第38話 時限爆弾

前回のあらすじ
バイストン・ウェルに、オーラ・マシンによる喧騒が拡大していった時、
世界が、それを排除しようとして働くのもまた、理である。
オーラ・マシンを操る人々は、バイストン・ウェルに於いて悪しき者なのかもしれない。
地上軍を味方にしたジェリルは、その巨大化したオーラ力によって、ショウ、マーベルを圧倒した。
しかし、ショウを中心としたオーラ力は、そのジェリルをも撃破した。
マーベル
「幻覚でなく、オーラの力の成さしめた業というのなら……」
「そうか、あれはバリアの変形した物かもしれない。ならば全ての説明が付く」
「それをどうコントロールすれば……」
ショウ
「マーベルが座禅を……」
ショウ
「じゃ、ダンバインは使えるな?」
ドルプル
「ああしかし、スペアはもう一回分しかない」
ショウ
「マーベルに言っとく」
ニー
「マーベルは?」
ショウ
「座禅をやってる」
エレ
「赤いオーラ・バトラーの巨大化現象が何を意味するのか、私にも分かりません」
「シーラ様と会議を急ぎ、この件も解明したいと考えます」
ニー
「ショウ、直ぐにグラン・ガランの下へ行く」
ショウ
「全艦でか?」
エレ
「ゲア・ガリングが近くに居ます。ゴラオンはそれを牽制します」
ニー
「ゼラーナが先行するんだ」
ショウ
「しかし、大丈夫でしょうか?」
「戦力を分けると、ゲア・ガリング隊にゴラオンが狙われます」
エレ
「ショウ、このゴラオンの力を侮らないでください」
キーン
「マーベル、随分落ち込んでるみたいだけれど……」
ショウ
「疲れているだけさ。大丈夫」
エレ
「マーベルさんは修行を行っていると思えます。大丈夫ですよ」
ラナ
「戦艦ゴラオンは、カスピ海と黒海の間ですね」
ビショット
「ナの国のグラン・ガランはここか?」
ラナ
「はい。キエフ島北東千五百メートルです」
ビショット
「大した物だな」
ラナ
「恐れ入ります」
ビショット
「ドレイク殿とは連絡取れるようになるかな?」
フレデリック
「はい。人工衛星の別回線の盗聴は可能です」
ラナ
「時間は掛かりますが……」
ビショット
「しかしドレイク殿は、ワシントンとやらに居るのならば……」
ゼット
「私にやらせて頂きたい」
ビショット
「グラン・ガランを叩くというのか?」
ゼット
「申し訳ありません。黒騎士めが意外と脆かったので、代わりに私が」
ラナ
「フレディ……」
ビショット
「ガラバの性能であろう」
フレデリック
「……何だよ?」
ラナ
「我が社の製品を売り込むのはいいけど、まだあの連中、何者か分からないのよ?」
フレデリック
「何言ってんだよ。インド支社のチャーリーがやったんで、悔しがって売り込みかけたの、お前じゃないか」
ラナ
「私は、バイストン・ウェルの人間を知りたかったから……」
フレデリック
「てやんでぇ。代理戦争を連中にやらせりゃIBNが儲かるって言ったの、ラナだぜ?」
ラナ
「ふん、それも真理でしょ」
ビショット
「……出撃の条件はある。ブブリィの最終テストを、この戦いの後にやる事」
ゼット
「はっ! オーラ・バトラー隊の指揮を任せて頂ければ、必ず」
ラナ
「……あのゼット・ライトってのは、アメリカ国籍なんでしょ?」
フレデリック
「ああ」
シーラ
「各戦艦の出動態勢は、後どのくらいで整いますか?」
ナの将校
「はい。地上の時間で一時間程と思われます」
シーラ
「一時間……」
ナの将校
「地上人がどのような条件を持ち出してくるか分かりませんが……」
シーラ
「余分な事は考えるな」
ナの将校
「はっ!」
ベル
「あ、怖いよ〜敵が来る!」
エル
「攻めてきたんじゃないのよ? 話し合いに来たのよ?」
ベル
「だから怖いんじゃない。地上人はずるい人が一杯居るわ」
シーラ
「さ、二人共あっちへ行って」
ナの将校
「何だ、その箱は?」
ニジェンスキー
「私共は、貴方がたと友好を結びたいのです。これはそのほんの気持ちです」
