第28話 ゴラオンの発進

前回のあらすじ
バイストン・ウェルに、オーラ・マシンによる喧騒が拡大していった時、
世界が、それを排除しようとして働くのもまた、理である。
オーラ・マシンを操る人々は、バイストン・ウェルに於いて悪しき者なのかもしれない。
世界各地に浮上したオーラマシン隊……その中で、ショウとマーベルはゼラーナと出会い、
同時に、異常に拡大したトッドのビアレスとも遭遇した。
そのビアレスを、辛くもビルバインとダンバインは撃墜した。
ミュージィ
「私一機で落としてみせると、ショット様と約束をした」
「私にはまだズワァースも扱えず、体が地上に慣れていないというのか?」
「今だ!」
「漸く一機か、ええい……!」
軍人
「ええい、照準が固定出来ない。一体どこの飛行物体だ?」
「来た! ロック・オン!」
ミュージィ
「うっ、直撃か!」
軍人
「直撃の筈だ。何ともないのか?」
ゼット
「バリアだ。オーラ・バトラーにバリア機能が働いた」
ショット
「やはりな」
ゼット
「分かっていたのですか?」
ショット
「薄々な。バイストン・ウェルでは化学変化を抑える働きがあった。その逆がバリアだ」
ゼット
「よーし……」
ショット
「ゼット、この空域の戦闘には関わり合うな」
ゼット
「何故だ?」
ショット
「空軍との話は、私から付ける」
「お前はバストールのテストをしながらゼラーナを捜せ。南太平洋に出た所で行方不明になっている」
ゼット
「ミュージィは大丈夫なのか?」
ショット
「慣れてきた。死にはせんよ」
ゼット
「了解」
「へへっ、やはり造っているより、自分で操縦した方がいいぜ」
ショット
「地上に出てどうなるか心配していたが、取り越し苦労にようだ」
チャム
「わっ……!」
ショウ
「チャム、触るなよ」
チャム
「ん、地上の機械って不気味ね」
ショウ
「パラボラ・アンテナは、人工衛星からの電波を受信するのさ」
マーベル
「でも、軍事用電波は無理みたいね。周波数帯がかなり違うみたいだもの」
チャム
「人工衛星? 何だ?」
キーン
「ゼラーナ、どうするつもりなの? いつまでこんな所に居るつもり?」
ニー
「ドレイクを倒すだけさ」
キーン
「でも、どうやって? ちょっと動けば地上人が攻撃して来るのよ?」
ニー
「地上の軍隊は無視するさ」
チャム
「ニー、ヨーロッパ!」
ショウ
「ニー、直ぐにヨーロッパに向かおう」
「シーラ・ラパーナの艦隊らしい情報を掴んだ」
ニー
「本当か?」
キーン
「シーラ様が居たの?」
マーベル
「多分ね。ちょっと地上の国々の関係で分かりにくいんだけど、ゴラオンではなさそうなの」
ニー
「エレ様のゴラオンは、地上に出てないのか?」
チャム
「まだ分かんないってさ」
ニー
「オーストなんとかってとこにも、オーラ・シップが出てんだろ?」
マーベル
「ええ、交戦中みたい」
ニー
「地上軍とか?」
ショウ
「そうだ。ドレイクか、ビショット軍の部隊らしいんだ」
チャム
「地上軍よ!」
マーベル
「え?」
ショウ
「見付かったのか?」
チャム
「どうしよう?」
マーベル
「待って、あれは……」
ショウ
「何?」
アの兵士
「ゼット様、先刻とは違う飛行体のようです」
ゼット
「ハリアーらしい。恐れる事はないぞ」
軍人
「国籍不明機に告げる。降下しなければUFOと断定する」
ゼット
「断定しろよ。勝手に断定してどうしようっていうんだ?」
「当たった、当たったぞ!」
チャム
「うふ、私達が見付かったんじゃないんだ」
ニー
「あれは、どこの所属か分からんのか?」
ショウ
「オーストラリアに出た部隊のだろう」
一同
「うっ……!」
