第8話 再び、ラース・ワウ

前回のあらすじ
バイストン・ウェルの物語を覚えている者は幸せである。
私達は、その記憶を記されてこの地上に生まれてきたにも拘らず、
思い出す事の出来ない性を持たされたから。
それ故に、ミ・フェラリオの語る次の物語を伝えよう。
リムルを脱出させたいと思うニーの計画は、
バーンの操る新式オーラ・バトラーの前に失敗してしまった。
キーン
「痛む?」
マーベル
「ううん、大丈夫……キーンの方は?」
キーン
「もう完全よ。治ったわ」
マーベル
「嫌ね、怪我人同士で労わりあって」
キーン
「ふふっ……!」
マーベル
「有難う」
「……何よ、その顔」
ショウ
「別に……」
マーベル
「私がニーの手伝いしてるの、気に入らないんでしょ?」
ショウ
「まさか」
マーベル
「ラース・ワウに集まってる軍を見たでしょ? 個人的な感情で……」
ショウ
「分かってるさ。だから俺だって、こうやってやってるじゃないか」
マーベル
「私だって、ニーが好きだから手伝ってるってものじゃないわ」
ショウ
「へぇ……」
チャム
「バイストン・ウェルの平和の為よ」
ショウ
「正義の味方なんだ?」
チャム
「当たり前でしょ」
マーベル
「地上には帰れるようにするわ。ナックル・ビーの消息は捕まえてみせるから……」
ショウ
「いつになる事やら……」
ニー
「そんなに地上に帰りたいのか?」
ショウ
「悪いかよ、それが! 国へ帰りたいと思うのが……!」
ニー
「報酬が欲しいのなら、言ってくれ」
ショウ
「そういう事じゃないでしょ? あんたの問題なんだよ、あんたの……!」
チャム
「喧嘩は駄目よ、喧嘩は……!」
ショウ
「煩いな!」
チャム
「きゃぁんっ!」
キーン
「どうしたの?」
ショウ
「よくもマーベルは、平気であんな奴と付き合ってるな」
マーベル
「悪かったわね……でも自由に帰れないとなれば、仕方がないじゃないの」
ショウ
「俺は嫌だぜ?」
ニー
「どうしたんだ?」
マーベル
「別に……」
ゼット
「流石バーン様、上々の使い方です」
バーン
「トリガーの緩みと左腕の動きが、やや重い」
ゼット
「分かりました。調節しときます」
バーン
「頼む」
ショット
「お気に召して頂けたようで」
バーン
「はい」
トッド
「ダンバインを圧倒してた所なんか、流石ですな」
バーン
「開戦に間に合ってよかった。後はフラオン王の許可さえ得られれば……」
トッド
「戦争が、そんなに簡単に許されるのか?」
バーン
「その読みがあったからこそ、親方様は国王へ上申書を差し出したのだ」
「噂をすれば……」
ドレイク
「我が方に大義は立ったな」
「小競り合い以上の争いは許されておらぬが、このお墨付き一枚あれば我々は、官軍……」
ガラリア
「では、いよいよ……」
ドレイク
「ロムン・ギブンと共に我らを脅かしたミの国……懲らしめの為の準備を!」
兵士
「オーライオーライ、ゆっくり」
 〃
「ビランビー、収納終わります」
ミヅル
「バイストン・ウェルの歴史上、初めての大機動部隊だ」
「その機関の兵として恥ずかしくない働きをせよと、全員に伝えろ」
兵士
「はっ!」
バーン
「俺も幸せ者だな」
ニグ
「はっ……?」
バーン
「これだけの機械の指揮を任されたのだ」
ニグ
「はい」
バーン
「キブツ・キッス、ドロの調子は如何かな?」
キブツ
「上々であります。ご安心を」
バーン
「結構」
ガラリア
「バーン!」
「何故、名誉ある戦いに私を参加させない? 私も行く!」
バーン
「ガラリアはトッドと共に残れというのが、親方様の命令だ」
ガラリア
「私が一人前ではないというのか?」
トッド
「男として捨てたもんじゃないぜ、俺は」
ガラリア
「どういう意味か?」
トッド
