第33話 マシン展開

防衛隊員
「戦闘機は飛んでないよな?」
 〃
「はい」
 〃
「速いな……ジェット戦闘機だぜ、ありゃ」
 〃
「見た事ないタイプだな」
 〃
「よーし、接触してみる」
「各員、警戒態勢に入れ」
「何だこりゃ……」
「もっと近付く。写真撮っておけよ。VTRも回せ」
チャム
「ふぁっ……」
「あ、ショウも寝ている……起きろ!」
ショウ
「何だ?」
チャム
「空飛ぶ機械が……」
ショウ
「ん?」
「眠っちまったのか」
「よくも落ちないで飛んでたもんだ」
チャム
「どうするの、ショウ?」
ショウ
「付いてこいって言ってるらしい。やられるのなら、眠ってる内にやられたろうしさ」
チャム
「あんなパサパサの島に行くのかな?」
皆川
「オーラ・バトラーか」
「銃を降ろせ」
「何故この海域に居るのか? 事情説明をして頂きたい」
ショウ
「ここの責任者ですか?」
皆川
「座間祥君ですか」
ショウ
「貴方は?」
皆川
「私は皆川と言います」
「貴方が東京で騒動を起こした時、守り切れなかったという理由で、こんな所へ飛ばされた者です」
ショウ
「それはどうも……」
防衛隊員
「チャムも居るぞ」
皆川
「御同行願えまいか?」
ショウ
「ええ、いいでしょう」
チャム
「こんな大きな顔、やだ〜」
「あ、こっちのフォットの方がずっといいわ」
皆川
「こういうのも出来て、本土では売られています」
チャム
「嫌だ! 私、こ〜んなにブスなの?」
「ね、ショウ?」
ショウ
「そんなもんだね」
チャム
「ふん」
皆川
「早速だが、教えてもらいたいのは、この写真についてなんだ」
ショウ
「はい」
チャム
「や、何よ〜」
皆川
「これだ」
ショウ
「ドレイクのウィル・ウィプス……」
皆川
「やっぱり知っているか?」
ショウ
「はい」
「こっちは空撮の物だ」
「ボストンの奴は?」
防衛隊員
「はい」
皆川
「こっちの物は?」
ショウ
「ビアレス・タイプのオーラ・バトラーですね。強力な奴です」
皆川
「どうやら、君の言うバイストン・ウェルの連中が、地上に戦争を仕掛けてきたようだな」
ショウ
「さっき説明したでしょ。それは違うんです」
皆川
「どこが違うのかね? 既に、何人もの人間が殺されている。上海の被害だって新宿並なんだ」
ショウ
「ドレイクだって、地上と戦争するほど間抜けじゃない……」
皆川
「入れ」
防衛隊員
「東京から、ショウ・ザマを連れてこいという訓電が入りました」
皆川
「うむ」
防衛隊員
「それから、あの……」
皆川
「いいから話したまえ」
防衛隊員
「テキサス上空で、オーラ・バトラーと円盤系の物と接触。戦闘を始めたとの事です」
ショウ
「それはダンバインじゃないのか? 新宿に出た……」
防衛隊員
「え、どうして分かるんだい?」
ショウ
「マーベルの故郷はダラスなんだよ」
「今、野戦中だというのか、ドロと……」
防衛隊員
「そこまで分からんよ」
ショウ
「司令、出させてください。これからアメリカへ行きます」
皆川
「ちょっと待ちなさい。いくら君のビルバインだって、アメリカまでは……」
ショウ
「本土からだって飛んできたんです。やってみますよ」
「チャム」
チャム
「ショウ〜」
皆川
「米軍にも飛行許可を申請しろ」
防衛隊員
「でも司令、オーラ・バトラーに型式番号なんてないんですよ?」
皆川
「オーラ・バトラーの技術を手に入れる為だ。勝手なナンバーを作って、テスト飛行中だと言っておけ」
軍人
「こちらモンロー、こちらモンロー。先発隊は苦戦のようだ」
「戦闘空域に入る。追尾頼む、オーバー」
通信の声
「ラジャー、モンロー」
民間人
「わぁぁっ!」
軍人
「うわぁぁっ!」
アの兵士
「ダンバインだ!」
マーベル
「アメリカ軍の癖に……!」
「ドラムロ?」
軍人
「うわぁぁっ!」
マーベル
「うっ、気のせい? ドロの動きまでもが速く見える……」
