第28話 ゴラオンの発進
- 前回のあらすじ
- バイストン・ウェルに、オーラ・マシンによる喧騒が拡大していった時、
- 世界が、それを排除しようとして働くのもまた、理である。
- オーラ・マシンを操る人々は、バイストン・ウェルに於いて悪しき者なのかもしれない。
- トッドと共に、嵐の玉と呼ばれる異空間に滑り込んだショウのダンバイン。
- そこで、ナの国の女王シーラ・ラパーナと出会い、嵐の玉を脱出した。
- ショウ
- 「あっ……この鳥、どうしたってんだ?」
- ニー
- 「俺にだって分からん」
- ショウ
- 「悪い前触れじゃないんだろうな?」
- ニー
- 「いや、バイストン・ウェルではそんな言い伝えはない」
- チャム
- 「あ〜っ!」
- ショウ
- 「そんなビラビラした物、着てるから……」
- チャム
- 「ああん、何でこんなとこ飛んでんのよ、もう!」
- ドワ
- 「煩い、あっちへ行け! 何て鳥だ……」
- 「コタノ、第三気筒を動かすぞ」
- 「始動」
- マーベル
- 「あっ……!」
- 「危ないじゃないの、ドワ。気を付けてよ」
- エレ
- 「あっ……」
- マーベル
- 「どうなさったのです、エレ様?」
- エレ
- 「お爺様が……いえ、何でもないんです」
- マーベル
- 「何かを感じたのね、フォイゾン王の事で」
- エレ
- 「いえ、私にもよく分からないんです」
- マーベル
- 「私達に助けられて?」
- エレ
- 「それも分かりません。ただ、酷く悲しい事が起こりそうで……」
- マーベル
- 「じゃ、一人で溜め込んでおかないで、みんなに話してしまいなさい」
- ショウ
- 「巨大な影が、フォイゾン王を取り込もうとしている……?」
- エレ
- 「はい」
- ショウ
- 「それがドレイクのウィル・ウィプスだとすると、フォイゾン王の後ろにある重い物というのは何なんだろう?」
- ニー
- 「ビショットの軍かもしれんな」
- エレ
- 「いえ、そのような重さではありません」
- 「ラウの山々を取り込む巨大な影が、いつか国々も取り込んでいって、きっと……」
- 「きっと、あぁっ……!」
- 「不幸を起こします!」
- マーベル
- 「エレ、いいのよ。もう十分に分かったわ」
- 「だから、もう考えないで」
- 「ニー、どうする?」
- ニー
- 「ん……」
- ショウ
- 「ニー、ラウの山々というのは、どこにあるんだ?」
- ニー
- 「カラカラの山岳地帯だな」
- ショウ
- 「先行して偵察する。ニーはゼラーナで追ってくれ」
- ニー
- 「まるでキャプテンだな……」
- マーベル
- 「キャプテンと作戦参謀は違うわよ」
- 「エレを頼みます」
- ニー
- 「ああ」
- チャム
- 「待ってよ〜!」
- ショウ
- 「今度はこれか」
- チャム
- 「スカート、評判悪いからさ」
- ショウ
- 「フェラリオって無能かと思ってたけど、意外と器用なんだな」
- チャム
- 「ほ、他のフェラリオとは違うわ!」
- マーベル
- 「ショウ、出るわ」
- ショウ
- 「行くぞ、チャム」
- ショウ
- 「フォウの機首にね……」
- マーベル
- 「え?」
- ショウ
- 「オーラ・ショットを、もう1機付けられるな」
- マーベル
- 「武装は強化したいわね」
- ショウ
- 「ナブロの要塞の様子を見て行こう」
- マーベル
- 「そうね」
- 「ウィル・ウィプスは見えないようね」
- ショウ
- 「ああ」
- マーベル
- 「どうしたの?」
- チャム
- 「窮屈なの。私太ったみたい……」
- ショウ
- 「マーベル……!」
- マーベル
- 「ドロ?」
- チャム
- 「あ、あれは新型のタンギーよ!」
- ジェリル
- 「のそのそと、ダンバインから出て来てくれるとはな……」
- 「負けた為にオーラ・バトラーは与えられなかったが、このタンギー隊でダンバインを落としてみせる」
- マーベル
- 「ショウ」
- ショウ
- 「離れるぞ」
- マーベル
- 「了解」
- ショウ
- 「マーベル!」
- マーベル
- 「新型とはいえ、所詮はオーラ・ボムでしょ?」
- ショウ
- 「指揮官機は?」
- チャム
- 「ショウ!」
- ショウ
