第45話 ビヨン・ザ・トッド

前回のあらすじ
機械というものが、人の心を揺さぶるのかもしれない。
バイストン・ウェルは、地上からは決して覗けない、パラレル・ワールドなのだろうか……。
キーン
「あれが航空母艦っていうの?」
マーベル
「ええ。アメリカのカール・ビンソンよ」
ショウ
「ホワイト・ハウスは、ドレイクに人質に取られたままだっていうのに」
ニー
「我々に協力をしていいのかな?」
ドワ
「俺は知らないぜ」
軍人
「間違いない、我々のゲストだ」
ショウ
「今は、ゼラーナを修理出来る場所と、少しでも多くの戦力が必要なんだ」
ニー
「分かってるさ。でも、ドレイクの居るアメリカから来た軍艦というのがな……」
マーベル
「ニー」
ニー
「注意するに越した事はない」
「これより着艦する」
マーベル
「艦長に探りを入れてみるわね」
ニー
「頼む」
スコット
「カール・ビンソンへの旅は、如何でしたかな?」
マーベル
「とても快適でした……と言いたいのですが、ゼラーナはご覧の通りです」
ショウ
「宜しいのですか、我々に協力をして?」
スコット
「現在の我々は反乱軍です。アメリカ軍ではない」
マーベル
「でも、海軍が反乱を起こした事を知れば、ドレイクはワシントンを火の海にするかもしれませんよ?」
スコット
「そうだな。そうなれば益々我々は、ドレイク軍に一糸報いねばならない」
「その為にも、祖国は捨てたのだ」
マーベル
「了解です。甘えさせて頂きます」
スコット
「協力してくれるな、座間祥?」
ショウ
「ええ、勿論」
軍人
「ヘイ、フェラリーだ。チャム……チャム・ファウ?」
チャム
「違うって……フェラリオよ!」
軍人
「見ろ、フェラリーだぜ」
チャム
「私は、フェラリオのチャム・ファウっていうの!」
軍人
「ははっ……!」
ニー
「……ドレイク軍に脅されて、俺達に接近してきたと思ったが……考え過ぎのようだな」
キーン
「そうね、信用出来そうじゃない?」
ニー
「ああ」
キーン
「敵……?」
ニー
「いや違う、あれはフォウだ」
ナン
「ニー・ギブン殿は、何れに居られる?」
スコット
「グラン・ガランは如何ですかな?」
ナン
「地上、各国の協力を得て、応急修理中であります」
ニー
「ナン・ジョー。閣下の報告では、ドレイク軍、ビショット軍も連合作戦の動きがあるとか?」
スコット
「でしょうな……シーラ・ラパーナ女王のお考えも、お聞かせ頂こうか」
ナン
「はい」
トッド
「おい、まだ終わらんのか?」
「頼むぜ。やりようでは、ダンバインもビルバインも落とせるんだからな」
整備兵
「はっ!」
トッド
「そうさ……ここで軍功を挙げ、ドレイクを黙らさなければ、いつかボストンだって火の海だ」
「見てな、ママ」
アの兵士
「トッド様」
トッド
「何か?」
アの兵士
「ドレイク様がお呼びであります」
ドレイク
「信じ難いな……」
ミュージィ
「はっ……?」
ドレイク
「確かに、スプリガンが動かなかったというのか?」
ミュージィ
「は、はい。そもそも地上に出た時に、スプリガンは完成しておりませんでした」
ドレイク
「ううむ……」
ミュージィ
「私が先駆けて、ご報告と共にお詫びせよとの、ショット様の……」
トッド
「そのショット様の使いとはいえ、今更ノコノコと出て来られる筋か?」
ミュージィ
「トッド様」
トッド
「ウィル・ウィプスとゲア・ガリングは、連絡が取れるようになった」
「何故か、スプリガンとだけは連絡が取れなかった」
ミュージィ
「ショット様のご苦労も分からずに……!」
トッド
「ショットは地上人なんだぜ、ミュージィ? その男の一体……」
ドレイク
「トッド、良い」
トッド
「しかし、閣下……」
ドレイク
「今は、ショットの知能も必要な時なんだ」
「スプリガンと合流する前に、もう一度、アメリカの事を確認しておきたかった」
「アメリカは当てになるのかな?」
