第18話 閃光のガラリア

前回のあらすじ
バイストン・ウェルは、海と陸の間にある人の心の故郷である。
私達はその記憶を忘れて、この地上に生まれ出てしまった……。
しかし、ミ・フェラリオの伝えるこの物語によって、私達はその記憶を呼び覚まされようとしている。
地上人達は、ショウの言うバイストン・ウェルの存在を信じてはくれなかった。
一方、ガラリアは地上人に追われ、再び空中に出て地上人の攻撃に曝された。
マーベル
「ドレイク軍、よくも次々とマシンを繰り出して……!」
「もう限界だわ。フォイゾン王の出してくれたボゾン隊も、不慣れな戦いで……」
「ショウ、どこ行ったの……?」
「あっ……!」
エルフの兵士
「わぁぁっ!」
 〃
「うぅっ!」
フラオン
「な、何故落とせぬ? 落とした者には、金一袋をくれてやるぞ!」
家臣
「閣下、ここは危険で御座います」
フラオン
「煩い!」
家臣
「しかし……あぁっ!」
フラオン
「おっ……!」
「来たぁぁっ!」
キーン
「あぁっ……!」
「こうも好きにやられるなんて……防げないの? 私の力では……」
「くっ……!」
フラオン
「あ、ドレイクの兵共があんなに!」
「あの者共を皆殺しには出来んのか、皆殺しには……!」
アの兵士
「居たぞ、フラオン王だ!」
家臣
「閣下……!」
フラオン
「おのれおのれ、よくもここまで……!」
「何をしておる、早くやれい!」
アの兵士
「フラオン王、投降なされい!」
フラオン
「嫌だ嫌だ! 王でなくなったら、余は食えなくなる!」
「わっ、わぁぁっ!」
家臣
「閣下!」
「閣下……!」
アレン
「ゼラーナをやるぞ。編隊を組め!」
ジェリル
「一々煩い男だ」
アレン
「ジェリル!」
ジェリル
「分かったよ!」
ドワ
「来た!」
ニー
「右だ、撃て!」
ゼラーナ・クルー
「うわぁぁっ!」
フェイ
「落とせる!」
ニー
「うわっ、うぅっ……!」
ジェリル
「ふふっ、こんなに脆いのが、バーン隊長の手古摺っていたゼラーナかい」
「行くよ!」
マーベル
「くっ……!」
ニー
「持つか?」
ドワ
「エルフ城に火が入った」
ニー
「何だと?」
「これまでか……いつまでもここに居るのは危険になった」
マーベル
「流石、地上人……よくやるわ!」
「はっ……!」
ジェリル
「貰った!」
マーベル
「あぁっ、くっ……!」
ジェリル
「ふっ、戦い残ったオーラ・バトラー、流石だと褒めてやる!」
「はっ……!」
キーン
「あ、あ、弾切れなの?」
マーベル
「ニー、ボゾンの破損状態が見えて?」
ニー
「傷みは大した事ないようだ。後退する」
「キーン、フォウ、後退しろ!」
マーベル
「了解、ボゾン戻ります」
「キーン、後退して」
ジェリル
「ええい……!」
アレン
「やめろ、ジェリル」
「エルフ城は落ちた、ジェリル」
ジェリル
「あんたの指揮には従わないよ。私は好きにやるんだから」
フェイ
「目的以上の事はしないのが戦いだ。ステージと違って、はしゃぐと命を落とすぞ」
ジェリル
「退きなよ! 人の楽しみを邪魔する奴は、ただじゃ置かないよ!」
アレン
「いい加減にしなよ、ジェリル……」
「ドレイクやショットってお客さんは、お城の方だ。あんたの舞台は見ちゃいないよ」
ニー
「どの面下げて、ラウの国へ戻れというんだ?」
「援軍のボゾン10機を全滅させ、エルフ城は落とされているんだぞ」
マーベル
「でも予想外に長い間、抵抗はしたじゃないの」
キーン
「そうよ、恥ずかしい事ではないわ」
ニー
「フォイゾン王の信頼に応えられなかったんだ」
キーン
「ショウが居なければ、駄目なのかしら……」
マーベル
「そうは思いたくないわね。私のオーラ力が強ければ、勝ってたかもしれない……」
ニー
「奴は敵前逃亡したのか?」
ドワ
「ニー、バストールだって居なくなったんだぞ?」
ニー
「じゃあどこに行ったんだ? どっからもダンバインとバストールの撃墜報告は入っていない」
マーベル
「だからと言って敵前逃亡だなんて、そんな酷い言い方はやめて!」
「ショウはそんな人じゃないわ」
キーン
「そうよ。どこかでバストールを倒しているわ。もうじき帰ってくるわよ」
ニー
「どこでだよ?」
キーン
「知る訳ないじゃない!」
マーベル
