第14話 エルフ城攻略戦

前回のあらすじ
バイストン・ウェルは、海と陸の間にある人の心の故郷である。
私達はその記憶を忘れて、この地上に生まれ出てしまった……。
しかし、ミ・フェラリオの伝えるこの物語によって、私達はその記憶を呼び覚まされようとしている。
ドレイク・ルフトが新たな地上人を呼び寄せた事が、トッド・ギネスに焦りを覚えさせた。
同じ思いのガラリアと共に、ゼラーナに強襲を掛けた二人であったが、トッド・ギネスは敗北をした。
キーン
「ガッターを見付けたわ。ショウ、機銃で撃って穴だらけにしていいの?」
「きゃっ、いやっ……!」
ショウ
「キーン、迂闊だぞ! 危ないじゃないか!」
キーン
「こっちの手伝いもしたら? キマイラグだけ追い掛けちゃってさ!」
チャム
「ショウ、しっかり! 負けんな!」
「あ、危ない! そこだ! いいわ、そこよそこよ!」
「やっ! ショウ早くやっつけて!」
ショウ
「くっ……!」
「ん?」
マーベル
「動物を倒したくない気持ちは分かるけど、手数を掛けさせないで」
ショウ
「人の楽しみを取っちゃってさ」
マーベル
「それはごめんなさいね。私もこのボゾンに慣れたいから、まめに動きたいのよ」
ショウ
「へぇ……こいつがコックピットのマジック・ミラーになる、特別な甲羅って訳か」
チャム
「そうよ」
キーン
「ショウ……ショウ!」
「向こうの二つ岩の所で、ガッターが亀を食べてるわ。急いで」
ショウ
「了解」
ニー
「これは閣下……」
フォイゾン
「順調のようだな」
ニー
「お陰様で」
フォイゾン
「降りてきてくれないか、ニー殿」
ニー
「はっ!」
「エルフ城を攻める……?」
フォイゾン
「そうだ。ドレイクの奴、主に楯突く気だ。このまま行くと、奴の野心は膨れる一方だ」
ニー
「はい」
フォイゾン
「それを止める為に、我々もエルフ城に協力しなければならない」
ニー
「はい」
フォイゾン
「途中、リの国へ協力要請の密書を届けて、エルフ城へ行け」
チャム
「ニー、大量よ!」
「ニー、ニー! オーラ・バトラーとオーラ・シップの4機分は捕まえたよ?」
ニー
「こら、フォイゾン王の前だぞ」
チャム
「ごめんなさい」
フォイゾン
「ははっ……」
ショウ
「これは、フォイゾン閣下……」
フォイゾン
「大量のようですな、聖戦士殿」
ショウ
「はい」
フォイゾン
「マーベル殿には、ボゾンには慣れて頂けましたか?」
マーベル
「はい、ダーナオシーよりはずっと操りやすく出来ております」
フォイゾン
「そういって頂けると嬉しい」
「ではニー殿、私の書簡は出発までには届けさせる」
ニー
「はい、閣下……」
フラオン
「誰も彼も弱くて相手にならんのう。ははっ……!」
家臣
「国王」
フラオン
「お、何だ?」
家臣
「ドレイク・ルフトが、このエルフ城を攻める為の軍を発進させるとの情報が入りました」
フラオン
「馬鹿を申せ! この遊びの機械を、誰が余に送ったと思っておる? ドレイクだぞ?」
家臣
「で、ですが、閣下……」
フラオン
「貢物をしている内は、余の力を恐れている証拠よ。分からんか?」
「あのオーラ・バトラーのゲドにしろ、オーラ・シップのナムワンにしろ、一番買い上げてるのは私だぞ」
ゼット
「これでガラリアも喜ぼうってもんだ」
ショット
「バーンがビランビー、ガラリアがこのバストール……気に入ったか?」
ゼット
「あぁ」
ショット
「しかし我々の目的は、バイストン・ウェルに棲む者を思いのままにする事だ」
「あまりガラリアに構うなよ」
ゼット
「甘やかしちゃいない。利用出来る戦士だからこそ、目を掛けている」
ミュージィ
「ショット様」
ショット
「ミュージィ……ドレイク様の御出座しか?」
ミュージィ
「はい。すぐいらっしゃるようにと」
「ガラリア様も追っ付け、バストールを受け取りに参ります」
ショット
「バストールを外に出せ!」
整備兵
「はっ!」
ショット
「ミュージィはガラリアの動きを追って、バストールの性能を報告してくれ」
ミュージィ
「はい」