トッド
「迂闊な破壊は、アメリカ国民を怒らせ藪蛇です」
「煽ててアメリカの戦力を使っていけば、地上世界もドレイク様の物……」
ドレイク
「ううむ……」
「それが、バイストン・ウェルに居る、ルーザを黙らせる事にもなるか」
トッド
「ルーザ様……?」
ラウの兵士
「ゲア・ガリング、北北西に向かっている……ウィル・ウィプスと合流する気か」
「エレ様とエイブ艦長へ」
エレ
「ゲア・ガリングが動いた……」
エイブ
「エレ様、お待ちください」
エレ
「グラン・ガランは、ゴラオン以上の損傷を受けているのですよ?」
エイブ
「エレ様、単独行動はいけません。地上軍との協力作戦を取り付けつつあるんです。今、徒に動いては……」
エレ
「これ以上、地上人に迷惑を掛けたくありません」
「貴方は、バイストン・ウェルとしての人間の誇りをお忘れか?」
エイブ
「エレ様……」
エレ
「エイブ、オーラ・バトラーを先発させなさい。ゲア・ガリングの足を止めるのです」
エイブ
「はい」
「第一、第二、第三部隊、発進」
エレ
「ゲア・ガリングは、修復するのに時間が掛かる為に、ウィル・ウィプスとの接触を急いでいるのです」
「今なら、落とせるのです」
クの兵士
「何をしている?」
ラナ
「え?」
クの兵士
「こんな所に何の用だ?」
ラナ
「あ、あの、面白そうな物じゃない、これ?」
クの兵士
「待て! ビショット様に報告し……」
ラナ
「きゃっ……!」
ビショット
「ん、オーラ・バトラー隊を発進させろ」
クの兵士
「はっ!」
ビショット
「ゴラオンか、グラン・ガランからか」
「敵の位置の確認を急げ」
ラナ
「どうして動かないの、きゃっ……!」
黒騎士
「女の居る所ではない……行け」
エレ
「もっと急がせなさい。接近戦に持ち込むのです、体当たりしてでも」
「主砲、機銃座の攻撃を開始させなさい」
エイブ
「ですが、ここでは味方に当たる……」
エレ
「撃ちなさい」
エイブ
「はい」
「各砲座、攻撃開始!」
スコット
「何故だ! 作戦会議で協同歩調を取る約束をしたのに、何故、ゴラオン隊が先走ったのだ?」
ニー
「ゲア・ガリングをウィル・ウィプスと接近させ、一気に四方から攻撃を仕掛ける作戦が駄目になった……」
ショウ
「何か、エレ女王の事情があったと考えるしか……」
スコット
「馬鹿な……軍事行動は、一度決定した作戦は……!」
マーベル
「スコット艦長、気をお静めください」
スコット
「我々は、ドレイクと刺し違えの覚悟で、この戦いに臨んでいる」
マーベル
「動き出してしまったんです。艦長ならば、切り抜けられる筈です」
ショウ
「我々も出撃します。必ずこの借りは返します」
スコット
「戦闘は生き物だという話も認めるよ。やって貰おうか、ショウ・ザマ」
マーベル
「スコット艦長……」
ショウ
「はい」
エレ
「もっとゲア・ガリングに近付けないのですか?」
エイブ
「流石、ゲア・ガリングです。このまま正面からでは……」
エレ
「何としても、ゲア・ガリングの足を止めなくては、シーラ様に申し訳が立ちません」
ショウ
「ニー、俺とマーベルが先に出る。いいな?」
ニー
「了解だ」
「ドワ、出られるか?」
ドワ
「大丈夫だ」
ニー
「よし、出るぞ」
キーン
「フォウ、出ます」
ニー
「キーン、焦って突っ込むな。無理は禁物だ」
キーン
「分かってるわ。ダンバインとドッキングして、先に行きます」
ニー
「頼む」
ラウの兵士
「補給だ、急げ!」
軍人
「目標を捉えた! 攻撃を掛ける!」
ビショット
「ん、どこの攻撃だ、これは?」
エレ
「この爆発は、地上人の攻撃?」
トッド
「ミュージィ、あんたもここに居るからには、ちゃんと援護しろよ?」
ミュージィ
「ショット様のスプリガンも、直に参ります」
トッド
「こんな時にも、『ショット様、ショット様』……か?」
ミュージィ
「な、何を……無礼な!」
