第2話 運命の再会

前回のあらすじ
突然プレートというものが現れて、その中からブレンパワードが生まれた。
優しい目をしたその子に誘われて乗った時、グランチャーっていうのが襲ってきた。
どうしてブレンを目の敵にするの? 貴方は誰?
ヒギンズ
「上がってくるのは、4機から5機です」
キメリエス・クルー
「コンガイールより受信。キメリエスよりノヴィス・ノアへ送信します」
レイト
「光通信へ接続。ノヴィス・ノアへは届くな?」
キメリエス・クルー
「一分後に島影から現れます」
レイト
「継続中継。ノヴィス・ノアへ」
ノヴィス・クルー
「コンガイールに通信、キメリエス中継。アンチ・ボディ確認」
アノーア
「数を聞いています」
ノヴィス・クルー
「六機です」
ノヴィス副官
「イランド隊、聞こえるな? 海上に上がってくるアンチ・ボディは六機。確認次第、攻撃していい」
アノーア
「比瑪の機体は?」
ノヴィス・クルー
「デッキに出ました」
クマゾー
「ストップ」
ノヴィス・クルー
「何やってんの! 掃除道具はさっさと片付けんの!」
ユキオ
「ブレンパワードは擦ってやると喜ぶんだぞ、な?」
アカリ、クマゾー
「うん」
ユキオ
「オーガニック・エンジンのテスト艦だなんて言ったって、ここの船の連中、何も分かってないんだから」
アカリ
「比瑪姉ちゃん、動かすよ」
クマゾー
「動く」
比瑪
「オール・セット」
アノーア
「メルメットは被らないのか?」
比瑪
「この子が嫌がるんですよ。髪の毛の動きからも、何かを感じるみたいなんです」
アノーア
「行かせろ」
ノヴィス副官
「宇都宮比瑪、出ろ」
比瑪
「はい」
ユキオ
「本当の戦争に行くんだ」
クマゾー
「歩いた」
アカリ
「比瑪姉ちゃんが?」
艦内アナウンス
「前方空域、障害物なし。オーガニック・エンジン(?)」
ラッセ
「比瑪が出るんだって?」
ノヴィス副官
「対空対戦、戦闘配置を発令します」
アノーア
「そうしろ。アンチ・ボディは、オルファンから出て来たグランチャーだ」
ユキオ
「調子いい!」
アカリ
「比瑪姉ちゃん!」
ナンガ
「流石だが、実戦になるんだろ?」
ラッセ
「そうなりゃ、俺達にお呼びが掛かる」
ノヴィス・クルー
「みんながみんな、アンチ・ボディになる訳はないだろ」
コモド
「来たのね。全く……」
「この辺りよ」
比瑪
「了解。ナンガとラッセ機はどうなんです?」
コモド
「発進準備が整えば応援に来てくれます」
比瑪
「それまでは一人か……」
コモド
「偵察だよ、余り力まないで」
比瑪
「という事だよ、ブレン」
「そうだよ、怖くなんかない。いつも練習して上手だったんだよ、君は」
コモド
「いつも見事だけど……アンチ・ボディの性能なら、私の方が手早くやってみせるのにさ」
比瑪
「これ、ちょっと乱暴でしょ」
「やった。追ってくるのは3機か……4機?」
シラー
「オルファンから脱出しようっていうのかい、勇?」
「カナン、私の援護だ。分かってるな?」
カナン
「了解」
「シラー・グラス、勇を沈めるつもり……?」
「逃げ切れない。沈められるわよ」
「このブレンパワードは俺に合っている。親父達の言っていた事は間違っていた」
「カナンも追っ掛けてくんのか?」
「ブレン!」
「カナン、付いて来てくれないか? 俺の気持ちは話してきた筈だ」
カナン
「地球は再生させない方がいいから、オルファンを浮上させるんだと言っていたのは、勇でしょ」
「――アンチ・ボディの反応?」