「はっ……!」
アの兵士
「ダンバインも地上に出ていたのか!」
マーベル
「地上で、迂闊な戦闘をするなど……」
「それにしても、ドレイク軍の数が出ている」
「はっ……!」
「ドレイク軍の、この闇雲な攻撃の仕方は何故?」
「地上に出て、地上を征服しようとでも思い付いたのかしら?」
軍人
「UFOは、ラスベガスに入ろうとしている。その前に阻止したい、オーバー」
「ルーレットをやってる奴らに、電気を消すよう通信しろ」
アの兵士
「こいつは面白れぇや! まるで兎狩りだ!」
民間人
「きゃぁぁっ!」
マーベル
「駄目だわ……ドロとドラムロに対しても、空軍には手も足も出ない」
「ショウ、どこに居るの? ショウ……!」
ショウ
「チャム、聞こえたか? マーベルの声……」
チャム
「うん、何か……何ていうかほら、助けてって感じでさ」
ショウ
「やっぱりな……進路は間違ってなさそうだ」
チャム
「いつの間にか夜になっちゃったのね。さっきは昼間だったのにさ」
ショウ
「夜の側に入ったのさ」
チャム
「夜の側?」
ショウ
「地上ではね」
チャム
「分かんない話ね。燐がキラキラ、みんな輝いてさ」
ショウ
「あれは星」
「西海岸だ」
チャム
「わ〜、綺麗。クリスタルみたい」
ショウ
「あっという間に、小笠原からアメリカか……」
チャム
「あ、星の光じゃないわ」
ショウ
「ああ、そうじゃない。まだ戦闘が続いているのか?」
アの兵士
「どうした、ダンバイン? 手も足も出ないで、ただ逃げるだけかよ?」
マーベル
「もう少しで海へ出る……」
「ここなら!」
アの兵士
「頂きだ、ダンバイン!」
マーベル
「こんな……!」
「きゃぁぁっ!」
ショウ
「マーベル!」
マーベル
「ショウ!」
ショウ
「マーベル、無事か?」
マーベル
「ショウ! 貴方、本当に来てくれたのね?」
アの兵士
「どこのオーラ・バトラーだ?」
 〃
「ビルバインだ!」
ショウ
「マーベル、避けろよ!」
チャム
「撃て撃て、大丈夫!」
マーベル
「ショウ、よく来てくれたわ」
ショウ
「マーベル」
チャム
「元気? 元気なのね、マーベル?」
マーベル
「ショウ、チャムも……」
「はっ……!」
「後退しましょう、ショウ。私は事情が全く分からないのよ」
ショウ
「いいけど、どこへ?」
マーベル
「付いてきて」
ドレイク
「ううむ、オーラ・シップではないようだが……」
「鳥め、執拗いな」
「迂闊に手を出してはならんぞ。ショットの仲間なら、味方にもなろう」
「どうなのか?」
アの兵士
「はっ、未だショット様、ビショット陛下と、連絡取れません」
ドレイク
「取れませんではない。連絡を付けろ。それが通信兵の仕事だ」
アの兵士
「はっ!」
ドレイク
「パトロールのオーラ・バトラー、出しておくか」
アの兵士
「おい、オーラ・バトラーの調子、どうだ?」
 〃
「いいぞ。何か、酷く軽く感じるな」
 〃
「そうか、地上ではパワー・アップするのか」
「試してみるか」
軍人
「仕掛けてきたぞ、宇宙人が動き出した」
アの兵士
「何だ?」
ドレイク
「地上人め、我が方に仕掛けおったな」
アの兵士
「助かったのか? あんな爆発を受けたのに……」
軍人
「直撃の筈だった……何故落ちない?」
ドレイク
「ウィング・キャリバーとオーラ・バトラーが爆発の中から出て来た? どういう事だ……」
マーベル
「あのチンピラ達、こんなオンボロに幾ら吹っ掛けたと思う? 500ドルよ、500ドル」
ショウ
「いいじゃないか。車を返した時に半分は返してくれるんだろ?」
マーベル
「でも、お昼までよ?」
チャム
「バスケットの中は嫌!」
マーベル
「もうじき市外よ。隠れてて」
チャム
「もう少しだけ、ね? いいでしょ?」
ショウ
「バルベラって子、幼馴染なんだろ?」
マーベル
「お父さんが海軍なのよ」
ショウ
「そうか、それで真珠湾に行くのか」
マーベル
