第12話 単独行
- 前回のあらすじ
- 私はチラッとしか見ていないけど、難しそうなお父さん。
- それに、姉さんのクインシィさんまで攻めてきたんだから、世の中どうなるんでしょうね。
- カント君は姉弟の出会いを見ているんだけど、そういう事になると、あの子、何も教えてくれないんだな。
- 直子
- 「戻ってこないね」
- 比瑪
- 「そうですね」
- アカリ
- 「いいお野菜、一杯買えて良かったね、比瑪姉ちゃん」
- 「比瑪姉ちゃん」
- 比瑪
- 「あ、何?」
- アカリ
- 「勇の事、そんなに心配しても、しょうがないでしょ?」
- 比瑪
- 「あんな奴の事、誰が心配するもんですか」
- アカリ
- 「そっか〜?」
- 比瑪
- 「こら」
- クマゾー
- 「あっ……」
- 比瑪
- 「勝手に入っちゃ駄目でしょ?」
- クマゾー
- 「違うも、スパイだも」
- 比瑪
- 「お腹空いてる訳ないのに」
- クマゾー
- 「違うも、違うも」
- アカリ
- 「あ〜っ!」
- 比瑪
- 「あっ……!」
- 勇
- 「あっ……!」
- アカリ
- 「勇!」
- 比瑪
- 「何してんの、そんな所で……!」
- 女将さん
- 「知り合いなら、お金、貸してもらいな。こんな所の代金は安いんだから……」
- 勇
- 「いえ、知り合いじゃありません」
- 比瑪
- 「ちょっと、そういう態度はないんじゃない? みんな心配……」
- 男
- 「うわっ!」
- アカリ
- 「喧嘩だ!」
- 女将さん
- 「え?」
- 勇
- 「喧嘩?」
- 比瑪
- 「何て町さ……」
- 女将さん
- 「ちょいと、バケツの水をぶっかけるんだよ」
- 勇
- 「あ、はい」
- 女将さん
- 「こっちまで巻き添えにされちゃ堪んないから、追い出しな」
- 勇
- 「掛けますよ」
- 女将さん
- 「バシャッとね」
- 比瑪
- 「あれ、勇のお父さん?」
- 勇
- 「え?」
- アカリ
- 「そうみたい」
- 勇
- 「本当か? どれさ?」
- 怪しい男
- 「馬鹿タレが! 何も分かってねぇんだから……!」
- 「どうもすいません、先生」
- 研作
- 「いや……」
- 勇
- 「何で、あんな連中と一緒なんだ?」
- 比瑪
- 「お父さんでしょ?」
- 勇
- 「これ、頼む」
- 比瑪
- 「ちょ、ちょっと……!」
- アカリ
- 「勇、待って!」
- クマゾー
- 「僕も!」
- 比瑪
- 「待ちなさい!」
- 女将さん
- 「お嬢ちゃん、あの子は勘定の半分しか働いてないんだよ。払っていきな」
- 比瑪
- 「あぁ……」
- 比瑪
- 「アカリ」
- アカリ
- 「スパイ続行中」
- 比瑪
- 「え?」
- 店員
- 「姉ちゃん……」
- 比瑪
- 「え?」
- 店員
- 「これだけ貰うぜ?」
- 比瑪
- 「そんな……」
- 「クマゾー、アカリ!」
- クマゾー
- 「あっ……!」
- アカリ
- 「クマゾー、大丈夫か?」
- クマゾー
- 「だいじょ、だいじょ」
- 「むぅっ……!」
- アカリ
- 「静かに」
- 勇
- 「あんな連中をリクレイマーに勧誘しようってのか?」
- 「……え?」
- クマゾー
- 「行くなも」
- 勇
- 「こんな所で、逃げる訳ないでしょ」
- 比瑪
- 「そうかしら」
- アカリ
- 「勇のお父さんを追い掛けてるんだろ?」
- 勇
- 「その倉庫に入った。声を出すなよ。待ってるんだ」
- 比瑪
- 「クマゾーはいいわ。動くんじゃないのよ?」
- 「あんな事言っても、オルファンに帰るかもしれないし、油断なんか出来るもんですか」
