第41話 ヨーロッパ戦線

前回のあらすじ
機械というものが、人の心を揺さぶるのかもしれない。
バイストン・ウェルは、地上からは決して覗けない、パラレル・ワールドなのだろうか……。
シーラ
「こちらの揺さぶり作戦は、裏目に出てしまった……」
「敵の抵抗もあった……グラン・ガランが遅かったという事もあった……」
「何よりも、ショウ・ザマ……。彼が何故に……」
「ハイパー・ジェリルか……彼女のオーラ力が、この地方に残る……」
「誰か?」
ナの兵士
「チャーリー・カミングス様です」
シーラ
「ご苦労です、チャーリー・カミングス」
チャーリー
「申し訳ありません。私のした事が、結果的にはシーラ様のお心を痛めてしまいました」
シーラ
「私の判断の甘さです。地上人の貴方が気に病む事はありません」
チャーリー
「有難う御座います」
シーラ
「ところで、お願いしていたイギリスの王室との連絡は取れましたか?」
チャーリー
「はい。女王直々、お会いくださるというご返事です」
シーラ
「時間と場所を決めてください。私が出向きます」
チャーリー
「はい」
ショウ
「俺だって、パリがどういう性格の都市か知ってるつもりだ」
マーベル
「もうおやめなさい。誰も慰めてくれないわ」
ショウ
「俺がオーラ力をコントロール出来なかったからって……」
キーン
「でも、地上人は文化とか歴史を大事にするようだけど、結局は戦争をやめられなかった人なんでしょ?」
ショウ
「日本はこの四十年間、戦争なんてやってないよ」
ニー
「そんなに苛々するのなら、ゲア・ガリングの一つでも落とす事を考えるんだな」
「お?」
「オーラ・マシンだ。このスピードと動き方……」
マーベル
「敵?」
ニー
「多分そうだ。こちらの識別暗号に応えない」
「出てくれ」
マーベル
「ええ」
キーン
「はい」
ショウ
「分かった」
ニー
「総員、戦闘態勢だ」
「チャム」
チャム
「何?」
ニー
「ショウもマーベルも、疲れて神経質になっている。上手に相手をしてやってくれ」
チャム
「分かってる」
ミュージィ
「ジャバ様、ゼラーナの反応です。戦闘態勢宜しいですか?」
ジャバ
「ミュージィさんよ、俺に敬語なんて不要だぜ」
ミュージィ
「貴方様は、ショット様の幼馴染でいらっしゃいます。それでは失礼になります」
ジャバ
「ショットが戻ってきてくれなけりゃ、今頃は、アフリカの外人部隊辺りで燻ってたんだがな」
「気にするな……、ん?」
「あれか。離脱するぞ」
マーベル
「ショウ、数が多いわ」
ショウ
「ゼラーナに奴らを近付けさせるな」
マーベル
「うっ、うぅっ……!」
「はっ……!」
ショウ
「うっ……!」
チャム
「ちょっと、戦い方が荒すぎるわよ?」
ショウ
「分かってる」
ジャバ
「うぉっ……!」
ゼラーナのクルー
「うわぁぁっ!」
ニー
「ショウ、マーベル! ゼラーナに取り付かれた!」
キーン
「一機一機、潰すしかないわ! こちらがやられる前にね!」
「はっ、ゼラーナ後ろ……!」
「よくも!」
マーベル
「やっとドラムロを一機……!」
ミュージィ
「貰った!」
マーベル
「このオーラ・バトラー……!」
ミュージィ
「これでダンバインはお仕舞いさ、うっ……!」
ショウ
「どうしたマーベル、一方的じゃないか!」
マーベル
「ショウ!」
「はっ……!」
チャム
「マーベル、上!」
ジャバ
「何だ? 仕掛けてないのに落ちているぞ」
チャム
「ショウ、バリアが落ちてるみたいよ?」
ショウ
「馬鹿な……敵のオーラ力だけがアップするのか?」
ジャバ
「へへっ! これなら俺にだってやれるぜ!」
ショウ
「これじゃ……!」
チャム
「前を見て! 目を瞑っちゃ駄目!」
ショウ
「あっ……!」
チャム
「居た!」
ジャバ
