第7話 拒否反応

前回のあらすじ
プレート集めをするグランチャーを追い掛けた私達はのチームワークは、良くはなかったな。
けど向こうも同じで、プレートを落としてってくれた。
それがリバイバルしてくれて、何と、双子のブレンが現れたのよ? 凄いでしょ。
けど、グランチャーに似てるんだよね……。
カナン
「オルファンでも、双子の例はなかったのに……」
「ブレン……私のブレンパワードになってくれて?」
「ヒギンズさん、大丈夫ですか?」
ヒギンズ
「な、何とか……潰されなかったわ」
「良かった」
「カナン、怪我は?」
カナン
「大丈夫。ちょっと脅かされたけど」
「登るのか?」
カナン
「大丈夫でしょ」
比瑪
「オルファンでもこういう事あったの? 双子とか三つ子とかっていうの」
「こんなのは初めてだよ」
比瑪
「私の時とは違うようで……」
「ん、見ている……?」
「あぁ、ふふっ……!」
「大丈夫? 体力、吸い取られてる感じなんてない?」
カナン
「それはないわね。生まれたてで、初めて会ったのが私だったからでしょうね。馴染んでくれてるみたい」
カナン
「勇、私に内緒で、何をコソコソやってるの?」
「別に内緒って訳じゃ……」
カナン
「ブレンパワード・タイプの手入れをしていた……」
「手入れって訳じゃないけどさ。こいつが反応してくれたんだよ。それで、何とかしてやりたいと思ったんだ」
カナン
「ブレンパワードにリバイバルしたものは、すぐに硬化しちゃうんでしょ?」
「半年前、東京で会ったブレンパワードは、動いてたじゃないか」
カナン
「オルファンに従わないで、一人で勝手に動くアンチ・ボディは」
「ブレンパワードになってしまって、パイロットの言う事だって聞かないんでしょ?」
「オルファンの中ではそういう反応だったのさ」
カナン
「オルファンの中では……?」
「よくそんな物、持ち出せたわね」
「試作品、試作品の連続だから、数のチェックなんかしてないのさ」
カナン
「東京であのブレンパワードに会ってから、変だね」
「カナンは気にならないのか?」
カナン
「そりゃ、あの時はショックだったわ」
「親父やお袋の言ってた事が、嘘だったんだ。宇都宮比瑪ってのが動かしてた」
カナン
「あの後の事は、分からないんでしょ?」
「ノヴィス・ノアのチームがコンタクトした」
カナン
「アンチ・ボディはマシンじゃないのよ? 何が起こるか分からないのよ?」
「だから試してんじゃないか」
カナン
「好きになってくれてるみたいよ、この子」
「そりゃ良かった。連れ帰れるようにしてやってよ」
カナン
「ええ」
比瑪
「一緒に乗ってあげたらいいじゃない」
「遊んでいる暇はないだろ。ジョナサンが来てんだぞ」
コモド
「私が乗れないで、何で、ヒギンズとカナンなんだよ」
「はっ……!」
ジョナサン
「敵前の作業だ。急げ!」
エッガ
「ご苦労」
ヌートリア艦長
「エッガ、そいつはリバイバルするのか?」
エッガ
「表面の輝きが違うぜ」
ヌートリア艦長
「緊急前進しろ! 巻き込まれるぞ!」
ジョナサン
「始まっちまったのか」
ヌートリア艦長
「船がやられるぞ」
エッガ
「俺が触ってやったから始まったんだ。強い子にリバイバルしてくれ!」
ヒギンズ
「文字を学習している? 比瑪ちゃんの言う通りだ。私の網膜が見ているものを増幅している文字ね?」
「生まれたてで申し訳ないけど、武器は使えるの?」
「ごめんね、道具よ。いきなり手足で殴り合うのは痛いんだよ。グランチャーが居るんだ」
「偉い子」
「カナンさん、聞こえて? 足元に武器があるわ」
カナン