- 「しまった……!」
- 「何?」
- ジェリル
- 「こないだのお礼をさせて貰うよ、ダンバイン……ショウ!」
- ショウ
- 「ジェリルか!」
- チャム
- 「ショウ!」
- ショウ
- 「むっ……!」
- ジェリル
- 「何?」
- マーベル
- 「振り切って!」
- ショウ
- 「くっ……!」
- チャム
- 「避けて、避けて〜!」
- ジェリル
- 「くっ、下がれ、下がって撃ち落とせ!」
- アの兵士
- 「はっ!」
- ショウ
- 「このぉぉっ!」
- チャム
- 「やった〜!」
- ショット
- 「エルフ城までは苦しい戦いだったが、これからは一気に……」
- ドレイク
- 「どうだ、ショット? ラウの国の動きは」
- ショット
- 「どうなされました?」
- ドレイク
- 「総大将が私服では、兵共の士気に関わる」
- ショット
- 「ビショットの援軍が参りました」
- ドレイク
- 「ん……」
- 「ビショットめ、たった一隻しか送ってこんのか」
- ショット
- 「戦艦も温存するつもりですな」
- ドレイク
- 「まあいい、カラカラは我々だけで抜く」
- ショット
- 「はい。では、そろそろ戦端を」
- ドレイク
- 「うむ。アレン隊に先鋒を取らせ、総掛かりだ」
- ショット
- 「は?」
- ドレイク
- 「ビショットが妙な動きをする前に、ラウを落とす」
- ジェリル
- 「後退しろとは命令していない」
- アの兵士
- 「本隊から、カラカラへ移動しろという命令です」
- ジェリル
- 「こんな時にか!」
- 「くっ、こうなれば手は一つ……!」
- マーベル
- 「まだ飛べる!」
- 「はっ……!」
- 「しまった!」
- 「押されて……!」
- ジェリル
- 「落ちろ……むっ!」
- ショウ
- 「させるか!」
- 「マーベル……」
- チャム
- 「怪我してない?」
- マーベル
- 「えぇ……助かったわ、有難う」
- ショウ
- 「カラカラへ集結するって、無線で言ってたな」
- マーベル
- 「エレの言う通りになったわ」
- 「さ、ゼラーナと合流しましょ」
- ニー
- 「ダンバインです」
- エレ
- 「鳥達が迎えているわ」
- ニー
- 「あれは、きっと良い事があるという前触れですよ、エレ様」
- エレ
- 「ええ」
- ドレイク
- 「カラカラを抜けば一挙にタータラか」
- 「タータラは、そなたにくれてやろうか?」
- ショット
- 「はっ、有難い御言葉……」
- ドレイク
- 「うむ」
- ショウ
- 「ここがカラカラ……」
- ニー
- 「これ程の山岳地帯とはな」
- ニー、エレ
- 「うっ……!」
- ショウ
- 「わっ!」
- キーン
- 「何?」
- マーベル
- 「どうしたの?」
- ニー
- 「待ち伏せか!」
- エレ
- 「フォイゾン王……」
- ニー
- 「何?」
- エレ
- 「近くに、王が居ります」
- フォイゾン
- 「すまなかったな、ゼラーナ」
- ニー
- 「フォイゾン王!」
- エレ
- 「お爺様……」
- キーン
- 「凄いわね、カラカラ全体が要塞になっているのよ?」
- フォイゾン
- 「ははっ、まさかこうも早く来てもらえるとは思ってなかったから、兵達がドレイク軍と間違えたのだ」
- 「すまなかった」
- ニー
- 「いや、迂闊に進入した我々のミスです。脅かして申し訳なく思っております」
- フォイゾン
- 「いや、それより分からんのは、何故こうも早くカラカラへやって来たのか?」
- ニー
- 「はいそれは、エレ様がこの方面に敵が来ると申されましたので……」
- フォイゾン
- 「エレの予言か……霊力というのか?」
- ニー
- 「はい。そして我々は、ドレイクより先にここへ」
- フォイゾン
- 「諸君らは、どう戦ってもらえるのかな?」
- マーベル
- 「あの……パットフット様は、ドレイクの手の者に掛かり、亡くなったと……」
- フォイゾン
- 「そうか……」
- 「で、ゼラーナはどう戦ってもらえるのかな?」
- ショウ
- 「王のご命令のままに」
- フォイゾン
- 「では、聖戦士殿のお好きに」
- ショウ
- 「王……!」
- マーベル
- 「エレ様、今は戦いの前で高ぶっていらっしゃいます」
