第32話 浮上

前回のあらすじ
バイストン・ウェルに、オーラ・マシンによる喧騒が拡大していった時、
世界が、それを排除しようとして働くのもまた、理である。
オーラ・マシンを操る人々は、バイストン・ウェルに於いて悪しき者なのかもしれない。
謎の黒いオーラ・バトラー、ズワァースに遭ったマーベルとショウは、その強大なオーラ力に衝撃を受けた。
そしてその力は、ズワァースのパワー・アップの為だけではなかった。
ショット
「こんな空は、見た事がないというのか?」
ミュージィ
「はい。何でしょう、この明るさ……」
ショット
「まるで、オーラ・ノズルの光にも似ているが……」
ミュージィ
「もう暫くで発進出来ますが」
ショット
「ああ」
マーベル
「あの光は、黒いオーラ・バトラーが出したとは思えないわ。何だと思う?」
ショウ
「見た目以上の力を感じた。何とか早く押さえたい」
「動くか?」
マーベル
「レバーが引っ掛かっただけ。出られる」
チャム
「何か来る」
ショウ
「マーベルは、ゼラーナの援護を」
マーベル
「了解」
ショウ
「俺は」
「変形して奴をやる」
「行けぇ!」
チャム
「何、あの光?」
ショウ
「あのオーラ・バトラーには、バリアが掛かるのか!」
黒騎士
「ノズルの光が砲弾を弾くのか」
「こんな性能があるとは、ショット様からは聞かされてはいなかったが」
「ならば!」
ショウ
「これは違う……奴のオーラ力だけじゃない」
マーベル
「ドラムロまでが速い……」
「はっ……!」
「何かが起こってる」
キーン
「ショウ、ボチューンのパワーも上がっている感じよ」
ショウ
「やはりそうか」
黒騎士
「ショウ・ザマ!」
ジャコバ
「オーラを発せし悪しき機械共よ。己の力によりこの世界より排除せよ」
「この世の混沌をなくし、再び魂の安息の場たるバイストン・ウェルを手に入れんが為に」
エイブ
「奇妙な光だ。フォイゾン王のご意志が、ゴラオンを勝利に導いてくださればよいのだが……」
エレ
「エイブ、決戦は間近です。全軍の準備は宜しいか?」
エイブ
「はっ、エレ様。ナの国のシーラ様も援軍に出られるとの由、いつでも進軍命令を」
エレ
「お爺様が亡くなった日よりも、巨大な影を感じる……」
トッド
「ナの国の先発隊なぞ、クの国に一歩も入れるな」
ナの兵士
「たかがパトロール隊如きに……」
「うわっ!」
ベル
「ははっ……!」
「ね、見てみて、エル。燐が綺麗よ。ね、燐が……」
エル
「ん、何が綺麗よ。こんな夜は今までなかったのよ? シーラ様はそれをご心配なさってるんじゃない」
ベル
「だって、綺麗なんだもの。燐がキラキラ……ああんっ!」
ジャコバ
「バイストン・ウェルを支えるオーラの力よ。排除せよ!」
「悪しき源たる、機械の悉を!」
ショウ、マーベル
「わっ!」
黒騎士
「うぉぉっ!」
ドレイク
「何だ?」
キーン
「くっ……!」
ニー
「何だ?」
ドワ
「ニー、この光は何だ?」
ミュージィ
「ショット様……!」
ショット
「地上人の私に、こんな現象が分かる訳がない」
ミュージィ
「バイストン・ウェルの者も、聞いた事がありません。こんな……」
ルーザ
「ウィル・ウィプス以上の出来だと素人目にも分かりますよ。ビショット殿」
ショット
「アの国に比べて、国力のない我が国です」
「このゲア・ガリングの建造が出来ない為、今までは十分なお手伝いが出来ませんでした」
ルーザ
「これからは、ビショット様のご活躍を期待しております」
「リムル、ビショット様がご出陣です。私達は艦を降りてお見送りを」
ビショット
「この光……!」
ルーザ
「あぁっ……!」
エイブ
「上昇は掛けられないのか?」
ラウの兵士
「駄目です。全ての機能が……」
エレ
「こ、この光はまさか……!」
トッド
「な、何だ?」
ドワ
「うわぁぁっ!」
キーン
「え、えっ……?」
マーベル
「ショウ……!」
ジャコバ
「悪しき機械よ。バイストン・ウェルより姿を消せ!」
ショウ
「ジャコバか!」
ジャコバ
「消えよ、このバイストン・ウェルより!」
ショウ
「あぁっ……!」
黒騎士
「うぅっ……!」
ショウ、黒騎士
「わぁぁっ!」
エル、ベル
「きゃぁぁっ!」
エル
「シーラ様!」
ジャコバ
「私一人の命で、バイストン・ウェルが救えるものなら……」
「おぉっ……!」
トッド
「どうなってんだ、あの光は……」
「何だ?」
「むっ……」
「馬鹿な、ここは俺の家じゃないか」
「夢じゃないのか? 何で……」
