第1話 聖戦士たち
- 男
- 「よよ、未来のモトクロッサーのエースがそんなクルージング・マシンに乗るなんてよくないよ?」
- 「金持ちがやるもんじゃないんだよな。モトクロスってのはハングリーなんだ」
- 「やめちゃえってんだよ」
- 「わっ……!」
- 「野郎!」
- 「あっ!」
- 「き、消えた……!」
- 「ど、どうしちまったんだろう?」
- ナレーション
- バイストン・ウェルの物語を覚えている者は幸せである。
- 私達は、その記憶を記されてこの地上に生まれてきたにも拘らず、
- 思い出す事の出来ない性を持たされたからだ。
- それ故に、ミ・フェラリオの語る次の物語を伝えよう。
- リムル
- 「あっ……」
- ゼット
- 「三人目はマシンとご一緒とはな」
- ルーザ
- 「私はもう、休ませていただきます」
- ドレイク
- 「恐ろしくなったのか、ルーザ?」
- ルーザ
- 「禁を破るのを見ているのは、気持ちの良いものではありません」
- バーン
- 「……駄目なのか?」
- ガラリア
- 「どうも……」
- ゼット
- 「そんな馬鹿な……」
- ドレイク
- 「どうしたか?」
- バーン
- 「はっ、それが……」
- ガラリア
- 「シルキーが苦しそうです」
- ショット
- 「せめて、もう一人は欲しい」
- ドレイク
- 「ショット、もう休ませろ。既にシルキーは使い過ぎだ」
- ショット
- 「はっ」
- ドレイク
- 「任せたぞ」
- バーン
- 「無理そうです。水牢に戻します」
- ショット
- 「やむを得んな」
- バーン
- 「揚げろ」
- 「結界は二重に張れ。フェラリオの女共が、シルキーを取り戻しに来るとも限らんからな」
- 兵士
- 「はっ!」
- バーン
- 「ショット様、ゼット様はお休みを」
- ゼット
- 「今夜の三人を宜しくな」
- バーン
- 「はっ、ゼット様」
- 兵士
- 「フェラリオだ!」
- ガラリア
- 「ギブンの所のか!」
- バーン
- 「矢だ! 弓を!」
- チャム
- 「地上の人は帰れ!」
- バーン
- 「ちっ、チャム・ファウか」
- ガラリア
- 「ニー・ギブンに入れ込んでいるフェラリオ」
- バーン
- 「結界は二重だぞ」
- 兵士
- 「はっ、バーン様」
- 「よし、底を開け」
- 「いいぞ」
- バーン
- 「地上から来た方、事情説明に多少の時間は掛かる。私と御同道願えないかな?」
- ショウ
- 「嫌だと言ったら?」
- ガラリア
- 「シルキー・マウは大した力は持っていないんだ」
- 「あんたが嫌だと言っても、好きに地上には帰れないよ」
- ショウ
- 「それでも嫌と言ったら?」
- バーン
- 「力尽くでも従わせる」
- ショウ
- 「それは聞けない!」
- 「ふっ!」
- バーン
- 「ぬっ!」
- ショウ
- 「てぇっ!」
- 「うっ、くっ……!」
- ガラリア
- 「バーン!」
- バーン
- 「流石、地上人だ。オーラ・ロードに乗れるだけの力を持っている」
- バーン
- 「機械の館だ。諸君らのいう兵器廠といった所かな」
- トカマク
- 「バーンさんよ、こいつ、外してくれないか?」
- バーン
- 「夕べのように抵抗されては敵わんからな」
- トカマク
- 「何が『ははは』だ」
- 「あのシルキーとかっていうフェラリーの力がなけりゃ、地上に帰れないのかなぁ?」
- ショウ
- 「フェラリーじゃない。連中はフェラリオって言ってた」
- トッド
- 「俺達を地上の世界からこのバイストン・ウェルに強引に連れてきた連中が」
- 「戻せないって事あるのかよ?」
- ショウ
- 「そいつはどうかな。解毒剤のない毒ってのはあるんだぜ?」
- トッド
- 「お前は連中の言う事を信じるのかよ?」
- ショウ
- 「信じるも信じないも、まだ何も分かってないんだ」
- 「これは夢かも知んないし……」
- トッド
- 「これが夢かよ。え、ジャップ?」
- トカマク
- 「あ、何だありゃ?」
- トッド
- 「面白そうじゃねぇか。少しは様子を見るのもいい。ニューヨークは不景気だしな」
- トカマク
- 「そりゃハリコムだって同じだ。俺だって軍に戻ろうかって考えてた所だしな」
- トッド
- 「ジャップはどうすんだよ?」
