第24話 強襲対強襲

前回のあらすじ
バイストン・ウェルは、海と陸の間にある人の心の故郷である。
私達はその記憶を忘れて、この地上に生まれ出てしまった……。
しかし、ミ・フェラリオの伝えるこの物語によって、私達はその記憶を呼び覚まされようとしている。
リムルの独走は、ショウ達に危険な戦いを強いる事となった。
しかしショウは、フェイのレプラカーンを退け、リムルはニーから叱責を受けた。
ショウ
「俺は反対だな、こんな作戦」
ニー
「ラウの国の軍備が整うまでの間は仕方がなかろう」
マーベル
「ショウ、今はフォイゾン王の作戦に従うべきね」
ショウ
「しかし、ドレイクの秘密工場を一つずつ叩くなんてやり方は、やり方としてまどろっこし過ぎるんだよ」
チャム
「ショウの言う通りだと思うな」
ニー
「しかしショウ、ナの国のシーラ王妃だって、力を貸してくれと頼んでいる」
マーベル
「ナの国?」
ニー
「あぁ、ラウの国より国力はあるし、軍事力もあるのだが」
ショウ
「ラウの国よりはあるというのか?」
チャム
「そりゃあるわ」
ニー
「昼には今日の第一目標に着くぞ。準備しておけよ」
ショウ
「ニー」
トッド
「おうニクス、世話になったな」
ニクス
「トッド……!」
トッド
「この機械も、俺の為に盗んできてくれたんだろ?」
「感謝している」
「出世したら、綺麗な小屋を建ててやる。楽しみに待ってなって」
ニクス
「待ってくれよ」
トッド
「さよならだ」
ニクス
「あぁっ……!」
「トッド……」
ニー
「ショウ、マーベル、リムル、出てくれ」
ショウ
「了解」
マーベル
「今行くわ」
リムル
「どうぞ」
ニー
「キーンも用意はいいか?」
キーン
「いいわ」
「ショウ、どうぞ」
ショウ
「リムルは上から援護してくれればいい」
リムル
「了解」
ショウ
「余計な動きはするな」
リムル
「はい」
ショウ
「行くぞ、キーン」
キーン
「いいわよ」
ショウ
「先行してくれ」
キーン
「了解」
リムル
「空は私が守ってあげる」
アの兵士
「ん?」
キーン
「ショウ、工場よ」
アの兵士
「よし、来い……もっと近付け……」
ショウ
「静か過ぎる……」
キーン
「ミサイル撃ちます」
ショウ
「キーン、ミサイルと砲撃だ!」
ニー
「ショウめ、急ぎ過ぎだ」
マーベル
「ボゾン、離脱します」
ニー
「リムル、味方に何かあるまで、上空を動くな」
リムル
「了解」
マーベル
「ドラムロ、何機居るの?」
「速い……ドレイク軍は、ドラムロでさえパワーアップしている」
ニー
「ショウ、ドラムロ如きに何を梃子摺ってる?」
「何っ……!」
「またドラムロだ。ショウ……!」
ショウ
「分かってる!」
「やったか?」
リムル
「このっ……!」
ショウ
「しまった! 上に入られた!」
リムル
「ドラムロぐらい、私にだって……!」
「あぁっ……!」
「くっ、このくらいで……!」
「くっ……!」
ショウ
「このっ!」
キーン
「工場は燃え出したわ」
ニー
「ショウ、ダーナ・オシーをゼラーナに収容するのを手伝え」
マーベル
「リムル、怪我は大丈夫?」
リムル
「戻れます」
ニー
「全機引き上げる!」
ビショット
「トッド・ギネスと言ったな。覚えているぞ」
トッド
「こいつは話が早く纏まりそうだな」
クの兵士
「口の利き方に気を付けろ!」
ビショット
「やめんか」
トッド
「俺を雇ってもらいたい」
ビショット
「ドレイク軍では、貴公は戦死した事になっている」
トッド
「俺は金を貰おうとは思っていない。ゼラーナとダンバインに接触出来るよう、計らってくれるだけでいい」
クの兵士
「勝手な事を言うな!」
 〃
「何様のつもりだ!」
ビショット