「マミー、マミー」
母親
「誰だい?」
「トッドだね? 生きていたんだね?」
トッド
「この通りさ」
母親
「でも、州の要請学校からは、居なくなったって通知を受けて……」
トッド
「へっ、俺はさ、戦争行ってたんだ。外にある機械に乗ってさ」
母親
「嘘をお言い!」
トッド
「嘘じゃないって。バイストン・ウェルってとこに行って……」
「あっ、後で話すから……」
母親
「お前、何をしたの?」
警察官
「トッドじゃないか」
トッド
「ジムか」
警察官
「トッド、これは何だ?」
トッド
「オーラ・バトラーだ」
母親
「トッド……!」
警察官
「オーラ何だと?」
トッド
「オーラ・バトラーだ。ぐ、軍の秘密兵器なんだ」
警察官
「秘密兵器だと? 可笑しいな、お前は行方不明になったって……」
トッド
「本当だよ。万一、宇宙からの外敵に対して、地球を守る為の……」
母親
「トッド、そんな嘘は言わないで! 本当の事をおっしゃい!」
警察官
「思い出した。こりゃ、オーラ・バトラーだ」
「日本に出た奴だ。それで、東京じゃ百万人の人間が殺されたんだ」
トッド
「東京に……?」
「わっ、何をする?」
警察官
「宇宙人が人間に化けてんだ、こいつ!」
トッド
「ば、馬鹿野郎……!」
母親
「あぁっ……!」
警察官
「うっ……!」
ジェリル
「うぅっ……何だってんだい? 光が来て、確かそれで……」
「ハリウッド映画かよ? こんな所で……」
「わっ……!」
ジェリル
「ここは、私の生まれたアパートじゃないか」
「バードとシャロット」
「よ、本当にバードとシャロットかい?」
「ひぇぇっ!」
ジェリル
「やはり、ダブリンだ。ガラリアとかいうのが地上に出たらしいとは聞いたが」
「ちっ、嫌な町だよ、やっぱりここは」
警察官
「うわぁぁっ!」
ジェリル
「ふん、まだやってやがる」
父親
「いつまでも食事が喉に進まんと、体に悪いぞ」
母親
「そうですが、あの子は落馬した途端に消えてしまったんですよ」
父親
「ん、騒がしいな」
「何だ、ジャック?」
母親
「マッチホー、どうしたの?」
「はっ……!」
父親
「な、何だ、あれは?」
母親
「な、何でしょう」
マーベル
「はっ……」
「間違いなく私の家だわ」
「パパ、ママ!」
母親
「マーベル……やはりマーベル?」
父親
「ベティ、待ちなさい」
母親
「マーベルなのね?」
マーベル
「ええ、貴方の娘よ」
母親
「ああ、マーベル! どこへ……どこへ行ってたのよ、この子は……!」
マーベル
「ごめんなさい、母さん。母さん……」
「父さん……」
父親
「証拠が欲しいな。本当のマーベル・フローズンなのか?」
母親
「貴方、見れば分かるでしょ? 間違えようがないわ」
父親
「奇怪過ぎると思わないか、え?」
マーベル
「父さんらしいわね。こんな物に乗って現れれば、疑われても仕方がないわ」
「少しだけ私の話を聞いてください」
父親
「ああ、いいだろう。娘に似た者を殺したくはない」
ショウ
「くっ、また吉祥寺か……」
チャム
「どこ?」
ショウ
「俺の家だ。両親は居ないようだけどな」
「ここに居ると面倒だな」
民間人
「一度ある事は二度あるって言ったんだ」
 〃
「引っ越せばよかったんだよ」
チャム
「でも、どこへ行くの?」
ショウ
「海に出る。東京に長い間いるのは良くない」
ビショット
「ああ、海……夜の海が……」
ルーザ
「ビショット様、何が起こったのです?」
ビショット
「分からん……私にも分からん」
ショット
「ち、地上だ……」
「ガラリアとショウが地上に出たというのは、真実だったのか」
「そうか、これだけのオーラ・シップとオーラ・バトラー共々、地上に戻ってきたのか!」
ミュージィ
「くっ、地上へ……地上へ出たというのですか?」
エレ
「うっ……」
エイブ
「お目覚めですか、エレ様」
エレ
「光は……どうしたか……?」
エイブ
「それが、どうも……」
エレ
「あぁっ……!」
「ガランの谷の方ではないでしょうか?」
エイブ
「いえ、似てはいますが違います。時間も違うようです」
エレ
「はっ、ここは地上です……!」
エイブ
「まさか……」
エレ
「ショウ・ザマから聞いています。地上の天には太陽があると……」
黒騎士
「うっ……!」
軍人
「うわぁぁっ!」
テレビ音声
「ボストンに現れた人の形をした飛行物体は、西の方向へ消えていったという情報が入っております」