「フォイゾン王へはどうするの?」
ニー
「暫く一人にしておいてくれないか、マーベル……」
マーベル
「ニー……そうね……」
ショウ
「あっ……父さん、母さん……!」
チャム
「脅かされてるの?」
自衛隊員
「ダンバインの座間祥。両親が会いたいと言っている。聞こえるか?」
「もし君が我々に協力をするのならば、両親と話し合いなさい。その為の時間は与える」
「そうでなければ、ただちに攻撃を掛ける!」
「また、御両親の身柄の安全も保証出来ない!」
ショウ
「そういう事か……まるで安物の映画じゃないか!」
自衛隊員
「話し合うと言ってます」
 〃
「よーし、下に見える湖に着陸しろ」
「さあいいですか? ダンバインに乗る若者が、何故、貴方がたのお子さんだと名乗ったのか」
「それが分かれば、宇宙人の目的も分かるかもしれません」
シュンカ
「子供かもしれんのです。いや、家の子です」
自衛隊員
「これを……」
「お子さんであっても、洗脳されてるかもしれんのです」
シュンカ
「そりゃそうですが……」
自衛隊員
「だが、情報は欲しいのです。出来るだけ聞き出してください」
「万一の場合、これを……」
チヨ
「貴方……」
シュンカ
「こんな物、使った事はない」
自衛隊員
「安全弁を外せば撃てます。尤も、このような銃で死ぬような生物かどうかも、分かりませんがね」
マスコミ
「ダンバインとかに乗ってきた生物は、行方不明のショウ・ザマ君でしたか、ね?」
不良一味
「ノー・コメント」
マスコミ
「じゃあ、宇宙人だったって事?」
不良一味
「ノー・コメント」
マスコミ
「どうして……?」
不良一味
「防衛隊に口止めされてんのよ」
マスコミ
「しかしね、国民には知る権利があるでしょう?」
不良一味
「知りたきゃ、各社20万持ってきな。そうすりゃ答えてやるぜ」
子供
「おしっこ、おしっこ……!」
「あっ……」
「わっ、パパ……!」
ガラリア
「しまった……!」
子供
「パパ……!」
父親
「どうした?」
母親
「あっ……!」
「わぁぁっ!」
ガラリア
「んっ……!」
子供
「行っちゃう……お弁当持ってった!」
ガラリア
「ええい、情けない……何と惨めな……!」
「何という味だ」
「地上界は、私の棲む所ではないらしいな……」
ショウ
回想:「ここで死んでも、バイストン・ウェルで名が届かないんだぞ!」
ガラリア
「尤もだな……しかし、バイストン・ウェルに帰る手立てがあるとは思えんがな……」
チャム
「大丈夫みたいね、ショウ」
ショウ
「あぁ、攻撃するつもりはないらしいな」
「しかし、何であの二人と合わせるんだ……?」
シュンカ
「ショウ、降りてきてくれないか?」
ショウ
「防衛隊の連中に、何を言われてきたんだ?」
チヨ
「貴方、本当にショウなの?」
ショウ
「まだ耄碌するような年じゃないだろうに……情けないな、母さん」
「けど、母さんがそう思うのも無理はないな。俺はいつも一人切りだったもんな……」
「いつもいつも、俺は相手にしてもらえなかった……」
チヨ
「違うわ、私はショウを一人にした事はなかったわ。食事だって毎日作ってあげたし、会話だって……」
ショウ
「テストの結果の小言だけだった」
チヨ
「そんな事ないわ。私は愛していたわ、貴方を……」
ショウ
「認めてくれたようだね、俺がショウ・ザマだって事を」
チヨ
「違う……違うわ、貴方はショウじゃない……!」
シュンカ
「チヨ、やめなさい。何て事を言うんだ。あれはショウだ」
チヨ
「違います!」
ショウ
「母さん!」
チヨ
「何万もの人を殺すような子を持った覚えはないわ!」
ショウ
「父さん……父さんは信じてくれるよね? 俺が人殺しじゃないって……」
シュンカ
「ああ、勿論だとも。私は信じている」
ショウ
「父さん……」
「母さん、母さんだって……」
「どうしたんです?」
自衛隊員
「何、もう1機のオーラ・バトラーが動き出した? 山中湖から北西に向かってる?」
自衛隊員
「うおっ……!」
ガラリア
「ええい、次から次とよくも……!」
「うっ……!」
チャム
「ショウ、ガラリアが来るの?」
ショウ
「隊長さん、出るぞ! ガラリアの戦いをやめさせるんだ!」
自衛隊員
「協力するという保証があるのか? なければ飛ばせん!」
