Love Letter



手紙だって書くし、会いにも行く。
だって俺はスコールが好きだから。

俺は何でも、やるときゃやる。
スコールが「手紙を貰うと、嬉しいもんだな」って言ったから(それは俺からじゃなくて、
トラビアに戻ったセルフィからだったけど)、毎日張り切って手紙書いてる。
そんで毎日、「スコールこれ今日の手紙な!!!」って渡してる。
あんま文才ねーから、最後はいつも「好きだ好きだ好きだ!!」の繰り返しに
なっちまってるけど、それでいいんだ。それが俺のほんとに言いたい事だから。
別に質より量って訳じゃねえ。俺の「好きだ」は質だって滅茶苦茶高い。エスタの山より
高けぇんだ。

勿論、会いに行くんだって同じだ。
何があろうと会いに行く。この間Tボードで右足挫いた時も、超っ早ケンケンで飛んでった。
スコールの帰還にはしゃぐ下級生達の人だかりが凄かったんで、屋根によじ登って、
スコール!おかえり!!って、身を乗り出して叫んだ。そしたら屋根から落っこちて、
残った左足まで挫いて腫れた
後でスコールに、「馬鹿」ってすんごく呆れられたけど、そんでもいいんだ。スコールに
一番早く「おかえり」って言えたんだから。
俺はそれで大満足だ。

この状況で、ってびっくりされるかもしれねえが、実は告白したのはスコールからだ。
ある日突然、今にも死にそうな顔で「好きなんだ、ごめん」って言ってきた。
あん時は、ほんとびっくりした。
いきなり告られたのもびっくりだったし、何が「ごめん」なんだかもよく分かんねーし、
もう頭の中は大混乱だった。
その上、それまで「クール」の代名詞みてーに思ってた眼の前の男は、今まで見た事も
ねーくらい辛そうに俯いてる。正直、それが一番効いた。あの表情で、一気に頭ん中が
パニックになった。
あんまりパニックになっちまったんで、思わずスコールの手を取って、
「じゃ、じゃあ、よ、よろしく…!」
って言っちまった。そしたら、スコールに物凄い力で抱きしめられた。

「信じられない」って声が耳元でして、それから息も出来ないくらい深いキスをされた。
何度も何度もキスされた。
ほんと言うと、俺はそれまで「スコールと付き合う」って実感が無かった。
だけど、スコールのキスはあんまり熱すぎた。キスしてるうちに頭ん中がぐらぐらと
沸騰してきて、ものが考えられ無くなった。
立ち尽くす俺を、スコールが難なくベットに押し倒す。何と、俺はそのままスコールと
セックスしてしまった。
初めてのセックス(しかも男と)は、衝撃の連続だった。すげー痛くて、すげー熱かった。
涙がボロボロ出て来た。いやだ、と泣きじゃくる俺を全身で抱きしめながら、スコールが
「信じられない」とうわ言のように繰り返す。逃げ場のない熱に喘ぎながら、必死で
スコールの身体にしがみついた。
殆ど意識不明で抱かれまくった次の日、我に返った俺は「こ、今後はもうちっと、
俺が付いていけそうなやり方で、頼む…」とぼそぼそスコールに頼んだ。
スコールは大笑いしてたけど、俺はあの時の自分のみっともなさが、すっげぇ恥ずかしい。

でも別に、その分を今取り返そうって張り切ってる訳じゃねえ。
俺は直ぐスコールが好きになった。今はもっと大好きだ。別にどっちが先とか関係ねぇ。
それに、最初に告られた時だって、びっくりはしたけど嫌な気持ちにはなんなかった。
だから、いつかはそうなる運命だったんだろう。ただ、スコールが俺より先に告白したって
だけの話だ。
だけど、周りはそうは思わねぇ。

何か、俺ばっかり熱心に見えるらしい。
て言うか、実際その通りだ。俺の好きパワーが強すぎて、今じゃスコールの方はすっかり
引き気味だ。俺が何かしでかす度に、「信じられない」って眼でこっちを見る。
きっと、俺がここまで夢中になるとは思ってなかったんだろう。
そんな状態だから、周りは当然、俺から告白したんだと思ってる。俺の膨大な熱意に、
ガーデン一のクールビューティが根負けしたんだって断定されてる。
ダチの評価だって散々だ。
「お前、よくあんな冷たくされて付き合えるな」とか
「お前のへこたれなさには、まじ頭下がるわ」とか
酷いのになると、
「お前ほんと身の程知らずだなあ」って「伝説のSeeDに纏わりつく厄介者」扱いする
奴までいる。