「向こうのブレンパワードか」
ヒギンズ
「オーガニック・レーダーは働いてくれてるけど、本当なの? 機数が分からない……」
比瑪
「やった、掴まえたよ」
「確認出来るかな?」
「4機のグランチャー?」
ヒギンズ
「五百メートルを超えてるんだろ?」
ノヴィス・クルー
「比瑪機、七百メートル突破」
 〃
「オーガニック・センサー不調です」
ゲイブリッジ
「順調のようだな」
アノーア
「はい。宇都宮比瑪、いいパイロットです」
ゲイブリッジ
「そうだろう、信じていたよ」
「ラッセとナンガのブレンパワードは?」
アノーア
「出す覚悟はさせていますが、そういうレベルです」
ゲイブリッジ
「そうか」
依衣子
「生まれたばかりのブレンパワードに、グランチャーは何を梃子摺っているんだ」
研作
「ブレンには、オルファンの拒否反応が出ていたんだろう」
「その程度の事で、ブレンを捨てる事はなかったんです」
「シラー達には、勇を連れ戻すように命令したわね?」
依衣子
「脱走者は撃破のみ」
「軽率です。ブレンパワードをグランチャーと同じように使える勇なら、調べる事は山ほどあります」
依衣子
「……カナン! シラーとゲイルの攻撃を支援しろ! 動きが甘いぞ!」
「クインシィ……!」
依衣子
「グランチャー部隊としての実力を見せなければ……!」
研作
「依衣子、軽率だぞ」
依衣子
「私はクインシィだ!」
研作
「我々は、ブレンパワードに対する認識を変えなければならないと話していた」
依衣子
「研究は続行すればよい。現在、ノヴィス・ノアが動き出したのだ。それに対して……」
「だからこそ、お父様の意見も聞いて……!」
ジョナサン
「……オルファンは伊佐美ファミリーの物じゃない……」
研作
「オーガニック・マシンというのはな……!」
ジョナサン
「いいではないですか。勇一人が使うゴミのようなブレンパワードなど、使い道はありませんよ」
研作
「オルファンに勇は必要なスタッフだ。ブレンパワードが上手く使えるのなら……」
ジョナサン
「『ブレンパワードは、オルファンにとっては突然変異が生んだ異物である』そう仰いましたな?」
「望まれて生まれてきた物ではない。体力もない」
カナン
「攻撃しろったって、シラーが勇と絡んでいたら攻撃出来ない!」
「はっ……!」
「降りてくるのがアンチ・ボディ……ブレンパワードなの?」
「あれは一年前だった」
「カナンか?」
カナン
「何で相談してくれなかったの?」
「相談したよ。けどカナンは、いつも自分の事ばかり喋っていただろ?」
カナン
「私が?」
「東京でブレンパワードに会ってから、ずっとだよ」
カナン
「そうだったの……」
シラー
「よくやった。撃破しないでオルファンに連れ帰れれば上等だよ」
「シラー・グラス! 放せ、カナン! シラー!」
「ブレンパワードだ」
比瑪
「そのブレンパワードを放しなさいよ!」
カナン
「何だ? ブレンパワード?」
比瑪
「同じブレンパワード同士なら……!」
「その声、宇都宮比瑪か」
比瑪
「え、私の名前、何で知ってんの?」
「一年前、グランチャーで会った」
比瑪
「ああ、伊佐美勇か、勇君か」
シラー
「勇!」
カナン
「駄目!」
比瑪
「来るんじゃない!」
「シラー!」
シラー
「な、何だ?」
カナン
「勇!」
ヒギンズ
「ブレンパワードが浮上!」
「お、おい」
比瑪
「浮上した。……行け!」
「お、おい、宇都宮比瑪」
比瑪
「あんた逃げたいんでしょ?」
比瑪
