第6話 ダブル・リバイバル

前回のあらすじ
伊佐美勇がノヴィス・ノアに居着くなんて思えないな。
グランチャー1機でやってきた女は、勇とずっと一緒だったっていうのよ?
そんなのが撃墜されたように見せ掛けて、勇を連れ戻しにきたって事だってあるじゃない。
ヌートリア艦長
「シラー・グラスか。作戦ご苦労」
シラー
「ヌートリア、急いでいるな」
ヌートリア艦長
「比曽山中の震源地よりプレートが出た」
シラー
「またか」
ヌートリア艦長
「ヌートリアは、後続のグランチャー部隊と連携。本艦は待機海域へ急行する」
シラー
「アンチ・ボディが生まれるってのかい?」
「もう直オルファンだよ、私の坊や」
シラー
「プレート回収に出るのか?」
兵士
「大騒動さ」
ジョナサン
「アネルとゲインは重装備だぞ」
兵士
「持たせてます」
ジョナサン
「帰ったか」
シラー
「ジョナサン・グレーン御自らのご出陣ですか?」
ジョナサン
「裏切り者達の首を手土産にしてきたのでもない……グランチャー部隊の名折れだぜ?」
「けどさ、カナン機を撃破したのだから、許せるかな」
シラー
「有難う」
ジョナサン
「裏切り者のグランチャーが敵に回る事がなくなったのだから、ペナルティはなしでいいな」
シラー
「すまない」
ジョナサン
「しかし、ノヴィス・ノアのブレンパワードが組織的に動き出したのであれば、それは驚異であります」
「我らのグランチャー部隊の増強は急ぎます」
依衣子
「その為のプレート回収だ」
「リバイバルにパイロットを立ち合わせて、グランチャーの稼働効率を上げなければならない」
シラー
「クインシィ・イッサー、私も回収部隊に加えていただきたい」
依衣子
「お前は帰ってきたばかりで消耗しきっている」
「それに、グランチャーも嫌がっている」
ジョナサン
「今回は俺達に任せろ」
「では、クインシィ・イッサー」
ゲイブリッジ
「ああ、今朝の地震には、政府は理科学研究所の職員を派遣したよ」
アノーア
「ヒギンズ・サスを飛ばします。宜しい?」
ゲイブリッジ
「期待し過ぎると思うが、任せるよ」
「それが終わったら、こちらに来てくれないか?」
アノーア
「はい」
ヒギンズ
「ねぇ、オルファンのスパイを受け入れちゃう艦長なんて、信用出来て?」
ノヴィス・クルー
「カナン・ギモスがスパイってんですか? ありゃ勇と同じですよ」
「我が強いだけで、スパイなんか出来やしませんよ」
ヒギンズ
「そんなに単純な奴か?」
「確かに勇だって、コンプレックスの塊だものね」
ノヴィス・クルー
「はい、コモドちゃんいいね〜。いいですよ〜どうぞ!」
「コモドの野郎〜!」
コモド
「震源地の偵察などハンティングにもならないんだから、オグンに誓うまでもないさ」
アイリーン
「ご覧の通り、カナン・ギモスの全身スキャン、メンタル・テストからも、精神状態は保証出来ます」
ゲイブリッジ
「直子が心配してるのは、カナンの事ではないな?」
直子
「はい。勇は、どんなつもりでカナンさんを連れてきたんでしょう? その方が気になります」
アノーア
「私にとっては、どちらも元リクレイマーです。危険分子にしか見えません」
「司令の目論見は、オルファンの情報を集めるおつもりでしょ?」
ゲイブリッジ
「彼女はオルファンに居る事に疲れたんだ。こちらの戦力になると思うな」
直子
「司令の直感、当たりますものね」
アノーア
「そうですか?」
直子
「そうですよ」
ゲイブリッジ
「ご苦労」
アイリーン
「はい」
ラッセ
「ん? 何やってんだ、あの二人……」
ナンガ
「さあね。多分、勇とカナンのスパイをやってんだよ」
ラッセ