「我が郷土の誇る民芸品、衣装棚です」
ナの将校
「中を改めさせてもらおう」
「ううむ……」
ニジェンスキー
「女王様に打って付けと思いますが?」
ドワ
「敵機接近、かなりの数だ」
ニー
「どこから来た? ゲア・ガリングからか?」
キーン
「ビショット軍の前衛部隊なの?」
ニー
「どうやら敵は、ハイ・レベルのレーダーを手に入れたようだな」
「敵機接近、攻撃態勢に入れ」
ショウ
「マーベル、先走るな。俺の後に付け」
「マーベル……あのジェリルの事で焦ってるな」
「置いてくぞ」
チャム
「ごめ〜ん」
「着るのが難しい服なんか戦闘服じゃないわ、もう!」
キーン
「一緒に出なきゃ駄目じゃない。バラバラでどうなるの?」
マーベル
「ジェリルに出来る事なら……」
「はっ、来た……!」
ゼット
「ダンバイン1機かよ、見縊られたもんだ。ビルバインはどうした?」
マーベル
「はっ……!」
「あぁっ!」
チャム
「マーベルが捕まってる!」
ショウ
「先に出るから……!」
ゼット
「ビルバインか!」
ショウ
「ビアレスか!」
「むっ……!」
クの兵士
「ぬっ……!」
マーベル
「今度こそ!」
キーン
「マーベルどうしたの? もっと連携して戦わないと……はっ!」
ゼット
「この程度の戦力はもう抜ける筈だ。行くぜ!」
「今日の俺は一味違うぞ」
ショウ
「こいつらも力を付けてる!」
キーン
「何やってんのよマーベル、気を付けてよ!」
マーベル
「ごめん、キーン」
「あぁっ、どうしたっていうの……?」
「はっ……!」
クの兵士
「うわぁぁっ!」
「ゼット様!」
ゼット
「ええい、意気地なしが! これしきの戦力を叩けなくてどうする!」
チャム
「ショウ、ダンバインが……!」
ショウ
「何?」
チャム
「マーベル、どうしたのよ?」
民間人
「わぁぁっ!」
ゼット
「ダンバインめ!」
マーベル
「あぁっ……!」
ショウ
「マーベルは無事か?」
チャム
「きゃっ……!」
マーベル
「あっ……!」
「これしきの事で、私だって……!」
「はぁっ……!」
「今の敵は違う……ジェリルじゃない!」
ベル
「何さ何さ、何さ!」
エル
「ベル、おやめよ」
ベル
「あんな奴、べ〜っと!」
エル
「ほら」
ニジェンスキー
「……分かりませんな。私共は、貴方がたを正統に受け入れようというのですよ?」
シーラ
「でも、私共がお国のご厄介になれば、ドレイク軍が貴方がたの国へ攻めて参りましょう」
ニジェンスキー
「いや何れは、ドレイク軍と戦わねばならぬ運命にあるというのならば、我々は共に戦いましょう」
シーラ
「そうまで仰ってくださるのならば、軍の包囲網を解いてください」
ベル
「そうそう、そうだ!」
ニジェンスキー
「不愉快ですな、あの蝶々は」
シーラ
「ミ・フェラリオとは、ああいったものです。お許しくださいませ」
「お話を戻します。お国の軍の包囲を解いてくださいませ」
ニジェンスキー
「何故、我々の協力を断るのですか? 女王」
ベル
「攻撃しちゃ敵わないからって……!」
エル
「今度は話し合いでしょ?」
ベル
「そう……あっ!」
エル
「ベル」
ニジェンスキー
「どうも不愉快極まりないですな……」
シーラ
「ミ・フェラリオと言えども、多少の話は分かるものです」
「貴方がたは友好と言いながら、戦車と飛行機で取り囲んで信じろという方が無理ではありませんか?」
ニジェンスキー
「分かりました、包囲網は解きましょう。しかし即刻この地を退去して頂きたい」
「この衣装棚は我が国の誇る民芸品です。これだけでも置いていきます」
「まだまだ話し合う用意があるという、我が国の気持ちです」
シーラ
「有難う……ドレイク軍を倒した後、またお会い出来る事を望みます」
ニジェンスキー
「はい、シーラ・ラパーナ女王様」
ショウ
「マーベル、どうしたんだ? 応答しろ、マーベル」
チャム
「ショウ、来るよ!」
ショウ
「マーベル、このままでは敵は倒せないんだぞ」
