第20話 バーンの逆襲

前回のあらすじ
バイストン・ウェルは、海と陸の間にある人の心の故郷である。
私達はその記憶を忘れて、この地上に生まれ出てしまった……。
しかし、ミ・フェラリオの伝えるこの物語によって、私達はその記憶を呼び覚まされようとしている。
地上から戻ったショウとチャムは、ゼラーナに襲い掛かるジェリル、アレン、フェイを撃退して、
ゼラーナのクルーと再会をした。
コタノ
「わっ、わぁぁっ!」
ニー
「もう少し高度は取れないのか、ドワ?」
ドワ
「どうしても出力が上がらないんだ」
ニー
「リアンまで行けば、ドルプルが待ってるんだ。行け!」
ドワ
「行ければね!」
ニー、ドワ
「おっ……!」
ドワ
「機関室、圧力が下がりっぱなしだぞ!」
チャム
「ニー! こんな事なら、私が引っ張った方がいいんじゃない?」
ニー
「ああ頼む、やってくれ。フェラリオの燐の粉を振りかければ……うっ!」
チャム
「んっ!」
ニー
「燐の粉を振りかければ、ゼラーナは飛べるんだろ?」
チャム
「そんな夢みたいな事、言わないで?」
「ドワ、頑張ってよ」
ドワ
「やってんだろ?」
チャム
「貴方の腕に掛かってるのよ? 良く前を見てね!」
ドワ
「だったら目の前をチラチラするなよ!」
コタノ
「急げ、グロン!」
ショウ
「コタノ、手を貸してくれ!」
グロン
「うわぁぁっ!」
コタノ
「グロン!」
ショウ
「コタノ、わっ……!」
マーベル
「ショウ!」
ショウ
「マーベル、ロープを……!」
マーベル
「掴まって!」
グロン
「くっ、このっ……!」
コタノ
「あっ、前、前……!」
グロン
「んんっ……!」
チャム
「あっ、ニー、山よ!」
ニー
「ドワ、上昇掛けろ!」
ショウ
「何だって急上昇するんだ?」
マーベル
「前に山が……!」
ショウ
「何?」
チャム
「駄目よ、ぶつかるわ!」
ニー
「もっと上げろ!」
ショウ
「むっ……!」
コタノ
「わ〜っ!」
ニグ・ロウ
「バーン様」
バーン
「ニグ・ロウか」
ニグ・ロウ
「はっ、ゼラーナが妙な方向へ動き出しました」
バーン
「ん?」
ニグ・ロウ
「レンの海へ向かっております」
バーン
「レンの海だと? あそこにはリアンの海岸がある。無数にある洞窟に潜む魂胆だな」
ニグ・ロウ
「はっ」
バーン
「今、ショット・ウェポン様が、親方様に掛け合ってくださっている」
「オーラ・バトラーの1、2機をお貸しくださるようにと」
「仕方なかろう。城盗りでは私は失敗を重ねたからな」
「しかし、ルーザ様が居なければ、こうも遠ざけられはしなかった」
「こうなったら一人で、あの地上人、ショウ・ザマを倒してみせる」
ドレイク
「バーンの事はワシは知らん」
ショット
「ですから、彼を使うのです」
「正規軍を動かす口実がなければ、彼を利用してゼラーナを討たせるのが得策でしょう」
ドレイク
「貴公の手元には、ワシも知らん秘策のオーラ・バトラーとやらがある筈であろう?」
ショット
「はい」
ドレイク
「それを使ってやるからには黙認しよう」
ショット
「ん、有難うございます……」
ドレイク
「貴公の資材の中でバーンを動かすのは、構わんという事だ」
「むっ……!」
「鼠か」
ショット
「はい」
ドレイク
「ふふっ、ワシに貸しを作ったつもりか?」
ショット
「滅相もない」
ホン・ワン
「くっ……!」
バーン
「これですか、レプラカーン……」
「今までのオーラ・バトラーとは全く違う……これを私に貸してくださるのか?」
ショット
「そのつもりだ。但し、実用テストはしていない」
バーン
「構いません。私がデータを取りましょう」
「機銃といいミサイルといい、これだけの火力があれば、ダンバインなぞ物の数ではない」
ショット
「その通りだ。他にも武器はある。説明しよう」
バーン