「あの女が、年下の坊やを追い掛けてきたって話もあるけど?」
ナンガ
「そんな安っぽい女か?」
ラッセ
「そうだな。そういう女じゃない」
ナンガ
「だからスパイしてんだろ?」
カナン
「確かに、インター・フェイスへのタッチが違うわね」
「オルファンでの感触と外に出てからとでは、全く違ったね」
カナン
「反応が早いの?」
「グランチャーとでは、反応する感情の色とか深さが違うんだ」
カナン
「感情の色? 深さ?」
「喜怒哀楽っていうだろ? そういう色合いっていうのかな」
「そういうものや、その時々のこちらの深いところにある感情……」
「そういったものをピックアップしてくれて、その上で、こちらの全体の気分を受けてくれるのさ」
カナン
「部分では深く、全体では優しいのね」
「そういう事かな。そうだろうね」
アカリ
「……カナンって奴が勇を連れ出そうとしたら、断固阻止するんだぞ」
クマゾー
「断固阻止」
「そうやって座ってるとさ、気持ち、落ち着かない?」
カナン
「頭痛は来ないわ」
「親父達はこの違いを隠してたんだ」
カナン
「オルファンでは、ブレンパワードの特性が殺されていたのよ」
「アンチ・ボディの個性って……」
「何やってんだ? 放せ!」
カナン
「貴方達、何、意地悪してるの?」
アカリ
「勇はここに居るんだ!」
クマゾー
「断固阻止!」
「何だよ、引っ張ってくれたっていいじゃないか」
カナン
「手伝えないな。こういう所で、ブレンパワードは活性化したのか……落ち着くわ」
「わっ!」
カナン
「大丈夫?」
「ま、股先だ……!」
アカリ、クマゾー
「落ちる〜!」
ナンガ
「やれやれ……登る時、脚立を落とすから」
比瑪
「怪我させたら承知しないから!」
ラッセ
「俺達の出る幕はないか」
コモド
「理科研の連中の方が足が早いなんて……」
「貴方達は、誰の許可を得てプレートに触っているの?」
三尾
「ノヴィス・ノアの方ね? 理科研の依頼でプレートの調査に来た、源野三尾です」
「私達が発見したプレートの事で聞きたい事があれば、日本政府を通してください」
コモド
「このプレートの権利を主張するんですか?」
三尾
「いけませんかしら?」
コモド
「はっ、くっ……!」
三尾
「暴力はいけません、あっ……!」
コモド
「グランチャーが来たわ」
三尾
「え?」
ヒギンズ
「グランチャーの数は?」
ノヴィス・クルー
「それどころじゃないみたいだ。ヨルバ教のお助けはなかったのかな?」
ヒギンズ
「そんなの、ある訳ないよ」
ノヴィス・クルー
「コモド・マハマ、離脱出来ます」
 〃
「救援は要るようです」
アノーア
「オーガニック・レーダーでも確認出来たのか?」
ノヴィス副官
「はい。カーテンが下がってましたから、チェック出来ました」
「カナンはブレンに慣れるんだ。そこに居な」
カナン
「有難う」
「出掛けるのか?」
「何だってんだよ、ここの奴ら」
比瑪
「――ありがとう」
クマゾー
「うん」
比瑪
「何よ?」
「出掛けるんだろ? 俺にも行かせろ」
比瑪
「貴方は出掛けちゃいけないのよ? 捕虜なんでしょ?」
「誰が捕虜だ」
比瑪
「なら、謹慎中の……」
「こんな船のクルーになった覚えはない」
比瑪
「少しは現実を考えたら?」
「イランド1機で、プレートを探しに行く……?」
比瑪
「何やってんの、あんた?」
「お前こそ、楽して子供達を食わせる為に、こんな軍艦の厄介になってさ」
比瑪
「違うわよ。この船がブレンを必要だっていうから、乗ってやってるんじゃない」
「あんたみたいに女性の気を引く為に、ブレンに乗ってるんじゃありません」
「カナン・ギモスだって、変な名前!」
