第17話 地上人たち

前回のあらすじ
バイストン・ウェルは、海と陸の間にある人の心の故郷である。
私達はその記憶を忘れて、この地上に生まれ出てしまった……。
しかし、ミ・フェラリオの伝えるこの物語によって、私達はその記憶を呼び覚まされようとしている。
ガラリアとショウのオーラ力が融合してか、オーラ・バトラーの力がさせたのか、
ダンバインとバストールは、地上界、東京へ現れてしまった。
ショウ
「この事か、ショット・ウェポンの言っていた事は……」
チャム
「ショットが言ってた事って、何なの?」
ショウ
「バイストン・ウェルを作るオーラ力は、爆発力を弱めているようだと言ってた」
「これではナパーム以上だ、多分……」
自衛隊員
「副都心が壊滅したぞ。あれは一体何なんだ?」
「上空へ追い上げろ! 出来たら海上へ追い出せ!」
ガラリア
「どうしたんだ、これしきの戦いで……こんなにも疲れるとは……」
自衛隊員
「飛行物体の搭乗員に告ぐ!」
「ただちに武装解除して、我が方に従え! 拒否した場合は攻撃を加える!」
ガラリア
「得体の知らない奴の言いなりになど、なれる訳がない!」
自衛隊員
「来るぞ!」
ショウ
「ガラリア、ここは地上の世界だ。攻撃をやめて話し合いを……!」
ガラリア
「ふざけるな! この周りに飛ぶ機械が兵器だという事くらい、私にも分かる!」
自衛隊員
「ミサイルは撃たせるな! 攻撃をやめさせなけりゃならん!」
ガラリア
「攻撃するつもりだな?」
ショウ
「違う! ここは大都市の上空だ。戦いをする訳には行かないんだ!」
「俺達を理解させる為には、これ以上戦いはしちゃいけない!」
ガラリア
「俺達だと? 笑わせるな! 私とお前は敵同士だ!」
「くっ、力が入らん……!」
自衛隊員
「避けろ! 撃っちゃならん! 地上に当たる!」
ショウ
「ガラリア!」
チャム
「駄目!」
ガラリア
「退け退け、退け!」
ショウ
「ガラリア、待て!」
チャム
「あぁっ……!」
ショウ
「チャム……!」
「どうした、チャム?」
チャム
「はぁっ、はぁっ……」
自衛隊員
「もう一度警告する! ただちに武装を解除して、指示に従え!」
マスコミ
「朝霞方面に護送されたぞ。一体だけだが追ってみる」
「カメラ回せ。邪魔されなきゃ、確実に撮影出来る」
司令官
「降りろ」
ショウ
「やめてくれないか? 俺は犯罪人じゃないんだぞ!」
チャム
「ショウ……」
司令官
「日本人なのか?」
ショウ
「当たり前だ!」
司令官
「君が手に持ってるのは何か?」
ショウ
「チャム・ファウだ」
「やめろ! そのフラッシュ、やめないか!」
「うっ……!」
司令官
「来い!」
ショウ
「銃を退けろ! 俺は日本人なんだぞ!」
ショウ
「んっ……」
司令官
「いいかね? ダンバインとバストールのお陰で、東京で三十万人が死んだ」
「その遺族に君は、御伽話を聞かせて納得してもらえると思っているのか?」
ショウ
「しかし、バイストン・ウェルはあるんだ!」
司令官
「ショウ君……!」
ショウ
「ガラリアだって、ヘリで挑発しなければ……ミサイルは撃たなかったろう」
「オーラ・ロードのメカニズムが分かっていれば……」
司令官
「ショウ……今は、我々に協力して貰えないかね?」
ショウ
「協力はしている」
司令官
「では、この地球へやって来た理由は何か、教えてくれ」
ショウ
「この地球へやって来た目的……?」
司令官
「そ、そうだ」
ショウ
「俺は宇宙人じゃない! 名前は座間祥、18歳! 国籍は日本、現住所は武蔵野市東吉祥寺……!」
司令官
「この免許証も、確かに本物らしい」
ショウ
「ああ」
司令官
「だからと言って、君自身が本当の座間祥という証拠はない」
不良一味
「あれはショウだよな?」
 〃
「あぁ、こんなにペラペラ喋る子じゃなかったけどさ」
 〃