「もしこの目撃者の情報が本当ならば、二週間前に日本の東京に現れた飛行物体と同じ物と思われます」
「一つをバストール、一つをダンバインといい、その二つの物体が東京湾に……」
父親
「お前が乗ってきた物と同じだ」
マーベル
「ええ。ボストンにも出たとなると、私のように、地上に出て来たマシンが一杯あるのよ」
母親
「バ、バイストン・ウェルとかいう所から……?」
マーベル
「ええ」
父親
「敵国も居るという訳か」
マーベル
「多分」
父親
「どうした?」
マーベル
「味方の軍を捜します。地上での戦闘を避ける必要もあるし」
父親
「や、しかし……ダンバインとかで地上で動けるのか?」
マーベル
「ショウはやったわ。私だって、ジャップに負けたくないしね」
母親
「マーベル、あんた……」
マーベル
「これ、貰っていくわ」
テレビ音声
「詳しい事は全く分かっていませんが、同じオーラ・バトラーと言われているものらしいという事は事実です」
「アメリカからも同時刻に……」
チャム
「ショウ〜!」
ショウ
「何か分かったか?」
チャム
「私達の事言ってた。それに、アメリカとかでもオーラ・バトラーが出たってよ」
ショウ
「やっぱり……」
チャム
「どうなっちゃったの。ねえ、ショウ?」
ショウ
「ジャコバ・アオンだ。フェラリオが仕掛けたんだ」
「もしそうならジャコバは、バイストン・ウェルのオーラ・マシンを全て、地上に出したのかもしれない」
チャム
「そしたら、どうなるの?」
ショウ
「地上は滅茶滅茶になる」
チャム
「何の音?」
ショウ
「レーダーが何かキャッチした」
「近いな……」
チャム
「何? こちらへ来るの?」
ショウ
「ああ、地上ではレーダーが鮮明に映るんだ」
「地上の戦闘機なら、一機で来る訳はないが」
チャム
「オーラ・バトラーじゃないの?」
ショウ
「チャム、モニターの周波を合わせてみてくれ」
チャム
「うん」
「ええい、このっ……!」
ショウ
「バイストン・ウェルの者か? 聞こえるか?」
「ここは地上だ。バイストン・ウェルの者ならば、当方と合流をしろ」
「黒いオーラ・バトラー……!」
チャム
「いやん、あいつも出て来たの?」
ショウ
「ここは地上だぞ」
「よりによって貴様か!」
「地上で戦ったら、ガラリアの二の舞になるぞ!」
チャム
「そうよ! そんなに早死にしたいの?」
黒騎士
「そうは行かんのだ、ショウ・ザマ!」
ショウ
「何?」
黒騎士
「地上で最初に会うのがお前という事は、私にとっては僥倖なのだ」
ショウ
「僥倖……運が良かったというのか?」
黒騎士
「そうだ。地上に来てまで、私はチャンスを与えられた」
ショウ
「やめろ! 地上では、オーラ・マシンの力のコントロールが効かないんだ!」
黒騎士
「このズワァースの性能なら、何とでもなる!」
ショウ
「うっ!」
チャム
「あぁっ……!」
ショウ
「このっ!」
黒騎士
「ズワァースの火器だけを潰そうというのか」
ショウ
「今だ!」
「ワイヤーの長さの間では、火器は使えない!」
黒騎士
「一々、小賢しい……!」
「ショウ!」
ショウ
「こいつ……!」
黒騎士
「占めた!」
ショウ
「撃つな! オーラ・バトラーの火力は、地上では数十倍も強力になるんだぞ!」
黒騎士
「結構じゃないか!」
「また地上の機械か」
チャム
「あぁっ……!」
ショウ
「戦闘機か」
チャム
「また邪魔するだけよ、あれ」
ショウ
「ここから退くんだ」
軍人
「各機、各々の判断で敵を撃ち落とせ」
ショウ
「攻撃はやめろ!」
軍人
「効かないのか?」
「うっ、うわっ……!」
黒騎士
「こんな脆い物が地上の兵器なのか」
ショウ
「やめてくれ、俺は攻撃したくない」
チャム
「やっちゃいなさいよ、こんな分からず屋!」
ショウ
「攻撃すれば、地上人をまた敵に回すだけだ」
チャム
「もう同じよ!」
黒騎士
「地上で死ねるのを幸せだと思え!」
ショウ
「南無三!」
黒騎士
「ふふっ、やったか?」
ショウ
「甘いな!」
黒騎士
「何?」
ショウ
「バイストン・ウェルに帰れ!」
黒騎士
「奴のが……速いというのか……!」
ショウ
「これで事態は決定的になってしまった」
チャム
「また追っ掛けられるの?」
ショウ
「そうだな……」
「チャム、見ろ」
チャム
「え?」
「何あれ、怖いわ……」
ショウ
「朝日だ。太陽というものが作ってくれる、地上の夜明けさ」
「明日には見られないかもしれない……よく見ておくんだな」
チャム
「ショウ……」