「ははっ……面白いな!」
「変わったな、トッド・ギネス」
トッド
「地獄を見りゃ、少しはマシになるさ」
ビショット
「地獄? 地獄から舞い戻って、ドレイクの所へ何故行かない?」
トッド
「バイストン・ウェルを制するのは、クの国王と見たからだ」
ビショット
「ほう、地獄で人に諂う事も覚えてきたか」
「良かろう。クの国の良き聖戦士となってくれ」
トッド
「すまんな、ビショット・ハッタ陛下」
ビショット
「世辞はいい」
「新型オーラ・バトラーのテスト・パイロットに、いい男が来たものだ。ふふっ……」
リムル
「ん、マーベルさん……」
マーベル
「どう、痛む?」
リムル
「いえ。やはり足手纏いになってしまいましたね……」
マーベル
「ショウの先走りがいけなかったのよ」
リムル
「ショウの苛々も分かります」
マーベル
「貴方は体を休めて……」
「いいわね、リムル?」
ショウ
「あ、マーベル、居たの?」
マーベル
「何隠したの?」
ショウ
「ん、さっき降りた時、近くに咲いてたんだ」
「花瓶ないのかな?」
リムル
「あ、その花は……」
マーベル
「何か探してくるわ」
ショウ
「そんなつもりじゃ……」
マーベル
「優しいのね」
ショウ
「ん……」
マーベル
「わざわざ、花の森まで摘みに行ったんでしょ?」
ショウ
「あ、はぁっ……」
「リムル、これ、何て花なのかな?」
リムル
「ポロポーズっていうの」
「ふっ、貴方、この花を本気で私に……?」
ショウ
「嫌なのか、その花じゃ?」
リムル
「まさか」
ショウ
「俺が1機目のドラムロに手古摺ってなければ、リムルに怪我なんかさせなかったんだ」
リムル
「仕方がないわ。ニーはショウのやり方を許してくれなかったんでしょう?」
「私だって、もっと強くなれば……」
ショウ
「いや、ダンバインに一番乗ってるのは俺なんだ。なのに……」
リムル
「ねえ、この花の花言葉、何だか分かる?」
ショウ
「いや?」
リムル
「貴方だけを永遠に愛します……」
ショウ
「へぇ」
リムル
「この国では、結婚する相手だけに贈る花なのよ? 受け取れば相手もOK」
ショウ
「嘘だろ?」
リムル
「嬉しいわ、有難う」
ショウ
「んっ……」
トッド
「大したもんだ、このビアレス……」
「ショット・ウェポンの造るオーラ・バトラーと互角か、それ以上だ」
「ルーザからの情報かい? これだけのオーラ・バトラーを造るとは」
クの将校
「我が国の力だ」
トッド
「怒るなって」
「話があるんだろ。何だよ?」
クの将校
「ドレイク様の娘子が、ゼラーナに取り込まれているという情報がある」
トッド
「へぇ〜、リムルはニーの所へ行ったのか」
クの将校
「娘子を奪い取り、ドレイク様に返してやれ」
トッド
「いっその事、リムルを人質にしてさ。脅迫したらどうなんだい、ドレイクを?」
クの将校
「ふん、何を戯けた事を……我が国とドレイクのアの国は同盟国だぞ」
トッド
「そうは思えないな」
クの将校
「トッド・ギネス」
トッド
「分かったよ」
「俺なりに、罠を掛けさせてもらうだけさ……」
キーン
「ヤダ、ショウったら〜!」
チャム
「わ〜、みんなに言っちゃお言っちゃお〜!」
ショウ
「やめろよ!」
ニー
「何だと言うんだ?」
リムル
「すいません、出られなくて」
ニー
「いや、リムルは……」
「あっ、どうしたんだ、それ」
リムル
「ショウがくれたの」
ニー
「う、受け取ったのか……?」
リムル
「貴方が中々くれないんですもの」
ニー
「馬鹿な……」
リムル
「ふふっ……」
ニー
「え?」
リムル
「ショウはね、お見舞いのつもりでくれたの」
ニー
「え? そうか……」
リムル
「驚いた?」
ニー
「まあな」
