第37話 ハイパー・ジェリル

エレ
「ゲア・ガリングは?」
エイブ
「このまま進めば、一時間後には接触致しましょう」
エレ
「各艦を戦闘隊形へ」
エイブ
「はい」
チャム
「ショウ、マーベル」
「無理だよな、ぶっ通しだもんな。もう少し休ませてやりたいもんな」
ニー
「総員、戦闘配置に就け」
チャム
「あ、薄情物〜!」
ゼット
「如何かな?」
黒騎士
「ゼット・ライト殿」
ゼット
「お前がガラバを押し付けられたのか」
黒騎士
「ショット様に付いていたのではないのか?」
ゼット
「地上は俺の故郷だ」
黒騎士
「だから、自由にしているのか?」
ゼット
「ま、試作品で戦おうってのは流石だな」
「来いよ、ビショットに紹介してやる」
ビショット
「ゼットから話は聞いた。ガラバが正式採用出来る物かどうか分かるまで、好きにやるがよい」
黒騎士
「はっ! ビショット・ハッタ陛下」
ルーザ
「ビショット殿、ここに居られたのか」
黒騎士
「ルーザ様……」
ビショット
「これはこれは」
ルーザ
「異様な風体の騎士……何者か?」
黒騎士
「戦いで醜い顔になりました。それ故、マスクを……」
ルーザ
「ん?」
ビショット
「何事だ?」
クの兵士
「はっ! ゴラオン、キャッチしました」
ビショット
「よし、戦闘態勢だ」
「ゼット、黒騎士、下がってよい。大いに功を挙げてくれよ」
黒騎士、ゼット
「はっ!」
黒騎士
「ルーザ様までもが地上に出ておられたのか。しかし、何故ここに……」
ショウ
「ゲア・ガリングから発進した、オーラ・バトラー隊が居る筈だ」
チャム
「変ね、静か過ぎるわ」
マーベル
「ニー、上空はどうなの?」
ニー
「対空レーダーにも何も映ってない」
ショウ
「気に入らないな……」
「わっ!」
ニー
「下?」
ショウ
「グリムリー各艦は急上昇しろ!」
チャム
「行っちゃうよ〜」
ショウ
「行かせるか」
ドワ
「ゴラオンの方へ行くぞ」
ニー
「対空砲火、薄いぞ!」
ショウ
「マーベル、キーンは?」
「来た!」
マーベル
「ショウ、ゲア・ガリングを食い止めて。私はゴラオンへ回るわ」
ショウ
「頼む」
エイブ
「ゴラオンは上昇。敵の頭を押さえる」
エレ
「エイブ艦長、低空飛行してください」
エイブ
「は?」
エレ
「そして、全てのオーラ・ノズルを全開させるのです」
ゼット
「いいもんだ、戦えるとは」
「何?」
マーベル
「地上に上がって、ドラムロのパワーも上がっている」
「沈め!」
「ゴラオンは……あれ?」
クの兵士
「目晦ましか?」
ゼット
「同士討ちじゃないのか? これでは、敵味方の判断が付かん」
「むっ……!」
「馬鹿、やめろ!」
「慌てるな、敵と味方を確認しろ」
黒騎士
「一応、整備は終わっているようだ」
クの兵士
「黒騎士殿」
黒騎士
「何だ?」
クの兵士
「第二次攻撃隊は出ません」
黒騎士
「何だと?」
ビショット
「全軍後退せよ。ゴラオンの挑発に乗って、無駄に戦力を失いたくない」
クの兵士
「ポイントを割り出させろ」
ビショット
「しかし、後退するには惜しい所ですな」
ルーザ
「ここで勝っても、戦力を低下させますと……」
ビショット
「グラン・ガランがどう出て来るか分からぬから、警戒せよと?」
ルーザ
「はい。それまでは堪えるのです、ビショット様」
ショウ
「うっ……!」
チャム
「ショウ、見て」
ショウ
「ん?」
ゼット
「何を考えての後退なんだ。もう一押しだったのに」
「はっ……!」
キーン
「貰ったわ!」
ゼット
「こいつ!」
「下がるしかないのか」
キーン
「逃がすか!」
ショウ
「やめろ」
キーン
「え?」
「ショウ、どうして?」