「一緒に守りに就くのもいいんじゃないの?」
ガラリア
「私は戦場に出て……!」
バーン
「ガラリア、後は任せる」
ガラリア
「バーン!」
チャム
「キーン!」
「キーン……」
「キーン、元気出してよ。いつものようにさ」
キーン
「無理言わないで」
チャム
「でも、キーン……」
キーン
「父さんはギブン家を裏切って、ドレイクの軍隊に入ったのよ? 私達の敵になるのよ?」
チャム
「それはバイストン・ウェルじゃよくある事じゃない。キーンのせいじゃないわ」
キーン
「有難うチャム。でも大人って、どうしてああなの……?」
「ニーに申し訳なくってさ」
ニー
回想:「何故、お前がここに……?」
キブツ
回想:「キッス家としましては……」
ニー
回想:「ドレイクに味方せざるを得ない訳か」
キブツ
回想:「私にも、部下も居れば家族も居ります」
ニー
「キブツ・キッスの本心は分かる」
リムル
回想:「ニー!」
ニー
回想:「リムル!」
ニー
「俺も自分の都合だけで動くからな……」
ショウ
「マーベルから聞いた」
ニー
「また文句か? 嫌なら降りたっていいんだぞ。湖の上を歩けるものなら」
ショウ
「俺はね、あんたが一々中途半端なやり方しかしてないのが嫌なんだ」
ニー
「俺がいつそんな事をやった?」
ショウ
「シルキーとリムルを助けずに、ラース・ワウを離れてミの国へ行くんだって?」
ニー
「ドレイク軍が動き出そうというんだぞ」
「ミの国はドレイク程に機械化部隊は持たないから、ミの国は苦戦する」
ショウ
「だからって俺達が出て行く事はない」
マーベル
「説明したでしょ?」
「ミの国の正規軍に協力して、私達のやろうとしている事をバイストン・ウェル中に知らせなくっちゃ」
ショウ
「そうか……ナックル・ビーでなくてもいいんだ」
マーベル
「何が……?」
ショウ
「元々、シルキーが俺を呼んだんだ。あの人なら地上へ帰してくれる力があるんだろ?」
ニー
「リムル一人をラース・ワウから連れ出せなかったんだ。水牢のシルキー・マウを連れ出せる訳はない」
ショウ
「そうかい」
ニー
「俺はリムルを諦めたのだ。今後は大義の為に戦う」
マーベル
「その為に、私達はミの国に協力するのよ?」
ショウ
「みんなが助けないというなら、俺一人でも助け出す」
「ニー、降ろしてくれよ」
マーベル
「ショウ……いい加減にして。一人で何が出来るっていうの?」
ショウ
「やるしかないだろう!」
チャム
「喧嘩は駄目よ!」
ショウ
「ニー、早く降ろせ!」
ニー
「分かった。今直ぐ着陸するから、どこへでも出て行け!」
マーベル
「ニー……!」
ニー
「大義を理解せん男など、要らん」
ショウ
「ニーがそれを分かってるとは思えないよ」
マーベル
「ショウ……もう一度だけ我慢して、私達と戦って」
ショウ
「マーベル、キーン、チャムも、俺と一緒に来ないか?」
チャム
「私はバイストン・ウェルのフェラリオよ?」
兵士
「いいか、この四人は領主ドレイク・ルフト様に逆らう不届き者だ」
「見付けて居場所を報せた者には、銭二袋だ」
村民
「へぇ、ギブン様とこの若主人じゃないか」
兵士
「いいな、すぐ報せるんだぞ!」
村民
「戦争も始まるっていうしよ、一体どうなっちまうんだ?」
 〃
「機械が空を飛ぶってのも変だしよ」
ショウ
「いよいよお尋ね者か、俺も……」
トロウ
「あ、聖戦士だ!」
ショウ
「ん……?」
トロウ
「知ってるよ僕、この人と知り合いなんだ」
村民
「また、この嘘吐きトロウが出鱈目言って」
 〃
「ははっ……!」
ショウ
「あのお喋りが……!」
トロウ
「本当だってば。親方の姫様と会う手伝いをしてやったんだ」
村民
「そうかい、そうかい」
トロウ
「本当だよ」
