第18話 閃光のガラリア

前回のあらすじ
バイストン・ウェルは、海と陸の間にある人の心の故郷である。
私達はその記憶を忘れて、この地上に生まれ出てしまった……。
しかし、ミ・フェラリオの伝えるこの物語によって、私達はその記憶を呼び覚まされようとしている。
戦力の整わないラウの国のフォイゾンは、ゼラーナにドレイク軍の兵器工場の強襲を掛けさせた。
しかしそのショウ達の前に、新型オーラ・バトラー『ビアレス』に乗ったトッドが現れ、ゼラーナは苦戦を強いられた。
コタノ
「オーライ、オーライ」
リムル
「駄目よ、駄目駄目。ボゾンよりダーナ・オシーを手前に格納してくれないと、私の出撃が遅れるわ」
コタノ
「おい、戻せ」
キーン
「駄目よ。マーベルが怒るわよ」
リムル
「先に出させて貰わないと、私、上手くやれないわ」
キーン
「でも、戦力にはマイナスになるかもよ?」
リムル
「だから、より早く戦力になる為でしょ?」
キーン
「育ちが違うと、口も上手なんだから」
チャム
「ふぅっ、ふぅっ……」
ドワ
「さ、急いでくれ。もうじき、みんな腹空かせてくるからな」
チャム
「は〜い」
「ん、あっ……!」
「もう……お腹の虫が……」
「あっ、ふふっ……」
「あ〜ん」
ドワ
「こらチャム、摘み食いなんかして駄目じゃないか」
「ほ〜れ見ろ」
チャム
「喉につかえた、水……!」
ドルプル
「オーライ、オーライ……よし」
マーベル
「ドルプル、後どのくらい?」
ドルプル
「もうちょっとです」
ショウ
「よし、引っ張って」
ドルプル
「よっ……!」
ニー
「しかし、パワー・アップしたら、ショウは一々地上に飛び出しちまうんじゃないのかな」
ショウ
「そのくらいにパワーが付くなら、先ずドレイク軍を全滅させられるな」
コタノ
「ニー、外へ来てくれ。ガバの島の近くへ飛ぶものがある」
ニー
「グリムリーか?」
コタノ
「違う」
ニー
「分かった、すぐ行く」
「マーベル」
マーベル
「ええ」
ニー
「どこの機械だ?」
ショウ
「追ってみようか」
ニー
「いや、こっちの整備が終わらん内は、やたらと事を構えん方がいい」
「マーベル、見張りを厳重にするように言ってくれ」
マーベル
「了解」
ショウ
「面白くないな……」
キーン
「不自然よ、やっぱり」
リムル
「何でさ?」
キーン
「リムルのダーナ・オシーが、手前にあるなんてさ」
潜入工作員
「リムルは、あの手前の機械に乗るらしい……」
 〃
「ダーナとか言ったな」
コタノ
「馬鹿野郎!」
潜入工作員
「すいません!」
コタノ
「ボヤボヤしてるからぶつかるんだよ」
「塗料はすぐ拭いとけ。いいな?」
潜入工作員
「へぇ」
「ヘッ……」
チャム
「お食事ですよ〜」
「あっ……今の人、ガロウ・ランの臭いがしたわ」
「あれ、どこ行った?」
クの兵士
「ガロウ・ラン達、ゼラーナに潜入出来たでしょうか?」
トッド
「成功して貰わなきゃ、困るぜ」
「ビショット・ハッタがどうしても必要なんだとさ。ドレイクへの手土産にな」
ニー
「グリムリーがこの島に入るの、ドレイク軍に見られなけりゃいいが」
「ボチューンがもう出来たというのか」
ショウ
「へぇ……」
ドルプル
「こちらのは、まだ半分も出来てないってのに……」
マーベル
「流石、本国の兵器工場ね」
エイブ
「ここに入るまでに追い掛けられた様子はない。安心してくれ、ニー殿」
ニー
「有難う御座います。危険なお仕事を」
エイブ
「いやいや……フォイゾン王は、貴下らの活躍に心から感謝しておられるのです」
「その為に、ボチューンの1号機は貴隊で使ってもらう」