ぜんっぜん、関係ねー。
俺のあだ名は「熱血ゼル」だ。へこたれないとか、逆に誉め言葉だ。(もう一個サイファ
ーの馬鹿が付けたあだ名があるけど、それには触れねぇ)
俺はスコールが大好きだ。だから、あいつの為なら手紙の百や二百は何でもねぇ。
第一、「冷たくされてる」つっても、スコールは最初からそんな感じの男だ。
愛想良さなんて欠片も無ぇ。初対面の時なんか、何やっても全無視された。
今更「冷たい」もへったくれも無ぇ。むしろ、告って来た時のテンションが異常に
高過ぎたんだ。
確かに、今は明らかに俺の方がスコールを好きかもしれねぇ。が、それが何だ。
俺はスコールが大好きで、スコールの為になんかするのが、すっげぇ楽しい。
さっきも言ったけど、どっちが先とか、関係ねぇ。
んな事、気にする方が間違ってる。



だけど。



だけど今、俺は真剣な顔でスコールの部屋に向かってる。
気にせざるを得ないような事を言われたからだ。絶対に、確認しなくちゃ駄目な事を。
「スコール!」
扉を開けて呼びかけると、机で何か作業してたスコールがくるりと俺に振り向いた。
「・・・「今日の手紙」か?」
ゆっくりと立ち上がり、俺の右手にすっと掌を差し出す。あ、と呟き、握りしめたままの
封筒を尻ポケットに突っ込んだ。
「・・・・?どうした?」
宝石みたいな蒼い眼が訝しげに顰められる
「スコール。俺、聞きたい事があるんだ。」
「・・・聞きたい事?」
スコールがいよいよ不思議そうに眼を細める。その眼を正面から見詰めて言った。


「スコール。俺の手紙、迷惑か?」


蒼い瞳が驚いたように見開かれる。
「…どういう意味だ…?何で、いきなり…?」
長い腕で腕組みしながら、探るような口調で俺に尋ねる。
「言われたんだ。ダチに。『それ迷惑がられてんじゃねぇの?』って。お前からの返事は
殆ど無ぇ、って言ったら。」
無造作に床に置かれた、俺の手紙で満ぱんの紙袋をちらりと眺めて言った。
「だから、それは…」
「うん。分ってる。お前、「忙しいから返事はそんなに書けないぞ」って、最初に言ってた。
ちゃんと覚えてる。」
「…だったら、」
「でも、俺、そん時聞くの忘れてた。…お前、俺の手紙迷惑か?」
しつこく聞き直す俺に、スコールが大きな溜息をつく。
「…一体、何でそう思うんだ。…じゃあ聞くが、お前、俺が「迷惑だ、二度と手紙を出すな」
って言ったら、そうするのか?」
俺はきっぱりと言った。


「うん。二度と出さねぇ。」


その瞬間、スコールの顔がはっきりと強張った。
「…それで、いいのか?お前、それで何にも思わないのか?俺が止めろって言ったら、
何の未練も無く止めるのか?」
固い表情を崩さないまま、ひどく慎重な声で俺に尋ねる。
「うん」
何の気負いもせず答えた。スコールの黒い眉が強く顰められる。
「あれだけ、熱心だったのに?あんなに、「手紙書くのが楽しい」って言ってたのに?」
「うん」
「そんな、簡単に止めれるのか…?」
「うん」
黒い眉が益々強く顰められる。俺が頷く度に、精悍に引き締まったスコールの頬が
どんどん白く蒼褪めていく。
「・・・・みたいにか?」
「え?」
聞き取れないほど小さな声で何かを尋ね、それきり無言で顔を俯かせる。
「…スコール?」
尋ねる俺に、躊躇うように薄い唇を何度も噛みしめる。
そして、ふいに決意したように、強い声で一言尋ねる。