リムル
「妬けた?」
ニー
「馬鹿、痛み収まったか?」
リムル
「ううん、全然。とっても痛いわ……」
ニー
「こいつ……!」
ショウ
「ニー、出撃だろ?」
ニー
「今行く」
リムル
「ふふっ……」
キーン
「リムルにプロポーズしたの?」
ニー
「今はそういう話をする時じゃないだろう?」
「キーン、いいぞ」
キーン
「フック外します」
「ニー、離すわよ」
マーベル
「ミラブロの山に、攻撃するほどの秘密工場があるの、ニー?」
ニー
「レプラカーンという新型のオーラ・バトラーが護衛に回った」
「ホン・ワンからの情報だから、正しいだろう」
ショウ
「攻撃しづらい地形のようだ」
「キーン、余り突っ込みすぎるなよ」
キーン
「馬鹿にしないでよ、私だってオーラ力は付いているわ。ちゃんとやってみせる」
ニー
「ショウ、お見舞いの花、有難うよ」
ショウ
「そうとは限らないぜ? ポロポーズの花言葉は知ってんだから」
ニー
「ショウ……!」
マーベル
「目標キャッチ!」
ニー
「何?」
「ショウ、工場が見えたら一気に突っ込め」
ショウ
「了解」
キーン
「私は一撃離脱して、上空で待機」
ニー
「よし、キーン。俺は洞窟の方を」
「ショウ、マーベル、目潰しだ!」
ショウ
「了解!」
「何……?」
「どういう事だ? もぬけの殻じゃないか」
「はっ……!」
「罠に掛かったんだ! だからこんな作戦は駄目だって言ったんだ!」
「工場はもぬけの殻だったぞ! ホン・ワンの情報は嘘だったんだ!」
ニー
「そんな事はない!」
ショウ
「なら、俺達の作戦がドジったんだ! こんな奇襲がいつまでも……!」
ニー
「キーンは上空から動くな!」
ショウ
「ショットとドレイクを討つ方が……!」
マーベル
「今は討論をしている時ではないでしょう? 死ぬわよ、ショウ!」
ショウ
「死ぬかよ!」
アレン
「ほう、待った甲斐があったというものだ」
キーン
「別働隊が出てきたわ、ニー! 掛かります!」
ニー
「ショウ、ドラムロ如きに手間を掛けるな! 同じ失敗はするんじゃない!」
ショウ
「何言ってんだ! 敵情視察視察も碌にしないで、何の奇襲だよ!」
マーベル
「ショウ、後ろ……!」
「数を制圧するには、2機でもやるしかないというのに!」
アの兵士
「いつまでもやられるか!」
ゼラーナのクルー
「うわっ!」
リムル
「いつもの奇襲と違う……」
「待ち伏せを受けたの?」
アレン
「お前らのゲリラ戦を黙って見ている俺達だと思ってたのか?」
ショウ
「ビランビー!」
アレン
「洒落臭いんだよ!」
ショウ
「地上人か! まだ分からないのか!」
アレン
「分かっているよ! お前を倒せば、いい思いが出来るってな!」
ショウ
「お前と一緒に地上から来た男だって死んだんだぞ! やめろ!」
マーベル
「こんなに出て来るなんて……完全に嵌められてしまったわ!」
ニー
「マーベルはゼラーナと連携してくれ! 新型は俺がやる!」
マーベル
「了解!」
「ドラムロぐらい……!」
「はっ……!」
キーン
「やらせるもんですか!」
ショウ
「地上人が乗っているからといって、たった一機のビランビーが討てないのか、俺は……!」
アレン
「ダンバインめ、パワーが落ちてるんじゃないのか?」
ショウ
「邪魔するな!」
「やったな、この……!」
アレン
「それまでだな、ショウ・ザマ!」
ショウ
「尽く先手を取られる。どうしたんだ、俺は……?」
アレン
「何だ?」
「ん、どこの部隊だ?」
トッド
「タンギー隊、俺はダンバインとやりたいんだ。邪魔する奴は蹴散らせ!」
「罠を仕掛けるまでもなかったな、ショウ・ザマ……こうも国境近くに出てくれているとはな」
アレン