「あ、そう言えばまだ地上の話聞いてねぇや」
村民
「館の姫様だと、ははっ……」
トロウ
「あれ?」
ショウ
「はっ……!」
ホン
「お静かに」
ショウ
「脅かすなよ」
ホン
「変に声を立てられたりすると、困りますからな」
ショウ
「何してんだい、こんな所で……」
ホン
「ドレイク・ルフトの動きを探っていた帰りですよ」
ショウ
「だったら、さっさとニーの所へ……」
トロウ
「あっ、ショウだ!」
ショウ
「はっ……!」
ホン
「しまった!」
トロウ
「わっ、くっ……!」
ホン
「見られたからには口止めせねばなりませんな」
トロウ
「ミ・フェラリオを殺すと地獄に落ちるぞ! 七代までスワームになるぞ!」
ホン
「構わぬ!」
トロウ
「ひぃぃっ……!」
ショウ
「やめろ」
「ここは俺に任せてくれ」
ホン
「しかし……」
ショウ
「大丈夫だから……さ、放して」
「な、トロウ友達だろ? 俺達の事を黙っててくれれば、ほら、地上の面白い話を聞かせてやるぜ?」
トロウ
「ふん、同じ手は食わないよ」
ショウ
「そうか、取って置きの面白い話なんだぜ?」
トロウ
「え、何々?」
ショウ
「言わないか?」
トロウ
「言わない。黙ってる。だから何? その面白い話って……」
ホン
「ぬっ……!」
ショウ
「どうした?」
トロウ
「わ〜すげっ……!」
ショウ
「機械化部隊が動き出したという事は、兵もラース・ワウを出たんだな」
ホン
「はい」
ショウ
「なら、俺の計画通りに行くじゃないか」
ホン
「は……?」
ショウ
「明らかに手薄のラース・ワウからなら、リムルもシルキーも助け出せるんじゃないのか?」
ホン
「あ、或いは……」
ショウ
「ゼラーナの居場所は分かるか?」
ホン
「そりゃ、商売柄……」
ショウ
「なら、今の事をニーに話して、手を貸せと言ってこい」
ホン
「はい」
ショウ
「俺は、地下水道の入口で待ってる」
ホン
「はい」
ショウ
「金はニーから貰え」
ホン
「へぇ」
ショウ
「トロウ、また今度な!」
トロウ
「あ、また騙した……!」
村民
「トドって馬宿に置いといてくれよ、ラース・ワウの」
ショウ
「東の門にあるんだろ?」
村民
「ああ」
ガラリア
「笑うな!」
トッド
「やめなよガラリア」
ガラリア
「兵の前で、私を笑った!」
ショット
「やめないか、二人共」
ガラリア
「私を女と見て、トッドが馬鹿にした!」
ショット
「貴方はラース・ワウの守りを任されているのですよ?」
ガラリア
「そんなものは、あの寝返り男のキブツ・キッスにでもやらせればいい」
ショット
「それは違いますな」
ガラリア
「何が違うのだ?」
ショット
「主の身辺を守る者は、余程信用がなければ置く訳には参りますまい」
ガラリア
「流石は地上人……詭弁を朗するのも上手いものだな」
リムル
「お母様……」
ルーザ
「気分はどうです?」
リムル
「あの兵達を下がらせてください」
ルーザ
「貴方が落ち着いて、お父様にご心配を掛けなければね」
「それに、いつまたニー達不逞の輩が来ないとも……」
リムル
「ニーが何故、不逞なのです?」
ルーザ
「ギブン家の人間は、我が領内を侵略しようとしたのですよ?」
リムル
「嘘です。ギブン家がそうしたとしたのなら、それはお父様が……」
ルーザ
「ニーを庇い立てするような真似はおやめなさい! お父様のご苦労も分からずに……!」
リムル
「お母様……!」
ルーザ
「ニー・ギブンの首には賞金が掛けられました」
リムル
「え、何ですって……!」
ルーザ
「捕えられるのも時間の問題でしょう」
リムル
「何という事を……」
マーベル
「どうするの、ニー?」
ニー
「今我々が遅れれば、それだけミの国は苦戦するだろう」
マーベル