マーベル
「分かってるわよそんな事。もしも、みんながジェリルのようになったら……」
ゼット
「まだ抵抗するのかよ!」
「逃げる!」
ショウ
「マーベル、このままグラン・ガランまで前進する」
マーベル
「了解」
ショウ
「行くよ」
ゼット
「ええい、後続は何をしてるんだ?」
軍人
「やり手の秘書官ニジェンスキー殿でも、ちと無理ではないかい?」
 〃
「よく考えるぜ、あんな大きい物を無傷で手に入れようなんて」
 〃
「おい」
 〃
「攻撃命令が出たのか?」
 〃
「ニジェンスキーがあの馬鹿でかい中へ、時限装置付きの核を持ち込んだんだとよ」
 〃
「えっ!」
 〃
「キエフの近くで爆発させる気なのか?」
軍人
「何だって? カスピ海上の艦隊は動いているだって?」
 〃
「間違いありません。合同本部も確認したようです」
「ニジェンスキー閣下を早く収容しろ」
 〃
「来た」
 〃
「ん?」
 〃
「我が国の空軍じゃないぞ、こりゃ……」
「敵味方の識別コードを出してない奴だ」
「閣下は?」
 〃
「今上がられます」
ニジェンスキー
「急いでこのタワーから離れろ」
シーラ
「疑いたくはないが……」
エル
「私は好きになれないわ」
ベル
「嫌いだ、あんなの嫌いだ、あんなの!」
チャム
「ぷはっ、あつ〜い!」
ショウ
「キーンとゼラーナは大丈夫だろうな?」
マーベル
「グリムリーが2隻付いているし、まさか、あれ以上の戦力は出してこないでしょう」
ショウ
「そうだな……」
チャム
「そんな事言ったって……」
ショウ
「何か言ったか?」
チャム
「チームを組んで出れば、敵の先鋒は討てたわよ」
ショウ
「マーベルだって必死でやってるんだ。少しは認めてやんなくちゃ」
チャム
「甘い、甘い!」
マーベル
「チャムにそう言われても仕方ないわ。ごめんなさいね」
「ん?」
「ショウ!」
ショウ
「あんなのは知らないぞ」
チャム
「何? オーラ・シップ?」
マーベル
「違うわ。あれも、オーラ・バトラーみたいな戦闘用のマシンよ」
ショウ、マーベル
「はっ……!」
ゼット
「ははっ、ブブリィのテスト飛行を兼ねてやらせてもらうぜ!」
ショウ
「前後左右、自由自在なのか!」
マーベル
「大きく挟み撃ちにしましょう」
ショウ
「了解」
マーベル
「爪が……!」
ショウ
「マーベル、動きが遅いぞ。そんな事じゃ……!」
「消えた……」
チャム
「どこ?」
ショウ
「あそこ!」
「マーベル!」
マーベル
「私にも力を……」
ジェリル
回想:「ははっ、ははっ……!」
マーベル
「はっ……!」
ゼット
「斬ったのか?」
「爪の一つや二つやられたからといって、機動性が失われた訳ではない」
軍人
「オーラ・バトラー同士が空中戦をやっているという事です」
ニジェンスキー
「シーラ・ラパーナの敵が現れたというのか?」
軍人
「はっ!」
ニジェンスキー
「好都合だな」
「シーラの艦が沈むのを連中が見れば、オーラ・バトラーとかオーラ・シップは我が国に降伏するだろう」
「そうすれば、あの技術は全て我々の物になる」
軍人
「しかし、キエフの近くで核を爆発させるなぞ、例え小型の物でも……」
ニジェンスキー
「ゴラオンとかを攻撃した時、バリアが掛かったという報告が入っている」
「となれば艦内で爆発すれば、外に被害は出んという事だ」
軍人
「閣下、自分の姉はキエフに嫁いでいるんです」
ニジェンスキー
「大丈夫さ。尤も、それ程オーラ・シップという奴は強力なのだがな」
シーラ
「ダンバインにビルバインが来ているというのか?」
ナの兵士
「一機の敵に苦戦中です」
エル
「あはっ、ショウらしいや!」
ベル
「ショウ、チャム!」
シーラ
「苦戦中……?」
ゼット
「忙しない奴だ、ショウ!」
ショウ
「わっ……!」
チャム
「逃げちゃう〜!」
ゼット
「オーラ・バトラー隊は、ビルバインとダンバインを追い掛けろ」
「俺はブブリィの整備の為に、ゲア・ガリングに戻る」