ショウ
「深追いはよせ。向こうから仕掛けておいて下がった……。何かある、下がれ」
ショウ
「何か思い付いたんだ」
「それまでビショットは、ゴラオンと対決するつもりでいたと見える」
ニー
「我々を消耗させて、その上で……」
マーベル
「叩くつもりよね」
ショウ
「無限なのはオーラ力のみか……」
「エレ様」
エレ
「申し訳ありません。疲れていた所、無理に戦わせてしまったようですね」
ショウ
「いえ、エレ様が立ち直って頂けて、嬉しく思っています」
キーン
「エレさんが沈んでいては、全艦隊に影響するものね」
エレ
「有難う、皆さん」
「ゴラオンはこの空域からなるべく早く脱出し、グラン・ガランと接触……」
「はっ……!」
ショウ
「エレ様」
キーン
「エレ様」
エレ
「何、あぁっ……!」
「こ、これは……」
ニー
「エレ様」
ショウ
「エレ様、どうしたのです?」
マーベル
「大丈夫ですか?」
エレ
「あっ……」
「オーラ・バトラーと、赤い……赤い髪の女が、力が強く危険な力を……」
ニー
「赤い髪の女……」
ショウ
「ドレイク軍に、ジェリル・クチビというのは居る」
エレ
「強過ぎる力を持っています」
マーベル
「でも、ドレイクの所へ来た三人の地上人は、決して強力過ぎるとまでは行かなかったわ」
ショウ
「地上に出たら何が起こるか分からないんだ。考えられない事じゃない」
エイブ
「エレ様、ゼラーナの方々、至急ブリッジへ」
チャム
「ニー、またゲア・ガリング?」
ニー
「まさか」
「あ、エレ様……大丈夫ですか?」
エレ
「ええ、もう何とも……」
ショウ
「さ、エレ様」
エレ
「え?」
ショウ
「どうぞ、私の背中を」
エレ
「あっ……はい」
エイブ
「ご苦労です」
ニー
「エイブ艦長、何か?」
エレ
「人工衛星とやらからの情報を手に入れたのですね?」
エイブ
「はっ! チャーリー殿のご努力が実りました。ご覧ください」
ショウ
「人工衛星からの映像だ」
マーベル
「本物みたいね」
「グラン・ガランだという証拠は?」
ショウ
「場所は?」
エイブ
「チャーリー殿」
ショウ
「凄いな……グラン・ガランらしい」
マーベル
「あそこは、ポーランドかソ連の間辺りね」
エレ
「エイブ艦長、グラン・ガランと接触を計ります。移動しましょう」
エイブ
「はっ! グラン・ガランの位置を正確に割り出せ」
ラウの兵士
「はっ!」
エイブ
「進路変更、グラン・ガランと接触する」
軍人
「司令、キプロス沖にオーラ・シップと思われるものの侵攻をキャッチしました」
司令官
「艦隊の形は分からないか?」
軍人
「はっ! これが最高拡大です。進行方向から計算すると、ブレストの方向へ一直線に向かっています」
司令官
「やはりな……」
「グラン・ガランとゴラオンと考えてよい訳でありましょうか?」
ジェリル
「そうだね。このまま二隻を接触させてしまっては、ヨーロッパは滅茶滅茶になるよ」
「何しろ、地上を乗っ取ろうって連中だからね」
司令官
「では……」
ジェリル
「グラン・ガランは向こうに任せておいて、ゴラオンを私達で捕獲しよう」
ジェリル
「あれは確かにゴラオンだ……運が出て来たようだね、私にも」
マーベル
「フォウを使えば、グラン・ガランまで辿り着けます」
「ショウはもう少し休んでいていいわ」
「フォウを切り離して。出ます」
ニー
「ゼラーナも全速力で追跡だ」
ドワ
「了解」
ショウ
「大丈夫かな、マーベルだけで」
ニー
「気にはなるが、お前の体だって心配だしな」
軍人
「ジェリル殿、こうして一緒に飛行してみますと、オーラ・バトラーの素晴らしさがよく分かりますよ」
ジェリル