「あんなオーラ・ボムは知らないぞ。どこの部隊なんだ?」
ショウ
「あれは……!」
トッド
「ビランビー、聞こえるか? ダンバインは俺がやる! 引っ込んでいろ!」
アレン
「その声はトッドか。貴様、どうして……!」
トッド
「ビショットのクの国はドレイクと同盟を結んでいる。だからダンバイン狩りを手伝いに来てやったんだよ」
「邪魔するな、アレン!」
ニー
「どこの軍だ? キーン、マーベル、気を付けろ!」
マーベル
「どうなってるの、ニー?」
ニー
「新型のドロに見える。こいつ……」
マーベル
「敵ではなさそうね」
ニー
「いや、こいつはクの国のオーラ・ボムだ」
マーベル
「え?」
ニー
「同盟国同士で撃ち合うのは、何か企みがあるんだ」
マーベル
「じゃあ、狙いは何なの?」
ショウ
「こいつ、トッドか!」
「間違いない……あのオーラ力の感じは、トッドだ!」
キーン
「こいつら新型だけど、戦いには慣れてないみたいよ」
リムル
「くっ……!」
アレン
「トッドめ。ビショットに取り入って、新型のオーラ・バトラーを手に入れやがったか」
「このケリは付けさせてもらうぜ……」
トッド
「ビアレスを手に入れて、こんなに早く貴様に再会出来るとは思わなかったよ、ショウ!」
ショウ
「よくも懲りずに舞い戻ってきたもんだ!」
「トッド、貴様こそ何故そのオーラ力を、良い方向へ使おうとしないんだ!」
トッド
「そうさせたのは貴様だよ! 貴様がゼラーナ側に付かなけりゃ、俺だって……!」
ショウ
「それこそ理屈じゃないか!」
トッド
「理屈で何がいけない!」
ショウ
「何?」
トッド
「貴様のお陰で、俺は地獄を見たんだよ!」
ショウ
「何だ? ここはどこだ?」
「やめろトッド、周りを見ろ! 宇宙に出ちまった!」
トッド
「貴様が目の前に居る限り、どこだろうと構いはしない!」
ショウ
「やめろ! トッド、ここで戦うのはいけない!」
トッド
「貴様が居なくなれば戦いはやめる!」
ショウ
「不慣れなオーラ・バトラーを使ったのが命取りだったな……」
「トッド……貴様は、今見た光景が見えなかったようだ」
「速い……!」
ニー
「ショウ達の見た、宇宙とかっていうのは何なんだ?」
ショウ
「宇宙を知らない……?」
ニー
「ショウの見た世界は、フェラリオ達の棲む世界の、リンの棲む世界じゃないのかな?」
リムル
「なら、それは宇宙と言うわ、ニー」
ニー
「そうなのか?」
リムル
「何かで読んだ事がある」
マーベル
「余程珍しい世界なのね」
ニー
「フェラリオの世界の事だって、俺達コモンはよく知らないんだからな」
チャム
「ん? 私はここに居るわ?」
キーン
「馬鹿ね。じゃああんたは、グスタンガからどうやって来たのよ?」
チャム
「嵐の壁に巻き込まれたからよ」
キーン
「で、どうするのショウ? ゲリラで工場攻撃は、もう出来そうもないし……」
ショウ
「ビショットが動き出したとなれば、戦争しかないだろう」
「ガバの島へ戻って補給を受けよう。俺は一人で戦おうとし過ぎた」
ニー
「その苛々が、不味い戦いをしていたという訳か?」
マーベル
「その上で、ショウの言う作戦を行うか……」
ニー
「ドレイク軍の動きを止めるか、決めよう」
ショウ
「どちらでもいい」
「問題は、より強力なオーラ・バトラーが出て来て」
「このバイストン・ウェルが滅茶滅茶になる前に、阻止しなければならない」
マーベル
「その為に、こちらにもより強力なオーラ・バトラーが要るわ。毒を以て毒を制する、か……」
ニー
「頼む、ショウ」
ショウ
「地上の世界の為もある。やるよ、ニー」
ニー
「ああ。人は共に、永遠に愛したいものな」
ショウ
「ポロポーズの花に賭けて……」