ニー
「ドワ、発進させるんだ!」
ドワ
「おう!」
ゼット
「生意気なんだよ、お前らは!」
「わっ、うぅっ……!」
「何ともない……バリアが働いたんだ。あれ程の破壊力にも……」
「はっ、ゼラーナ!」
ショウ
「バストールが無事?」
マーベル
「バリアじゃない?」
一同
「うっ……!」
ニー
「反撃させろ」
「ドワ、最大戦速」
ショウ
「駄目だ。バストールでさえバリアが働いた……ゼラーナも働く筈だ。逃げ切れる」
チャム
「また来る!」
ショウ、チャム
「わっ!」
ドワ
「爆発を防ぐ幕が掛かった」
マーベル
「バリアよ」
チャム
「バリア?」
ショウ
「地上の軍隊は相手にするな」
ゼット
「こんな所でゼラーナに出会うとは……」
「無駄なのにな」
軍人
「マッハの速度が出るのか? あんな物が……」
ニー
「前からも来る」
ショウ
「構うな、バリアが効いてる」
キーン
「逃げても逃げても追ってくるわ」
チャム
「あはっ、帰っちゃうよ。どうしたの?」
マーベル
「高度が上がり過ぎたのよ。これで暫くは休めるわ」
チャム
「まだ来る!」
マーベル
「え?」
ゼット
「追い付いたぜ、ゼラーナ」
「ドロ隊、前へ出ろ」
一同
「わっ……!」
ドワ
「バストール」
キーン
「奴らからは逃げられないわ。叩かなければ、いつまでも攻めてくるのよ」
ショウ
「キーン」
キーン
「ドロの3機にバストールの1機ぐらい、何だっていうのよ」
ゼット
「貰った、ボチューン!」
キーン
「えっ?」
ショウ
「マーベル、オーラ・ショットは使うなよ?」
アの兵士
「ダンバインが出たぞ!」
キーン
「私だって、ショウ達には負けない!」
ゼット
「わぁぁっ!」
「しまった、弾切れか……スペアを!」
ショウ
「何だ?」
ゼット
「地対空ミサイルか。丁度いいタイミングで来てくれた」
ニー
「うっ! な、何という……!」
ショウ
「直ぐにここから離れろ!」
キーン
「どういう事なの?」
ショウ
「地上軍の防空ミサイルだ。射程距離から離れろ!」
マーベル
「駄目よ。地上に居る限り、ミサイル網からは逃げられないわ」
ショウ
「ゼラーナを上昇させろ。ここまで上がれたのなら、超高空でも飛べる筈だ」
ニー
「分かった」
チャム
「超高空? 海にぶつかるわよ」
ショウ
「地上の空には、海はないの」
チャム
「何でさ?」
船員
「お〜いどうした、生きてるのか?」
「動いたぞ、動いた。もうちょい、もうちょい」
「お〜い、どこの船員だ? 船はどうしたんだ?」
「言葉が通じないぜ、どうする?」
 〃
「身分証明証ぐらいあるだろ。後で調べよう」
 〃
「おい、乗れるんだろ? 早くしろよ、時間食う訳にはいかないんだ」
ショウ
「バリアがなけりゃ、三千メートルと上がらない内に、苦しくなってるよ」
マーベル
「でも、人工衛星軌道にまでは、上がれはしないでしょ?」
ショウ
「ゼラーナだけでなければ、一度試してみたい所だけどね」
マーベル
「地上のオーラ力がどこまであるのかを?」
ショウ
「ああ。バイストン・ウェルとの違いを調べたいな」
ショウ
「順調のようじゃないか」
ニー
「多少息苦しいが、大丈夫かな?」
チャム
「な〜にこれ? どうしちゃったの?」
ショウ
「氷だ」
チャム
「氷?」
マーベル
「持つかしら?」
キーン
「大丈夫なの?」
ニー
「中国大陸というのか? そこに向かっているが……」
チャム
「う〜、寒っ……」
ショウ
「領空侵犯になるな」
マーベル
「警戒はしましょう。ゼラーナの力が、どこまでも私達を守ってくれるって保障はないわ」
ガラミティ
「ダー、ビアレスの調子はどうか?」