トッド
「おっと、早く行かんと、ゲア・ガリングが落とされるぜ?」
ミュージィ
「くっ……!」
トッド
「頑張りなよ?」
エレ
「地上人の攻撃がまた来ます。伏せなさい」
エイブ
「総員、伏せろ!」
ビショット
「地上人め、無駄な攻撃を……!」
エレ
「はっ……!」
エイブ
「もっと近付け! 攻撃が終わるまでに、ゲア・ガリングに接舷しろ! 白兵戦を掛けるぞ!」
エレ
「各員、武器の用意を急げ」
クの兵士
「わぁぁっ!」
ビショット
「地上人め……!」
ルーザ
「ビショット様、このままでは防戦一方ではありませんか」
ビショット
「もう少しで、ショットとウィル・ウィプスが来ます」
ビショット、ルーザ
「うぅっ……!」
エレ
「ゲア・ガリングのバリアが増大している。何故……」
ルーザ
「何故突っ込みません?」
ビショット
「バリアが強化しているように見えるが、この輝き……」
ルーザ
「気休めではありませんか。このまま攻撃され続ける不甲斐なさを恥じて……」
ビショット
「いや、確かにバリアは増大している。何故だ?」
ラウの兵士
「ん、援軍か?」
エレ
「ビルバイン……ショウ達が来てくれたのか」
ビショット
「ダンバインめ、どこから」
「ええい、黒騎士は何故出動せんのだ?」
クの兵士
「黒騎士殿」
黒騎士
「お呼びで御座いますか、陛下?」
ビショット
「何をしておるんだ、早く出動せんか」
黒騎士
「申し訳ありません、機械が整備不良の為、今暫くの猶予を」
ビショット
「急げよ」
黒騎士
「はっ!」
「……ふん、私は自分の判断で戦わせてもらう」
「むっ……!」
トッド
「ミュージィ、目標はビルバインとダンバインだ。雑魚には構うな」
ミュージィ
「私は、トッドの指揮下には入らん」
トッド
「勝手に動くと、ゲア・ガリングは持たないぜ?」
ショウ
「新手か」
チャム
「あそこよ、新手」
トッド
「ショウ!」
ショウ
「トッドか、貴様……!」
チャム
「性懲りもなく!」
ミュージィ
「ゲア・ガリングは落とさせない」
マーベル
「貴方、ミュージィ・ポー?」
キーン
「くっ、ぅっ……!」
ニー
「ドワ、ショウを援護してくれ。俺はゴラオンへ向かう」
ドワ
「了解だ」
「このっ!」
「おっ……!」
トッド
「邪魔なんだよ!」
ビショット
「オーラ・バトラー隊を、残らず発進させろ! 地上軍の戦闘……うっ!」
「地上人め……!」
ルーザ
「ビ、ビショット様……!」
ビショット
「ん、何……?」
「こ、後退しろ! 急げ! 後退だ!」
「エレめ、刺し違える気か?」
「そうか……ゴラオンを近付ける為に地上軍に攻撃をさせて、目晦ましに使ったのか」
エイブ
「総員、白兵戦に掛かるぞ」
ラウの兵士
「右舷より、戦艦らしきものが急速に接近!」
エイブ
「何?」
エレ
「あ、あれは……」
ショット
「ゴラオンの前へ出るぞ」
ラウの兵士
「うわっ!」
エレ
「悪しき者……!」
「エイブ、後退させなさい」
エイブ
「何ですと?」
エレ
「凶暴なものを感じるのです。早く」
エイブ
「はっ!」
「全速で後退!」
ドワ
「はっ、あれはショットの小型戦艦だ」
ショット
「エレ・ハンムか……久し振りに戦場で会うと、エレの勘の冴えには驚かされるな」
ビショット
「ショット・ウェポンのスプリガン……待ち兼ねたぞ。何故遅れたかは問うまい。しかし……」
ショット
「ビショット陛下、ウィル・ウィプスへの合流地点へお急ぎください。ここは私が阻止して見せましょう」
ビショット
「そうか……では、頼むぞ」
「進路をウィル・ウィプスへ」
エイブ
「ゲア・ガリングは逃げます。エレ様、何故後退をなされたのです?」
エレ
「悪意の力が迫っています。このゴラオンを巻き込む力です」
エイブ
「悪意の力……スプリガンからでありますか?」
エレ
「スプリガンによって強化されました。この戦場全体を覆う、悪意です」