「いやいや、地上の戦闘機だって大した物さ」
軍人
「バイストン・ウェルへ行けた貴方を、大変羨ましく思います」
 〃
「同感です。我々にない力を持っていらっしゃるのですから」
 〃
「素晴らしい……まさに二十世紀のジャンヌ・ダルクだ」
 〃
「違いない。ジャンヌの再来だ」
ジェリル
「こそばゆいね。ダブリンで鼻摘みがジャンヌ・ダルクとはね」
「ん?」
「オーラ光」
マーベル
「この反応、オーラ・バトラー隊」
「戦闘機?」
「はっ……!」
「レプラカーン!」
「戦闘機?」
「地上の戦闘機を落とす訳には……」
「赤い髪の女……」
ジェリル
「ふん!」
マーベル
「これがレプラカーンの力……!」
ジェリル
「隊長、フォウは無人だ。構うな」
「ダンバインは私に任せて、ゴラオンへ向かえ」
軍人
「お任せします」
マーベル
「この……!」
「うぅっ、うっ……!」
「何て速さ!」
「はっ……!」
「あぁっ!」
「こいつ、赤い女……!」
「ジェリル……ジェリル・クチビ……!」
ジェリル
「ヒロインは私一人でいいのさ」
マーベル
「あぁっ……!」
ニー
「どうした、ショウ。何故発進する?」
ショウ
「すまないニー、マーベルが危ないんだ」
ニー
「何を言っている? マーベルからは、まだ何も連絡は入っていないぞ」
ショウ
「行かせてくれ」
ニー
「ドワ、俺はエイブ艦長に報せてくる」
ドワ
「ああ」
「待てニー、レーダーに別の機影の反応が出た」
ニー
「何?」
チャム
「ショウ、何か来るわ」
ショウ
「オーラ・バトラーじゃないな」
「地上の戦闘機だ」
チャム
「どうするの?」
ショウ
「突っ切るしかないさ」
軍人
「隊長、別のオーラ・バトラーに似た物が」
 〃
「ジェリル殿に任せておけばいい。我々の目標はゴラオンだ」
チャム
「抜けちゃったよ、ショウ」
ショウ
「むっ……!」
チャム
「どうしたの?」
ショウ
「また感じた……しかも強くなってる」
マーベル
「このパワー、ダンバイン以上……返し切れない!」
ジェリル
「落ちろよ!」
「うっ……!」
マーベル
「ショウ!」
ショウ
「マーベル、離れろ!」
「何?」
チャム
「何よ、あれ?」
ショウ
「何だ、今の力……」
チャム
「ぶつかんなかったのに」
マーベル
「ジェリルよ」
ショウ
「赤い女……」
マーベル
「ジェリルに間違いないわ」
「しかも、地上軍と連携しているのよ」
ショウ
「ジェリルが……何でだ?」
マーベル
「分からないわ」
ショウ
「来た!」
「ジェリル、地上人に理解されているのなら、無駄な戦いを止められる力を貸してくれ」
ジェリル
「地上人は、お前らを敵だと思っているんだよ」
チャム
「速い……!」
ショウ
「速過ぎる!」
「マーベル、挟み撃ちだ」
ジェリル
「くっ、小癪な……!」
「ちっ……!」
ショウ
「マーベル、もう一度だ! かなり効いてるぞ!」
マーベル
「了解!」
ジェリル
「左右からか」
「舐めるな!」
マーベル
「何? このオーラ光……!」
チャム
「きゃっ……!」
ショウ
「ジェリル、何をやった?」
マーベル
「な、何……?」
チャム
「ショウ!」
ショウ
「こいつ……!」
「レプラカーンが巨大になって見える!」
チャム
「どうしたの?」
ジェリル
「ははっ!」
ショウ
「マーベル、下がれ! こいつは目晦ましだ!」
マーベル
「何で、こんなに巨大に……?」
ショウ
「マーベル、前だ!」
マーベル
「はっ……!」
ジェリル
「ふふっ、敵が小さく見えるという事は、私がダンバインにもビルバインにも勝つという事だ!」
軍人
「空中の艦艇に告げる。着陸してこちらの指示に従え。聞こえるか?」