「ちょっと、何すんのよ? せっかく助けてやったのに、私から逃げてどうするつもりなのさ?」
「やっぱりお前だったんだ」
比瑪
「今、何をやったの!」
「何って……俺達二人でグランチャーを撃退したんだろ?」
「お前、宇都宮比瑪だろ。お前のブレンパワードの扱い方、イエスだね」
比瑪
「ああ、そうか! そうなんだ! 私達でやったのよね!」
「ちょ、ちょっと、撃破はしてないんだぞ」
比瑪
「そ、そりゃ分かってるわ」
「これが東京湾か」
比瑪
「船の半分は難民キャンプになってるって……」
「どうしてノヴィス・ノアに行かないんだ?」
比瑪
「撃破してなけりゃ追い掛けられるでしょ? 敵を撒くためよ」
「ねね、貴方、去年グランチャーに乗っていたでしょ?」
「なのに、こんな新しいブレンパワードに乗っちゃってさ。どうしたの?」
「色々事情があるんだよ」
比瑪
「オルファンに居たのなら、貴方だってリクレイマーかもしれないし、そんなら貴方、私の敵よ?」
「よく喋る女だな」
比瑪
「助けてあげたのに、何て言い方?」
「誰がお前なんかに頼んだ?」
比瑪
「この辺りはね、ちょっと前までは、夜の空の星以上の輝きに満ちていた都会があったのよ?」
「でもさ、オルファンが動いたお陰で、みんな沈んじゃったのよ」
「順序が逆だ。地殻変動のお陰でオルファンが海底から出たんだ」
「それに呼ばれて、オルファンの体を掃除した連中が居た」
比瑪
「そういう人がグランチャーを使い出して、地球の文明を破壊しようとしている」
「話はそう。けど、そうはさせないよ」
「そうする前にあいつらを潰す。そうしなけりゃ……」
比瑪
「ちょっと、待ちなさ……わっ!」
「有難う、ブレン」
「あいつ……!」
アノーア
「リクレイマーの伊佐美勇が、ブレンパワードに居たというの?」
比瑪
「はい」
ゲイブリッジ
「直子さんが予想していた通りでした。勇君の生存は確認出来ましたよ」
直子
「勇が、両親と依衣子の言う事を聞かないで、一人でオルファンを出て来たというのですか?」
比瑪
「だって、一人で脱走してきたみたいな事を言ってました」
ゲイブリッジ
「オルファンも一枚岩ではないという事ですよ」
「マコーミック艦長。オルファンに対して、我々だって戦いようはあるという事です」
アノーア
「伊佐美勇のブレンパワードは、ナンガとラッセに追い掛けさせます」
ナンガ
「了解」
ラッセ
「行きますわ」
ナンガ
「ターゲットは捕捉出来てるんでしょうね?」
アノーア
「本艦のオーガニック・レーダーは、まだまだ大雑把でね」
ナンガ
「だとさ」
ラッセ
「承知の覚悟ね」
三尾
「はぁ、全く……よく降るよ、また……」
「三千二百飛び三番地のM部分に……」
「……情報通りだ。この大学ではプレートの研究をやってる」
「こういう所に、例のビー・プレートが保管されている可能性は、十分にあるよな」
「ぶち破るか」
三尾
「ん?」
「窓を壊すしかないか」
三尾
「はっ……!」
「こ、これ、もしかして……」
「アンチ・ボディじゃない。しかも新しいタイプの」
「こいつ……剥がれた?」
「あ、貴方は、私の研究を奪いに来たのね?」
「プレートの研究者なら、ビー・プレートの存在を知っている筈だ」
「このキャンパスに、二枚のプレートが保管されてるのは分かってる。見せろ」
三尾
「マイクロ・ウェーブの発振器が目当てじゃないの?」
「プレートの保管場所は?」
三尾
「貴方、リクレイマーじゃないの?」
「案内しろ」
三尾
「は、はい。付いてらっしゃい」