「けどま、豪く精悍な顔付きになったと思わないか?」
 〃
「ほ〜んと、惚れ直しちゃうって感じね」
チヨ
「ショウなの、本当に……?」
司令官
「いい加減にしろ! 生体エネルギーのオーラ力だとか、そんな戯言をいつまでも聞いていられると思うのか!」
刑事
「司令……ともかく、その羽根付きの動物の身体調査だけでも……」
ショウ
「じゃあ、俺が宇宙人だなんて証拠があるのかよ?」
司令官
「あの奇妙な機械が、宇宙人である証拠だ!」
チャム
「地上の方、ショウの言う事は本当です。信じてください」
ショウ
「チャム……!」
「大丈夫か?」
「やめろ、こら……待て!」
司令官
「身体検査だけはさせてもらう!」
ショウ
「チャム!」
「チャムにもしもの事があったら、バイストン・ウェルの報復を受けるぞ!」
司令官
「そのバイストン・ウェルはどこにあるか?」
チャム
「ショウ……!」
司令官
「どこにあるんだ!」
ショウ
「ふふっ……いいんだぜ、ここで俺を殺してもさ」
司令官
「何だと……?」
ショウ
「あんたらが俺を敵だと思ったんなら、正確な情報を手に入れなけりゃ戦えやしない……」
「それをここで殺す……そうしたら、戦いようがないよな」
司令官
「貴様……!」
刑事
「彼の言う事も正しい」
司令官
「しかし……!」
ショウ
「いいか、チャムにもしもの事があったら……」
自衛隊員
「どうです、息子さんに間違いありませんか?」
不良一味
「大したもんさ。あんなに喋れるようになってさ」
 〃
「なんつか、気合を感じんだよな」
チヨ
「うぅっ……」
自衛隊員
「どうなさいました?」
チヨ
「ショウ、本当のショウはどこへ行ってしまったの……?」
自衛隊員
「すると、やはり別人なのですね?」
シュンカ
「いや、あれは家の子です。ショウです」
自衛隊員
「証明するものは?」
チヨ
「うぅっ……」
シュンカ
「証明するもの……指紋でも血液型でも、調べたらいいでしょ」
自衛隊員
「しかし、もし高度な文明人が、ショウ君のそういったものをコピーしていたとしたら?」
シュンカ
「貴方がたは……!」
ショウ
「海と陸の間にある世界、バイストン・ウェル……火星の裏にあるなんてのじゃないんだよ」
司令官
「ふうん……」
刑事
「どうでしょう?」
チヨ
「違います。あれはショウではありません。息子の姿はしていても、息子に乗り移ってる別の人です」
刑事
「ほう……」
シュンカ
「チヨ、何という事を言うんだ……!」
チヨ
「幾ら外見が似ていても、中身が違います、中身が……!」
シュンカ
「落ち着きなさい、チヨ」
「すいません、二人で話したいんですが……」
刑事
「ああ、どうぞ」
「君達はどうだ?」
不良一味
「新宿を滅茶滅茶にしたロボットが我が子だって、認めたくないよな」
刑事
「余計な事はいい!」
ガラリア
「レーダーだとかいうものは、地上の方がよく映る」
「どうやらこの地上界では、バイストン・ウェルよりオーラ力が強く働くらしいな」
「その分、体力の消耗も激しいという事か……」
司令官
「どうだね、何か分かったか?」
医者
「内臓器官も、殆ど地球上の生物と変わらないですね」
「皮膚の組成耐性については、もっと調べてみませんと……」
ショウ
「せっかく地上に戻れたってのに、誰も俺の言う事を信じない……」
「これでまたガラリアが暴れ始めたら被害も大きくなるし、益々信じてもらえなくなる」
「くっ、開けてくれ! ガラリアの乗ったバストールは、ちゃんと追跡はしてるんだろうな!」
「もう1機のオーラ・バトラーはどうなってんだ?」
老夫婦
「何の音だ?」
 〃
「道路工事が入ってるって言ってたろ」
 〃
「あぁ、そうか」
「あぁ腹減った……」
 〃
「ん?」
 〃
「母ちゃん……」
 〃
「あんた、あれ……!」
 〃
「テレビでやってた宇宙人じゃないのか?」
「助けてぇ!」