「ははっ……これなら間違いなく、ダンバインをやれる!」
ドレイク
「ふふっ、行ったか……」
バーン
「これならば、ショウのオーラ力が増大しようと問題外だ。目指すはレンの海……!」
「レンの海……この辺の筈だが」
「何の煙だ?」
「居た、ゼラーナ!」
「ヤルクの神の采配か!」
マーベル
「うっ……!」
「追っ手?」
ショウ
「速い……」
ニー
「敵は一機だ。慌てるな」
ドワ
「エネルギー発動システムがやられました」
ニー
「何?」
バーン
「降下、照準!」
ショウ
「ん、あんな型のは見た事ないぞ。誰だ?」
「くっ……!」
「見てろ!」
「わっ!」
バーン
「照準と砲身が合ってない」
「しかし、このスピードと火力……調整さえ付けば、ゼラーナもダンバインも討てる筈だ」
「ここで仕掛けるのは不利だ。このまま、ゼラーナがリアンの海岸に出るまで追え!」
ニグ・ロウ
「はい!」
ニー
「また来るぞ。その前に修理だ」
ドワ
「はい」
ショウ
「ニー、ダンバインを用意するか?」
ニー
「頼む。しかし、何とかリアンの海岸に入れば、隠れる所は一杯ある」
ショウ
「あそこか?」
ニー
「ああ」
ショウ
「こんなとこで、ドルプルの居場所が分かるのか?」
チャム
「本当よね、岩の柱とか洞窟ばっかりでさ」
ニー
「どうした、ドワ?」
ドワ
「海面近くの風が強いんだ」
ニー
「何てオーラ・シップだ……!」
ドワ
「ええい、何て所だ!」
ニー
「あった! 目印の色だ。左の洞窟にドルプルが居る!」
ドワ
「ドルプルだ」
ニー
「突っ込め」
ドワ
「了解」
ドルプル
「漸く来たか」
マーベル
「ここがドルプルの秘密工場……」
ドルプル
「ん、こりゃ酷いや」
整備兵
「右翼が大分やられてるぞ、急げ!」
ニグ・ロウ
「一挙に襲いますか?」
バーン
「いや、ショウを生け捕りにしたい」
ニグ・ロウ
「はっ……」
バーン
「ダンバインは、一度地上に飛んで舞い戻ったのだ」
「隠れている場所が分かったとあれば、叩くのはいつでも出来る」
ニグ・ロウ
「はぁ……」
バーン
「地上に何故出られ、どのような力を身に付けたのか、それをショウから聞き出したい」
ニグ・ロウ
「はい」
バーン
「やるのはそれからでいい」
ニー
「そんなに食べると太るぞ?」
キーン
「いいのよ」
マーベル
「キーンは育ち盛りなのよ」
キーン
「マーベルは太りたくないから食べないの?」
マーベル
「そこまで体は崩れてないわ」
チャム
「そうかな」
マーベル
「チャム……!」
チャム
「あ、ショウ……寝たんじゃないの?」
ショウ
「ニー、フォウを貸してくれ」
ニー
「こんな夜中に、どこに行くんだ?」
ショウ
「これから、エルフ城のドレイクを討ちに行く」
ニー
「何?」
見張り
「ふぁっ……ぐわっ!」
ショウ
「ドレイクは、アの国を乗っ取って有頂天になってる筈だ。今なら付け入る隙もある」
マーベル
「でも、一人で行くのは無理じゃなくって?」
ショウ
「真夜中に一人で攻める方が、ドレイクには近付ける」
ニー
「エルフ城の警備は万全な筈だ。それにドレイク軍の機械化部隊は、より強力になっている」
キーン
「私はフォウで付いて行くわ。いいでしょ?」
ショウ
「フォウのオートマチック操縦は完成した。そのテストを兼ねて一人で行くよ」
キーン
「行くよ、って……」
マーベル
「ニー」
ニー
「いや、一人でいい」
ショウ
「……何? 止めるの?」
マーベル
「いいえ、ショウの判断は正しいかもしれないと思って」
ショウ
「有難う、マーベル」
「ダンバイン、出るぞ」
バーン
「フォウもオートマチックを完成したのか」
「しかし、こうも注文通りにショウが動いてくれるとは思わなかった」
「くっ……!」
チャム
「ショウ」
ショウ
「チャム!」
チャム
「何で、そんなに自棄っぱちになってんの?」
