第19話 聖戦士ショウ

前回のあらすじ
バイストン・ウェルは、海と陸の間にある人の心の故郷である。
私達はその記憶を忘れて、この地上に生まれ出てしまった……。
しかし、ミ・フェラリオの伝えるこの物語によって、私達はその記憶を呼び覚まされようとしている。
父と母に受け入れられないショウは、ガラリアと共に、地上人の攻撃の目標となった。
二人は共にバイストン・ウェルに帰る為に、オーラ・ロードに突入しようとして失敗をした。
チャム
「きゃっ……!」
「ショウ、どうするの?」
ショウ
「考えてるんだ」
チャム
「考えてたって、何にもならないでしょ?」
ショウ
「地上で死ねるのがせめてもの幸せかなって、考える時もあるのさ……」
チャム
「じゃあ、私は不幸な女じゃない」
ショウ
「抵抗すれば、地上の人を殺す事になるんだ」
チャム
「ショウ、しっかりしてよ……きゃっ!」
ショウ
「いつまで追っ掛けんだよ!」
「死ぬもんかよ、こんな事で……!」
「こんな事で、こんな所で死んでたまるか!」
自衛隊員
「うぉぉっ!」
ショウ
「オーラ・ロード……!」
チャム
「これが……?」
エレ
「はぁっ、はぁっ……!」
「あっ……!」
パットフット
「あぁっ、エレ……!」
エレ
「あぁっ!」
パットフット
「あぁっ……!」
「ダンバイン……?」
エレ
「えぇ、ダンバイン……」
チャム
「あっ……」
「ショウ、ショウ……きゃっ!」
「きゃぁぁっ!」
ショウ
「あっ!」
チャム
「あぁっ……!」
ショウ
「何だ?」
チャム
「ツバダみたい……。じゃ、ここはバイストン・ウェル?」
ショウ
「本当か?」
「くっ……!」
「ん?」
チャム
「逃げる……!」
「行った行った、行った!」
ショウ
「良かった、バイストン・ウェルに帰れて……」
チャム
「本当? 本当にそう思ってるの、ショウ?」
ショウ
「あぁ、そう思ってる」
パットフット
「聖戦士殿」
ショウ
「パットフット様。エレ様も」
エレ
「ダンバインにいらっしゃるのは、ショウ・ザマ様でしょうか?」
ショウ
「パットフット様。何故、このような山の中にいらっしゃるのです?」
エレ
「ショウ、有難う。ツバダから助けてくれて」
ショウ
「追われていたのですか?」
パットフット
「有難う御座います。でも、突然このような山の中へいらっしゃるなんて……」
ショウ
「ええ……地上からオーラ・ロードに乗って、ここに出て来てしまったのです」
エレ
「地上にいらっしゃったのですか?」
ショウ
「はい。色々ありました」
パットフット
「それで、何故ここに?」
エレ
「シルキー・マウとかいうフェラリオが、この山に居るのですか?」
ショウ
「いえ、知りません」
チャム
「でも、ダンバインの力だけで、バイストン・ウェルに戻れたとも思えないな」
ショウ
「エレさんが、喚んでくれたのでしょうか?」
エレ
「ツバダに襲われた時、私、助けて欲しいって無我夢中で考えました」
チャム
「そしたら、私達が出て来た……?」
エレ
「タイミングはね」
「でも私、未だにフェラリオと出会う事もないし、先の事が分かるという事ではないんですよ?」
ショウ
「でも、偶然にしては都合が良すぎませんか?」
チャム
「ご縁があるのよ、エレ・ハンムとは」
ショウ
「エルフ城は落ちたな、ドレイク軍ばかりだ……」
チャム
「誰も居ないの?」
ショウ
「ああ、居ない……」
チャム
「ニー達、殺されちゃったのかな?」
ショウ
「縁起でもない事、言うんじゃないの」
「引っ込んでな」
チャム
「うん」
ショウ
「チャム、エルフ城に忍び込んでくれ」
チャム
「私が?」
ショウ
「ゼラーナの動きを掴む為には、仕方ないじゃない」
チャム
「や〜よ、怖いもの。嫌な知らせばっかり聞きそうで……」
ショウ
「チャム……」