ショウ
「何を言ってる? オーラ・バトラーには、オーラ・バトラーの方が……!」
チヨ
「いけません、もうこれ以上人殺しはしないで! 私達に犯罪人の親として生きていけというの?」
ショウ
「母さん……貴方は俺の立場をまるで理解しようとしていないで、よくそんな事が言えるな……!」
チヨ
「貴方が私の息子なら、私の築き上げた地位の事も考えて!」
シュンカ
「チヨ、何を言い出すんだ?」
チヨ
「貴方だってそう思ってるんでしょ?」
シュンカ
「それは違うぞ、私は……」
チヨ
「ねえ、もうこれ以上の騒動を起こさないで!」
バーン
「俺には、ガラリアを助けたいって事もあるんだ!」
チヨ
「ショウ……!」
シュンカ
「チヨ!」
チヨ
「言う事を聞いて!」
ショウ
「母さん……!」
チヨ
「行くというのなら、私が撃つわよ、ショウ!」
ショウ
「母さん、俺を撃つのか……俺を……!」
チヨ
「貴方は宇宙人なのよ!」
ショウ
「母さん、こんな子供が嫌なら撃ってくれていい……殺してくれていいんだ!」
シュンカ
「チヨ、やめないか!」
チヨ
「母親の私が殺すのなら……」
シュンカ
「チヨ……!」
ショウ
「あまりにも身勝手じゃないか、うぅっ……!」
自衛隊員
「ダンバイン、我々の誘導に従え! バストールを迎撃する!」
ショウ
「了解」
チャム
「ショウ……」
ショウ
「有難う、チャム……」
チヨ
「うぅっ……!」
チャム
「ねぇいいの、ショウ? お父さんとお母さん、あのまんまにして……」
ショウ
「もういいんだ。あの二人がどういうつもりで俺を育ててくれたか、よく分かった」
チャム
「でも、何だかショウもお父さんもお母さんも、みんな可哀想みたい」
「地上の人もバイストン・ウェルの人も、みんな同じみたいね」
ショウ
「同じ人間だからじゃないのか? 親子で戦ったりいがみ合ったりさ……」
チャム
「私には、父さんも母さんも居ないから分からないけど、悲しいわ……」
「私はショウには、何にもしてあげられない」
ショウ
「有難うチャム、君にそう言ってもらえるだけで嬉しいよ」
チャム
「ショウ、可哀想……!」
ガラリア
「あの槍のような機械か……」
「しまった、残りのミサイルを……!」
「このままでは、ダンバインを落とす前にこちらがやられる」
「はっ……!」
ショウ
回想:「ガラリア、力を合わせてバイストン・ウェルに帰らないか?」
ガラリア
「ええい弱気な……ショウ・ザマ如きの言う事……!」
「だが、このままではバイストン・ウェルに帰る前に、地上の機械にやられてしまう……」
「ん、地上の乗り物か」
「利用出来る。よし……!」
自衛隊員
「宇宙人め、新幹線を盾にしたぞ」
ガラリア
「ふん、これで時が稼げる」
「ショウ・ザマ、早く姿を現せ!」
「しまった……!」
「うっ……!」
自衛隊員
「チャンスだ……ファイヤ!」
「何だと? ホーミングが効かないのか?」
「どこだ……!」
「うぉっ、うっ……!」
子供
「やめろ!」
ガラリア
「な、何だ……?」
子供
「パパだ、僕のパパだ! 駄目だぞ、僕のパパを……!」
ガラリア
「な、何だ? この戦士の子供なのか?」
子供
「僕が許さないから……パパを殺したら、僕が……!」
ガラリア
「な、何故見える……何故こんな化け物みたいに、はっきりと見えるのだ……」
「消えろ、子供……!」
「ええい、何という事……!」
子供
回想:「や〜い、卑怯者の子!」
 〃
回想:「お前は騎士の子じゃないやい!」
 〃
回想:「卑怯者の子は卑怯者なんだよ〜だ!」
 〃
回想:「屑だ、屑だ!」
 〃
回想:「人間じゃないんだ!」
騎士仲間
回想:「女の騎士は珍しくないが……」
 〃
回想:「志が悪いのさ」
 〃
回想:「あいつの親父は、戦場から逃げ出したって事だぜ」
 〃
回想:「その汚名を注ごうというのかい?」
 〃
回想:「敵前逃亡を親がやったとなると、はてはてどうなる事か……」
ガラリア
「……私は逃げはせん!」
「ん、ダンバイン……ダンバインか!」
「ショウ……貴様、地上人に己を売ったのか! やはり地上人同士の馴れ合いか!」
ショウ
「ガラリア、何故無闇に暴れて敵を作るんだ! これ以上の戦いは自分自身を……!」