ショウ
「さっきの話を聞いてたんだろ? 自棄じゃないよ」
チャム
「地上から帰ったら、攻撃的になったのね?」
ショウ
「誤解だよ」
チャム
「そうかしら? だって、フォウとダンバインのミサイルだけで、エルフ城は全滅すると思うの?」
ショウ
「だから、ドレイクの寝てる場所を集中して打ち抜いて行くんだ」
チャム
「ラウの国のフォイゾン王に話して、手伝ってもらえばいいじゃないの」
バーン
「出来るかな?」
チャム
「えっ?」
ショウ
「何?」
バーン
「動くな」
「ふふっ……ショウ・ザマ、久し振りだな」
ショウ
「バーン・バニングス! 何でフォウに……」
バーン
「因縁じゃないのかね? ショウと私の……」
ショウ
「出来過ぎだよ」
バーン
「私の方に運が向く時もある」
ショウ
「認めよう、バーン」
バーン
「フォウの進路を変えてもらおうか!」
ドルプル
「組み立てが終わったばかりですよ? 知りませんよ?」
ニー
「見殺しには出来ないだろう?」
キーン
「ニー、急いでよ!」
ドルプル
「キーン、お前まで行く事はないだろう?」
「ニー、知らないぞ!」
マーベル
「急いで」
ニー
「やってくれ。上昇したらすぐにドッキングだ」
「行けるか?」
キーン
「良好です」
ニー
「行ってくる、ドルプル」
ドルプル
「エルフ城まで辿り着けなくたって、知らないぞ!」
ニー
「マーベル、ドッキングする。下がれ!」
マーべル
「了解!」
「どうぞ、ニー」
アの兵士
「あっ……」
「ウィング・キャリバーの音だ。どうする、ニグ・ロウ?」
ニグ・ロウ
「来たか。よーし、合図しろ! フォウの音だ!」
バーン
「あの光の点滅する、向こうにある島へ着陸しろ」
ショウ
「どうするつもりだ?」
バーン
「地上へ行く術を教えてくれれば、島に行く必要はない」
チャム
「そんなのある訳ないでしょ?」
バーン
「口を慎め」
チャム
「嫌!」
ニグ・ロウ
「流石バーン様だ。お一人でこういう事をさせると抜け目がない」
「ガバの島へ付けろ!」
チャム
「あ〜嫌よ! 嫌よこんなの〜! きついよ〜! 放して〜!」
バーン
「いい加減白状したらどうなんだ? 本当に地上に行ったというのなら、その方法がある筈だろう」
ショウ
「分かっていたら、こんな所に戻ってくるもんか!」
チャム
「本当なの、ショウ?」
ショウ
「チャムは黙ってな」
バーン
「偶然でバイストン・ウェルを行ったり来たり出来るなどと、誰が信じるか! 術がある筈だ!」
「オーラ力に依るものならば、その力の出しようがな」
ショウ
「その技術があったにしても、地上とバイストン・ウェルは繋がってはいけないんだよ」
バーン
「技術を教えろ」
ショウ
「知らない。二つの世界が繋がったら、人の世界は滅びるぞ」
バーン
「話を逸らせるな!」
ショウ
「ガラリアでさえ、地上に行ったら俺と同じ気持ちになったんだぞ?」
バーン
「ガラリアが……奴は地上へ行ったのか?」
ショウ
「違う世界を見て、俺と同じ気持ちを持ったんだ。それで協力してバイストン・ウェルへ戻ろうとした。けど……」
バーン
「ガラリアはどうした?」
ショウ
「死んだよ! バイストン・ウェルに帰り切れずに……!」
バーン
「何故だ?」
ショウ
「知るもんか。シルキー・マウにでも聞いたらどうなの?」
バーン
「やれ!」
「チャム・ファウ、ショウはどのようにして地上に行った?」
チャム
「知らないわよ」
バーン
「やれ!」
チャム
「いや〜ん!」
「あぁ、嫌……!」
ショウ
「やめろ!」
バーン
「喋る気になったか?」
ショウ
「知らない物を教えられるか!」
「もしそういう方法があって俺が知っていても、お前には教えられない! 俺の命をやる!」
バーン
「ぬぬっ……やれ!」
「チャム、どうだ?」