「え、あぁ……」
「出来るの、君?」
比瑪
「凄い子達じゃない。偉いよ」
「お利口さん」
ナンガ
「勇、比瑪、ブレンパワードに乗れ! 水平線上に集まっていた敵に動きが出た!」
比瑪
「聞いた、君達? 君達はヒギンズさんとカナンさんの言う事を聞いて、ノヴィス・ノアに行って頂戴」
ノヴィス・クルー
「了解」
「コモド、双子が生まれたんなら、守らなきゃならない」
 〃
「スパイが乗る双子が当てになるのか?」
 〃
「今は、正面のグランチャーが敵だろ。余計な事は考えるな」
ナンガ
「当たれ、当たれ!」
コモド
「やっぱりだ。敵の動きが遅いから何かあると思ったけど、あの光はリバイバルの……」
「あっ!」
比瑪
「コモド! 一人で飛び出してたら、やられちゃうでしょ?」
「強いからって……!」
「あら、斬れちゃった? だからって……!」
「逃げた? ナンガは……ラッセはどこ?」
ジョナサン
「潰れろってんだよ!」
ナンガ
「俺はやられてないぞ! 下がるな!」
ジョナサン
「一刀両断!」
ラッセ
「お前ら、俺を忘れていないか?」
ナンガ
「落ち着け、怖くなんかないぞ! 俺が付いてんだ!」
「コモド、何処に行った? あいつが居れば、戦いようがあった」
比瑪
「ナンガ!」
ナンガ
「うぉっ……何て意気地なしだ!」
「我侭はさせちゃいけないんだ。ヒギンズ、両手を挙げてるな?」
ヒギンズ
「やっているけど……この子、静かにしてくれない」
「カナン、どうなの? そっちの感覚は」
カナン
「何だかとっても嬉しいわ。この子の事、分かるみたい」
「なら任せるぞ。放すからな」
ヒギンズ
「弟が飛んでしまったわ。君、負けてしまうわよ?」
「負けるつもりなの? 飛ばないと、うっ……!」
比瑪
「ナンガ」
「ナンガさんが居ない? ナンガ、ナンガさん……もう!」
「嫌っ!」
「有難う、ラッセ!」
ラッセ
「数が減らないんだ。ナンガは?」
比瑪
「コックピットには居なかった」
ラッセ
「海に落ちたか」
「当たった?」
「ヒギンズ、そのブレンを叱れ。武器を使う事を言い聞かせろ。それがパイロットの仕事だ」
ヒギンズ
「理屈はそうでしょうけど……」
「ヒギンズの言う事を聞かないと、怖いんだぞと教えるんだ」
ヒギンズ
「憎んでるって……私が嫌われてるの?」
「グランチャーだ。ブレン・タイプはグランチャーが嫌いなんだ」
ヒギンズ
「グランチャーを嫌う?」
比瑪
「カナンさん、飛べたんですか?」
カナン
「ヒギンズさんの方が、コントロールしきれないのよ」
比瑪
「そりゃそうでしょう、貴方はベテランですものね」
カナン
「ナンガさんが居ないのね?」
比瑪
「見れば分かるでしょ」
コモド
「ウェッジが出てた?」
ノヴィス・クルー
「あそこでリバイバルをしてるって事は、グランチャーが増えるぞ。そんな事はさせねぇ」
 〃
「ロック・オン、発射!」
 〃
「離脱!」
コモド
「助けよ、オグン! アンチ・ボディはオグンの女神かもしれないと信じているのだから!」
エッガ
「船を寄せろ!」
ヌートリア艦長
「敵が来ている」
エッガ
「ジョナサンを呼べばいいだろ」
「リバイバル完了だ」
ヌートリア艦長
「拳銃を寄越せ! 敵が来る!」
コモド
「くっ……!」
エッガ
「リバイバルしたばかりで済まないが、オルファンを守る為に戦ってくれないか?」
「ん?」
コモド
「あぁっ……!」
エッガ
「よりによって、俺がグランチャーを手に入れようって時に来るとは、いい度胸していると褒めたいが……」
「この手首、折ってやろうか!」
コモド