「何で、カナンの名前が出るんだ?」
「あっ……!」
比瑪
「本当の事でしょ?」
「落とすなよ!」
コモド
「罰が当たったんだ。出撃の時にオグンに頼まなかった罰が当たったんだ」
三尾
「あ、どうも……」
桑原
「い、いや……逃げられますか?」
三尾
「グランチャーって、ブレンパワードとは違うわ」
桑原
「どうします?」
三尾
「知らないわよ」
コモド
「あんな数……!」
ヒギンズ
「グランチャーが見えたわ」
ノヴィス・クルー
「本当ですか」
ヒギンズ
「コモドから連絡は?」
ノヴィス・クルー
「ノイズだけです」
ヒギンズ
「撃墜されてないわよね」
コモド
「何で私にブレンがないの?」
ジョナサン
「無闇に撃つんじゃない! このプレートをヌートリアに運ぶ方が先だろ!」
「ノヴィス・ノアの……」
比瑪
「コモド、敵と接触したの? 怪我はないのね?」
コモド
「グランチャー7・8機が居る。プレートが一枚じゃないのよ。四枚はあった」
「そんなに出たのか」
比瑪
「ウェッジ……ヒギンズ・サスは何処に居るんです?」
コモド
「北側に居るわ」
「正気か?」
比瑪
「何よ?」
「頭を出したらやられるだけだろ。低空で行くんだ。ヒギンズさんだって高度を取る訳ないだろ」
比瑪
「そうか!」
「ブレン! ……コモドさん、頼みます」
「落ちるか……!」
コモド
「ミスター・ユウ、飛び降りて」
「貴方は比瑪の邪魔をしているわ。早く!」
「そっちへ行ったって、わっ……!」
コモド
「操縦の邪魔をしないで!」
比瑪
「グランチャーが動いてる?」
「勇、コモド!」
コモド
「何とかしなさい」
「何とかたって……」
コモド
「よ〜し、落ちないで!」
「落ちるつもりはない!」
ジョナサン
「何でこんなにプレートが出て来たかは、後で考えればいい」
「急げ!」
三尾
「あぁっ……!」
桑原
「見付かりますよ」
三尾
「私の見付けたプレートを、持ってっちゃう!」
桑原
「声を出さないで」
三尾
「私、オルファンに行って研究したいわ」
桑原
「何、馬鹿な事言ってるんです」
三尾
「あっちはアンチ・ボディだって一杯あるのよ?」
ナンガ
「どうだ? ブレンとは仲良く出来そうか?」
カナン
「基本はグランチャーと同じだけど、神経に直接触ってくるっていう強迫的感覚はないわ」
ナンガ
「そりゃ良かった」
カナン
「好きだわ、これ」
ナンガ
「あんたみたいなのが、何でオルファンに行ったんだ?」
カナン
「え?」
ラッセ
「聞かせてくれよ」
カナン
「数十万年前から地球上の生物のエネルギーを貯めて、銀河から銀河へ飛行する……」
「想像しただけで素敵でしょ?」
ナンガ
「オルファンはスペース・シップなのか」
カナン
「それがオルファンの再生をしようとしている、リクレイマーの結論ね」
ラッセ
「そういうものに惹かれたという訳かい?」
カナン
「そうね……」
アノーア
「ブレン全員に。出撃」
ヒギンズ
「海上に支援部隊が居るのね?」
「プレートの数が出たんなら、オルファンから支援部隊が上がってくる」
ノヴィス・クルー
「海上に出るぜ」
ヒギンズ
「グランチャーの動き、今までと違うんじゃない?」
「オルファンの浮上が始まれば、やる事は違ってくるさ」
ヒギンズ
「どう違ってくるの?」
「プレートだって、いつリバイバルするかもしれない」
「こいつにはミサイルないのか?」
ノヴィス・クルー
「そりゃあるさ」
アノーア
「ナンガ、ラッセが左右に付いて……」
ゲイブリッジ
「様子を見よう、艦長」
アイリーン
「貴方の体力はまだ回復していないんですから、長距離はまだ無理です」
カナン
「この子を勇に届けるだけです。下がってください」
