Full moon 3



赤い舌が俺の胸の突起をぬらぬらと舐る。その舌の動きに、軽く眉を顰めた。
何かが、違う。
以前だって、こうされた事はある。けれど、その時はこんな探るような動きじゃなかった。
まるで何かを引き当てようとするような、こんな蠢き方じゃなかった。
つん、と先端を突付くように口の中で嬲られる。むず痒いような妙な感覚に、思わず身を捩った。
「・・・あ、あの・・・っ」
「気持ちいい?」
カカシの言葉に、それが快感だと気付いた。カッと全身が熱くなった。
そのまま、遊んでるように舌の先で乳首を転がされる。その度に、じんじんと淫靡な快感が湧いてくる。
「・・・・ふ・・・」
「・・・ここ、硬くなって来たよ。自分で分かる・・・?」
硬く尖った乳首をチュッと音が出るほど吸い上げて、カカシが笑う。恥ずかしさで頭にカーっと血が上った。
「そ、そんな事言わなくていい・・・・っ」
「だって、嬉しいじゃない。イルカ先生が淫乱女みたいに胸で感じてるなんて。」
平然とそう言い放って、空いた片手で反対の乳首を思わせぶりに嬲る。そこもたちまち尖っていく。
羞恥心で死ねるとしたら、今死んでるな、と思った。あまりの恥ずかしさに、目眩がした。
「わー顔、真っ赤。」
可愛くて堪らない、というようにカカシが唇にキスを落とす。散々乳首を嬲った舌を、今度は俺の口腔に
滑り込ませてくる。深く差し込まれる舌に、唾液がトロリと口の端から垂れた。
まるで肉食獣の食事だと思った。柔らかい舌。血の色を剥き出しにした、赤い肉。
それを貪る、銀色の獣。

濃厚な口付けの合間に、カカシが緩く俺の竿の根元を弄る。
その度に、息が乱れた。
「・・・やめて下さい・・・っ」
「何で?」
「だっ・・・だからっ、そんな余計な真似しないで下さい!」
「・・・・余計な真似、ねー」
カカシがニッと質の悪い笑みを浮かべる。
「じゃ、メインにしちゃおっか。」
そう言ったかと思うと、しなやかな白い身体を下にずらす。そして、ぱくりと俺の竿を口に含んだ。

「!!!!!」
仰天したなんてもんじゃなかった。
カカシが、写輪眼のカカシが俺のモノを咥えてる。そう思うとショックのあまり気絶しそうだった。
「ちょっ!ちょっと!!やめ・・・・!あ!」
薄い舌が先端の切れ目をぐり、とこじ開ける。そのまま強く吸い上げる。
根元に溜まっていた快楽を一気に先端まで引き釣り上げられ、思わず仰け反った。
「・・・・あ!!やめ・・・っ!!」
必死で首を振った。カカシの口の中に出す。そんな事出来るか。仮にも上忍だぞ。俺の上官だぞ。
一介の中忍に奉仕させるような真似、させられる訳がない。
「は、離して下さい!!・・・・っ離せ!離して下さい・・・・っ!!」
異常に切羽詰まった声に、カカシがやっと口から竿を離す。
「・・・・どしたの?気持ち良くない?そんなコト無いよね?ちゃんと立ってるし。」
不審そうに尋ねながら、またペロリと先端を舐める。ひっ、と悲鳴をあげた。
「も、もう止めて下さい・・・!!あ、あなたは上忍なんですから・・・・!!」
「・・・・だから?」
「上官が部下にそんな事しなくていいんですっ・・・・・!!」

しん、と部屋が静まりかえった。
「・・・・・ふーん。そういうコト考えてるんだー」
カカシがゆっくりと頷く。
「・・・・じゃ、頑張って。俺も頑張るから。」
「え?」
何を?と俺が問い掛ける前に、またカカシが俺のモノを口に含む。今度は口腔全体でじゅるじゅると
竿を吸い上げる。激しい快感に目が眩んだ。
「・・・・あ・・!や・・・・やめ・・・・!!だめです・・・・・っ!!」
半身を起こそうとした所に、すかさず斜め上から圧し掛かられた。強靭な筋肉で覆われた身体全体で
押さえつけられ、身動きが取れない。その間も、熱い舌が張詰めた竿を巧みに舐めまわしていく。
「・・・・く・・っ・・」
「上官の口に、出していいの・・・・?」
カカシがくぐもった声で意地悪く尋ねてくる。何て奴だ。歯を食いしばって首を振った。
「いいからもう・・・・・っ!離し・・・・!!」
長い指が、重く固まる根元を揉み解す。強烈な射精感が全身を走った。
「・・・!・・・でる・・・っ!離せ・・・・!でる・・っ!!」
悲鳴のように訴えた。
「カカシさん・・・っ!お願いだから・・・っ!」
切羽詰って懇願すれば、カカシが一層卑猥に舌を蠢かす。そして唐突に、強い力で吸い上げる。
「・・・・・・ぁあ!!!」
ふっと身体が軽くなった。酩酊するような快感と共に、カカシの口内にドクドクと俺の液が注がれていく。
呆然と、その快楽を受け止めた。