ダー
「上々です」
ガラミティ
「うむ」
「エレ・ハンムのゴラオンと、シーラのグラン・ガランの(?)は分かっているな?」
ダー
「はい。どんな事があっても、見間違う事はありません」
ニェット
「地上に出てから魘され続けています。敵のオーラ力に」
ガラミティ
「地上に出られたのは、敵のオーラ力だけが原因とは思えん。我々の力かもしれんのだ。自信を持て」
「敵か……地上軍のものか?」
「ううむ……」
軍人
「何だありゃ?」
チャム
「はぁ、服が重いんだわ」
「ドワ、大丈夫?」
ドワ
「な、何とかな……」
「ショウ、あれは何だ? あの飛行機」
ショウ
「あれか? あれはU2とかっていう偵察機だ」
マーベル
「あれは軍事用っていうより、今は唯の観測機よ。気にする事はないわ」
「ショウ、高度は下げましょう。私達はいいけど、バイストン・ウェルの人には堪えるみたいよ」
ショウ
「了解だ」
ニー
「そ、そうしてくれ」
キーン
「……大分楽になったわ。どうなの? 聞こえる?」
マーベル
「軍の動きは活発ね……」
ショウ
「山脈を盾にして進むか」
マーベル
「地上の空軍との接触は、なるべく避けたいわね」
ショウ
「ああ」
マーベル
「はっ、地上から飛行機よ!」
ショウ
「何機だ?」
マーベル
「よく分からない。飛行機らしいんだけど……」
ガラミティ
「ふふっ、ゼラーナがこんな所を飛んでいるのか」
ダー
「成る程、何が待ち受けてるか分かりませんな、この地上は」
ガラミティ
「ゲア・ガリングには打電しておけ」
マーベル
「ビアレスが来る!」
ショウ
「ドワ、替われ!」
ニー
「総員、オーラ・バトラーに……うっ!」
マーベル
「ニー、ドワ、無線には気を付けてね。ゴラオンかグラン・ガランの電波を聞き逃さないで」
ショウ
「頼んだぞ」
チャム
「頼んだわ」
ニー
「俺に分かるかな……?」
「わっ……!」
ガラミティ
「ゼラーナめ、直撃には何ともないのか」
「うぉっ、オーラ・バトラーに乗っていても、直撃が来ないのか?」
「ゼラーナも同じという訳か、成程な」
ニェット
「銃撃が駄目なら、直接に斬り込むだけだ!」
ダー
「気を付けろ、ダンバイン以外に新型が居る筈だ」
ニェット
「分かっている」
キーン
「ビアレスが……!」
ニェット
「ビアレスは、てめぇより速いんだよ!」
キーン
「このオーラ・バトラー、凄い!」
マーベル
「キーン!」
「バリア?」
ダー
「ビアレスの使い方がなってないぞ」
ニェット
「て、敵は場数が違うんだよ」
ダー
「見てろ」
ショウ
「マーベル、キーン、俺が出たら二人はゼラーナの援護だ」
マーベル
「了解」
キーン
「了解」
ダー
「何? ゼラーナからもう一機出たぞ」
ニェット
「あれは新型だ」
ガラミティ
「ニェット、ダー、こいつを倒す方が先だ」
ダー
「しかし、ゼラーナは母艦です」
ガラミティ
「戦力は、新型のビルバインの方が上だ」
ニェット
「確かに。まずはビルバインとかいうオーラ・バトラーを」
チャム
「行っちゃうわ、ゼラーナが……私達だけになっちゃう」
ショウ
「直ぐに合流出来る」
ガラミティ
「あれを叩いておけば、後は楽というものだ」
ショウ
「来てくれた」
ダー
「雲の中に入ったぞ。どうする?」
「お、新手か」
ニェット
「ウィング・キャリバーか」
チャム
「ん、速過ぎるよ〜!」
ショウ
「ゼラーナから引き離す為だ、我慢しろ」
「バトラー・タイプに変形する」
ガラミティ
「変形した……ウィング・キャリバーとオーラ・バトラーをドッキングさせたものか」
「ニェット、ダー、あの新型にトリプラーを掛ける!」