「でもショウの言うように、リムルを救い出すチャンスは今だわ」
ニー
「ショウは自分が地上に帰りたいから、シルキー・マウと接触をしたいだけだろう」
マーベル
「ニー……そういう言い方はないでしょう?」
「ラース・ワウの兵が移動したんだから、ニーの時とは違うわ」
ニー
「ショウのやる事は違うというのだな」
チャム
「ニー、私がラース・ワウの偵察に行ってこようか?」
ニー
「その必要はない」
マーベル
「ショウは一人で忍び込んででも、シルキーに会おうとするわ。その騒動が起これば……」
ニー
「ラース・ワウに行けばいいのだな? 分かった、行こう」
兵士
「動くぞおい、へへっ……」
ショウ
「はっ!」
兵士
「うわっ!」
 〃
「敵だ、敵襲だ! 門を閉めろ!」
 〃
「そこの青いの、機械を止めるんだ!」
ドレイク
「何事だ?」
「ん、ショウ・ザマ……!」
兵士
「わぁぁっ……!」
ショウ
「くっ……!」
「迂闊だった!」
「何、キーン……!」
キーン
「ショウ、掴まって!」
ショウ
「一人なのか?」
キーン
「ゼラーナも来るわ」
トッド
「お誂え向きにお客さんが来たじゃないか」
ガラリア
「冗談が過ぎるぞ、トッド!」
トッド
「急げよ!」
ショウ
「マーベルは?」
トッド
「ガラリア……さっきの話だが、上手くやるかやらぬかで、ドレイクの俺達の見方が変わる」
ガラリア
「分かっている」
ニー
「武器も持たずに、無茶な男だ」
ショウ
「俺が走ってたからここまで侵入出来たんだろ?」
「マーベルは?」
ニー
「フォウだ。出るぞ!」
ショウ
「了解!」
マーベル
「ショウ、乗る事ないでしょ?」
ショウ
「フォウはダンバインの運送用なんだろ? 利用させてもらうよ」
「来たぞ!」
トッド
「行くぜ、ガラリア!」
ガラリア
「おう!」
「トッド、私はゼラーナに掛かる! いいか?」
トッド
「頼むぞ!」
ショウ
「どうするマーベル?」
マーベル
「ニーに任せましょう。リムルとシルキーが目的でしょ?」
「来るわよ!」
ショウ
「トッドか!」
「避けた!」
トッド
「俺だって聖戦士だぜ? 多少はオーラ力は上がっている!」
ショウ
「トッドめ、オーラ力が上がってきている!」
「機銃が使えるようになったのか!」
トッド
「ショウ!」
ショウ
「トッド!」
マーベル
「んっ……!」
ガラリア
「ニー・ギブンの好きにはさせない!」
チャム
「あ〜ん!」
ニー
「各機銃座、地上を掃射しろ! キーンはバラウを狙え!」
キーン
「当たれ当たれ、当たれ!」
ドレイク
「ドロ隊を回せ! 後2機はある筈だ!」
兵士
「わっ……!」
ルーザ
「あぁっ……!」
「リムルは地下牢へ避難させましたか?」
兵士
「はっ、いえまだ……」
ルーザ
「急がせい!」
ガラリア
「ゼラーナが館に降りた! これでは爆撃は出来ない!」
「トッド、降りるぞ!」
トッド
「簡単に言ってくれるぜ……!」
ショウ
「はっ、くっ……!」
トッド
「やったなぁ!」
ショウ
「トッド!」
マーベル
「先を越されてしまうわ、急いで!」
「ショウ、目的は……」
ショウ
「リムルとシルキーだ!」
ニー
「リムル!」
リムル
「嫌、私は行きません! 放して……!」
ニー
「リムル!」
リムル
「ニー!」
兵士
「ちぃぃっ!」
「えやっ!」
リムル
「ニー!」
ニー
「とぉっ!」
兵士
「ぐっ……!」
 〃
「うわぁぁっ!」
リムル
「ニー、よくもここまで……」
ニー
「御一緒して頂けますね?」
リムル
「勿論」
ガラリア
「そこまでだ、ニー!」
ニー
「ガラリア!」
ガラリア
「お嬢様を攫う事はさせん!」
リムル
「私がニーと行くのです。邪魔をしないで!」
ガラリア
「待て!」
ショウ
「キーン、ニーはどこだ?」