ショット
「お前の戦士としての晴れ姿を、早く見たいものだな」
ミュージィ
「私にオーラ力があるのならば、それはもう……」
ガラリア
「これがバストールか……素晴らしいものだ」
ゼット
「いきなりこれで実戦だが、大丈夫か?」
ガラリア
「私に向かって何を言うか。私は何でも使いこなしてみせたろ?」
ゼット
「そりゃまぁ……」
ガラリア
「感謝しているよ」
ゼット
「ふふっ……!」
マーベル
「ニー、リの国境に入るわよ」
ニー
「ドワ、アの国には入らんようにな」
ドワ
「はい。降下します」
ニー
「そうですか……既にドレイクからの協力要請はあったのですか」
リの兵士
「フォイゾン王の意見も聞きたい」
ニー
「これが王の密書です」
リの兵士
「確かに」
ニー
「リの国王は、ドレイクの行動をどうご覧なのでしょう?」
リの兵士
「フラオン・エルフが噂通りの王であるなら、ドレイクのような男も出ましょう」
ニー
「やはり……」
リの兵士
「しかし、オーラ・マシンを作り過ぎたドレイクも、間違いだな」
「では……」
ニー
「ドレイクの大義名分は、己の野望の為の隠れ蓑です! その事を忘れて頂きたくない」
リの兵士
「判断は、我が王が下します」
ニー
「全ての始まりは、エルフ王か……」
ショウ
「アの国王っていうのは、それ程、駄目な奴なのか?」
ニー
「ああ……先代は優れた王だったがな」
リの兵士
「ニー殿」
「先程ドレイクの軍が、エルフ城に軍を進めるという情報が入った」
ニー
「今日ですか? まさか……!」
ショウ
「どこなんだ?」
マーベル
「アの国の首都よ」
リの兵士
「下克上の世とはいえ、見過ごしには出来ないという事だ」
ニー
「は、はい……!」
リの兵士
「ご武運を祈る!」
ニー
「ドレイクのやる事、段々早くなってくる……!」
キーン
「ドレイクは、自分が王様になる魂胆なのよ」
チャム
「な〜んて図々しいんでしょ!」
ショウ
「エルフ城までは?」
マーベル
「フォウとダンバインなら、二時間か三時間……!」
ショウ
「よし!」
ニー
「ドワ、ゼラーナ発進だ! 急げ!」
ドレイク
「勇敢な戦士達よ、国を想う民達よ……」
「アの国の善良なる人々が、働けど働けど暮らしが楽にならないのは、誰の為か?」
「尋ねるまでもない。アの国を治めるフラオン・エルフ、その人の無能であるが為である!」
「今こそアの国は、我々コモンそのものの手に取り戻さなければならない」
「今その試みは戦士達の力により、現実の物となる!」
ミズル
「第一から第八騎兵隊はブルベガー1号機へ。第九から第十三は、ブルベガー2号機に!」
ドレイク
「ふふっ、騎兵をオーラ・シップで移動させて城攻め……昨日まで誰が予想した事か」
「なぁ、ショット」
ショット
「はい」
バーン
「第一軍、出撃開始!」
ミズル
「第一軍はバーン・バニングス隊、第二軍はガラリア・ニャムヒー隊、城の北門より突入する」
ガラリア
「ははっ! このスピード、このパワー……バラウで運ばれるビランビーの比ではないわ!」
バーン
「ガラリア、はしゃぎ過ぎるな!」
「尤も、新たな地上人も完成するとなれば、焦りたくもなるがな……」
フェイ
「面白そうじゃないか、え?」
「俺は、この世界で暴れさせてもらうぜ」
ジェリル
「そりゃミサイルが一発飛んできて、パリがなくなっちまうって戦争よりは、確かに心が躍る光景だけどさ」
「アレンさんはどうなのさ?」
アレン
「ん……」
キーン
「フォウ出るわよ! ショウ、急いで!」
ショウ
「了解!」
民間人
「おぉ、オーラ・マシンがあんなに……!」
 〃
「ドレイク様のじゃないかしら?」
 〃
「見ろ、あんなに一杯……!」
 〃
「機械が飛んでる」
 〃
「戦争じゃないの……?」
アの兵士(エルフ)
「閣下に報せろ! オーラ・シップの出動を要請するんだ!」
アの兵士(エルフ)
「オーラ・シップ、フラオン号、発進用意。乗組員は急げ!」
 〃
「オーラ・バトラー、ゲドのパイロットも出動だ! 敵が出現した! ドレイクが攻めてくる!」
