症例紹介

帝王切開


帝王切開は、自然分娩が不可能であったり、自然分娩では母体や胎子の生命に危険があるときに行います。
出産前に原因が明確に分かっていれば、予めどのように準備し、手術するかを検討することができます。
しかしながら、出産時に突然、自然分娩が不可能になった場合には、この手術はすぐに決定しなければならないという難しさがあります。
本来は自然分娩が理想的ですが、難産で途中から帝王切開が余儀なくされることもあります。
初めから帝王切開を行えば、子犬をすべて助けることができたのに、と思われるケースもありますが、これはあくまでも結果論にすぎません。

手術前には、通常、胎子の心拍数や心臓の拍動の強さを超音波検査にて確認します。
たとえこの時に胎子の心拍が正常であったとしても、手術の準備をしている間に胎子の心拍が微弱になってくることも考えられます。
したがって、すべてのケースにおいて胎子を元気な状態で取り出せるとは限らないのです。

また、帝王切開には、麻酔が必要です。麻酔は母体のみならず胎子にも影響があります。
万一、母体と胎子の両方において生命に危険がある場合は、母体の救命を優先させます。

手術後は、麻酔から十分に覚めてから子犬を母犬に任せます。
母犬は、鎮静の影響や自然分娩でないという理由で子犬を殺してしまうことがあるため、注意が必要です。
また、自然分娩と異なり、育子を放棄してしまう母犬もいます。その場合は、飼い主様が人工哺乳や排泄補助をしてあげる必要があります。

  
この子は、5歳のミニチュアダックス、初めての妊娠でした。
前日の夜に陣痛が始まり、1頭出産したけれども、残念ながら死産だったとのことです。
それ以降、まったく陣痛がないとのことで、来院されました。
他の動物病院でレントゲン検査をしたときには、4頭妊娠しているとのことでしたので、あと3頭お腹にいるはずです。
超音波検査をしたところ、1頭は心拍が確認できましたが、あとの2頭は心臓が動いていません。
早急に帝王切開を行いました。
1頭は骨盤腔まで降りてきてりましたが、残念ながら、後躯形成不全(下半身が完全にできていない状態)で蘇生不可能でした。
2頭目は、取り出したときには呼吸ができていなく、チアノーゼ(低酸素で紫色を呈している状態)がみられましたが、蘇生を続けて無事に呼吸が再開され、良く鳴き始めました。
3頭目は、取り出してすぐに産声をあげ、呼吸もしっかりできていました。

母犬が麻酔から覚めるのを待って、子犬を母犬に近づけると、初めは戸惑っていましたが、恐る恐る子犬のにおいを嗅ぎ、自分の子だとわかったのでしょうか、ぺろぺろとなめ始め、自分のほうに引き寄せる行動も見られました。
子犬もしばらくすると、母犬の母乳を吸い始めました。
その日のうちに、飼い主様のご自宅にお返ししました。
しっかり育子をしてくれるかどうか心配でしたが、心配は無用でした。
ご自宅でもしっかりお母さんとして子犬を育てているようです。

現在、この子犬たちは生後3ヶ月です。
元気にすくすくと成長しています。






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