- ショウ
- 「ジャップってのはやめにしてくれないか? ヤンキー」
- トッド
- 「ちっ」
- トカマク
- 「あんた、やめにしないか。こいつの空手の腕は夕べ見たろ?」
- 兵士
- 「降りろ」
- トカマク
- 「何だありゃ?」
- 兵士
- 「オーラ・ボム、ドロだ」
- トッド
- 「ドロ?」
- 「まるでUFOだな」
- バーン
- 「ショット・ウェポン様が、この国で始めて開発してくださった機械だ」
- 「この世界を支えるオーラの力を吸い込んで空を飛ぶ」
- 「この世界の生物の仕掛けと地上の技術を結び付けたのが、ショット・ウェポン様だ」
- トッド
- 「何だ?」
- バーン
- 「マルスだ。オーラ・バトラーのワイヤーになる」
- ショウ
- 「はぁ……」
- バーン
- 「地上の方々なら、あれが何かお分かりだろう?」
- トッド
- 「あ、ありゃ……!」
- ゼット
- 「おぉ、バーン殿」
- 「どうだ、協力する気になったかね?」
- トッド
- 「こ、こんな所でICの組み立てか」
- ゼット
- 「オーラ増幅器の為の部品だ」
- バーン
- 「オーラ・バトラーを見せよう」
- 「これがドラムロだ。今夜私が使ってみせる」
- トカマク
- 「こんなロボット、すぐに動かせっていうのかよ」
- トッド
- 「コックピットを見せてくれないか?」
- バーン
- 「協力すると言うのならな」
- トッド
- 「こいつを取ってくれりゃ、友好的にもなる」
- バーン
- 「良かろう」
- トッド
- 「へぇ、モニターがある。パネルが正面か」
- 「意外とシンプルじゃないか」
- ショウ
- 「動かせる訳ないじゃないか」
- バーン
- 「この世界の人間は機械に頼るしかないが、地上の方々はオーラの力がある」
- 「その力だけで自在に動かせる」
- トカマク
- 「でもな、操縦する必要はありそうだ」
- バーン
- 「飽くまでも補助的なものだ」
- ショウ
- 「オーラとかって生体エネルギーの存在なんて、信じられないな」
- バーン
- 「呼び掛けにも応じたろ?」
- トッド
- 「へ〜、マジック・ミラーかよ。内側から見ると透けてるぜ?」
- トカマク
- 「外からは殆ど見えない」
- トッド
- 「へぇ……」
- バーン
- 「キマイラグの殻を磨いて使っている」
- トカマク
- 「ショットって奴、凄い事やるな」
- トッド
- 「手柄を立てれば地上に帰れるとか、どっかの王様にでもしてくれるのか?」
- バーン
- 「シルキーの協力を得られればな」
- 「ここに居て、カリフォルニアぐらいの土地も手に入れられる」
- トッド
- 「カリフォルニアを知っているのか?」
- バーン
- 「ショット様の出身地であろう」
- トカマク
- 「あ、でもさ……」
- バーン
- 「今夜の宴遊会でドレイク様に引き合わせよう」
- トッド、トカマク
- 「おっ……」
- ショウ
- 「怪獣……!」
- ルーザ
- 「貴方」
- ドレイク
- 「心配するな」
- 「バーンが来た」
- ルーザ
- 「バーン?」
- トカマク
- 「見掛け倒しじゃないか」
- トッド
- 「らしいな」
- 「おいジャップ、ここに居たら危ないぜ?」
- ショウ
- 「あぁ」
- ショット
- 「アトラクションだ。大丈夫だと言ったろ?」
- トッド
- 「しかし……」
- ショット
- 「アメリカ人同士だ。私の仕事を信じてもらいたいな」
- ショウ
- 「へぇ、あんなに動き回れるのか」
- バーン
- 「この力、全てドレイク・ルフト様の為に!」
- ドレイク
- 「善き民よ、勇敢なる戦士達よ。バイストン・ウェルは人の魂の安息の世界として悠久の時を重ねた」
- 「しかしこの百年余りの世の乱れは、歴史が我らコモンに証の時を与えたのであろう」
- 「この時にあたり、我らは地上界からショット・ウェポンを迎え、更に新たに戦士を迎えた」
- 「これは我らに世を治めよとの啓示ではあるまいか」
- 「そして、オーラ・バトラーの威力があれば、我らはアの国を穏やかに治め」
- 「全ての人々に未来の平安を……」
- ショウ
- 「うっ……!」
- ドレイク
- 「ギブン家の……!」
- バーン
- 「ニーめ、オーラ・シップまで」