村の若者
「(?)のとこの親父だ」
警察官
「何だ?」
老夫婦
「出た、宇宙人が出た!」
警察官
「何?」
老夫婦
「東京に現れたっていう宇宙人が、川上の森の中から……」
 〃
「いきなり刀抜いて、私達を殺そうとしたんです」
警察官
「本当か?」
老夫婦
「本当だ。着てるもんなんか、ショウとかっていう奴と同じで……」
警察官
「消防団を呼び出す」
村の若者
「俺は村の青年団に知らせてくる」
ガラリア
「バイストン・ウェルに落ちた地上人達の気持ちが分かる。何と寂しく心許ないものなのか……」
「ん……?」
「地上人め、仲間を集めたな!」
警察官
「武器を捨てて大人しくしろ! お前は包囲されておる!」
「言葉は分かるんだろ? 分かるなら言う通りにするんだ!」
ガラリア
「くそ、バストールに戻ればこっちのものだが……」
「はっ……!」
「おのれ!」
青年団
「うわっ!」
 〃
「野郎、やりやがったな!」
 〃
「逃がすか!」
警察官
「気を付けろ、銃を持っとるぞ!」
青年団
「行け!」
ガラリア
「くっ、あっ……!」
青年団
「よーし、やったぞ!」
ガラリア
「放せ、くっ……!」
青年団
「こいつ……!」
ガラリア
「くっ……!」
青年団
「うぅっ……!」
ガラリア
「地上人め、思い知れ!」
青年団
「うぅっ……!」
 〃
「あぁっ……!」
チャム
「出して! ここから出してよ!」
医者
「あれだけ弱っていたのが、この通りです。環境に対する適応能力は驚きますね」
司令官
「ううむ、これが宇宙人かね……どちらかと言うと、御伽話の妖精だな」
チャム
「その汚い顔、退けて! ショウの所へ連れてって!」
司令官
「口が汚い妖精だな」
自衛隊員
「司令、秩父方面でもう1機の未確認飛行物体が発見されました」
司令官
「やはりな」
自衛隊員
「民間人に死者も出たようです」
司令官
「またか……都市部に入る前に撃墜しろ。航空隊と海上には……」
自衛隊員
「スクランブル体勢に入りました」
司令官
「よし」
「侵略者の尖兵なのか?」
チャム
「私達は侵略者なんかじゃないわ!」
「この、壊れろ……!」
「ショウ、ショウ……!」
「あっ……!」
「ショウ!」
ショウ
「ガラリアめ、迂闊に動き出したな?」
「お〜い、俺をここから出してくれ!」
「おい、誰も居ないのか?」
チャム
「ショウ!」
ショウ
「おい、開けてくれ!」
チャム
「ショウ!」
ショウ
「チャムか!」
「どうした? 体は大丈夫か?」
チャム
「大丈夫よ! どうしたら出られるの、ショウ?」
ショウ
「俺の力じゃ無理なんだ。何とか出してもらえないか?」
チャム
「出せってったって……」
ショウ
「そうだな……チャムには無理か……」
チャム
「馬鹿にしないで、私にだってそれくらい出来るわよ」
「待ってて」
自衛隊員
「空襲もあるのか」
 〃
「演習じゃないんだよ。行くぞ!」
 〃
「おう!」
チャム
「あ、これ知ってる。爆弾だ。ドルプルが言ってた」
「んんっ……!」
ショウ
「くそ、この……開け!」
チャム
「んんっ……!」
ショウ
「無理か……」
チャム
「ショウ、ドアから離れて!」
ショウ
「何?」
チャム
「爆弾を使うのよ、隠れて!」
ショウ
「爆弾……?」
チャム
「隠れて!」
ショウ
「あ、うん……」
チャム
「んん、オーラ力……!」
ショウ
「爆弾って何なんだ?」
チャム
「くぅっ……!」
ショウ
「何?」
チャム
「んん、行くよ!」
ショウ
「わっ、本当だった……!」
チャム
「ショウ!」
「ショウ、大丈夫?」
ショウ
「お前って奴は……」
チャム
「ふふっ」
自衛隊員
「何で俺達が出るんだよ?」
 〃
「知るか」
 〃
「こんな所に居て、大丈夫かな?」
 〃
「こんなもんがあるからなぁ」
チャム
「私がやってみる」
ショウ
「気を付けろ」
自衛隊員