「着陸してこちらの指示に従え」
エレ
「攻撃指揮官は何方ですか? 私は、バイストン・ウェル、ラウの国の女王、エレ・ハンムです」
「お国の方と話し合いたい」
軍人
「エレ・ハンム……少し待て」
「司令、ラウの国の女王が話し合いたいと、申し出がありました」
司令官
「ん、回線を繋げ。周波数を合わさせろ」
「話を聞こう、ラウの国の女王」
エレ
「私達が地上に出てしまった理由は分かりません。しかし私達は、地上人と戦う意思はないのです」
エイブ
「我々は、貴国の最高責任者と話し合いたい」
司令官
「それは無理だろうな。我々は今、聖戦士ジェリル殿の命令で隊を動かしている」
エイブ
「ジェリル……?」
エレ
「やはりさっきの、赤い髪の女は……」
司令官
「ジェリル殿は仰った。ゴラオンを押さえねば、地上の平和はないとな」
エイブ
「それこそ誤解だ。ジェリルの方こそこの混乱を招いた、悪しき存在なのですぞ」
司令官
「そのような言い草に誰が乗るか。この地上を乗っ取ろうとしてる輩が」
エレ
「違います。彼女は、バイストン・ウェル全体を支配しようとした、アの国の」
「ドレイク・ルフトに喚ばれた兵士にしか過ぎません」
司令官
「ええい、アの国だラウの国だと分からぬ事を……ジェリル殿は勇者の再来だ」
「少なくとも、お前達よりは信じられる」
エレ
「ジェリルのオーラ力は、人の心までも変えてしまうまで……」
「はっ……!」
エイブ
「あれは……」
エレ
「赤いオーラ・バトラー!」
マーベル
「動けない……ショウ!」
エイブ
「何だ、あの巨大なオーラ・バトラーは」
エレ
「赤い髪の、ジェリル・クチビ!」
司令官
「こちらのモニターにも見えた。ジェリルのオーラ・バトラーか……」
エレ
「ジェリルのオーラ力は、人を歪めさせ、戦いの中に取り込もうというのか」
ジェリル
「ショウ・ザマ、今日こそはって奴さ!」
ショウ
「オーラの力は、マシンをも巨大化するというのか!」
チャム
「幻じゃないの?」
ショウ
「実際に剣を受けてる!」
「このっ!」
ジェリル
「こんな物が効くか! この私のオーラ力に!」
ショウ
「来る!」
ジェリル
「逃げられやしないよ!」
「ははっ、ははっ……!」
ショウ
「しまった!」
ジェリル
「最後だよ、ショウ・ザマ!」
ショウ
「南無三!」
チャム
「やらせないよ!」
ショウ
「チャム!」
エレ
「ショウ!」
マーベル
「ショウ!」
ニー
「ショウ!」
キーン
「ショウ!」
ショウ
「くっ……!」
「うぅっ……!」
チャム
「熱いよ……!」
ショウ
「うっ、この……!」
「見えた!」
「ジェリル!」
マーベル
「ショウ、やったの……?」
エレ
「悪意をも拡大するオーラ・マシン……人は……」
司令官
「ジェリル・クチビが、ジャンヌ・ダルクとは思えん……」
「戦闘機隊に帰還命令を出せ」
軍人
「はっ!」
ショウ
「実体でもない、幻でもない。一体……」
チャム
「何……?」
ニー
「ショウ、大丈夫か? ショウ」
ショウ
「ゼラーナ」
ニー
「巨大なレプラカーンは、実際に……実際にあったのか……?」
ショウ
「よく分からないんだ。ただ、ジェリルはオーラ力を制御出来なくて死んでいった」
「自分一人でな」
ニー
「そうすると、俺達だって自分のオーラ力を制御為損なえば……」
キーン
「自滅が待ってるのね」
ショウ
「憎しみと怒りと奢りの心が、オーラ力を異常に増大させてしまうんだ」
チャム
「ねえショウ、ショウもあんなになっちゃうの?」
ショウ
「俺も例外じゃないさ」
チャム
「嫌よ! ショウ、あんなにならないで!」
ショウ
「大丈夫さ。チャム、俺は制御してみせる」