「俺が付き合おうって言った時みたいに、簡単にか?」



「………え…?」
今まで溜まってたものを吐き出すように、スコールが一気に言葉を続ける。
「簡単にOKして、簡単に夢中になって。でも俺が一言言えば、簡単に終わりに出来るのか?
そんな程度の、「好き」なのか?」 
顔を深く俯かせ、地を這うような低く掠れた声で言う。
「…ずっと思ってた。簡単過ぎたって。何で、こんなに簡単に手に入ったんだ、って。
簡単過ぎて、信じられなかった。…簡単に手に入ったこの毎日が、信じられなかった…!」
悲壮な声で、俺に向かって訴える。
「ゼル。簡単に失うなら、簡単に手に入らなくても良かったんだ。今からお前を失うのに
比べたら、何だって耐えられる。何だって、我慢できたんだ。今からじゃ駄目だ。
俺は、そんな簡単に…」
何かいきなり感情を爆発させてきたスコールに、ちょっと慌てて語りかけた。
「いや、そういう何か複雑そうな話じゃねーよ。ただ、俺はお前が迷惑なら、手紙書くの
止めれる、ってだけだ。それに、別にがっかりしねえって訳じゃねぇよ。そりゃがっかり
するよ。こんだけ毎日書いてて、んで迷惑だったって分りゃ。いくら俺でも、超凹むって。」
「…なら、何で…」
「でも、スコール。」
星のように瞬く蒼い瞳に向かって静かに宣言する。



「好きな奴を困らすのは、違うんだ。」



スコールがパチパチと瞬きする。
「スコール。俺、お前が好きだ。何か今、お前変な事考えてたみたいだから、改めて
言うけど、俺、お前が好きだ。多分、お前が考えてるより、お前の事が好きだ。
お前の為に何か出来るのが、嬉しくてしょうがねえ。簡単とかじゃねぇ。きっと、俺は
そういう性分なんだ。好きな奴に、何かしてやりたくて堪んなくなっちまうんだ。」
眼の前の男に、力を込めて語りかける。
「でも、それが迷惑なら違うんだ。それで好きな奴が困るなら、違うんだ。張り切り過ぎて、
お前や皆に笑われたっていい。馬鹿やって、呆れられたって構わない。そんな事で、
俺のプライドは傷つかねぇ。だけど、違うんだ。それでお前が困ってるなら、違うんだ。」
見下ろす白皙の顔に、顔を上げてきっぱりと言う。
「スコール。それが、俺のプライドなんだ。好きな奴への、俺のプライドなんだ。」
蒼い瞳に眼を合わせ、絞り出すように真剣に告げる



「スコール。俺は、好きな相手を困らす奴になりたくねぇんだ。」




静まり返る部屋の中で、一人喋った。
「だから、迷惑なら言ってくれ。そんだけでいいから。別に、それで別れるとか、そんな事
全然ねーから。」
な、と下から首を傾げて覗きこんだ。スコールが無言のまま俺を見返す。
「…スコール。俺を、信じてくれよ。俺の「好き」を、信じてくれよ。」
心底から頼んだ。さっき分った。そうでなければ、スコールはずっと不安なままだ。
俺が何をしようが、何を言おうが、ずっと不安に苛まされる。事あるごとに、別離の恐怖に
怯えてしまう事になる。
そんなの、俺は嫌だ。
好きな奴に、ずっと信じて貰えないなんて。
好きな奴が、ずっと不安なままなんて。


腕を掴んでスコールを軽く揺さぶった。自分でもガキっぽいとは思ったが、それ以外返事を
強請る方法を知らなかった。
「なぁ…、手紙、迷惑か…?」
固く蒼褪めたスコールの口元から、ゆっくりと力が抜けていく。氷のような、と謳われた美貌が、
泣き出す寸前の子供のようにくしゃりと歪む。蒼い瞳を泣き出しそうに瞬かせ、唇一杯の
笑みで泣き笑いするように俺に告げる。