ニー
「ドルプル。ボチューンをゼラーナで運び、至急整備だ」
エイブ
「勿論、フォイゾン王は好意だけで、ボチューンをゼラーナ隊に渡すのではありません」
「ドレイク軍が、ラウの国かナの国へ向けて、軍を集結しつつあるのです」
マーベル
「それで私達に、ガバの島を離れろと?」
エイブ
「そういう事です」
ニー
「しかし、ドレイク・ルフトは、ナという強力な国を倒せると考えているのでしょうか?」
エイブ
「クの国のビショットと手を組めば、ナの国は落とせましょうな」
ショウ
「漸く分かったよ、俺にも。ビショットとルーザは仲が良いんだ」
「それに、あの見慣れないオーラ・バトラーと、オーラ・ボム……」
「あれは全て、ビショットが裏に居るという事だ」
「既に敵は、ドレイクとショットだけではなくなっている」
エイブ
「ドレイク軍は、ラウとミの国境に進撃し始めるらしい」
ショウ
「俺達の存在は問題外って事か……」
マーベル
「当然ね。戦争というのはそういうものよ。一部隊の戦力でどうなるというものでもないわ」
ショウ
「俺達が先鋒を取ればいいんだ」
エイブ
「そういう事です。ニー殿、頼みます」
ニー
「喜んで。エイブ船長」
トッド
「ん、何だ?」
クの兵士
「トッド様、ガロウ・ランの一人が戻りました」
トッド
「よし、こちらへ」
「どうだった?」
潜入工作員
「全てご命令通りに。リムル様はダーナとかいうオーラ・バトラーに乗ります」
「抜かりなく、目印の夜光虫塗料も塗りました」
トッド
「ほう、上出来じゃないか。ゼラーナの動きは?」
潜入工作員
「間もなく出発のようです」
トッド
「ご苦労」
「ゼラーナからの偵察か?」
「出るぞ! ガロウ・ランは去れ!」
バーン
「くそ、霧で何も見えん……」
「何だ?」
「ゼラーナめ、待ち伏せか」
「ええい……!」
「今のはドラムロだった。だとすると、ゼラーナの連中ではない」
クの兵士
「カズンのドラムロがやられました」
トッド
「どこへ行きやがった?」
「何?」
「下か」
バーン
「見付けたのか?」
「ぬっ……!」
トッド
「決めだっ!」
「何だ? このタイプは新型か」
バーン
「どこの新型だ?」
「落ちろぉぉっ!」
トッド
「ん、やめろ、バーン!」
バーン
「何だと、誰だ?」
トッド
「トッド・ギネスだ」
バーン
「トッド・ギネス! あの地上人の……戦死した筈だ」
トッド
「俺は生きてる」
ニー
「ショウ、コンバータのチェックをしておけ。発進用意」
ショウ
「了解。スイッチ関係は異常なさそうだ。行くぞ」
ニー
「やってくれ」
ショウ
「よし」
「いいぞ……始動する」
「さて、これでいい筈だけど……」
「わっ!」
「うぅっ……!」
チャム
「あっ、何これぇ……!」
キーン
「まるで別のオーラ・バトラーね」
マーベル
「そうね。でも、今のゼラーナが遅過ぎるから、そう感じるんじゃないの?」
ドルプル
「その分差し引いても、凄い加速だ」
トッド
「ははっ……エルフ城攻めで失敗をして、冷飯食いなのか」
「俺達に威張り散らしたからさ」
バーン
「笑うなよ。今は一人ででもゼラーナを落としたい。協力させてくれ」
トッド
「馬鹿言うなよ。俺は今、ビショットに雇われているんだぞ?」
「それとも、クの国でもう一度返り咲きたいのか?」
バーン
「いや、そうは行かん。レプラカーンを調達してくれたショット様に対しての面子もある」
トッド
「じゃあ、嫌だね」
バーン
「頼む……恨みだけは晴らさせて欲しい」
「このままでは、私の騎士としての面子も潰れてしまう」
「頼む、聖戦士殿」
トッド