カカシが白濁した液体をタオルにベッと吐き出す。
ニヤリと笑いながら手の甲で赤い唇を拭い、真紅と濃紺の瞳を陶然と細める。
背筋に震えが走るほど、淫らな光景だった。
「・・・・・カカシさ・・・・」
「少し、飲んじゃった。」
銀髪の男がニコリと笑って顔を近づける。
「全部飲んでも、いいんだけどね・・・・そしたら先生にキスしにくいデショ?」
そう言って、嬉しそうに眼を細める。
「ね、もう手遅れだね。」
「・・・・手遅れ・・・?」
不審に思って聞き返した。カカシの眉がひょいと上がる。
「もうあんた、あんなふざけたコト言えないよ?俺あんたのもん、飲んだんだから。あんたは
俺の口に出したんだから。上官に出来るコトじゃないよね?部下がするコトじゃないよね?」
「・・・・・・・・・・・。」
「もう、上官も部下もないよね。あんなコト、ただで出来るのは恋人同士しかないよね?」
俺の耳朶を軽く噛んで、言い聞かせるようにゆっくり囁く。
「ねぇ・・・・言ったデショ?俺はあんたと、セックスがしたいんだって・・・」

突然、全身に電流を流されたような衝撃が走った。
初めて、はっきりと理解した。俺が何を承諾してしまったのか。その、本当の意味を。

この男は、俺とセックスがしたいのだ。

今までのカカシとの事は、セックスじゃなかった。
俺にとって、あれはただの暴力だった。そこら中にありふれている、上官の暴力だった。
気晴らしの為だけに部下を殴る、横暴な上官の暴力。それが、性という形を取っていただけだった。
だから、何とも思わずに済んだのだ。何も考えずに、この男の欲望を受け入れる事が出来たのだ。
さっきだって、その延長のつもりだった。
カカシの中に溜まる性欲を、解消してやろうくらいの心積もりだったのだ。
でも、違った。
この男は、俺を抱きたいのだ。俺と、セックスがしたいのだ。
俺はそれを、承諾してしまったのだ。

今更ながら狼狽した。
「お・・・おれは・・・」
「大好き。」
カカシがうっとりと俺の首筋を吸う。
「あんたのいいトコ、全部触ってあげる。死ぬほど、よがらせてあげる。いっぱい、やろうね?」
絡みつくように囁かれる声に、本気で倒れそうになった。
俺はもう、嫌と言うほど学習した。この男は、やると言ったら本当にやるのだ。
暖かい風のような、柔らかな口調。その裏には、鋼の意志が潜んでいるのだ。


「い・・・あぁ・・・・っ・・・もう・・っあぁっ!!」
「・・・またイッちゃった?」
薄紅色に上気する頬で、銀髪の男が嬉しそうに笑う。
後ろから羽交い絞めに抱きしめたまま、くい、と摘み上げるように乳首を揉む。
「や・・・・!」
感極まった女が漏らすような悲鳴を上げながら、背中を仰け反らせた。
「も・・・・ゆび・・・・指を抜いてください・・・!」
「えー、だって先生のイク声すっごくいいんだもん。もっと聞かせてよ。」
言い終ると同時に、長い指でぐりぐりと前立腺を擦られる。また頭の中が真っ白になった。
もう出まい、と思ってた竿から薄白色の汁がじわりと染み出てくる。
「や・・・やめ・・・もう・・・や・・・!」
「わ、俺また勃ってきちゃった。先生って、ほんと悪い人だなー。いけない薬みたい。」
自分勝手な理屈で人を悪者にして、俺を仰向けにさせる。そしてまた俺の中に自分を捻じ込む。
的確にポイントを突いてくる動きに、あ、と望んでもいない喘ぎ声が漏れた。
「・・・っカカシさん・・・っ!」
カカシを睨みながら、怒鳴るように訴えた。カカシが嬉しそうに顔を近づける。
「なあに?」
ぶん殴りたくなった。て言うか、もっと身体に力が残っていたら絶対ぶん殴ってる。
何が「なあに」だこの変態。何回俺をいかせれば気が済むんだ。
何であんたが一回イク間に、二回も三回も出さなきゃいけないんだ。本気でやり殺す気か。

「もう無理です・・・っ」
力なく掠れた声で訴えると、カカシが初めて困った顔をした。
「ね、もう一回だけ付き合って。お願い。」
「だめです・・・!もう頭がおかしくなりそうです・・・!!」
言った途端、自分で自分の台詞に涙が零れて来た。ほんとに、これ以上いかされたら頭が狂う。
何でこんなセックスしなきゃならないんだ。この極悪エロ上忍が。
「ごめんね。ほんとに、あと一回だけだから。俺がいったら終わりにするから。」
ごめんね、とか謝りながら結局はやろうとする我侭男に、益々涙が溢れた。
「・・・なんで・・・っそんな・・・・」
「ごめんなさい。泣かないで・・・ねぇ・・・・そんな風に泣かないで」
困った声で俺の身体を抱きしめる。慰めるように髪を撫でる仕草に、ふっと心が緩んだ。
「・・・っカカシさん・・・・」
涙の溜まる睫毛を、長い指で愛しげに拭ってカカシが微笑む。