フラオン
「何? ドレイク軍がこの城を攻める……何でだ?」
家臣
「存じません。軍が来ます。直にお聞きになりますか?」
フラオン
「余を馬鹿にするのか!」
「ええい、オーラ・マシンの部隊が……!」
バーン
「ドロ隊第一軍、仕掛けろ! 続いてオーラ・バトラー隊、バラウより離脱! 第一軍に続け!」
「ガラリア、第二波攻撃をフォローしろ!」
ガラリア
「ふっ、このバストールが出るほどの敵が居るのか?」
「ダンバインのショウ・ザマでも出てくるのなら、話が別だがな」
フラオン
「ドレイクめ……目を掛けてやったのに、何故、私の所へ……!」
家臣
「閣下、お支度を……!」
フラオン
「ん、何の支度だ?」
アの兵士(エルフ)
「エンジンが掛からねぇぞ……わっ!」
 〃
「うわっ!」
 〃
「やれぇっ!」
アの兵士(ドレイク)
「ぬ、オーラ・バトラーが出てきたぞ!」
 〃
「ゲドか、うっ……!」
バーン
「ゲドか!」
「ふっ、ダーナオシーより旧式のオーラ・バトラーが何になるか!」
フラオン
「私は戦いは嫌いじゃ……」
侍女
「お履物も……」
フラオン
「ズボンぐらい自分で……」
「うっ!」
「誰か……誰かこのゲーム盤を、安全な所へ……!」
侍女
「あぁ、王様……!」
 〃
「お守りください、エルフ王様!」
フラオン
「ええい、放せ! 余が怪我をしたら、そち達の首を斬るぞ! 放せ!」
「ゲーム盤を……!」
ミズル
「ハッチ開け。騎兵隊、エルフ城へ侵攻だ!」
アの兵士(ドレイク)
「目的はエルフ城の正面! 一同、宜しいか?」
「出撃!」
ミズル
「騎兵発進後、ブルベガー出るぞ!」
ニー
「コタノは船首の機銃座だ」
コタノ
「はい」
ニー
「マーベル、まだ出るのは早いぞ」
マーベル
「ダンバインに援護が要るわ」
ニー
「マーベル、ボゾンの航続距離の事を考えろ。今出たら十分に戦う時間がなくて、出撃する意味がない」
マーベル
「ハッチを閉めるわ、降りて」
ニー
「艦長命令だ。後5分待て。いいな?」
マーベル
「冷静になったものね。見直したわ。リムル、リムルって言っていた頃に比べたら……」
ニー
「効率よく戦いたいのだ。マーベルにも、怪我はしてもらいたくないからな」
マーベル
「有難う、ニー」
ニー
「すまんと思っているんだ。俺は、リムルもマーベルも同じように大切に思っているつもりだった」
マーベル
「よしてよ」
ニー
「いや、なのにいつも、マーベルだけ辛い思いをさせて……」
マーベル
「地上に帰れないんだから、仕方ないでしょ?」
ニー
「それだけか?」
マーベル
「ショウも居てくれるわ。あの子、結構優しいのよ」
ニー
「それでもいい。出来るだけ長く協力してくれ。当てにしているんだ」
マーベル
「えぇ……」
ニー
「俺がブリッジから指令したら、出てくれ」
ガラリア
「出てきたか、お宝のオーラ・シップが……!」
「二発で落としてみせる!」
アの兵士(エルフ)
「上だ、上から来る!」
ガラリア
「落ちろ!」
「ゲドか!」
バーン
「ガラリア、迂闊だぞ!」
「敵を侮るな!」
ガラリア
「ナムワン・タイプを1隻撃破した!」
バーン
「騎兵はまだ城に取り付けんのか!」
アの兵士(ドレイク)
「くっ……!」
アの兵士(エルフ)
「騎馬隊を入れるな!」
「うっ……!」
 〃
「わぁぁっ!」
フラオン
「何故……オーラ・シップは2隻ある筈だ! 何故出さん? 余の為に戦わんのか!」
家臣
「修理中で出せません。後はゲドの働きぶりを……」
フラオン
「ドレイクを呼び出せ! 話し合えば、戦いもやめさせられる!」
「わっ!」
バーン
「流石に巨大な城だ……対空砲火だけはあるな」
アの兵士(ドレイク)
「わぁぁっ!」
キーン
「ショウ、ブルベガーが2隻も……見えて?」
ショウ
「後ろのをやる。ドレイク軍の目をこちらに引き付けるんだ!」
キーン
「了解!」
ショウ
「ドレイクめ、戦力を増やしている……?」
キーン
「撃つわ」
ショウ
「まだだ!」
「撃てっ!」
ガラリア