「まるで玩具だけどな」
 〃
「あぁ……」
チャム
「ヤッホー!」
自衛隊員
「え?」
チャム
「ベェッ、だ!」
自衛隊員
「宇宙人だ!」
 〃
「こいつ、どっから出てきた?」
ショウ
「くっ……!」
自衛隊員
「貴様、うっ……!」
 〃
「やったな、わっ……!」
ショウ
「チャム、すまない!」
自衛隊員
「こ、こいつ……!」
ショウ
「チャム、中々やるじゃないか」
チャム
「ヘヘッ……」
ショウ
「ん?」
「こっちを攻撃してくるのか?」
チャム
「地上スレスレなら攻撃されないわ」
ショウ
「あぁ、ガラリアを倒してみせるしかないのか」
チャム
「それは駄目よ」
ショウ
「何故だ?」
チャム
「ガラリアとオーラ力を合わせれば、バイストン・ウェルに戻れるかもしれないでしょ?」
ショウ
「バイストン・ウェルに……」
チャム
「あ、ショウは地上の人だったね……」
ショウ
「いや、地上でチャムを見世物には出来ない」
チャム
「でも……有難う、ショウ!」
ガラリア
「ふん、他愛のない奴らめ!」
自衛隊員
「何、バストールを説得してみる?」
「聞こえるか、司令部。朝霞から出たダンバインは、秩父のものとは敵味方だ」
ショウ
「話が通じるかどうか……ともかく、ガラリアと接触するぞ」
チャム
「そうね」
自衛隊員
「うっ……!」
 〃
「わっ!」
ガラリア
「こんな機械なぞ!」
自衛隊員
「こ、こっちへ来るぞ!」
 〃
「な、何で、ミサイルがホーミングしないんだ?」
ガラリア
「ははっ……こんな地上の機械なぞ、バストールの力には……!」
「ん?」
「また新しい型の機械か。幾ら繰り出しても同じ事だ!」
自衛隊員
「ん、何て旋回性能だ……!」
 〃
「わぁぁっ!」
 〃
「う、うわっ……!」
ガラリア
「あんな蚊トンボ幾らでも落とせるが、体力の無駄遣いはしたくない」
「ダンバイン、来たな!」
ショウ
「ガラリア、これ以上抵抗するのはやめろ! 立場が不利になるだけだ!」
ガラリア
「抵抗だと、笑わせるな! それは地上人の方だろう!」
ショウ
「ここは地上だ! 戦力は幾らでもあるんだぞ!」
ガラリア
「お前に止めを刺せば、私の仕事は終わる! 覚悟しろ、ショウ!」
ショウ
「ガラリア、ドレイクの知らない所で勝っても、何にもならないんだ!」
ガラリア
「バイストン・ウェルに帰れぬかもしれないとなれば、せめて討たなくて何の戦士か!」
「邪魔だ、蚊トンボ!」
ショウ
「火器の破壊力は増すばかりだ」
チャム
「ショウ……」
ショウ
「この事をドレイクがもし知ったら、地上界は……!」
「ガラリア、無駄な戦いはやめよう! 悪いようにしない、大人しくしてくれ!」
ガラリア
「ショウ・ザマ、所詮は地上人だな……馴れ合って手を結んだのか?」
ショウ
「馬鹿言うな。俺もチャムもここでは敵だ。誰もバイストン・ウェルの存在を信じようとしない」
チャム
「本当よ、ガラリア!」
ショウ
「一緒にバイストン・ウェルに帰らないか?」
ガラリア
「ほざくな!」
ショウ
「何故、戦う事しか考えない!」
ガラリア
「帰れる手立てがある訳がない!」
チャム
「ある筈よ!」
「二人のオーラ力を合わせれば、戻れる筈なのよ!」
ショウ
「戦いたいのなら、バイストン・ウェルでだ、ガラリア!」
ガラリア
「黙れ、黙れ!」
ショウ
「ミサイルだってもう手持ちはないんだろう、ガラリア!」
ガラリア
「スペアは、まだある!」
「それでこそ聖戦士!」
ショウ、チャム
「あっ……!」
ガラリア
「くっ、謀ったな……!」
ショウ
「ガラリア、待て!」
「邪魔するな、退け!」
ショウ、チャム
「あっ……!」
チヨ
「ショウ!」
シュンカ
「ショウ!」
ショウ
「父さん、母さん……何でそんなのに乗ってるんだ?」
「人質に取られたのか……?」
シュンカ
「ここで戦うのはやめるんだ!」