- エレ
- 「はい、それはいいのです。でも、お爺様に取り付く力が一体何なのか、気になります」
- ショウ
- 「力か……」
- 「フォイゾン王!」
- フォイゾン
- 「何か、聖戦士殿」
- ショウ
- 「王は巨大な力を手に入れたように思います。お教えくださいませんか?」
- フォイゾン
- 「ほう、聖戦士殿は感じられるのか」
- ショウ
- 「はい。地に伏せる力を感じます」
- フォイゾン
- 「語るまでもなく、その力、この戦いの中で……」
- ショウ
- 「お待ちを」
- 「来ました!」
- エレ
- 「ドレイクの軍勢が……!」
- マーベル
- 「はっ……!」
- フォイゾン
- 「第一大隊、第五大隊、右翼を固めろ」
- 「オーラ・ボムは拡散放射して、敵を分散させろ」
- 「巡洋艦は、ブルベガーだけ攻撃させろ」
- 「ドレイク……!」
- ニー
- 「ショウ、マーベル、出てくれ」
- 「キーン、ゼラーナの護衛だ」
- ショウ
- 「この地形で連携プレイは不可能だ」
- マーベル
- 「各個に戦って、なるべく数を落としましょう」
- チャム
- 「あんな大群なのよ?」
- ショウ
- 「今日は生きて帰れるかどうか分からないな……降りてろ」
- チャム
- 「えっ……?」
- ショウ
- 「尤も、そのゼラーナだって、残っているかどうか……」
- ミズル
- 「敵が動き出した。攻撃命令を出せ」
- アの兵士
- 「わぁぁっ!」
- ラウの兵士
- 「逃がすか!」
- ミズル
- 「アレンは出たか?」
- 「ダンバインか」
- 「オーラ・バトラーを本艦の護衛に回らせろ」
- ショウ
- 「このブルベガーを落とす」
- ミズル
- 「来た!」
- ショウ
- 「ビランビー!」
- アレン
- 「ダンバインめ!」
- ショウ
- 「地上人か!」
- ミズル
- 「どういう事か? あの2機は、撃ち合わずに剣を使うだけだ。何故だ?」
- 「奴ら、地上人同士つるんで、我々に反逆しようとしているのか?」
- フォイゾン
- 「次は……!」
- ショウ
- 「ドレイクに利用されてる事が、まだ分からないのか!」
- アレン
- 「俺はこの世界で生き延びる為に、ドレイクを利用しているんだ!」
- ショウ
- 「アレン!」
- アレン
- 「貴様みたいにな!」
- 「あの女か!」
- 「むっ……!」
- ショウ
- 「逃げるのか!」
- チャム
- 「ん、卑怯者〜!」
- ショウ
- 「わっ……!」
- ラウの兵士
- 「わぁぁっ!」
- ショウ
- 「ドレイク軍は勢いがある。世の中の流れが、ドレイク軍に向きつつあるのか?」
- マーベル
- 「馬鹿な事言わないで、ショウ」
- ショウ
- 「分かってるけど……!」
- フォイゾン
- 「我が国民の為、我が祖国の為、ドレイクに好きにさせるか!」
- 「ぬぅっ……!」
- ミズル
- 「うぉ……っ!」
- フォイゾン
- 「対空砲火、薄いぞ!」
- 「ビランビー・タイプか!」
- アレン
- 「あのボチューンはゼラーナのじゃない、大物だ」
- フォイゾン
- 「何を……!」
- 「しまった!」
- アレン
- 「とどめ!」
- ショウ
- 「王は後方で指揮を」
- フォイゾン
- 「すまない、聖戦士」
- アレン
- 「ショウ!」
- マーベル
- 「トッドは、ショウが落とした筈では……?」
- ミズル
- 「トッドめ……一機に構い過ぎず、数を落とせと言え」
- 「なっ……!」
- 「アレンめ、まだやっている……奴はやはり、ダンバインとつるんでいるというのか……」
- チャム
- 「後ろ、船よ!」
- ショウ
- 「ブルベガーか!」
- アレン
- 「ダンバイン……!」
- ミズル
- 「うぉぉっ、ぅっ……!」
- 「アレンめ……!」
- アレン
- 「ミズル艦長、怪我はなかったか?」
- 「むっ……!」
- ショウ
- 「アレン、貰った!」
- アレン
- 「しまった!」
- ショウ
- 「逃げた?」
- チャム
- 「惜しい!」
- アの兵士
- 「ミズル艦長のブルベガーからの通信が途絶えました」
- ショット
- 「何、ミズルの艦が?」
- アの兵士
- 「はい。しかし、落ちてはいないようです」
- ドレイク