「野郎、こんな接近戦で撃ちやがって……!」
「しまった!」
ショウ
「片腕が……!」
チャム
「大丈夫、やれるわ!」
ショウ
「この……!」
「チャム、マーベル」
チャム
「どうしたのマーベル、もっと意識を集中して!」
ミュージィ
「落ちろというのに!」
マーベル
「このズワァース……!」
ショウ
「俺も失敗したんだ。怒るだけじゃ駄目だ」
チャム
「マーベルがいつも言ってるでしょ? 憎しみだけでは……」
ショウ
「パリだって燃やしてしまうんだ」
チャム
「ズワァースを操る人の……」
マーベル
「……隙だけを突けばいいの?」
ミュージィ
「か、勝てる筈なのに……」
マーベル
「まだ!」
ミュージィ
「止めは……、ん?」
「このオーラ係数の大きさは、グラン・ガラン」
マーベル
「はっ……!」
ミュージィ
「各機に告ぐ。攻撃はこれまでだ。スプリガンへ帰還する」
キーン
「逃げるの?」
ミュージィ
「ジャバ様、退いてください。敵の本隊が来ます」
ジャバ
「しかし……!」
ミュージィ
「命令を聞かねば、見殺しにします」
ジャバ
「分かったよ」
ショウ
「言ってくれた……」
チャム
「あのオーラ・バトラー隊は、今までのものとは違うわ」
ショウ
「ああ」
「マーベル、キーン、大丈夫か? 損傷は?」
マーベル
「有難う、キャノピーをちょっとね……」
キーン
「こちらは何とか……」
マーベル
「でも、チャム、ショウ。戦闘中に私の事まで心配してくれなくても良かったのに」
チャム
「何言ってんの?」
ショウ
「今日のチャムは、パワフル・フェラリオなんだよ。な?」
チャム
「えへっ」
ニー
「グラン・ガランと接触する。各員用意」
アの兵士
「ミュージィ隊が戻った! 整備兵!」
 〃
「ジャバ様、スプリガンのブリッジで、ショット様がお待ちです」
ジャバ
「分かった。俺のライネックの修理をしてくれ」
アの兵士
「ショット様、ゲア・ガリングからの通信、如何致しましょう?」
ショット
「そのままにしておけ」
ジャバ
「ショット! ミュージィは、俺にビルバインを討たせなかった! どういうんだ?」
ショット
「彼女のキャリアを信じるんだな」
ジャバ
「後一息で倒せたんだ!」
ショット
「黒海上空にあるゲア・ガリングから、合流したいと言ってきた」
ジャバ
「話を逸らすな!」
ショット
「ジャバ」
ジャバ
「言ってみな」
ショット
「今のお前とミュージィの出撃で、我々が近くに居るのが、ゲア・ガリングに分かった」
ジャバ
「それで?」
ショット
「ビショットやドレイク達を従わせた上で、アメリカという大国を俺に従わせたいのさ」
「ジャバ、俺はお前と出会った、あのオーストラリアの乾いた大地が大嫌いだった」
「アメリカから逃げ出した両親に連れられて、あんな所へ行かされて」
「俺達は学校にも行けずに、時代錯誤の労働をさせられた」
「あんな目に遭わなけりゃ、俺もお前も、またアメリカに戻ったりはしなかった」
「俺は、あの惨めな生活をさせたアメリカって奴に、心底腹を立てている」
ジャバ
「ふん……」
ショット
「その為には、ビショットもドレイクも私が躍らせて……」
ジャバ
「その上で、アメリカに戻るってのか」
ショット
「ああ」
チャーリー
「女王陛下です」
シーラ
「バイストン・ウェル、ナの国の女王、シーラ・ラパーナでございます」
英国女王
「私は、バイストン・ウェルの存在を信じる事は出来ません」
「けれども、この地球上のどこの皇族にも含まれない、ラパーナ家の方がここにいらっしゃる」
「さて……」
「貴方がたの作戦、黒海にゲア・ガリングを引き寄せ落とすというものは、了解します」
「それによって、第二のパリは避けられるというのですね?」
シーラ
「はい」
英国女王