- ガラリア
- 「これ以上の侵攻を許すなよ。13号機は後方へ回れ!」
- 「バーンめ、何故追わない?」
- 「ドレイク様を城まで護衛する」
- ルーザ
- 「貴方も見縊られたものですね。ショット様のお陰でこの電気とやらを手に入れ」
- 「やれオーラ・バトラーだドロだと言いながら、軍事費を手に入れる為にその技術を他国に売る……」
- 「これでは、アの国の支配さえ出来ますまい?」
- ドレイク
- 「ルーザの口出しする事ではあるまい?」
- 「私の夢は、バイストン・ウェルそのものを手に入れる事だ」
- 「その為には金も要るし、軍を動かす大義も要るのだ」
- ルーザ
- 「大義?」
- ドレイク
- 「ギブン家がオーラ・バトラーで、我が方の善良な人々を殺傷する」
- 「故に、我が方はギブン家を討つ……これが義だ。名目だ」
- ルーザ
- 「偽善ですか?」
- ドレイク
- 「善だよ。私は善き事をしている……深甚だな」
- ショウ
- 「海と陸の間にある世界、バイストン・ウェル」
- 「その中の国ア、その国の地方領主がドレイク・ルフト……」
- 「ふぁっ……」
- 「夢でもないし、現実だなんて」
- 「眠れやしない」
- チャム
- 「ええいっ!」
- ショウ
- 「何だよ?」
- 「こいつ……!」
- チャム
- 「地上の人、ドレイク・ルフトに手を貸すのやめて?」
- 「ニーを苛める人は……!」
- 「きゃっ!」
- 「は、放して!」
- ショウ
- 「あっ!」
- 「歯があるのか」
- チャム
- 「ニーを苛めたら、今度は殺してやる!」
- 「あんっ!」
- 「ベェッ!」
- ガラリア
- 「何故、バーンは出動しない?」
- バーン
- 「夕べ、ニーを追えなかったのも、ドラムロがまだ完全でないからだ」
- 「ゼット殿は、整備が終わらぬ内は渡せぬという」
- ガラリア
- 「ゼット殿が?」
- バーン
- 「その方がいいのだろう? 手柄が独り占めに出来るからな」
- トッド
- 「ひぇ〜、っと」
- 「初めての物は疲れる」
- 「しかしショットさんよ、魅力的なマシンを造ってくれたもんだな」
- ショウ
- 「へっ、トカマクっての、口程じゃないじゃないか」
- トカマク
- 「っと、へへっ……」
- ショット
- 「整備兵、点検急げ」
- 兵士
- 「はっ、ショット様!」
- トッド
- 「生体エネルギーがキーになってるマシンだって、分かるような気がするな」
- ショウ
- 「慣れればパワー・アップもするっていうの?」
- ショット
- 「勿論だ。マシンの力をコントロールしていくのは、人の生体エネルギーのオーラなのだからな」
- トッド
- 「しかし、ロボット工学の新鋭が、こんな所でこんな事をやっているとはねぇ」
- ショット
- 「口の利き方は気を付けた方がいい。私はこの地では高貴な立場だ」
- バーン
- 「ショット様、如何でありましょうか」
- ショット
- 「ガラリアの偵察行に同道させます」
- トッド
- 「ま、戦いはガラリアさんとかに任せるけれどな」
- バーン
- 「流石に勇ましき方々……オーラ力の持ち主達だ」
- トカマク
- 「ヒヒッ……」
- トッド
- 「おう」
- ショウ
- 「地上にはいつ帰してくれるんだ?」
- バーン
- 「君の名がこのアの国に轟くようになれば、恩赦もあろう」
- 「戦士は選ばれた民だ。騙されたと思って遣ってみるのだな」
- ショウ
- 「んっ……」
- ガラリア
- 「地上の方々、ご用意は宜しいか?」
- ショウ
- 「宜しいよ!」
- トカマク
- 「行くよ、行くよ」
- バーン
- 「……ショット様、火器は持たせないのですか?」
- ショット
- 「ああ。急いで本気にさせる為には、多少は危険な目には遭わせねばな」
- 「やってくれ」
- ショウ
- 「こんなの見てると、生体エネルギーなんて関係ないようだがな」
- 「リア・モニターと無線回線と……」
- トッド
- 「トカマク、ショウ、いいのか?」
- ショウ
- 「良好だ。行けるぞ」
- ガラリア
- 「真っ直ぐにギブンの領地に入る。イヌチャン・マウンテンだ」
- 兵士
- 「はい」
- トッド
- 「ジャップ、地平線を見るんだ。そうすりゃ機体の方位が分かる」