- 勇
- 「プレート……?」
- 比瑪
- 「プレートがどうしたの?」
- 勇
- 「静かにして」
- 比瑪
- 「プレートを、勇のお父さんが持ってくって事ならさ」
- 「リクレイマーが新しいプレートを手に入れるって事よ?」
- 勇
- 「触んな」
- 「勝手な事すんなよ」
- 比瑪
- 「入口を見張るわ。勇はそこで監視して」
- 勇
- 「おい……!」
- 研作
- 「……全部、偽物じゃないか」
- 男
- 「金を出すのが惜しくなったのか?」
- 研作
- 「こんな物を口実に、私に接触するとは」
- 男
- 「はっ!」
- 研作
- 「うっ……!」
- 勇
- 「お、親父……!」
- 男
- 「本物だろうが偽物だろうが、俺達には関係がない」
- 「俺達をノヴィス・ノアに乗れるようにしてもらうぜ」
- 研作
- 「そ、そんな事は無理だ……」
- 男
- 「あんた! あんたの命を引き換えなら、どうとでもなる筈だ!」
- 研作
- 「ノヴィス・ノアは、無理だ!」
- 男
- 「強情だな……命縮めるよ、博士? 二、三日ここで考えてくれれば……やってくれるよな?」
- 〃
- 「誰だ!」
- 比瑪
- 「農家の人、ごめんなさい!」
- アカリ
- 「ジャガイモさん、ごめん!」
- クマゾー
- 「カボチャさん、ごめん!」
- 男
- 「どこの餓鬼だ!」
- 比瑪
- 「ごめんなさい!」
- 男
- 「うっ……!」
- 〃
- 「ふざけんな!」
- 比瑪
- 「あっ……!」
- アカリ
- 「えっ……!」
- 勇
- 「えいっ!」
- 研作
- 「勇!」
- 男
- 「やめねぇか!」
- 「うっ……!」
- 比瑪
- 「決まった!」
- アカリ
- 「偉いぞ!」
- クマゾー
- 「やったも!」
- 研作
- 「済まなかったな、勇」
- 勇
- 「別に、あんたを助けたくて来たんじゃない」
- 研作
- 「そうだろうが……」
- 勇、研作
- 「ん?」
- 男
- 「貴様達が要らねんなら、海に捨てちまう!」
- 比瑪
- 「クマゾー、下がって!」
- 勇、研作
- 「うっ……!」
- 研作
- 「しまった、あのプレートは生きているのか」
- 勇
- 「偽物が生きてんのかよ?」
- 研作
- 「あんな連中に、本当の事が分かるものか」
- 勇
- 「比瑪、アカリ、クマゾー、大丈夫か?」
- 比瑪
- 「こっちよ」
- 「プレートどうしたの?」
- 勇
- 「走ってった」
- 比瑪
- 「走っていった?」
- 民間人
- 「プレートが来るぞ!」
- 〃
- 「わっ……!」
- 〃
- 「近寄ったら危険だぞ!」
- 研作
- 「ノヴィス・ノアの、プレートの研究員です」
- 警察官
- 「近付いたら、リバイバルに巻き込まれるぞ。下がってなさい」
- 比瑪
- 「お巡りさんの言う通りよ? どうすんの?」
- 勇
- 「親父の口振りじゃ、少なくともグランチャー・タイプにはならない」
- 民間人
- 「プレートのみんなが、リバイバルするもんじゃないんでしょ?」
- 勇
- 「他人の車で……!」
- アカリ
- 「比瑪姉ちゃん」
- 比瑪
- 「追い掛けるっていったって……」
- 勇
- 「分かってるよ」
- 研作
- 「物事を諦めないというところは、母親そっくりだ」
- 勇
- 「並べよ」
- 比瑪
- 「このバイクの運転は難しいんだから……!」
- 研作
- 「一緒にオルファンに戻るか?」
- 勇
- 「ふざけるな! 何故、俺がオルファンから逃げたのか、分からないのか?」
- 研作