「ええと、住所からするとこの辺なんだけどな……」
チャム
「ふぁっ……ん!」
マーベル
「バルベラ!」
バルベラ
「マーベル!」
「どうしたのよ、急に電話を寄越したりしてさ」
「ふん、こいつか」
マーベル
「え?」
バルベラ
「こいつと駆け落ちしていて、行方不明になってたんだ?」
マーベル
「嫌だ、違うって。色々あってさ」
バルベラ
「車を入れて」
「貴方のお父さんが、ここにまで電話を寄越したのよ。日本に行ってたの?」
マーベル
「ママは?」
バルベラ
「買い物」
「でもこんな時に、よくハワイに来られたわね」
マーベル
「何故?」
バルベラ
「嫌だ。昨日からオーラ・バトラー騒ぎで、国際便は全て閉鎖よ?」
マーベル
「この一週間、カウアイ島に居たの」
バルベラ
「ははっ! その間、一歩も外に出なかったんだ?」
マーベル
「何故?」
バルベラ
「だって、日焼けしてないじゃない」
マーベル
「も、嫌だ! バルベラったら……」
バルベラ
「聞かせる聞かせる」
マーベル
「バルベラのパパは?」
バルベラ
「今朝から出動よ?」
「カリフォルニア半島にもロスにも、オーラ・バトラーっていうUFOが出たっていうじゃない」
「真珠湾以来だってさ」
ショウ
「あ、そうですか。ダブリンにも出たんですか」
テレビ音声
「その後の状況には何の変化もありませんが、政府としても、警戒態勢を固めるとの談話が入っております」
チャム
「レプラカーン……!」
ショウ
「んっ……!」
マーベル
「ねえ、バルベラ……昨日からの新聞あったら見せて。この事件、興味あるわ」
バルベラ
「いいわよ」
マーベル
「それ見せてもらったら、帰るわ」
バルベラ
「暫くここに泊まっていきなよ。飛行機は飛ばないよ?」
マーベル
「駄目よ。ショウを日本に帰したら、その後、また来るわ」
バルベラ
「人を妬かせるんじゃないよ」
テレビ音声
「カリフォルニア半島に現れた、巨大UFOがあります」
チャム
「ドレイクのウィル・ウィプス!」
マーベル
「こんなのまで居るの?」
バルベラ
「変な声出さないでよ。ちょっと浮つき過ぎじゃないの?」
マーベル
「ふふっ、あんなのどこから来たっていうの? 宇宙人?」
ショウ
「俺には、バルベラの英語が日本語のように分かる……」
バルベラ
「こんな様子じゃ、当分の間、国際線は動かないと思うわ」
テレビ音声
「……については、バーダムからのビデオです」
ショウ
「はっ……」
テレビ音声
「人間らしき者は認められます。最大望遠で狙ったものです」
「ヘリコプターで接近する事を試みましたが、オーラ・バトラーと思われるものの妨害を受けました」
「しかし、東京に現れた型とは違います」
ショウ
「あの型の船は知らないな……」
テレビ音声
「次は、ボストンのアマチュア・カメラマンから提供されたビデオです」
ショウ
「ビアレス……!」
民間人
「あ、あれじゃないのかな……?」
 〃
「え?」
軍人
「聞こえるか、トッド・ギネスの名前を騙る者」
トッド
「本人だ、本人。俺はトッド・ギネスなんだよ」
軍人
「トッド・ギネスは、訓練飛行中に死んでいる」
トッド
「何?」
「いい加減にしないと、落とすぜ?」
「ん?」
「流石、やるじゃないの。我が同輩諸君」
マーベル
「ショウ……」
ショウ
「え?」
「あっ……」
テレビ音声
「コロンビアからの入電です。全くタイプの異なる船が、空中で発見されました」
ショウ
「ゼラーナも出て来てたのか」
マーベル
「え、ええ。急ぎましょう」
「有難う、またね」
店員
「はい」
テレビ音声
「カリフォルニア、上海、ボストンと、同時刻にオーラ・バトラーが出現しました」
ショウ
「間違いないよ、マーベル」
マーベル
「ゼラーナはコロンビアね」
チャム
「ぷはっ、暑い!」
「ね、ゼラーナがどうかしたの? ショウ」
ショウ
「地上に出てたんだ。かなり遠い所だけどね」