チャム
「知らないよ! 知らない!」
「いや〜!」
ホン・ワン
「うぅっ……!」
「ん?」
「何だ? フォウとボゾンじゃないか。何でこんな所……」
「むんっ!」
キーン
「ニー、蛍の信号だけど、あれ、ホン・ワンじゃないかしら?」
ニー
「ホン・ワンの蛍の色だ。エルフ城に潜り込ませていた筈だが……」
キーン
「やっぱりホン・ワンよ、ニー!」
ホン・ワン
「ニー様、こんな時間にどちらへ?」
ニー
「ショウが一人でエルフ城の攻撃に向かったから、援護に行く」
マーベル
「もう攻撃は始まっている頃よ」
ホン・ワン
「冗談言っちゃ困ります」
「エルフ城……いや、ドレイク城に向かって飛んでいった者は、一機も居ないんですぜ?」
キーン
「じゃあ、どこかで捕まってしまったのかしら……」
ホン・ワン
「ニグ・ロウが舟を用意するとか言ってましたが……」
「まさか、ゼラーナの動きがバーンに筒抜けだったのでは?」
ニー
「マーベル」
マーベル
「海よ。探してみましょう」
キーン
「海のどこ?」
ニー
「待ち伏せがあったとしたら……」
ホン・ワン
「岸に入る前にやられましたな。霧の深い多島海……」
ニー
「それしか考えられん!」
ショウ
「はぁっ、はぁっ……」
バーン
「しぶとい奴め」
ニグ・ロウ
「ドレイク城に連れていきますか?」
バーン
「吐かせるまではドレイクに渡さん」
「地上に行き来出来る術が分かれば、私はショット以上の技術を手に入れる事も出来る!」
「はっ……!」
マーベル
「ショウ、しっかり」
バーン
「ショウを奪われるぞ!」
マーベル
「はっ……!」
アの兵士
「このっ!」
マーベル
「あっ……!」
バーン
「くっ……!」
ニー
「バーン、逃がしはしないぞ!」
キーン
「あっ!」
ニー
「マーベル、そちらはどうか? 新型のオーラ・バトラーは手強いぞ!」
マーベル
「ダンバインをそんな使い方しても駄目なのよ!」
アの兵士
「わぁぁっ!」
ニグ・ロウ
「バーン様、ボゾンが上がりました!」
バーン
「ボゾンは私がやる。お前はニーのフォウを追え!」
ニグ・ロウ
「了解!」
マーベル
「あれか!」
「弾かれた!」
「あぁっ!」
「今までのと段違いの性能……!」
ニー
「一方的にさせるか!」
「突破出来るか?」
キーン
「やるのよ!」
「ニー、このままじゃやられるばかりだわ!」
ショウ
「くっ、バーンめ……!」
「今度はバーンを海の中へ……!」
「どこだ、バーン!」
「あそこか!」
バーン
「何、ショウ・ザマが乗ったのか?」
マーベル
「新型のオーラ・バトラーが行ったわ、ショウ!」
ショウ
「マーベルはニーを援護しろ」
マーベル
「了解!」
バーン
「速い、ダンバインにこれ程のスピードが……!」
「しかし、このレプラカーンとて負けはせん!」
キーン
「後ろ、弾切れよ!」
ニー
「二対一では……!」
マーベル
「ニー、急上昇して!」
ニー
「マーベル……!」
アの兵士
「わぁぁっ!」
バーン
「何?」
ショウ
「このぉっ!」
バーン
「迂闊に深追いをし過ぎた!」
ショウ
「ニー、マーベル、どうか?」
ニー
「離れた!」
マーベル
「オーラ・バトラーをやったのね?」
キーン
「みんな逃げて行くわ!」
ショウ
「チャムだ。チャムはどこに行ったんだ? 捜すのを手伝ってくれ!」
ニグ・ロウ
「バーン様、ズロンとドッキングなさりませ!」
バーン
「そうも行かん。テスト飛行も兼ねて、ショット様から申し受けたレプラカーンだ」
「片方のコンバーターだけで、どれだけ飛べるかも調べる必要がある」
「ショウめ……!」
ショウ
「あ、チャム、無事か?」
チャム
「ショウ、ここよ〜!」
「早く助けてぇ、ショウ〜!」
ショウ
「よーし、じっとしてろよ、チャム」
チャム
「やったぁ、あ〜っ!」
「んんっ……!」