- 「先頭のブルベガー隊に乱れが見えるな。艦砲射撃でも掛けるか?」
- ショット
- 「いえ、味方のオーラ・マシンも滞空しておりますから、それは……」
- ドレイク
- 「ならこのウィル・ウィプスも、カラカラに入るか?」
- ショット
- 「はっ!」
- 「ウィル・ウィプス、全速前進! これより、対空対地戦に入る!」
- キーン
- 「幾ら落としても湧き出てくる……!」
- ニー
- 「いつまで持つんだ?」
- 「うっ……!」
- 「ウィル・ウィプスだ」
- エレ
- 「ニー、正面から当たるとやられます。降下して」
- ニー
- 「しかし……」
- キーン
- 「あんなのがカラカラに入ってきたら……きゃっ!」
- ショウ
- 「キーン、大丈夫か?」
- キーン
- 「有難う、ショウ!」
- ドレイク
- 「ははっ……数で来なければ落ちはせん。このウィル・ウィプスはな、ははっ……!」
- 通信の声
- 「スイーウィードウより左右に下がられたし。スイーウィードウより左右に下がられたし」
- 「各機、下がられたし」
- ニー
- 「スイーウィードウから後ろへ下がれ」
- エレ
- 「撤退ですか?」
- ニー
- 「まさか」
- フォイゾン
- 「前方のウィル・ウィプスだけを狙う。各砲座、照準……主砲発射!」
- 「ゴラオン前進!」
- ドレイク
- 「何だ?」
- ショット
- 「あれは……」
- 「ウィル・ウィプス、後退しろ」
- ドレイク
- 「何だ? カラカラのスイーウィードウの中に、要塞があるのか?」
- エレ
- 「力です。フォイゾン王を取り巻いている、重い影が動き出しました!」
- ニー
- 「影……?」
- ショウ
- 「これなのか、エレの言っていた影というのは……」
- チャム
- 「こんなのが空を……」
- マーベル
- 「藻の林の中から、戦艦……」
- ショット
- 「フォイゾンめ、ゴラオンとかいう戦艦を完成させていたのか!」
- ドレイク
- 「全艦に無線を。状況が変わった。第一次作戦ラインまで後退させろ」
- アの兵士
- 「はっ!」
- ドレイク
- 「どのぐらいの戦艦と思うか、ショット?」
- ショット
- 「分かりません。ミュージィ隊に偵察させます」
- ドレイク
- 「敵戦力の過小評価は禁物だぞ」
- ショット
- 「それはもう……」
- ミズル
- 「なるべく、バラバラに逃げるんだ」
- アの兵士
- 「はっ!」
- ミズル
- 「こういう時は、この地形は助かるってもんだ」
- ラウの兵士
- 「オーッ、ゴラオンが発進した!」
- 〃
- 「フォイゾン王、万歳! ラウの国、万歳!」
- フォイゾン
- 「兵装も艤装も、まだ数日掛けねばならんのだ。楽観は出来ん」
- ニー
- 「しかし、ウィル・ウィプスに対しての牽制にはなりましょう」
- ショウ
- 「その為には、ドレイクのスパイに入り込ませない事です」
- フォイゾン
- 「そうだな……如何にも完成したと見せる必要がある」
- ショウ
- 「はい」
- マーベル
- 「フォイゾン王」
- フォイゾン
- 「ん?」
- マーベル
- 「一つ、気になる事があります」
- フォイゾン
- 「何か?」
- マーベル
- 「王はこの戦艦の力に取り込まれて、バイストン・ウェルを危うい方向へ導くと、エレ様が仰っています」
- フォイゾン
- 「力を過信し過ぎるというのか、私が……?」
- エレ
- 「いえ……」
- 「王を取り巻く力はゴラオンをも造らせ、王のお子様であり、私の母でもある方を死なせました」
- フォイゾン
- 「んっ……」
- エレ
- 「そしてその力は、バイストン・ウェル全てを押し包もうとしています」
- フォイゾン
- 「バイストン・ウェルそのものか……」
- エレ
- 「はい」
- フォイゾン
- 「では、私に何をせよとお前は言うのか?」
- エレ
- 「手に入れた道具を、善き道を拓く為にお使いください。聖戦士と共に」
- フォイゾン
- 「ううむ……」
- ショウ
- 「しかし……」
- エレ
- 「ショウ・ザマ、マーベル・フローズン……私達を導いてください」
- 「あぁっ……」
- ショウ
- 「エレ様……!」
- エレ
- 「大丈夫です。大丈夫です……」