チャム
「本当? きゃほ〜っ!」
親子
「大きな蝶々だ!」
 〃
「本当ね」
マーベル
「ゼラーナと接触をする。その上で、ゴラオン、グラン・ガランを捜す……出ていると思う?」
チャム
「み〜んな出てんだもん。きっと出てるわよ」
ショウ
「でも、二人だけの戦争にならなくってよかった」
「な、マーベル?」
マーベル
「ええ、父からの借金も無駄にはならなかったわ」
「有難う」
「あれ、本当に返しにきたのかよ? 参ったな……」
マーベル
「助かったわ。250ドル、返してよ」
「分かったよ」
マーベル
「確かに」
「でもね、車の割にはちょっと高いようだから、ガスは入れてないわよ」
「え、ホノルルまで帰れんのかよ?」
マーベル
「さあね」
マーベル
「荷物は?」
ショウ
「バラして積み込んだ」
「マーベル、空軍も動き回っている。接触を避けたい」
「上昇出来る所までギリギリ上がって、コロンビアへ向かう」
マーベル
「でも、そんなに上がるなんて、オーラ・バトラーで?」
ショウ
「東京でも経験している」
チャム
「あ、見付かんなかった?」
ショウ
「このコックピットは、気圧が下がらないんだ」
マーベル
「分かったわ」
ショウ
「着替えてんのか?」
チャム
「ショウ、見ないの!」
ショウ
「痛いな」
「見付かった!」
マーベル
「出るわ」
ショウ
「了解」
軍人
「オーラ・バトラーだ。こんな所に居やがった」
「聞こえるか、ビッグ・イー。こちらパトロール、JJクレープ」
「オーラ・バトラー2機をキャッチ。東南東へ向かっている。ビッグ・イー聞こえるか?」
軍人
「振り切られた。この辺りには、カンガルーは居ないのかよ?」
キーン
「きゃっ……!」
「ニー、まだ本格的に反撃しちゃいけないの? こんなんじゃ壊れちゃうわよ!」
ドワ
「もう限界だ。これ以上は……!」
ニー
「分かっている。もう少しだ。民家のある所を戦場にはしたくなかったんだ」
「総員、総攻撃を開始せよ!」
ドワ
「わっ、この……!」
ニー
「敵だって、敵の命令系統だって、混乱しているようだ」
キーン
「いきなり地上界に出て来たんですもの。怖いのよ」
「うっ、こいつ……!」
トッド
「やれやれ、味方を撒くのも楽じゃないぜ」
「ん? あれは……」
ニー
「何、ビアレス?」
「キーン、フォウ、出ろ。また新手だ」
キーン
「了解」
トッド
「へへっ、ゼラーナの方が歓迎してくれそうだぜ」
ニー
「ドワ、操縦を頼むぞ。俺はボゾンで出る」
ニー
「トッドか!」
トッド
「再会を祝して乾杯と行くかい?」
「ニー・ギブンさんよ!」
ショウ
「感じる……ゼラーナが近いぞ、マーベル!」
マーベル
「左前方、光が見えたわ」
チャム
「ショウ、あそこ!」
ショウ
「よし、行くぞ!」
トッド
「ん、ダンバインか!」
ニー
「ショウ、マーベルも……!」
キーン
「ショウ!」
ニー
「うっ、ぉっ……!」
マーベル
「ニー!」
ショウ
「貴様、トッドか!」
トッド
「ショウ・ザマ、よくぞ生きて地上へ……!」
ショウ
「ええい、速くなる一方じゃないか!」
「くっ……!」
チャム
「何、今の?」
ショウ
「オーラ力のパワー・アップが、お前だけだと思うなよ!」
チャム
「きゃっ……!」
トッド
「ショウめ……!」
チャム
「やった! やったね、ショウ!」
キーン
「ショウ、大丈夫?」
「チャムは?」
チャム
「大丈夫」
ニー
「マーベル」
マーベル
「ニー、地上は?」
ショウ
「下がれ、みんな!」
「わっ……!」
キーン
「あっ、きゃっ……!」
ニー
「くっ、うぅっ……!」
マーベル
「上へ!」
チャム
「あぁっ……!」
ショウ
「マーベル、仕掛ける!」
マーベル
「了解!」
トッド
「ショウ、マーベルめ……!」
「タンギー、ドロ、来てくれ!」
ショウ
「地上に出た味方の戦力を集結させて、地上での戦火を一刻も早く終結させよう」