アイリーン
「ナンガ、ラッセ! カナンを助けてやって!」
「いいわね、ラッセ?」
ラッセ
「了解。彼女から目を離しませんよ」
「彼女、腕がいいぜ」
ナンガ
「惚れたか?」
ラッセ
「まさか」
アイリーン
「元グランチャーのパイロットか……」
カナン
「うぅっ……どうしたの? 私が嫌いなの? き、嫌ってくれてもいいから……」
ラッセ
「どうした? カナンさんの方の拒否反応か?」
カナン
「私を好きになってくれなくてもいいから、今は、二人で勇の所へ行きましょう」
ラッセ
「落ち着けるか?」
カナン
「大丈夫、飛べます」
ナンガ
「よし、カナン・ギモス。勇と比瑪の居る所に飛ぶぞ」
カナン
「ど、どうぞ」
「行くわね、君?」
ナンガ
「結構。では、バイタル・グロウブ合わせだ。いいな?」
ラッセ
「来たぞ、飛べるってさ。1・2の……3!」
比瑪
「あ〜、やんなっちゃう。プレートはみんな海に持ってかれちゃうの?」
「ビリッケツの一人を倒せば……行け!」
ジョナサン
「動いた? 本気か?」
「何処だ?」
比瑪
「全部持っていかせるもんか!」
「もう……!」
ジョナサン
「逃がした?」
「落ちたのはいいから、ヌートリアとの合流を急げ」
比瑪
「私は馬鹿だ。勇にブレンを持ってこさせれば何とかなったのに……」
コモド
「私が行くよ。比瑪が攻撃しな」
比瑪
「了解」
ジョナサン
「こいつ……!」
「な、何だ? このゲッソリする感覚は……!」
比瑪
「来る……!」
「だったらさ、狙い撃ち!」
「援護してやれ、あれじゃやられるだけだ」
ノヴィス・クルー
「数が居る」
ヒギンズ
「プレートが変よ」
「え?」
「リバイバルが始まってるんだ」
ヒギンズ
「え?」
「ミサイル、あるんだろ?」
比瑪
「この程度、くっ……!」
「ラッセ、ナンガに……勇のブレンも?」
ジョナサン
「プレートをヌートリアに収容させるのが先だ。ブレンがあれだけ集結したとなれば、戦い方を考えなければならん」
比瑪
「勇のブレンって事は、カナン・ギモスが来たの?」
カナン
「はぁっ、はぁっ……!」
ナンガ
「カナン、大丈夫か?」
カナン
「ちょっと疲れた……落ち着きたい……!」
ナンガ
「比瑪、ラッセ、後退するぞ」
比瑪
「ええ……は、はい」
「何さ! わ、私だって……私だって一杯疲れてんのよ?」
ヌートリア艦長
「プレートの収容作業、急げ」
搭乗員
「曳航索、出せ」
ヌートリア艦長
「ドンピシャリの合流」
ラッセ
「そっちに行こうか、カナンさん?」
カナン
「いや、有難う。いきなり長距離をやったから……何か力を吸われちゃって」
ラッセ
「そりゃそうだろう。飛べただけで大したもんだ。そっちに行かなくっていいんだな?」
カナン
「有難う、本当に」
「はっ、リバイバルしている……!」
ノヴィス・クルー
「山一つ向こうから、グランチャーが襲ってくるんだぞ」
「リバイバルに立ち会ってやれば、こちらに合わせてくれるのがアンチ・ボディなんだ」
ヒギンズ
「この光、見た事がある……プラハで見たのと同じだ……」
「あれが地震の原因だったのか」
 〃
「地鳴りはしてたもんな」
ヒギンズ
「町のシンボルの橋までが落ちた。何なの……?」
コモド
「リバイバル?」
「この時間の掛かり方、妙だぞ」
カナン
「リバイバルする?」
「するさ、ブレンパワードにね」
カナン
「え?」
「このアンチ・ボディ……」
「一つじゃないぞ」
ヒギンズ
「どういう事?」
「そ、そりゃ、オーガニックなら双子だって事もあるけど……」
コモド
「二人もリバイバルするの? 戦いの神オグンが遣わしてくれた……」
比瑪
「へぇ……」