「ブルベガーが……!」
バーン
「何ぃ?」
「ダンバインか!」
ミズル
「2番艦がやられた! 上昇を掛けろ!」
アの兵士(ドレイク)
「はっ!」
ミュージィ
「ダンバイン……ガラリアが出るのか……」
「よく頑張っている事……」
ミズル
「ゼラーナが来るぞ! 後方を守れ!」
ミュージィ
「ゼラーナか……」
チャム
「ニー、マーベルをそろそろ出してもいいんじゃないの?」
ニー
「あ、あぁ」
チャム
「どうしたのさ?」
ニー
「マーベル、出てくれ。ショウを援護してくれよ」
マーベル
「了解」
チャム
「あ、分かっちゃった」
ニー
「何が?」
チャム
「本当はマーベルを戦わせたくないんでしょ。ショウだけで済ませたがってるのよ」
ニー
「あ……?」
チャム
「やらしい!」
ニー
「チャム!」
チャム
「マーベルの匂い、付けちゃってさ!」
ニー
「んっ……!」
マーベル
「ボゾン、出ます!」
ガラリア
「外れた……!」
ショウ
「新型が出来たからって、勝つとは決まってない!」
「速い……!」
ガラリア
「ショウ・ザマめ、益々……!」
ショウ
「貰った!」
ガラリア
「弾切れか!」
「ショウ!」
ショウ
「あ、くっ……!」
ミュージィ
「またガラリアの悪い癖が出た……バーン様は城攻めに手を焼いている……」
バーン
「ええい、騎兵を早く入れ過ぎた。これでは空からの攻撃は出来ない……」
「ダンバイン……!」
「どこから出てきたか知らんが、フラオン王が守るに値しない人物だという事を知らんのか、地上人!」
ショウ
「アの国盗りを企む者の手先が、何を言うか!」
「来る!」
「落ちた……?」
バーン
「どうした、ただ蹴られただけだぞ!」
「あれがダンバインの力だというのか。ショウ・ザマの力なのか……」
「ダンバインはガラクタだった筈だ。ただの試作品だった筈だ……!」
ショウ
「またか!」
バーン
「くっ……!」
ショウ
「バーン!」
バーン
「ショウのオーラ力が増大しているというのか」
「私だって同じ筈だ!」
ショウ
「バーン!」
バーン
「何、ボゾンか?」
「オーラ・マシン隊、引き上げる! ゼラーナが出てくる!」
「くっ、傲慢だったのだ……油断があった……!」
マーベル
「ショウ、怪我はなくって?」
ショウ
「大丈夫だ」
マーベル
「こんなに早く敵を引き上げさせるなんて……」
ショウ
「ああ、上手く行き過ぎた。ビランビー以外にも新型のオーラ・バトラーが出てきたっていうのにさ」
マーベル
「でも凄い事よ、何故出来たの? 3、4機のオーラ・バトラーを落としたんでしょ?」
ショウ
「分からないな……」
「バーン達を見てたら、連中、戦争を遊びみたいにやってるって感じなんだな。それが腹立たしかったんだ」
マーベル
「ゼラーナが来たわ」
ショウ
「これからどうするんだ?」
マーベル
「さあ……」
フラオン
「いやぁ、見事ではないか。我がオーラ・バトラーもオーラ・シップも、ははっ……!」
侍女
「でも、あんな機械、お城では見た事が御座いません」
フラオン
「いやいや、そんな事はない。そうでなくて、誰がドレイク軍を撃退するというのだ?」
侍女
「でも……」
フラオン
「あのマシンの者共を、召し出せ!」
アの兵士(エルフ)
「ははっ!」
チャム
「うわ〜、やられてるぅ!」
ドワ
「この様子じゃ……」
ニー
「第二波攻撃が来たら、あっという間だな」
ミズル
「援軍と工作隊は、直ちに運びます」
ショット
「そうしてくれ」
「ガラリアはどうなのだ、ミュージィ?」
ミュージィ
「はい……初めてのオーラ・バトラーの戦いとしては、よくやったかと……」
ショット
「うむ……」
ドレイク
「確かに、『昔の騎兵の戦い方とオーラ・マシンの戦いを同時にやるのは良くない』というバーンの報告は分かる」
「しかし、脆過ぎる……新たな地上人の訓練を急がせい!」
ショット
「はっ!」
ドレイク
「ミズルも心してな」
ミズル
「はっ、閣下!」
ドレイク
「リムルという餌をちらつかせてもこの体たらくか、バーンめ……!」