「迷惑なんて、一度も思った事が無い。」



「やった!!!!!!!!」
首っ玉に飛びついて叫んだ。スコールが「うわ」と驚いて後ろによろける。が、流石の筋力で
何とか倒れずに俺を受け止める。
「もー俺、迷惑って言われたら、どうしようかと思った!!話もどんどん変な方向に
進んでくし、何でそんな事になっちまうんだ?!ってスゲー焦った!」
艶やかな黒髪をガシガシと掻き回しながら訴えた。
「俺、お前のそういう慎重なトコも好きだけど、でもやっぱいい加減にしろよー。
何で早く言わねーの!何でそんな心配性なんだよ?!心配すんなって!すっげえ
好きだから!!な!?スコール!!」
「…ああ、うん…」
長い腕で俺を抱っこしたまま、スコールが顔を赤らめて頷く。
「何今頃照れてんだよ!遅せーよ!今まで何回言ったと思ってんだよ!! もう俺の事
鈍いって言わせねーぞこの鈍感野郎!!」
ぎゃあぎゃあ叫ぶ俺の額に、スコールが眼を瞑って自分の額をコツリと打ち付ける。
「…うん。そうだな。俺は、少し心配し過ぎたみたいだ。心配ばかりして、大事な事を
言うのを忘れてた。お前にばっかり、言わせてた。」
静かな声でそう言うと、大きな手でゆっくりと俺の身体を抱きしめる。
「・・・・ゼル。好きだ。」
俺の後ろ髪を掌で押さえながら、スコールがしみじみとした声で囁く。今までと何処か
違う深い響きに、何故か涙が出て来た。あれ?と呟いてスコールの肩に顔を埋めた。
何てだ。何で俺は泣いてるんだ。
もしかして、俺も欲しかったんだろうか。
スコールの言葉が、欲しかったんだろうか。
俺ばかり張り切る毎日が、ほんとは寂しかったんだろうか。
眼の奥がどんどんと熱くなっていく。
ほんとはずっと、待っていたんだろうか。
スコールが、「好きだ」って言ってくれるのを。心から、そう言ってくれるのを。
それを、ずっと待っていたんだろうか。


「…スコール。俺も好き。…俺達、きっと上手くいくよな。」
「…ああ。…でも、お前これから結構大変だと思うぞ。」
「?大変…?」
スコールが左腕で俺を抱っこしたまま、右手で俺の眼元をそっと拭う。(こういうのを軽々と
やってのけるあたり、ほんとこいつは容姿を裏切る怪力男だと思う)
「…お前に嫌われたくなくて我慢してたけど、俺は、お前が思うよりずっと独占欲が
強いんだ。…お前、きっとどん引くぞ?」
「え?そーなのか?」
「まあな。今だって、陰で「スコールと付き合うの、大変だろ」なんて、俺から距離を
置かせようとするお前の友人共を、纏めて異空間に放り投げてやりたいと思ってる
くらいだしな。」
「えええええ?!?!マジ?!」
冗談だ、と全然冗談に思えない真面目な顔で、美貌の男が俺の頬にキスをする。
そのままスタスタとベットに歩いて行く。、ドサリと俺の身体をマットに落とし、その上に
大きく馬乗りになる。にっこりと華麗な笑みを唇に浮かべ、いやらしいほど優しく言う。


「今日は泣いても、止めないぞ。」




泣いても止めなかったスコールに散々泣かされた後、俺はベットでスコールに
繰り返し言った。
「でも、お前はすげーよな。ほんと、スゲーよ。俺、びっくりした。すげぇなぁお前。」
スコールがキョトリと首を傾げて言う。
「・・・そうか?何がだ…?」
「いやー、何がってさあ」
ボリボリと頭を掻いてスコールを見返す。
「俺もさあ、大概変って言うか、無駄にパッション強すぎって、自分で自覚してんだけどさぁ」
床に散らばる手紙の山に視線を向け、またくるりとスコールの顔を見上げる。
答えを待つ黒髪の男に、不思議そうに眼を見開いて問いかける。


「これがウザくねぇって、お前、凄過ぎねぇ?」


スコールがポカンと俺を見下ろす。それから、あはははは、と声を立てて笑う。
「・・・そうだな。違いない。」
相性ぴったりだな、と嬉しげに笑い、ひょいと俺の身体を引き寄せる。
「好きだ。ずっと、お前といたい。」
「うん。俺も。」
スコールがまたにっこり笑う。
そして、俺達はキスをした。これから何度もするキスを。



ずっと二人で、繰り返していくキスを。










END

めりきち様より頂いたステキイラストを元にこの駄文書いたら、更にめりきち様が御自身のサイト
この後日談ライクなcomic「loveletter」をお書き下さったですー!!うわvvvvv(悲鳴)
是非ご覧下さい!ウチのお話よりずっと萌えなので!
めりきち様、ほんっっとうに有難うございました〜!
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