- 「といっても、ここはピシッとした地平線はなしかよ」
- ショウ
- 「よし、引き起こしをやってみる」
- 「くっ……!」
- 「わぁぁっ!」
- ガラリア
- 「ショウ・ザマ、勇気があるのは感心するが程々にな」
- トッド
- 「バイクじゃないんだよ、ジャップ?」
- 「空力特性、機体強度、ちゃんと考えてな」
- ショウ
- 「分かってるよ」
- 「大体、ちゃんと使ってみせなくちゃならない理由があるのかよ」
- 「ちっ……!」
- 「何だ?」
- ガラリア
- 「敵だ! 各機!」
- ショウ
- 「あれは……!」
- 「ん?」
- トッド
- 「モーター・グライダーじゃないか。あんなので……」
- トカマク
- 「わっ! ど、どうすりゃいいんだよ……!」
- トッド
- 「空でチャンバラをやるつもりはないぜ! ガラリアさん、落としてくれよ!」
- ガラリア
- 「ニーだ! ニー・ギブンめ!」
- 「砲撃手、必ず落とせよ!」
- 兵士
- 「はっ!」
- ショウ
- 「何やってんだ! 一方的じゃないか!」
- 「夕べの……!」
- ガラリア
- 「ショウのダンバインか?」
- 「トッド、手を貸してやれ!」
- トッド
- 「そうは行くかい」
- 「先制攻撃を受けるって事は、夕べの船も出てくるんじゃないの?」
- ショウ
- 「そう簡単に撃たせるかよ!」
- マーベル
- 「地上の人、ドレイクに手を貸すのはやめて欲しい!」
- ショウ
- 「何、誰だ?」
- マーベル
- 「ダーナ・オシーのマーベル・フローズンだ」
- 「善悪の見境もなしにドレイクに手を貸す馬鹿な男……」
- 「この世界の事を、このアの国が分かってドレイクに手を貸しているの?」
- ショウ
- 「ちっ、うぅっ……!」
- マーベル
- 「もう一度頼みます!」
- ショウ
- 「夕べ仕掛けてきたのは、あんたらだろう」
- マーベル
- 「戦力の少ない私達には、ああするしかなかったんです。もう少し事情を分かって」
- 「まだミサイルがあります! 動かないで!」
- ショウ
- 「あんたも地上から来たのか?」
- マーベル
- 「そう」
- 「ドレイクという人は、権力欲に取り憑かれた男だという事が分かりませんか?」
- ショウ
- 「分からないな。ここには来たばかりなんだ!」
- マーベル
- 「せっかく、せっかく……なら、貴方を殺します!」
- ショウ
- 「出来るもんか!」
- マーベル
- 「分からず屋!」
- ガラリア
- 「ニーを追ったドロは?」
- 兵士
- 「戻りません」
- ガラリア
- 「ダンバインとドロが2機……」
- 兵士
- 「戻りますか?」
- ガラリア
- 「トッドという男、何もしなかった……」
- ショウ
- 「マーベル・フローズン……あの女……」
- バーン
- 「トッド・ギネス、何故戦わなかったのか?」
- トッド
- 「冗談言ってもらっては困る。完熟飛行で戦いが出来る訳はない」
- 「第一、飛び道具一つ持たしてもらえずに戦える訳がないだろう?」
- バーン
- 「ショウ・ザマは戦った」
- トッド
- 「奴はド素人だからだ。空を飛ぶってのは簡単な事じゃない」
- バーン
- 「それは分かる……が、トカマク殿を失う事はなかった」
- ガラリア
- 「バーン、これでロムン・ギブンに反逆の意思がある事は明らかだ」
- 「今夜ロムンの館、鍛冶工場の攻撃をしたい」
- バーン
- 「それはドレイク様の判断される事だ」
- ガラリア
- 「ドロを2機も失った」
- バーン
- 「未熟だからだよ」
- 「協力してもらえるかね? ショウ・ザマ」
- ショウ
- 「パイロットとしてはトッドの言う通り、俺はそそっかしいらしい」
- 「適正がない」
- バーン
- 「いや、良きオーラ力がある」
- ショウ
- 「なら、益々自信はないな」
- 「けど、俺にだって日本人のプライドってのはある」
- 「生かしてもらっている分だけはやらせてもらうよ」
- バーン
- 「君の国の名前か?」
- ショウ
- 「そうさ。こういった別の所に来ると血が騒ぐのね」
- 「ダンバインってのも気に入りそうだし……」
- バーン
- 「若き地上人、期待する」
- ショウ
- 「有難う」
- 「一体、ここはどこなんだ……?」