「マイクロ・ウェーブ発振器って、オーガニック・エンジン用の奴か?」
三尾
「当たり前じゃないの。ここはオーガニック研究所よ」
「だから来たんだ」
三尾
「残念ながら、そのエンジンは伊佐美式の物しかないけどね」
「十七・八年前の、玩具みたいな奴だろ」
三尾
「やはりリクレイマーね。とうとうオルファンから来た……」
「開けろよ」
「聴診器はないの?」
三尾
「何それ?」
「医者が使う奴だろ」
三尾
「そんなのある訳ないでしょ?」
「メガホンみたいのでもいいよ」
三尾
「このプレートさ、ただの」
「リバイバルしないプレートかな」
三尾
「硬化始まってるもの」
「ビー・プレートとかいうのとは違うのか……」
「あいつ、くっ……!」
警備員
「こ、こいつ……!」
「あいつ、冗談やってるのか?」
「俺のブレンをどうするつもりだ?」
三尾
「オーガニック・エナジーを研究していれば、触りたくなります」
「アンチ・ボディは、パイロットとの……」
三尾
「研究員です。調べさせてもらいます」
「ふざけるな、この……降りろ!」
三尾
「やめなさい!」
「アンチ・ボディは人を選ぶんだ」
三尾
「私が乗ろうとした時、このブレンパワードは優しい顔をしていたのよ」
「え、こいつが?」
「くっ、うぅっ……!」
「止めろ! 貴方ね……!」
三尾
「私と相性がいいのよ、この子。これなら飛んでくれるわよね、これ」
「え?」
「あっ、あぁっ……!」
三尾
「動いた! 飛んだ!」
「私にも動かせるんだわ、アンチ・ボディを!」
「パワー・ビルトを安定に。興奮させるんじゃない」
三尾
「この子はね、このブレンパワードは私の言うままよ。オーガニック・マシンてこういう物なのよ」
「オーガニック・エナジーを使う物はね、人間の生体の力に感応して動いている物なんだから、当然の事じゃなくて?」
「こいつ、お袋と同じだ」
「私達は、お父様がオーガニック・エンジンの研究をしていたお陰で、オルファンに選ばれたのよ」
「これはとっても名誉な事だわ」
「俺、直婆ちゃんとここに居るよ」
依衣子
「オーガニック・マシン、グランチャーってんだけど、格好良いよ?」
「いいですね、母さん?」
直子
「いいも悪いもないんだろ? お前と研作さんのやる事は、いつもこうだね」
「くっ、貴方ね……!」
三尾
「ほら、ご覧よ」
「やめないか!」
三尾
「私は……!」
「こいつ……!」
三尾
「私は、オーガニック・マシンの研究者なんですよ!」
勇、三尾
「あっ……!」
「ハッチに足を引っ掛けるんだ」
三尾
「お、落ちるのは嫌よ!」
「ブレン、何とかしろ」
三尾
「あっ、ぁっ……!」
「やめろ、ブレン。俺がシートに座ったんだぞ」
「こ、こら」
三尾
「お、落ちるわ! と、止めて……!」
「頑張るんだ。すぐ止めます」
「ブレン、着陸してくれ。頼む」
「喧嘩なんかしないからさ」
避難民
「何なの?」
 〃
「地震?」
 〃
「変じゃない? 地震じゃないもの」
 〃
「どうしたんだよ」
 〃
「な、難民の子供を収容してる所に、来ないでくれ」
「ブレン、お前は俺の命の恩人だ。有難う」
三尾
「お、降ろしてよ……降ろせるんでしょ?」
ジョナサン
「弟さんを撃墜しろという命令、きつくありませんか?」
依衣子
「既に弟ではない」
ジョナサン
「ふんっ……」
依衣子
「私達パイロットは、グランチャーと共にオルファンの抗体になると選ばれた人間です」
「となれば、オルファンにこの身を捧げなければならない」
ジョナサン
「はっ……」