- 「たまには、外に出たくなるのは分かる」
- 勇
- 「あんたがオルファンの動きを止めようとしなかったからだ」
- アカリ
- 「お父さんを撃つのか?」
- 勇
- 「こうしなければならない時だってある」
- 研作
- 「オルファンは、自分の力でもうすぐ海上に出る。とっくに止められなくなっていた」
- 勇
- 「中からぶち壊せばいい」
- 研作
- 「止められるほどに壊せるものか」
- 勇
- 「ブレンパワードを使えばやれるんだろ?」
- 研作
- 「やれる訳がない」
- 勇
- 「ブレンとグランチャーが、本能的に反目し合ってるのは何故だ?」
- 「ブレンが、オルファンの中で活性化しないのは何故だ? それを考えれば……」
- 研作
- 「そうか、そこに方法があるのか……」
- 勇
- 「ブレンの抗体反応は、オルファンの体には毒になる」
- 比瑪
- 「そういう考え方があるんだ」
- 勇
- 「ブレンがパワーアップしてるってのは、オルファンには驚異になる筈だ」
- 研作
- 「お前のつもりなど」
- 勇
- 「わっ……!」
- 「親父め!」
- 研作
- 「親父……グランチャーで来たのか?」
- 「やっぱりだ。選りに選って、同じような所に隠して……!」
- 比瑪
- 「やる事が一緒なんて、やっぱり親子ね」
- 勇
- 「嫌味か?」
- 比瑪
- 「事実でしょ?」
- 研作
- 「ノヴィス・ノアと勇はどう動くか、手並みを見せてもらうぞ」
- アカリ
- 「そら」
- 比瑪
- 「待ちなさいよ! 追い掛けてどうするの?」
- 勇
- 「潰すんだよ」
- 比瑪
- 「親を潰したって、どうなるものでもないわ」
- 勇、比瑪
- 「あっ……!」
- アカリ
- 「比瑪姉ちゃん、勇、大丈夫か?」
- 比瑪
- 「……分かったわ。お父さんの行方を追うにしても、援護はするわ」
- 勇
- 「頼む」
- アカリ
- 「喧嘩してたのか?」
- 比瑪
- 「違うよ」
- アカリ
- 「ん?」
- 比瑪
- 「クマゾーは?」
- アカリ
- 「ん?」
- 比瑪
- 「あっ……!」
- クマゾー
- 「わぁぁっ!」
- アカリ
- 「あ〜っ!」
- 比瑪
- 「クマゾー!」
- 「どういう事なの?」
- アカリ
- 「やだ〜!」
- 比瑪
- 「勇、クマゾーが引っ付いてんのよ!」
- 勇
- 「ブレン、親父を追って……」
- 「ん?」
- 「ブレン、済まない」
- 「クマゾー、何やってんだ?」
- 「一体、何をやろうとしてたんだ?」
- クマゾー
- 「スパイだも、スパイ。比瑪姉ちゃんはいつも、勇をスパイしろって言うも」
- 勇
- 「まだそんな事言ってんのか、あいつ」
- 勇、クマゾー
- 「ん?」
- 勇
- 「親父の奴、真っ直ぐにオルファンに帰るのか」
- 研作
- 「このまま付いてきたら、勇……お前はまた、オルファンのアンチ・ボディになる」
- 「ブレンと人間のアンチ・ボディ化は、違うからな」
- アカリ
- 「そうなの、アイリーンさん」
- 比瑪
- 「だから、ブレンみんなで勇を追い掛けるんです」
- アカリ
- 「すぐ港に着くよ」
- 比瑪
- 「……ブレンがオルファンに対抗する者なら、元々、そういう力を持たされている訳よね?」
- 「だから、勇は一人で戦えると思ったんだ」
- 「なら、みんなでやれば、何とかなる……?」
- 研作
- 「海に浸ると落ち着くのは、太古からの記憶に抱かれているからだ」
- 「この意味を分かってくれ、勇」
- 勇
- 「クマゾーも居るんだって感じさせれば、ブレンは頑張ってくれる」
- ノヴィス・クルー