ショウ
「ゲア・ガリングめ、逃げるのか?」
チャム
「ショウ、上から来る」
ショウ
「ん?」
「新手の一人だ!」
ミュージィ
「ショウ・ザマめ、まだ疲れを知らぬのか!」
「トッド、何をする?」
トッド
「ビルバインは俺が倒す。手を出すな」
ミュージィ
「トッド!」
トッド
「ミュージィは、スプリガンに戻れ! ショットが待っている!」
ミュージィ
「賢しいぞ、トッド!」
ショット
「トッドに任せろ」
ミュージィ
「ショット様……はい」
チャム
「ショウ、そんなに撃ったら弾切れになっちゃうよ」
ショウ
「分かってる」
チャム
「出た!」
ショウ
「わっ……!」
トッド
「ケリを付けるぜ、ショウ!」
「ダンバインか!」
マーベル
「下がりなさい、トッド!」
ショウ
「こいつ!」
「マーベル!」
マーベル
「チャンスよ、ショウ!」
チャム
「腕を引き千切っちゃえ!」
トッド
「舐めるな、こんな事で負けるもんか!」
マーベル
「オーラ光が……!」
ショウ
「トッド!」
「ワイヤーを切った!」
マーベル
「トッドが……!」
チャム
「ハイパーになる!」
エレ
「ショウ、マーベル、下がりなさい!」
トッド
「見てなママ、俺の力でこいつらを落としてみせるぜ。そうすりゃママも楽が出来るってもんだ」
ショット
「こ、これがハイパー化か。トッドの奴、これが出来る程に力を付けていたのか」
ショウ
「ぬっ……!」
チャム
「来た!」
ショウ
「大丈夫か、マーベル?」
マーベル
「コンバータは動くわ。まだ戦える!」
ショウ
「駄目だ、ゴラオンへ戻れ」
マーベル
「ショウ、何をするの?」
トッド
「何をしようってんだよ!」
チャム
「あぁっ……!」
トッド
「こうなりゃ、ゴラオンだって一撃で落とせるってもんだ」
エレ
「うっ……!」
エイブ
「後退だ! ハイパー化したオーラ・バトラーからは……!」
チャム
「ショウ、ゴラオンのバリアが破られるんじゃないの?」
ショウ
「バリアはそういうもんじゃない……」
チャム
「ショウ……どうしたの?」
「ショウ!」
ショウ
「オ、オーラ力が増幅していく……止められない……」
チャム
「駄目! 迂闊にハイパーしたら……ショウ!」
ショウ
「わっ!」
チャム
「あっ……!」
「マーベル、ニー!」
マーベル
「どうしたの、チャム?」
チャム
「ショウがハイパーになる。助けて、マーベル!」
マーベル
「ショウが……!」
エレ
「ショウがハイパーに……!」
ショウ
「何故だ、何故自分のオーラ力を押さえる事が出来ないんだ?」
マーベル
「ショウ!」
エレ
「ショウ!」
ショウ
「あぁっ……!」
「トッド……トッド!」
トッド
「何だ、あの光は?」
「バ、バリアが効かないのか?」
「うわぁぁっ!」
「ショウ……」
ショウ
「トッド!」
トッド
「いい夢を見させてもらったぜ」
ショウ
「これが……いい夢で堪るかよ!」
トッド
「ママ……わぁぁっ!」
ショット
「よく見ておくんだな。オーラ力を制御出来なければ、真の戦士にはなれない」
ミュージィ
「私に出来るでしょうか?」
ショット
「やる事だ」
「後退するぞ」
チャム
「スプリガンが逃げる……」
「ショウ、死んじゃ駄目」
ショウ
「大丈夫だ、マーベルとエレが守ってくれた。チャムもな、守ってくれた……」
チャム
「トッド、死んじゃったの?」
ショウ
「ああ」
チャム
「ショウ……」
ドレイク
「そうか、トッドが死んだか」
ショット
「はい」
ドレイク
「惜しい戦士だった。せめて彼の故郷、ボストンとやらを攻撃しない事が、戦士への礼儀かもしれんな」
「……で、ゲア・ガリングはどうしたんだ?」
ショット
「はい、破損箇所を修理しながらの航行の為、遅れるとの事です」
ドレイク
「そうか。いよいよ機は熟したな」
ショット
「今こそ、グラン・ガラン、ゴラオンを討つ時です」
ドレイク
「うむ」