「抜かずに二本、やりたくなっちゃうから。」

ふざけんな馬鹿野郎。



「もー、ほんっと可愛いかったよねー。」
カカシがニマニマ頬を緩めて俺を覗き込む。
もう殴る気力も無い。昨日まで病床についていたはずの病人に抱えられ、俺はまたヨロヨロと
露天風呂に逆戻りした。(身体中精液と唾液でべたべただったから)
無駄に広い部屋付きの露天風呂は、むかつくことに大の男二人が一緒に入っても全然余裕だった。
ほんと、いったい幾らなんだここの宿代。
カカシが一人浮かれて喋り続ける。
「最後の「頭がおかしくなる」なんて、もーイチャパラ超えてたね。そんで泣きじゃくっちゃって。
俺当分、いや一生アレおかずに出来そう。」
「・・・・・・・。」
こんだけやられまくった後に羞恥プレイが待っていたとは。まさにイチャパラ超えてるな。
「いい加減にして下さい・・・気色悪い・・そんなのおかずに出来るのカカシさん位です。」
この変態上忍が。という言葉を辛うじて飲み込んでそっぽを向いた。
「そりゃそうだよ。他の奴なんかに先生のあんな痴態、絶対見せないし。」
的外れのくせに羞恥心だけはしっかり煽る言葉に、水の中に沈みこみそうになった。
カカシが俺の腕にそっと触れてくる。蕩けるような声で、うっとりと囁く。
「・・・大好き。あんたとやってるとき、すごく幸せだった。俺の名前呼んでくれた時、嬉しくて泣きそうだった。
もう、このまま死んでもいいくらい嬉しかった。」

振り向かなくても、カカシの表情が分かる気がした。
きっと、あの笑顔なんだろう。
あの痛いほど無邪気で、綺麗な笑顔。無防備なまでに一心に見詰める瞳。

俺は知っている。
あれは、勇気ある笑顔なのだ。
その身を守る武器も鎧も投げ捨てて、見て、と胸を開く笑顔なのだ。
相手の刃を恐れずに、自分の心を晒す笑顔なのだ。



信じている。
あなたが刃を持たないことを。
あなたは私を、切り裂いたりはしないと。
この心を全て曝け出して、あなたを信じてる。



その勇気が、俺の心を鷲掴みにするのだ。泣きたくなるほどに、俺を強く捕らえるのだ。
あなたを決して置き去りにはしないと、思わせるのだ
その剥き出しの心を、切り裂くような真似はしない。
全ての武器を投げ打つ勇気を、踏み躙るような真似はしない。
その伸ばされた手を、弾くような真似は決してしない。
そう俺に、思わせるのだ。



・・・・本当に、たちの悪い人だよなあ。
しみじみ嘆息した。
何でこう、この人はそういうところを突いてくるのかなあ。
俺のこの、ちょっと世話焼きっぽいとこを。絶妙だよな。天才だよ。天才。おみそれしました。
流石天才忍者。六歳で中忍になった男。目ん玉グルグル回すだけで千の技を手に入れちゃう男。

「どうしたの?湯あたりしちゃった?大丈夫?」
天才忍者が心配そうに尋ねてくる。
「!平気です!だから触んないで下さいよ!・・・・・月が綺麗だなあって思ってただけです!」
べたべたと俺の額に自分の額を押し付けてくる男に、慌てて話を逸らした。
「・・・・あー、そうだね綺麗だねー。」
今気付いた、というようにカカシが空を見上げた。
「二人で見上げる月っていいね。俺、イルカ先生と一緒に月見れて幸せ。」

・・・・また俺か。
ため息をついて思った。
全部俺だよな。この人の幸せの基準って。一緒に帰れて幸せ。一緒にうどん食えて幸せ。
一緒に一楽行けて幸せ。一緒に味噌買えて幸せ。俺中心に世界が回ってます、って感じだ。
ふふ、と笑いながら、カカシが引き締まった白い頬で無心に月を見上げる。
しなやかに張り詰めた筋肉が、たゆたう水の中で滑らかに動く。その動きに、水面に映る月が粉々に
砕けていく。綺麗な男だと思った。月のような男だと思った。
あの天空に輝く、銀の月のような男だと。



月はきっと、こう言うだろう。地上に向かって、こう言うだろう。
あなたが私を引き寄せるのだと。あなたが私を動かすのだと。
あなたが引き寄せる力のままに、私は廻っているのだと。

けれどそれは違うのだ。
銀の月。夜毎姿を変える月。
あなたのせいで潮は満ち、あなたのせいで潮は引く。
地上を包む青い海。その海は、あなたの力に翻弄される。

あなたが全てを支配する。
私の全てを、支配する。






END
(管理人)満月は月の引力が一番強いらしいです・・・・イルカ先生がんばれ
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