- 「船は外海に出るぞ」
- カナン
- 「ドクターの誘いに乗ってオルファンに近付けても、その後、どうするつもり? 勇……」
- ラッセ
- 「無茶する坊やだって思わないか?」
- ヒギンズ
- 「何としてでも、オルファンを止めたいんでしょ」
- 「私は好きだな。ね、ブレン?」
- ノヴィス副官
- 「キメリエスに進路を確保させろ。レディ1とレディ2は前衛だ」
- アイリーン
- 「ラッセ・ブレンが比瑪ブレンを桟橋まで運んでくれるわね?」
- カナン
- 「私も連れていきます」
- アイリーン
- 「なら、全員で比瑪ちゃんを迎えて、それから移動で間に合いますね?」
- カナン
- 「勿論。イランドを追い越せます」
- 勇
- 「何だと? オルファンはこんなに浮上してるのか」
- クマゾー
- 「負けるも?」
- 勇
- 「負けるもんか」
- 比瑪
- 「ブレン!」
- 「そこで待ってらっしゃい。すぐにウェッジが迎えにきてくれるから」
- アカリ
- 「うん。行ってらっしゃい、比瑪ブレン」
- 勇
- 「こんなに大きかったのか」
- クマゾー
- 「大きい? 大きいも?」
- 勇
- 「ああ」
- 「引かれてるのか、ブレン? 苦しくないか?」
- 「触る?」
- 「ここか?」
- 翠
- 「プレート台の上に休ませるだけでは、グランチャーは活性化しません」
- 「総合フェロモンの投与と、神経系への投与も忘れるな」
- シラー
- 「お呼びですか、ジョナサン・グレーン」
- ジョナサン
- 「ああ。フィジジスカの方から、グランチャーを出してくれと言ってきた」
- 「行ってやってくれ」
- シラー
- 「分かりました」
- 「ドクター翠、いやに張り切っているじゃないですか」
- ジョナサン
- 「グランチャー部隊の存在が分かったのさ」
- 翠
- 「ジョナサン・グレーン」
- ジョナサン
- 「はっ……」
- 翠
- 「新兵器の事で相談があります。手が空いたら研究室に」
- ジョナサン
- 「今でも宜しい?」
- 翠
- 「無論です」
- ジョナサン
- 「プレートの残りカスと言いますが、あれは使えます」
- 翠
- 「お帰りなさい」
- 研作
- 「おう」
- 翠
- 「どうでした、会議は?」
- 研作
- 「光合成とオーガニック・エンジンの関係をついた者が居た」
- 翠
- 「流石、人物は居るものですね」
- 研作
- 「オルファンと植物エネルギーの総量を再チェックする必要があるが……」
- 翠
- 「こちらも取り込み中ですが……」
- 研作
- 「やむを得んな」
- 依衣子
- 「ジョナサンまで一緒なのか」
- 研作
- 「クインシィ、体はいいのか?」
- 依衣子
- 「当たり前だ」
- 翠
- 「何事です?」
- 依衣子
- 「私が休んでいる間に、グランチャー部隊の編成を変えようとしたな?」
- 翠
- 「いけないかしら?」
- 依衣子
- 「部隊に関しては、全て私に任されてる。ガバナーからもね」
- 「ジョナサン、付き合いな」
- 翠
- 「私と彼でも、グランチャーの強化の相談をしています」
- 依衣子
- 「私と相談しろ!」
- 勇
- 「くっ……!」
- 「この辺りは、まだ手を入れてない所じゃないか?」
- 「すぐに戻るから……動くんじゃないぞ」
- 「近くの偵察だけだ」
- クマゾー
- 「すぐだも?」
- 勇
- 「ブレン、クマゾーを頼む」
- クマゾー
- 「あ、苦しい……!」
- 勇
- 「クマゾーを外には出すなよ?」
- クマゾー
- 「おしっこ……」
- カナン