キーン
「リムルを捜しに行ったわ」
ショウ
「ん、一人でか?」
ニー
「ショウ、リムルを頼む!」
ショウ
「リムルさん、飛んで!」
ニー
「リムル、行くんだ!」
リムル
「ニー……!」
ニー
「さぁ」
リムル
「あぁっ……!」
「ニーを助けて!」
ショウ
「ドワ、ニーを援護してくれ! 俺はシルキーの所へ行く!」
「シルキーの居所はどこです?」
リムル
「水牢の中です!」
「ニー!」
ガラリア
「たぁっ!」
ニー
「ちっ!」
キーン
「ドワ、もっと前! もっと!」
チャム
「急いで、ニーがチャンバラをやってる!」
ドワ
「分かってるよ」
「マーベル!」
シルキー
「はっ……!」
ショウ
「シルキー・マウ!」
「エ・フェラリオのシルキー・マウさんですね? 助けに参りました」
シルキー
「私を助けてくださる……?」
ショウ
「はい。ドアに貼ってあった結界の種子は外しました。このまま脱出します」
シルキー
「貴方はどなたなのです?」
ショウ
「ショウ・ザマです。貴方に連れ込まれた地上人です。貴方の力を借りたくて、助けに参りました」
ルーザ
「聖戦士殿」
ショウ
「リムルさん!」
ルーザ
「そのシルキー・マウを元に戻しなさい。さもないとリムルを殺します!」
ショウ
「何だと? 親が子を殺すというのか? そんな事出来るもんか!」
ルーザ
「ならやってみるか、聖戦士殿」
リムル
「んっ……!」
ショウ
「そんな馬鹿な事が……!」
ルーザ
「我が子の命に賭けても、成し遂げねばならぬものもある。私は本気である」
シルキー
「聖戦士殿、私を戻してください。ルーザは本当にリムル様を……」
ショウ
「しかしシルキー……!」
「何でこんな事が起こるんだ?」
ルーザ
「お前が我が家の敵に回ったからよ!」
ショウ
「何だと?」
ルーザ
「シルキーを取るのか、リムルを取るのか!」
シルキー
「ショウ・ザマ、私を……」
ショウ
「ルーザ・ルフト……!」
ルーザ
「さあ、早く戻しなさい!」
ショウ
「リムルを放せ! シルキーは水牢へ戻した!」
ルーザ
「聖戦士殿も去れ! でなければ、この子は放さん!」
「この目がどうなってもいいか!」
ショウ
「あれが母子なのか……ルーザ・ルフト、今日の事は忘れないぞ!」
「ニー、マーベル、後退しろ! 負けた……俺達は負けたんだ!」
マーベル
「え? 何、ショウ?」
ニー
「つぁっ!」
ガラリア
「待て!」
ニー
「とぉっ!」
ガラリア
「矢を……撃て!」
トッド
「逃がすんじゃない!」
ルーザ
「ふふっ……」
リムル
「お母様……」
ルーザ
「そなたも大きくなったものよ。大した力で母も疲れましたよ」
リムル
「お母様……」
ルーザ
「親が子を殺せると思いますか?」
マーベル
「ショウ、突然どうしたの?」
ショウ
「ルーザに負けたんだ。あの女、リムルを生贄にしようとした」
マーベル
「リムルを生贄に……?」
「そういう人かもね、あの人なら……」
ニー
「俺がトッドとガラリアを防いでやっていたというのに、何故助けられなかった!」
ショウ
「だから言ったろ? シルキーを救い出そうとしている時に……」
ニー
「ぼやっとしてるからだ!」
ショウ
「何?」
マーベル
「やめて!」
「ニー、今日の事でショウを責めるのは間違ってるわ」
ニー
「マーベルは結局、ショウの肩を持つのか」
マーベル
「ルーザが原因なのよ、ルーザが」
ニー
「シルキーが助かれば、君も地上に帰れるものな」
マーベル
「ニー……!」
「何という事を言うの……ショウ、気にしないで」
ショウ
「分かってる」
ルーザ
回想:「シルキー・マウを元に戻しなさい! さもないとリムルを殺します!」
ショウ
「こんな……こんな世界なのか、ここは……?」