「うぅっ……!」
エッガ
「このアマ……!」
搭乗員
「エッガはグランチャーを立ち上がらせろ。女は我々に任せりゃいい」
エッガ
「任せる。グランチャーの方が大事だ」
コモド
「そのアンチ・ボディは私が乗るんだ!」
エッガ
「オルファンのリクレイマーになるつもりでも、これは俺のグランチャーだ」
コモド
「同じアンチ・ボディなら、ブレンパワードのように、私は使い慣らしてみせる……!」
エッガ
「俺のグランチャーよ、貴様はこの世に命を与えられた勇者だ」
「お前の兄弟達は、母なるオルファンを守る為に戦っている」
「しかしな、パイロットに碌な奴が居ない。ジョナサンのような野郎ばかりだ」
「武器は取れるな、貴様?」
「貴様が見たものが俺にも見えるぞ? 武器を取ってみせろ!」
「取り出せたのか」
「いいぞ。貴様は生まれながらに戦う、男の気骨がある」
「飛んでくれ! この戦場のみならず、全てを貴様のものにしろ!」
ヌートリア艦長
「よし、ヌートリア急速先行! プレートを曳航しつつ帰投する!」
コモド
「あんな奴が使うなんて……!」
「ん、あんなに流されてる……」
比瑪
「ヒギンズ、上へ逃げて」
「落ちないの! 当たらないの!」
ヒギンズ
「助かったわ、比瑪」
比瑪
「私が押さえている間に後退して」
ヒギンズ
「そうする」
ジョナサン
「お前の相手は私がしてやる!」
比瑪
「やられる……!」
「わぁぁっ!」
カナン
「駄目なの? 操縦装置が付いていないコックピットでは……」
「カナン、気を合わせればいいんだ。どうしたんだ?」
カナン
「やっているつもりだけど、グランチャーと違う」
「理屈で考えてるんだろ。包んでやれ、愛してやるんだ」
カナン
「愛してやる?」
「それしかないだろ」
カナン
「そうだけど……」
「落ちないで、君」
「お兄さんなんでしょ? 生まれたばかりで逃げるなんて、損なのよ?」
「意気地なし!」
「カナン……?」
カナン
「コックピットのアレンジ、上手く行っているの?」
「ああ」
カナン
「伊佐美博士達は、最近の勇の不調を心配しているわ」
「グランチャーとの整合性の問題だろ?」
カナン
「貴方自身の体調は、いいのね?」
「そりゃいいさ。あの人達は俺の事を、自分の子供だなんて思っちゃいない」
「グランチャーの中枢神経としての俺の事しか考えてない」
カナン
「エンジンがオーガニック的なものなら、博士達の心配は分かるわ」
「そうだとしても、アンチ・ボディと人間の関係は、まだよく分かってないんだぞ?」
カナン
「オルファンという存在が分かってくれば」
「グランチャーはオルファンの子供で、私達人間は、その二つを繋ぐ神経細胞」
「オルファンは、地球上の生命のエネルギーを全て、吸収するものなんだろ?」
カナン
「それでいいじゃない? 地球を食い尽くした人類のエナジーを、全て取り込むのがオルファン……」
「そして新しい星を目指して、オルファンは銀河旅行をする」
「いいのかよ、それで?」
カナン
「グランチャーが宇宙でも使えると証明されれば、オルファンのシステムというのはそういうものなのよ」
「オルファンのシステム……?」
カナン
「生物エンジンで、星の光までエネルギーに替えられるオルファン……」
「私達は、そのオルファンのシステムに人類の遺伝子を伝える。そうすれば……」
「オルファンの完全なアンチ・ボディ……つまりその、抗体になるって事だぞ?」
カナン
「そうなれば、グランチャーに乗っても苦しくはないわ」
「こいつは辛くないよ」
カナン
「勇が、ブレンパワードの抗体になったっていう事?」