ガラリア
「黙れ! 力を合わせてバイストン・ウェルに戻ろうなどと言っておきながら、地上の人間と手を結びおって……!」
ショウ
「違う、こいつらは……!」
チャム
「そうよ、誤解よ!」
自衛隊員
「よーし、ダンバイン! そのまま地上にバストールを引き摺り下ろせ!」
「命令違反の場合は、両親の命はないぞ!」
ショウ
「何だと?」
チャム
「ショウ……!」
自衛隊員
「撃墜するも構わん! もし君が日本人なら、命令を聞ける筈だ!」
「それに、上手くやれば君の罪は全て取り消すと政府も言っている!」
ショウ
「脅しと賺し、よくやる……!」
自衛隊員
「聞いているのか?」
「命令を聞かなければ、君のいう両親の命はない! 座間祥!」
ショウ
「黙れよ!」
「こっちの事情も聞きもしないで、勝手だ……!」
チャム
「きゃっ……!」
ショウ
「ガラリア!」
ガラリア
「私だって、まだ……!」
ショウ
「ガラリア、やめろ!」
ガラリア
「き、消えたのか、ダンバイン……!」
「そうか!」
ショウ
「聞こえるか、隊長さん! 俺は宇宙人だ! ショウ・ザマの体を借りてる宇宙人だ!」
チャム
「ショウ、何言ってるの?」
自衛隊員
「何だと? 今何と言った?」
ショウ
「聞こえるか? 俺はカシオペア座の第二十八惑星系の人間だ! あの人達は全く関係ない!」
「聞こえているか!」
チャム
「ショウ、何言ってるの!」
自衛隊員
「宇宙人だって言ってるのか? あの日本人が……?」
テレビ音声
「ザマ・シュンカ氏の息子と名乗っていた宇宙人は、自らそれが嘘であった事を認めました」
チヨ
「貴方、やっぱり……」
シュンカ
「違う、チヨ。あの子は私達を捨ててくれたんだ。後に残る私達の事を気遣って……」
チヨ
「捨ててくれた? あの子が……」
シュンカ
「ショウはお前の言う事を聞いてくれたんだよ。分かるか、チヨ?」
「あの子は、お前の社会的地位を気にしてくれたんだ」
マスコミ
「ザマさん、インタビューお願いしますよ」
 〃
「ザマさん、出てきて一言頼んますよ」
 〃
「空中戦もやってんでしょ? どう思います?」
 〃
「ザマさん、お願いしますよ。ちょっと出てきてくださいよ」
ショウ
「やめろ、ガラリア!」
ガラリア
「邪魔するな!」
ショウ
「やめるんだ、ガラリア!」
自衛隊員
「チャンスだ! 全機に告ぐ、未確認物体を撃墜せよ!」
ショウ
「やめろ、撃つな! 俺は協力してるんだぞ!」
ガラリア
「ええい地上人め、こんなにミサイルを使って……!」
ショウ
「ガラリア、一緒にバイストン・ウェルに帰ろう!」
ガラリア
「何だと……?」
ショウ
「地上に出てこれたのも、ダンバインとバストールのオーラ力が最大限に発揮されたからだ」
「そうとしか考えられない」
ガラリア
「だから?」
ショウ
「試してみよう。上昇して2機のオーラ・バトラーで、バイストン・ウェルに向かって飛んでみよう」
チャム
「ショウ……」
ガラリア
「分かった、地上で死ぬのは犬死にだからな」
ショウ
「ああ、地上は嫌だ。バイストン・ウェルで戦おう、ガラリア!」
ガラリア
「了解だ!」
「ショウ・ザマ!」
「帰れると思うのか、ショウ・ザマ!」
ショウ
「東京に戻れたのも、俺の故郷だったからだ!」
ガラリア
「成程……私とチャムが居るのなら、バイストン・ウェルに戻れるというのか!」
ショウ
「それが理屈だろ!」
「ガラリア、バイストン・ウェルを念じてくれ!」
チャム
「みんなのオーラ力を集めて!」
ガラリア
「バイストン・ウェルへ帰る……!」
ショウ
「降下だ、ガラリア!」
「くっ……!」
ガラリア
「うぅっ……!」
ショウ
「南無三……!」
ガラリア
「ぐぐっ……!」
ショウ
「ガラリア、大丈夫か?」
「ガラリア、無理だ!」
ガラリア
「このまま行け! 私は必ずバイストン・ウェルに戻る!」
「その時こそ雌雄を決するぞ、ショウ……!」
ショウ
「ガラリア……!」
ガラリア
「うっ、うぅっ……!」
「バイストン・ウェルが見えた……!」
「うわぁぁっ!」
ショウ
「ガラリア!」
「ガラリアが……」
チャム
「オーラ力に耐えられなかったんだわ。これでもう、バイストン・ウェルには戻れない……」
ショウ
「ガラリア……」