「たかが一機で我々を相手しようという魂胆……」
ニェット
「舐めてやがる」
ダー
「一気に止めを刺すぜ」
チャム
「来るよ、ショウ」
ショウ
「ビアレス3機……どうやる?」
チャム
「やっちゃえ!」
ショウ
「行くぞ!」
「来た!」
「むっ……!」
「わっ!」
ニェット
「やったか?」
チャム
「落ちてるよ、ショウ! どうしたの? ビルバインは壊れてないよ、ショウ!」
ガラミティ
「ニェット、ダー、奴はバラバラにはなっていない。止めを刺す」
チャム
「ショウ、起きて〜!」
マーベル
「ニー! ショウの援護に回った方が、良くはない?」
「ニー!」
ドワ
「ゴラオンの声だ。間違いないな」
ニー
「どの方向だと思う?」
ドワ
「マーベルに調べてもらわなくっちゃ」
ニー
「マーベル、ゴラオンらしい電波をキャッチした」
マーベル
「ゴラオン? 近いの?」
ニー
「よく分からないんだ。レーダーには映ってない」
マーベル
「アンテナは動かして電波の強い方向を探せば、方角は分かるわ」
「今はショウの援護をさせてもらいます」
キーン
「マーベル……作戦を守らなくちゃいけないわ」
ドワ
「どうする、ニー?」
ニー
「放っておけ。どの道、ビルバインを連れ戻さなきゃならんのだ」
「ゴラオンも戦闘中なのか……!」
チャム
「ショウ、起きてよショウ。地上で気を遣い過ぎて疲れたのよね、ショウ。休んでるのよね」
「あっ……」
ニェット
「レーダーではこの辺の筈だが……」
ガラミティ
「落ちてからは動いてない筈だ。見付けられる」
ショウ
「はっ……」
チャム
「ショウ!」
ショウ
「うっ……!」
ニェット
「見付けたぞ」
「ガラミティ殿、見付けました」
ガラミティ
「コックピットを打ち抜け、止めだ」
ニェット
「はっ!」
ショウ
「駄目だ、体が自由にならない。さっきの戦いで……」
チャム
「嫌! 駄目よ、しっかりしなくっちゃ、うぅっ……!」
マーベル
「あそこ……!」
チャム
「あ、撃っちゃった……」
「きゃっ!」
ガラミティ
「ん、何だ今のは?」
ショウ
「マーベル!」
チャム
「戻ってきてくれたの?」
マーベル
「ショウ、怪我をしてるの?」
ショウ
「怪我じゃない。何故か分からないけど、疲れが酷いだけだ」
マーベル
「はっ……!」
「あぁっ!」
ショウ
「マーベル!」
「俺だって!」
ガラミティ
「踏ん付けてった?」
ショウ
「んっ……!」
ニェット
「わぁぁっ!」
マーベル
「ショウ、よく……」
チャム
「やったやった!」
ショウ
「やれたのか……?」
ガラミティ
「ビルバイン……!」
「うっ……!」
マーベル
「あの3機のビアレスのパイロット、地上に出たからああも強くなったのかしら?」
ショウ
「さあな……」
チャム
「そうみたい。今までの誰よりも凄かったわ」
ショウ
「で、でも、一回目の時は俺が意識を分散し過ぎたかもしれないんだ」
チャム
「バリアでオーラ力を吸い取られたのかな?」
ニー
「そうかもしれないな」
「俺達は余りにも、ゴラオンとかグラン・ガランを当てにし過ぎて、我々のオーラ力を分散させ過ぎたと思える」
「もっと協調しよう」
「ゴラオンに向かう」
マーベル
「方位は分かったのね?」
ニー
「ああ、北だ。正確には北北西といった所だな」
「各機、ゼラーナに集結しろ」
ショウ
「了解だ、ニー」
船員
「荷物を見せろ」
 〃
「いいだろ、取りゃしないから」
 〃
「ほら、あっ……!」
 〃
「しょうがないな、インドに着くまでには調べるチャンスがあるさ。今はそっとしておいてやれ」
 〃
「何て野郎だ……」
 〃
「そんな所に居ると、風邪引くぞ」