チャム
「あ、スケベ!」
ショウ
「それだけ元気なら、情報集めは出来るな?」
チャム
「やればいいんでしょ?」
ミズル
「エルフ城の残党は気にするな。問題はゼラーナだけだ」
「各聖戦士方には、ビランビーに慣れていただく為に、ゼラーナ狩りを命令する」
「焦らずに、オーラ・バトラーとウィング・キャリバーの連携プレイに慣れて欲しい」
フェイ
「分かっているさ」
アレン
「まあ、慣れるにはいいだろうさ」
ミズル
「活躍如何では、バーン・バニングスに代わり、攻撃隊長をやってもらう事になる」
ジェリル
「そん時は、アレンもフェイも私が使えるのかい? 結構じゃないか」
アレン
「よく言うじゃないの、ジェリル……それは俺の役目さ」
ミズル
「……トッドやガラリアより手間が掛かりそうだな」
エレ
「ショウ!」
チャム
「あ〜、よく寝た!」
エレ
「どうでした?」
ショウ
「ゼラーナは逃走中です」
エレ
「まぁ……」
ショウ
「僕は一度、タータラ城に向かいます」
パットフット
「そうですか。ゼラーナの方々はご無事なのですね」
ショウ
「僕と御一緒しませんか?」
エレ
「私はこの山が好きです。ここで、少しでも私の霊力を高めるように、修行したいのです」
パットフット
「父のフォイゾンは、聖戦士殿がお考えのような人ではありません。どうぞお一人で……」
ショウ
「では、急ぎますから……」
エレ
「お気を付けて、ショウ・ザマ」
パットフット
「ご無理なさらずに」
ショウ
「パットフット様も、エレ様も……」
フォイゾン
「私の孫の力で、バイストン・ウェルに帰れたと思える」
ショウ
「はい」
フォイゾン
「証拠はなかろう?」
ショウ
「は、ですが……お二人が国王をお慕いしている事は、間違いのない事です」
フォイゾン
「ううむ……」
ラウの兵士
「騎士団の方々、静粛にされたい。フォイゾン王である!」
フォイゾン
「オーラ・バトラーで地上に飛び、再びオーラ・ロードを通り戻ってきた戦士が、諸君らの目の前に居る」
「ショウ・ザマだ」
「今やドレイクは、アの国を乗っ取り、体勢を強化してラウの国にも攻め寄せてこよう」
「この戦いの中で地上界に入り、敵のオーラ・バトラーを仕留めて戻った、ショウ・ザマ……」
「彼こそ、真の聖戦士ではないかと思う」
「騎士達よ。この聖戦士を心から迎え入れ、ドレイク・ルフトの野心を打ち砕こうではないか」
ショウ
「あっ……」
チャム
「ショウ」
ショウ
「フォイゾン王」
フォイゾン
「うむ」
「ゼラーナはクリスタルの森に……すぐ合流をしてくれ」
ショウ
「はい。では……」
ラウの兵士
「聖戦士、オー! ショウ・ザマ、ショウ・ザマ……!」
フェイ
「クリスタルの森だぞ」
ジェリル
「ゼラーナが隠れていると、情報のあった所か」
アレン
「ダンバインの居ないゼラーナなんて、面白くもないぜ」
フェイ
「引っ込んでたっていいんだぜ。手柄は俺が頂く」
ジェリル
「私は手柄よりは、人を殺れるのがいいのさ……戦争なんだからね」
アレン
「確かにな……マイコン・ゲームをやるよりは、お楽しみだ」
「これがクリスタルの森か……水晶じゃないのか?」
ジェリル
「バイストン・ウェルって、どういう所だい? これを地上に持って帰れれば……」
フェイ
「地上の経済は滅茶滅茶になるね」
ジェリル
「っと……太いのにぶつかったら危ないようだよ?」
アレン
「ジェリル、遊ぶのはもうやめだ。ゼラーナを探せ」
フェイ
「しかし、こんなんじゃ見付からねぇだろうに」
「居た!」
ニー
「ドワ、地面を這うように移動するんだ」
ドワ
「あぁ、分かった!」
キーン
「ニー! キーン、フォウに入りました。出るわよ!」
ニー
「まだ出るな」
キーン
「何で?」
ニー
「弾は少ないんだ。クリスタルの森なら見付かりにくい。やり過すんだ」