マーベル
「逃がしたの?」
ショウ
「撃退したと言って欲しいな」
「大丈夫か、ダンバインの機体は?」
マーベル
「有難う。邪念があるとすぐ捕まってしまうわ、ごめんなさい」
ショウ
「地上軍だ」
マーベル
「え?」
ショウ
「攻撃の意思はなさそうだな」
マーベル
「グラン・ガランまで、一気に飛びましょう」
ショウ
「了解」
ベル
「あはっ、来た来た!」
エル
「シーラ様、来ましたよ! 来ました!」
シーラ
「分かっています。私にだって見えていますよ」
チャム
「エル〜!」
エル
「チャム〜!」
ベル
「チャム〜!」
シーラ
「よく来てくれました。ショウ・ザマ、マーベル・フローズン」
マーベル
「シーラ様、お変わりなく」
ショウ
「地上軍に包囲されていると思っていましたが……後退してしまったようですね」
シーラ
「先程、最後の会談が終わりました。それで、私達も直ぐここを離れねばなりません」
ショウ
「条件は?」
シーラ
「何も……」
ショウ
「どう思う、マーベル?」
マーベル
「さあ、この国の事は分からないわ。怖がって包囲していただけかもしれないでしょ?」
シーラ
「確かに、私も使者が戻った後、攻撃してくるものと思えましたが……」
ショウ
「何かが引っ掛かるな……」
ナの兵士
「オーラ・バトラー隊、キャッチ。地上軍ではありません」
ショウ
「さっきの部隊か」
「俺は出る。マーベルはシーラ様を」
マーベル
「ええ」
ベル
「えへへ……」
エル
「ほらね、時計の音みたいのがするでしょ?」
チャム
「うん。だってさ、これ衣装棚でしょ? 時計か何かが置いてあるのよ」
ナの兵士
「オーラ・バトラー隊、出撃用意」
ショウ
「チャムは? ちっ……!」
マーベル
「私には何も聞こえないわよ、チャム。時計の音がするの?」
チャム
「ふふっ、地上人には聞こえないのかな?」
マーベル
「これは……」
シーラ
「交渉団の持ってきた民芸品です。和平の証にと……」
チャム
「これは鳩時計で〜す」
ベル
「違います、目覚まし時計です」
エル
「これは、私のドレスを入れる物です」
ベル
「私、時計の方がいいもん」
チャム
「でもさ、こんな大きいの要らないよ」
マーベル
「はっ、これは……超小型の核? まさか……!」
「こんな薄型の物があるなんて……」
チャム
「どうしたの、マーベル?」
マーベル
「爆弾よ」
チャム
「え?」
マーベル
「シーラ様、男の人にこの衣装棚を格納庫まで運ばせてください」
「ダンバインで外に運びます」
シーラ
「運び出す物がある」
ショウ
「何? 核が運び込まれていた?」
マーベル
「間違いないわ。マークが入っていたもの」
ニジェンスキー
「そろそろ時間だな」
ナの兵士
「急げ!」
マーベル
「間に合うか、人の居ない所まで……!」
シーラ
「マーベル、早く爆弾を放しなさい!」
軍人
「閣下、時間になります」
ニジェンスキー
「そうだな……」
「ん、さっき行ったオーラ・バトラーだ」
「上空に敵が現れたのか?」
ショウ
「マーベル、いいのか時間は?」
マーベル
「分からないけど、ここじゃまだ駄目……もう一息頑張ってみる!」
ニジェンスキー
「はっ、何だ……?」
シーラ
「マーベル、もういい! 早く放しなさい!」
ニジェンスキー
「うっ……!」
エル、ベル
「きゃっ……!」
ショウ
「マーベル……!」
「ダンバインが……」
「ダンバインが、無事か……?」
ショウ
「マーベル、マーベル……生きてるのか?」
マーベル
「うっ……」
ショウ
「マーベル! 聞こえるのか、マーベル!」
マーベル
「グラン・ガランは……」
ショウ
「大丈夫、無事だ」
マーベル
「そう……良かった……」
ベル
「やったやった!」
エル
「マーベルさ〜ん!」
チャム
「マーベル、大丈夫?」
シーラ
「マーベル、よくやってくれました」
マーベル
「良かった……私にも、バリアが働いたんだわ……」