「私から、ヨーロッパ各国のトップに統一戦線を張れという要請は、出来ません」
シーラ
「この地上では、王家の権限がないという事は、存じております」
英国女王
「シーラ・ラパーナ」
シーラ
「はい」
英国女王
「それを承知で、何故、私に会いにいらっしゃったのでしょう?」
シーラ
「尊き道を目指す者こそ、人の心を打つものだと重んじたからです」
「政治家、軍人に任せて、時間を掛ける訳には参らないと判断しました」
英国女王
「シーラ様は、王道の事を言っていると理解します。何とかやってみましょう」
シーラ
「有難う御座います、女王陛下」
ニー
「幾つもの太陽が昇ったら、ゲア・ガリングに突入しろ……?」
ドワ
「ああ、ゴラオンは北極圏まで後退している。ゲア・ガリングはそれを狙っているんだ」
ニー
「しかし、幾つもの太陽というのは分からないな。何だろう?」
エイブ
「幾つもの太陽が上がった瞬間に、総攻撃を掛けろという命令です」
エレ
「幾つもの太陽というのが気になります」
エイブ
「しかし、シーラ様の事です。ここで決戦と決心なさった事が分かります」
エレ
「確かにこんな寒い所で、兵達を消耗させる訳には参りませんからね……やりましょう」
ビショット
「ショットはどうしたのだ?」
クの兵士
「督促はさせておりますが、スプリガンが一向に……」
ビショット
「動かんからいいという事はない」
「よーし、グラン・ガランに対して、進路を変更しろ」
軍人
「発射したらここを退避しろって? 何故だい?」
 〃
「馬鹿言うな、パリを威された報復はするんだよ」
軍人
「任意にゲア・ガリングを攻撃すればいいのだな? アメリカには何て言うんだ?」
「分かった。俺だってジョンブルだぜ」
 〃
「総員!」
ショット
「本当に観戦するだけだぞ」
ミュージィ
「ジャバ様、お供致しましょう」
ジャバ
「いやいい。俺はまだ、オーラ・マシンの戦隊というのを見た事はないんだ。行かせてくれ」
ショット
「我々には大きな望みがあるんだ。忘れないでくれよ」
ジャバ
「ああ」
エル
「ねえね、カワッセ。シーラ様が戦いの支度してるよ? 凄い戦争するの?」
ベル
「エル、一人で行かないでよ。シーラ様が隠れろって」
カワッセ
「そうしなさい」
エル
「ん、太り過ぎなのよ」
カワッセ
「各オーラ・バトラー隊、用意はいいか」
エレ
「この作戦で、私達と地上人は深い関係を持てるでしょう。けれど……」
エイブ
「エレ様、時には事態の進展に任せる事も必要と考えます」
司令官
「ミサイル発射後、敵のオーラ・バトラーの攻撃に対して、第一警戒配置に切り替える」
軍人
「ゲア・ガリングへ……」
 〃
「ファイヤ!」
ビショット
「どうした? スクリーンが乱れておるぞ。コンピュータをちゃんと操作させろ」
クの兵士
「ミサイルです!」
ビショット
「むっ……撃ち落とせ!」
「こ、これは何だ? 唯のミサイルなのか? フレイ・ボムなのか?」
クの兵士
「分かりません! 特殊なミサイルかと思われます!」
ビショット
「くっ……持つのか? こんなものの直撃を受けて……」
ドワ
「太陽だ……」
ニー
「夜の太陽……幾つもの太陽……」
ショウ
「あれか? イギリスの女王に協力を頼んだっていうのは」
マーベル
「その隙に、ゲア・ガリングに接近するの?」
ショウ
「シーラ・ラパーナが、ヨーロッパ各国にあそこまで踏み切らせたって事は……」
キーン
「シーラ様は必死の覚悟じゃなくって? パリの事もあるし」
マーベル
「そうね……」
チャム
「ショウ、ボヤボヤ出来ないよ?」
ショウ
「分かってるよ」
カワッセ
「太陽が上がりました!」
シーラ
「全艦、この間にゲア・ガリングに再接近! オーラ・バトラーの白兵戦を掛ける!」
カワッセ
「直進します!」
エル
「すっご〜い」