キーン
「一度見付かったのよ? すぐ見付けられるわ」
マーベル
「ニー、ボゾンだけでも出るわ。いいわね?」
ニー
「駄目だ! 無駄な戦いは消耗するだけだ!」
フェイ
「見えなくなった。アレン、見えないか?」
アレン
「本当に見えたんだな、ゼラーナが」
フェイ
「当たり前だ」
アレン
「なら、絨毯爆撃が一番だ」
キーン
「1機でも落としておけば、生き延びる道だって拓けるわ。フォウは出るわよ」
ニー
「命令違反をするのか!」
ドワ
「キーンの言う事の方が正しいぜ、ニー! このままじゃ嬲り殺しになるだけだよ!」
マーベル
「ボゾンも出ます!」
キーン
「ビランビーめ、好きにさせるか!」
フェイ
「フォウが出てきた。俺が追い掛ける」
ジェリル
「ふん、雑魚でも追っ掛けな」
アレン
「ジェリルも追い掛けたっていいんだぞ?」
ジェリル
「フェイとは違う」
フェイ
「やるじゃねぇかよ、この生き残りが……!」
アレン
「当たったか」
「これでも目はいい方だぜ?」
マーベル
「あっ……」
「1機、森に降りた筈だけど……キーンは大丈夫かしら?」
ジェリル
「くっ、水晶の輝きでゼラーナが見えない……」
ドワ
「当たるな、当たらないでくれ……!」
ニー
「機銃座、無駄弾は撃つな! 敵に弾を撃ち尽くさせれば、攻撃はなくなる筈だ!」
ドワ
「ニー、あんた戦う気はないのか?」
ニー
「迂闊に撃って、ゼラーナの居所を敵に教える必要はない。当たらんように祈ってればいい」
ドワ
「キーンとマーベルを見殺しにするのか?」
ニー
「二人は上手くやるよ」
ニー、ドワ
「わっ……!」
ニー
「コタノ、煙を消せ! ぶつかる!」
コタノ
「無理だ!」
ジェリル
「ゼラーナ……!」
「アレン、フェイ! ゼラーナに集中攻撃を掛ける! 雑魚を追い掛けんのはやめな!」
「止めを刺してやるよ!」
「うっ……!」
「何だ? ダンバイン……!」
ショウ
「間に合ったか!」
ジェリル
「ビランビーを切り離せ!」
アの兵士
「はっ!」
ジェリル
「フェイ! ダンバインが行った!」
フェイ
「何?」
キーン
「ダンバイン?」
フェイ
「わっ……!」
チャム
「お前なんか、行っちゃえ!」
「必殺のオーラ斬りだぁ!」
「やった! ……けど、ビランビーは逃げたわ」
ショウ
「キーン、ゼラーナはどこだ? マーベルは大丈夫なのか?」
キーン
「ショウ……ショウなの? チャムも居るの?」
ショウ
「ああ、地上から戻ってきた」
キーン
「地上から?」
ショウ
「マーベルはどこだ?」
キーン
「マーベル? ボゾンで頑張っている筈よ」
ジェリル
「くっ、ダンバインはガラリアと共に消えた筈ではなかったのか?」
アの兵士
「出て来てます」
ジェリル
「見れば分かる」
キーン
「こんなのは私一人でやれるわ。ショウは、ゼラーナとマーベルを助けてやって」
ショウ
「キーン、余り調子に乗るなよ」
チャム
「来た!」
ショウ
「むっ……!」
フェイ
「速い……!」
チャム
「ショウ、あのオーラ・バトラー、バーンじゃないわ」
ショウ
「分かってる。新たな地上人だ」
フェイ
「ダンバインか……どこから沸いて出たかは知らんが、俺が倒せば……!」
「あっ、聞かされていたパワー以上じゃないか!」
「何?」
「これがダンバインか……!」
マーベル
「来た!」
「後ろに回り込む為に、飛ぶ……?」
「いいえ、焦ったら負け……出た!」
アレン
「動いたか、ボゾン!」
マーベル
「はっ、そうか……よし!」
アレン
「見えた!」
「やった……うっ!」
「やりやがったな!」
マーベル
「落ちろぉぉっ!」
アレン
「うわっ、しまった!」
「ジェリル、フェイ、引き上げる! 損傷を受けた!」
フェイ
「ダンバインが出て来たんだ! アレン、ジェリル、この空域から脱出する!」