「分かったよ、バーン。但し、作戦は俺の命令で動け。ゼラーナは落とさせてやる」
バーン
「すまん」
「落ちぶれたものだ。元ドレイク軍の攻撃隊長だった、バーン・バニングスが……」
トッド
「バーン、出るぞ。ゼラーナだ」
バーン
「天は我に味方をしてくれた!」
バーン
「結果さえ良ければ、一時の屈辱なぞ……!」
ニー
「待ち伏せを受けた」
「総員、攻撃だ! マーベル、ボゾン! キーン、フォウ!、リムルはダーナ・オシー!」
マーベル
「リムルがもう?」
リムル
「お先にね、キーン」
「私は邪魔者にはなりたくないの」
「敵は……?」
マーベル
「新型で出ます。テストしてみるわ」
ニー
「駄目だ」
「ドワ、ダンバインと連絡は取れないのか?」
キーン
「あっ、マーベル、ボチューンで出たの? ならボゾンを使うわ」
トッド
「ダーナ・オシーと新型? ダンバインは居ないのか?」
バーン
「ダンバインが出てきたら、私に任せてくれ」
トッド
「あんまり入れ込んでくれるなよ?」
「この新型、ショウ・ザマか? いや、別のオーラ力が感じられる」
マーベル
「ボチューンのパワーは、確かにボゾン以上……沈め!」
トッド
「ん、やるじゃないか!」
ニー
「ボゾンで出る。ここは頼むぞ」
ドワ
「了解」
「あっ、ボゾン」
ニー
「ん、キーンか?」
「待てキーン、オーラ・バトラーはまだ無理だ」
キーン
「やってみないと分かんないわよ」
「コントロールが……!」
「きゃっ!」
「あぁっ……!」
「あっ、当たっちゃった……」
チャム
「あっ、怖いよ〜! もうやめてよ〜!」
ショウ
「ゼラーナが危ない。チャム、戻るぞ」
チャン
「あんっ!」
リムル
「あぁっ!」
トッド
「バーンめ、リムルのダーナ・オシーを……!」
「バーン、やめろ。それはリムルのオーラ・バトラーだ。バーン」
バーン
「私を自由に使えると思ってか。痩せても枯れても私は騎士だ」
リムル
「あぁっ!」
バーン
「ダーナ・オシーの一機ぐらい!」
チャム
「オーラ・バトラーが二機も居るわよ」
ショウ
「新型も居る」
ニー
「ダーナ・オシーが落ちた」
ショウ
「何、ダーナが……?」
トッド
「バーン……貴様、リムルを落としたな?」
バーン
「リムル様を? 知らん!」
トッド
「ここは下がる」
バーン
「ええい……!」
マーベル
「追い掛ける?」
ニー
「いや、リムルを捜してくれ。ダーナ・オシーも戦力になるんだ」
ショウ
「すまなかった、ニー。調子に乗って遠くに行き過ぎた」
ニー
「敵が巧妙だったのだ」
ショウ
「ダーナを捜す」
トッド
「立場を忘れたのか? 今回の作戦は、リムル・ルフトを救出する事だと話した筈だ」
バーン
「ダーナ・オシーに乗っているとは聞いてはいなかった」
トッド
「やめろと言った筈だ。歴戦の勇者バーンが、戦闘中の命令を聞き逃したとは思えないな」
バーン
「リムルの事は聞こえなかったんだ!」
トッド
「俺の命令が聞けないのなら、俺を斬って一人でやりなよ」
リムル
「駄目だわ、通信回路がやられてる……」
「調子に乗って……」
潜入工作員
「おい、見たか?」
 〃
「見た。ダーナとかいう奴だ。トッド様に報せる狼煙を揚げろ」
リムル
「あっ……!」
ニー
「そっちはどうだった?」
ショウ
「駄目だ。ダーナ・オシーの姿は見えない」
マーベル
「西にも見えなかったわ」
ニー
「後は、キーンの東だけか……キーンが見付けてくれなければ……」
ショウ
「信号弾だ」
リムル
「何? あのグライ・ウィング……」
「えっ?」
「あっ……!」
トッド
「バーン、当てるなよ」
バーン
