くなった。
ほんと、この件に関しちゃプライド捨てまくりだよな、この人。
滅茶苦茶、俺に懐柔されたがってるじゃないか。

が、いつまでも赤面してる訳にはいかない。
まだ二人とも飯も食ってない。色々やる事が残ってる。
意を決して『ごめんなさいのキス』をするべく顔を上げた。バクバクと脈打つ心臓を抑えながら、ゆっくりと
カカシに指を伸ばす。ああ。俺も相当プライド捨ててるよな。
『力づくで物事を解決するな。ちゃんと理路整然と、理論で相手を説得しろ。』
そう日夜生徒達に教えてる俺が、キスで相手を丸め込めこもうなんて。堕落しまくりじゃないか。
俺はもう、カカシに堕落されまくりだ。






銀色の男にそそのかされる。
この身を堕とせと、そそのかされる。
あなたの全てを差し出して、誘惑しろとそそのかされる。
あなたの全てを投げ打って、陥落させろとそそのかされる。



銀色の男がそそのかす。
この身に堕ちろと、そそのかす。
何もかもを投げ打って、あなたを誘惑するからと。
あなたの全てを奪い去り、あなたを陥落させるからと。






どうか私を、落として欲しい。



私を恋に落として欲しい。
あなたの恋に、落として欲しい。










END
NARUTOのコーナーに戻る