- 「比瑪さん、出過ぎです。急がないで」
- 「オルファンは近いのよ? 勇と町で何があったの?」
- 比瑪
- 「勇が、お父さんのグランチャーに付いていけば、オルファンに潜り込めるって」
- カナン
- 「そんな馬鹿な……」
- 比瑪
- 「そうですか?」
- カナン
- 「え?」
- 比瑪
- 「カナンさん、リクレイマーの教義に縛られ過ぎてません?」
- カナン
- 「そうか……」
- 「信じ込まされてたけど、私は今、双子のブレンの一人に抱かれてる……」
- ヒギンズ
- 「比瑪もカナンもコックピットへ入って。私達は、オルファンの海域に入っているんだよ?」
- クマゾー
- 「降ろしてよ……漏っちゃうも」
- 「え?」
- 「有難う。勇に内緒、内緒な」
- 研究員
- 「いいね、シラー・グラス。助かる」
- シラー
- 「後、三箇所で済むの?」
- 研究員
- 「今日はね」
- シラー
- 「……ガバナーは何で、あんな伊佐美ファミリーに、リクレイマーのリーダーを任せたんだろうね?」
- 「昔は……」
- 「あっ……」
- 「まだここに居るね?」
- 研究員
- 「ああ」
- クマゾー
- 「あれ、どっちだったっけ?」
- シラー
- 「おい」
- クマゾー
- 「わっ……!」
- シラー
- 「ここは立ち入り禁止地区だぞ? 居住区の子が、何で入り込めたんだ?」
- クマゾー
- 「ご、ごめんも……ごめんなも」
- シラー
- 「泣くんじゃないよ。どこの居住区なんだい?」
- クマゾー
- 「ノ・バ……」
- シラー
- 「ああ、ノバビア区の子かい。半日歩きっ放しじゃなかったの?」
- 「こんな所まで探検するなんて、元気な子だ」
- 「お前みたいのが、銀河で暮らせるようになる新人類なんだろうね」
- 勇
- 「これじゃ、偵察する前に迷子になっちまう」
- 「え?」
- 研究員
- 「はっ……!」
- 「今の、伊佐美勇じゃないのか?」
- シラー
- 「参ったね。ミイラ獲りがミイラになっちまった」
- 「フィジジスカに連絡を取るか……」
- クマゾー
- 「む、向こうも。向こう」
- シラー
- 「そうかい?」
- 「あら……?」
- クマゾー
- 「わっ……!」
- シラー
- 「こ、こら!」
- 「放せ! 落とすぞ!」
- 「勇のブレンじゃないか」
- 「何でこんな所に居るんだ、こいつが……」
- 勇
- 「ん、何?」
- 「シラー、クマゾーを放せ!」
- シラー
- 「そういう事か!」
- 勇
- 「動くな!」
- シラー
- 「貴様……!」
- 勇
- 「クマゾーの面倒を見ていてくれたのか」
- シラー
- 「そういう趣味がある訳ないだろう」
- 勇
- 「弟達を食べさせる為、オリンピックの選手になろうとした気持ちを忘れてないなら、オルファンから出ろよ」
- シラー
- 「ブレンパワードに汚染された奴の話なんか、聞きたくもない!」
- 勇
- 「ブレンは、乗り手の気持ちを分かってくれるアンチ・ボディだ」
- シラー
- 「弟達を飢えで死なせちまった私の気持ちを、分かってくれる訳はないだろう!」
- 勇
- 「分かってくれるよ……!」
- シラー
- 「なら、あいつに涙を流させてご覧よ。胸が苦しいって悶えるかい?」
- 勇
- 「意気地なしの当て擦りか!」
- 研究員
- 「居たぞ!」
- シラー
- 「くっ……!」
- 研究員
- 「ブレンパワードが動いてる?」
- シラー
- 「何で潜り込まれたんだ?」
- 研究員
- 「そんな事言われたって……」
- シラー
- 「こいつ、活性化している……!」