「違うんだよカナン、こいつはそういうんじゃないんだ。俺の意思とこいつの意思が合って……」
カナン
「グランチャーだって……」
「グランチャーには、こっちが合わせていかなくちゃならないじゃないか。ブレンは全然違うよ」
カナン
「どう違うのよ?」
「グランチャーには吸い込まれていくという感覚があるけど、ブレンはそうじゃない」
「それは全然違う事だよ」
カナン
「ふうん、そう……」
カナン
「どうなの、君? 私は君と一緒に居られる女ではないの?」
「カナン、後退してくれ!」
カナン
「この子、怖がっている……体が動かないみたい」
「下から? 避けなさい!」
「いいぞ、そのまま陸地に隠れろ」
カナン
「どうするの、君?」
「はっ、敵が来る……?」
「まだ後方にグランチャーが居た?」
「何だ、あれは違うぞ! カナン、避けろ!」
エッガ
「こいつは俺の思う通りに動いてくれる」
「アンチ・ボディの出来損ないなぞ、このエッガ・グランチャーで叩き落としてやる!」
「グランチャー乗りという奴は、生まれたばかりの者にまで闘争心を植え付ける!」
「あの艶やかな肌は、リバイバルしたばかりの赤ん坊だ」
比瑪
「そんなの怖くないんだから!」
「比瑪はヒギンズ達と後退しろ」
ジョナサン
「エッガ、リバイバルしたばかりの物をすぐ戦場に投入するな! 混乱する!」
エッガ
「舐めて貰っちゃ困りますぜ、ジョナサン・グレーン。こいつはとってもよく俺の言う事を聞く」
「伸びた?」
コモド
「あぁっ……!」
エッガ
「どけよ、ジョナサン! 裏切り者など、これで串刺しにしてやる!」
「覚悟、勇!」
ラッセ
「チャクラ・ブレードの直撃だと? あのグランチャー、何だ?」
「あいつ、もつのか?」
ジョナサン
「エッガ、しっかりとコントロールしろ! 敵はブレンパワードだ!」
エッガ
「裏切り者が! 親を裏切る餓鬼などは、親不孝以下だろう!」
カナン
「チャクラの光が爪になっている?」
ヒギンズ
「カナン、あんな奴どうすればいいの?」
カナン
「この子達が知っているわ」
「だから、このポジションに付いたのよ」
ヒギンズ
「そうなの、君達?」
エッガ
「死ねよ、壊れちまえよ! 裏切り者なんぞ、居なくなっちまえ!」
「どうしたよ、俺のグランチャー? 力があるんだろ?」
「貴様はジョナサンに負けないだけの力を持っているんだろ? そう言ったじゃないか!」
「お前は俺と一緒にあいつらを潰して、オルファンを……!」
「あんな現象なんて……」
「ジョナサン!」
ジョナサン
「勇……!」
「ジョナサン・グレーン、姉さんと親父とお袋に伝えるんだ!」
「オルファンに従う事は絶対に正義じゃない」
「オルファンで人類を抹殺する事も、地球を死の星にする事も、絶対にさせない!」
ジョナサン
「勇……!」
「今言った事を伝えるんだ、行け!」
ジョナサン
「ゆ、勇め……!」
「伝えろ! その為に狙撃はしない!」
ジョナサン
「ゆ、勇は、俺をメッセンジャー・ボーイにしたのか。その為に見逃してくれたというのか、あやつは……!」
コモド
「命ある限り戦うと誓ったのに、生き残るなんてさ……オグンは、私を見放しちまったんだ……」
ナンガ
「泣くなよ、お前の神様は見放したりしないさ。だから生き残ったんだよ」
コモド
「うぅっ……!」
ナンガ
「可愛い奴だな……」
カナン
「これがノヴィス・ノアのクルーか」
「そして、これが双子のブレンパワード」
「彼らに比べたら、まだ赤ちゃんかな」
ヒギンズ
「グランチャーの雲、まだある。パイロットはどうなっちゃったんだろ……」