キーン
「逃げるわ! どうするの、ショウ?」
マーベル
「ショウ……! キーン、ショウが来ているの?」
キーン
「マーベル。戻ってきてくれたわ、ショウが」
マーベル
「どこに……どこに?」
ジェリル
「アレンの方が手傷が大きいのか?」
フェイ
「俺の方は自力で飛べる」
ジェリル
「アレン、ズロンとドッキングするかい?」
アレン
「すまん、ジェリル」
ジェリル
「ダンバインが相手ではなかったんだろうに」
アレン
「そんな口が聞けるジェリルじゃあるまい。あんたのビランビーはどうしたんだよ?」
マーベル
「ショウ……ダンバイン……」
チャム
「やっほぅ、マーベル、キーン!」
キーン
「チャム!」
チャム
「キーン! キーン、元気?」
キーン
「当たり前でしょ?」
チャム
「ふふっ、マーベル!」
マーベル
「チャム、どこに行ってたの?」
チャム
「地上よ。ショウの生まれた国よ」
マーベル
「地上へ? ダンバインで?」
チャム
「そうよ、そして帰ってきたの」
マーベル
「ふふっ……ショウ、よくも無事で……」
ショウ
「マーベル!」
マーベル
「よく……よく帰ってきてくれて……」
ショウ
「マーベル、無事で良かった……」
マーベル
「ショウ!」
ショウ
「マーベル……ごめんな、苦労掛けてさ」
マーベル
「もう……!」
ショウ
「あ、よせ、マーベル……!」
チャム
「あっ、知らない……!」
ショウ
「マーベル……」
マーベル
「よく……よくも帰ってくれて……」
ショウ
「有難う、マーベル」
チヨ
「ショウの怨念よ……私達を恨んで、あんな形で化けて出て来たのよ……」
シュンカ
「怨念ね……そうかもしれん」
チヨ
「でもそれなら、私だけに祟れば良かったのよ。何十万人もの人を巻き添えにする事はなかったわ」
シュンカ
「バイストン・ウェルとかいう世界の祟りだな」
チヨ
「あの子の出任せですよ」
シュンカ
「出任せで、あんなに人が死ぬか? オーラ・バトラーとかが動くのか?」
チヨ
「分からないわ、私には……分からない……」
シュンカ
「そうだな……分かる訳がない」
「オーラ・ロードとかいうものの道が分からん限り、バイストン・ウェルという世界を確かめようもない」
チヨ
「私、もう日本には住めないわ。これからどうして暮らしたらいいの……?」
シュンカ
「少しは、ショウの事を考えたらどうなんだ? お前は……!」
ショウ
「地上に戻って、嫌なものばかり見てきたような気がする……」
マーベル
「ダンバインに乗ったショウが突然現れたんだもの。地上の人達が敵視するのは仕方ないわ」
ショウ
「ニー達には話さなかったけど、親子でもそうだったのさ」
マーベル
「そうだったの……」
ショウ
「けど、それもいいのさ」
マーベル
「何故?」
ショウ
「重要な事は、人間は知らない物には激しい敵意を抱き」
「そして、オーラ・バトラーは自力でオーラ・ロードを開く事が出来るという事だ」
マーベル
「そうね。もし、自在に地上に行けるオーラ・バトラーが出来たりしたら……」
ショウ
「ドレイク・ルフトは、地上界にまで出て行く事が考えられる……」
ニー
「その時は、知らない者同士だから、バイストン・ウェルと地上との接触は戦争しかあり得ない……」
「悪かった、邪魔したな」
ショウ
「いやいいよ。肝心な事は、もう済ませたから」
マーベル
「ふふっ……」
ニー
「しかしショウ……俺は今、君の帰還を心から感謝しているのだ」
ショウ
「何だよ、改まって」
マーベル
「変よ、ニー」
ニー
「自分の可能性を見縊ってしまうのは、やめようと思う」
「最後のギリギリまで、ドレイクに食いついてみようと思う」
ショウ
「ニー……」
「それでいい。協力させてくれ」
ニー
「ショウ。改めて聖戦士の帰還を、心から……」
ショウ
「ニー……」