ベル
「怖い爆弾」
シーラ
「艦隊戦用意。同時に、オーラ・バトラー隊を発進させよ」
クの兵士
「バリアがあるんだ! 恐れずに敵を警戒しろ!」
「あっ、グラン・ガランだ! いつの間に……!」
ビショット
「何だと? グラン・ガランがこんな所に……」
「おのれ、まんまと策に嵌めよって……ミサイル攻撃に隠れて接近してきよった!」
クの兵士
「ビショット様、ゴラオンです! 後方からゴラオンが接近してきます!」
ビショット
「何?」
「女狐共が……これで私を出し抜いたと思ってか!」
「ブルベガー隊は後方を固めよ! オーラ・バトラー隊、発進!」
エレ
「この機を逃さず、接近戦で一気に落とす!」
「各機発進!」
シーラ
「オーラ・バトラー隊、発進! ゲア・ガリングのオーラ・バトラー隊を寄せ付けるな!」
ジャバ
「成程、この物量戦は大したもんだぜ」
マーベル
「ブルベガー隊を叩きます。各機連携を願います」
エイブ
「ブリッジ周辺の防御火線が弱いぞ!」
「うっ、オーラ・バトラーが……!」
エレ
「あのオーラ・バトラー!」
「そうか、バリアを破る為には最接近するだけでいい……」
チャム
「やった!」
ショウ
「次は?」
「バリア破りだと?」
「奴か!」
ジャバ
「何だ?」
ショウ
「お前か!」
ジャバ
「ショウ・ザマ、二度目はないぞ!」
「あそこか!」
ショウ
「ゴラオンから離れてもらう!」
「あっ!」
チャム
「近いのに!」
ジャバ
「何?」
ショウ
「貰った!」
ジャバ
「うぅ、ドン底から這い上がってきた俺が、簡単に落ちるか!」
ショウ
「こ、こいつ……!」
チャム
「ショウ!」
ショウ
「な、何だ、この強さ……!」
ジャバ
「ははっ……!」
ショウ
「ん?」
シーラ
「ブリッジへ集中しろ!」
ベル
「うわ〜!」
エル
「シーラ様、オーラ・バトラー!」
ジャバ
「ブリッジか。今度は剣は使わんぜ!」
カワッセ
「女王、伏せて!」
ベル
「シーラ様〜!」
エル
「シーラ様〜!」
「きゃぁぁっ!」
エレ
「シーラ・ラパーナ……!」
マーベル
「シーラ様!」
ショウ
「奴め……!」
ビショット
「グラン・ガランが崩れた! 全速前進せよ!」
エレ
「エイブ、ゴラオンをグラン・ガランの下へ回らせなさい!」
「グラン・ガランへ! 操縦系を全て、サブ・ブリッジへ切り替えよ!」
ショウ
「くそっ!」
「落ちろ!」
ジャバ
「何?」
「モニターぐらいで、そう簡単には行かんぞ!」
「こんな接近で、バリアが出るのか?」
「うわっ、このオーラ・バトラー……!」
ショット
回想:「くれぐれも観戦だけだぞ、ジャバ」
ジャバ
「ちょ、ちょっとばっかり調子に乗った……」
チャム
「やった〜!」
ショウ
「地上人らしい異分子が入ると……!」
ニー
「ショウ、後退だ! シーラ王女がブリッジの爆発にやられたらしい!」
ショウ
「なっ、命は……?」
ニー
「分からん! グラン・ガランを中心に集結しろ!」
ショウ
「くっ、俺が遅いばっかりにこれだ……!」
「こんな事をやってると、俺は……!」
カワッセ
「メイン・ブリッジは放棄する」
「救護班、急げ! シーラ様のお手当てを!」
ベル
「あ〜ん!」
エル
「うぅっ、シーラ様……!」
シーラ
「女王陛下、申し訳ありません……」
ビショット
「オーラ・バトラー隊は収容して修理を急げ! ブルベガーは後方に回らせろ!」
「ゲア・ガリングの被害状況を報告せよ!」
ショット
「オーストラリアで再会したばかりだというのに、馬鹿な男め……」
ミュージィ
「私が付いていれば……」
ショット
「言うなよ、ミュージィ」
「ゼットの奴も、ゲア・ガリングでブブリィを完成させているだろう」
「ビショットの土下座を待ってる訳には行かなくなったようだ」
ミュージィ
「はい」