「分かっている。挟むぞ」
トッド
「命令するのは俺だ」
リムル
「どこ? あっ……!」
「何なの、このオーラ・バトラー?」
トッド
「リムル姫様、私、トッド・ギネスを覚えておいでか?」
リムル
「トッド……地上人のトッド・ギネス」
トッド
「ラース・ワウへお戻りになるのです。お迎えに参りました」
リムル
「嫌よ。私は家を捨てたのよ。今更戻れるものですか」
トッド
「我儘はいい加減にしなさい。貴方一人の為に、どれだけの人間が動いたかも知らず……」
「例えば、後ろのオーラ・バトラーのバーンだ」
リムル
「えっ?」
バーン
「ちっ、トッドめ。要らぬ事を……!」
トッド
「出て来ないのなら、こちらから」
リムル
「や、やめて!」
「あぁっ……!」
トッド
「力尽くでも連れて行く!」
「むっ……!」
ショウ
「ダーナ・オシーを放せ!」
リムル
「あぁっ……!」
バーン
「姫様!」
トッド
「何?」
リムル
「きゃぁぁっ!」
ショウ
「しまった!」
リムル
「きゃっ……!」
「ニー、ショウ……!」
トッド
「逃げろ、ガロウ・ラン。邪魔はさせん!」
ショウ
「うっ!」
チャム
「落ちちゃう〜!」
バーン
「ダンバインめ、あれを受け止めたのか」
「ぬっ……!」
「海中でもやれるというのか!」
トッド
「並の甲羅を使ってんじゃないよ!」
バーン
「海中では動きが鈍いが」
「速い、速過ぎる!」
チャム
「必殺、オーラ斬り! やっつけろーっ!」
バーン
「コンバータが!」
「動くか?」
ショウ
「目眩し……また見失うのか」
チャム
「そんなの、勝手に決める事ないでしょ?」
ショウ
「来た!」
バーン
「遅い、貰った!」
「しまった、剣を……!」
ショウ
「ならば!」
バーン
「レプラカーンには力がある!」
ショウ
「オーラ力の強い方が……」
バーン
「勝つ! そしてそれは私だ!」
ショウ
「何? ショウ、この熱いの何? ショウ、何なの?」
バーン
「この熱……こんな事は今までなかった」
「食らえ!」
チャム
「熱いよ〜!」
ショウ
「静かにしてろ!」
バーン
「勝てる……私は勝てるぞ……」
「ふふっ、ははっ……!」
チャム
「あ、水……!」
ショウ
「バーン・バニングス!」
「バーンめ……」
「焼かれるかよ!」
バーン
「これがダンバインなのか……!」
ショウ
「このぉっ!」
チャム
「きゃぁっ!」
バーン
「な、何だこの光は……!」
マーベル
「何?」
トッド
「何の光だ?」
「何の光だ……!」
マーベル
「あっ、海が……!」
バーン
「ば、馬鹿な……」
ショウ
「むんっ!」
チャム
「あぁ、ジャコバ・アオンぐらいにしか出来ない事をやっている……!」
トッド
「まぁバーンさんよ、宜しくダンバインとやってくれ。こっちはリムルを頂くだけよ」
バーン
「ダンバイン……!」
ショウ
「くっ……!」
チャム
「やった! ショウ、やったよ!」
「あっ、ショウ、駄目〜!」
マーベル
「ど、どうなったの? ショウ……」
「あぁっ……!」
「ショウ……ショウ、大丈夫なの?」
チャム
「大丈夫よ。ショウは大丈夫」
マーベル
「ショウ!」
ショウ
「大丈夫だって……新しいコンバータのせいらしい。地上界に行けるほどじゃないけど……」
チャム
「リムルはどうしたの?」
マーベル
「それが……」
ショウ
「攫われたのか?」
ニー
「所詮、あの子はドレイクとルーザの血縁は切れないんですね」
「そう思うしかない……」
バーン
「敗北に次ぐ敗北、全てあの地上人が現れてから……」
「私は勝ちたい……私は奴を破りたい……私は騎士の出の筈だ!」