- 勇
- 「よ、よし、クマゾーのお陰だ」
- クマゾー
- 「も」
- クマゾー
- 「ご、ごめん……ごめんな」
- 勇
- 「怒っちゃいない。一人にさして済まない」
- 「何?」
- シラー
- 「いけしゃあしゃあと、オルファンに入ってきて……帰すものか!」
- 勇
- 「こんな内輪喧嘩をして、何になるんだ!」
- カナン
- 「冗談でしょ?」
- 比瑪
- 「フリュード・スーツに着替えた方が良かったのかな……」
- 「あれ? 海底が明るいの?」
- 「ち、違うわ。あれ、オルファン……」
- 「駄目だ。オーガニック・レーダーが滅茶苦茶だ」
- 「こんなものに勇が引かれていったの? そ、そんなの……」
- クマゾー
- 「うぇぇ、比瑪姉ちゃん……!」
- 勇
- 「俺が抱いてやってるんだぞ。怖がるとブレンが焦るだろ」
- クマゾー
- 「比瑪姉……!」
- シラー
- 「往生際が悪いぞ!」
- 勇
- 「比瑪の所に帰りたかったら、俺とブレンを信じてろ!」
- シラー
- 「勇め……!」
- クマゾー
- 「ぶつかる!」
- 勇
- 「ぶつからない!」
- 「シラー、やるな!」
- シラー
- 「この! 私に斬られてしまえ!」
- 勇
- 「シラー! 闇雲にオルファンの為に戦ったって、お前の弟達が喜ぶものか!」
- シラー
- 「何の力も無かったから、弟達を飢え死にさせちまったんだ!」
- 「グランチャーの力があれば、こんな時代にした連中に仕返しが出来る!」
- 「オルファンが銀河旅行をすれば、星になった弟達にだって、会う事が出来る!」
- 勇
- 「そういう生命力を吸ってオルファンは浮上するんだ。その時は人類は全滅する」
- 「全滅したら仕返しする奴も居なくなる」
- シラー
- 「結構じゃないか!」
- 勇
- 「その命の力を、逃げる為に使うな! 生きる為に使わせるんだ、オルファンにも……!」
- シラー
- 「出来る訳ない!」
- 勇
- 「出来る!」
- 「目を覚ませ、シラー!」
- シラー
- 「煩い! みんな死んじまえ!」
- クマゾー
- 「死にたくないも!」
- 「死ぬと冷たいも! 死んだ母ちゃん、氷だったも! 何も言わないも!」
- シラー
- 「うぉぉっ……!」
- クマゾー
- 「や、やっつけちゃわないのか、勇?」
- 勇
- 「やっつけたって……やっつけたって、どうしようもないんだよ」
- 「グランチャーの大群……あんなにか!」
- 「逃げる!」
- カナン
- 「数が読めないけど……」
- 比瑪
- 「勇が浮上している?」
- ラッセ
- 「敵情視察もしてないんだぞ」
- ヒギンズ
- 「見た目の数は、20とか30という数」
- ラッセ
- 「勇を収容して後退だ」
- クマゾー
- 「比瑪姉ちゃん!」
- 勇
- 「下がるの、急げ!」
- 比瑪
- 「クマゾーは居るのね?」
- クマゾー
- 「逃げるも! グランチャーが一杯だも!」
- 比瑪
- 「分かってる」
- ヒギンズ
- 「イランド隊には、偵察・監視依頼します」
- 「上昇」
- カナン
- 「宜しい? 空域、離脱します」
- アカリ
- 「日本とお別れするの?」
- 比瑪
- 「そうだね……」
- 「ね、シラー・グラスってどういう人?」
- クマゾー
- 「強い、優しい、肩硬いも!」
- 比瑪
- 「昔から知り合いなんだよね」
- 勇
- 「そりゃ、色々あったけど……」
- 比瑪
- 「色んな女の人、知ってんだ」
- 勇
- 「他人の事なんか、何も分からないよ」
- 比瑪
- 「そうなの? そうなんだ……」