第46話 リモコン作戦

前回のあらすじ
ショウのオーラ力の前に、トッド・ギネスは散った。
しかし、摩り替わるようにショットのスプリガンが現れ、ドレイク・ルフトの動きが明確になった。
アの兵士
「ドレイク様、ショット・ウェポン様のお付きです」
ドレイク
「うむ」
ショット
「ドレイク様、火急なご用とは?」
ドレイク
「早かったな。お前に聞きたい事があってな」
ショット
「大西洋上の、強いオーラ力の事でしょうか?」
ドレイク
「うむ、今までとは違う強さだ。何かの前触れのように感じる」
ショット
「はい。今までのハイパー・ジェリル、ショウなどの現象を分析してみますと」
「この空域には、想像以上のオーラ力が満ちているようです」
ドレイク
「ゴラオン、グラン・ガランが、それら背後のオーラ力を見付けると、戦いは長引くだけだな」
ショット
「ドレイク様、私が囮になって、グラン・ガランを誘き寄せましょう」
「その上で、一つずつ落とす」
ドレイク
「そちが、自ら囮に?」
ショット
「はい。その方が真実味がありましょう?」
「では」
ドレイク
「ふん、真実味か……。許せんな、ショット・ウェポンめ」
ミュージィ
「私が投降するのですか?」
ショット
「そうだ。シーラを信用させて、斬れ」
ミュージィ
「シーラ・ラパーナを……。しかし、彼女にも予知能力があると」
ショット
「戦意を殺せ。そうすれば、オーラ力は弱まる。オーラ力がなければ、例えシーラと言えども察知は不可能になる」
ミュージィ
「出来ましょうか?」
ショット
「リムル様の音楽教師だった頃のお前に戻って、全てを愛すればよい」
「シーラも、ショウも、愛するのだ」
ミュージィ
「はい。その代わり、ショット様の事を暫く憎みます。こんな作戦を思い付かれた事を……」
ショット
「愛と憎しみは裏表な事だ。お前には出来る」
スコット
「爆弾を抱えた艦載機で、体当たり攻撃を行う」
ニー
「体当たり?」
マーベル
「そんな……」
ショウ
「神風をやるのですか?」
スコット
「我々は日本軍じゃない。神風をそのままやるつもりはないよ」
「ウィリアム」
ウィリアム
「はっ!」
「オーラ・バリアが長距離の誘導システムを撹乱するので」
「目標近くまで接近したら、パイロットは搭乗機より飛び降りて、搭乗機をこいつで誘導する」
チャム
「飛行機、勿体な〜い」
ショウ
「ば〜か」
チャム
「きゃははっ……!」
シーラ
「グラン・ガランの周囲の状況は?」
ナの兵士
「艦長」
カワッセ
「ん?」
シーラ
「何か?」
ナの兵士
「飛行部隊が、戦闘しつつこちらへ向かってきます」
シーラ
「スクリーンに映像を」
ナの兵士
「はい」
カワッセ
「敵のオーラ・バトラー同士が戦っている」
「オーラ・バトラー隊に、守りを固めさせろ」
ベル
「やっちゃえ、敵同士やっちゃえ」
エル
「何で戦っているのかしら? ね、シーラ様」
シーラ
「あれは確か、ブブリィとかいうオーラ・ボンバー」
ナの兵士
「カワッセ艦長、通信です」
カワッセ
「何? 間違いないか? あのブブリィのものと言うのか?」
ナの兵士
「はい」
シーラ
「カワッセ、何か?」
カワッセ
「はっ! それが、敵が『投降したい』との通信が入っているのです」
ミュージィ
「投降を……私はミュージィ・ポー。ショット・ウェポンの攻撃隊長です。投降したい。お聞き入れください」
カワッセ
「シーラ様、これは罠に間違いありません」
シーラ
「いいえ、受け入れましょう」
「援護を急ぎなさい」
ミュージィ
「グラン・ガランとの交信は、まだ取れないのか?」
アの兵士
「はっ! 只今、チャンネルが開かれました」
ミュージィ
「よし」
シーラ
「投降したいという者、聞こえるか?」
ミュージィ
「初めての謁見をこのような形で……」
シーラ
「投降の理由を聞こう」
ベル
「そうだ! 投降の理由だ!」
ミュージィ
「訳は申し上げられません。言えば、騎士の名誉を汚す事になります故」
「あぁっ……!」
「私は愛している……この方でさえ……」
シーラ
「敵意は感じられません」
カワッセ
「では、投降は本当だと?」
シーラ
「それは分かりません……が、ブブリィを援護する必要はあります」
ショウ
「ミュージィ・ポーが投降したいと言っている?」
マーベル
「妙ね」
ニー
「うむ……シーラ様は敵意を感じないというんだが」
ショウ
「ハイパー化し得るという事は、逆に言えば、オーラ力を殺すコントロールだって出来るって事だ」
キーン
「もしミュージィがそれをやっていたら、グラン・ガランを内部から破壊出来るわ」
「私、行ってみる」
ショウ
「キーン」
ニー
「お、おい」
キーン
「ミュージィのオーラ力を見てくる」
ニー
「待て」
ショウ
「行かせろ、ニー。キーンにやって貰う事だ」
「準備宜しいですか、スコット艦長」
ミュージィ
「女王、私はショット・ウェポンの悪意に気付いたのです」
「バイストン・ウェルの人間として、女王がこうも抵抗しなければならない理由を考えたのです」
「女王!」
「ビアレス……!」
アの兵士
「うわぁぁっ!」
 〃
「ミュージィ様……!」
ミュージィ
「煩い! 落とす!」
エル
「何か、本気で逃げ出したがっているわね?」
アの兵士
「小型艦艇が追い掛けています」
カワッセ
「オーラ・バトラーをそちらへ向かわせろ。投降者をカバーする」
アの兵士
「はい」
ショット
「あまり深く入り過ぎるなよ。グラン・ガランの対空砲火を浴びたくないからな」
アの兵士
「はっ!」
ショット
「無線だけは、もっと激しく攻めているように演技しろ」
ミュージィ
「ショット様、もっと本気で攻撃しなければ駄目です」
「はっ……!」
「ん、信じてくれたのか」
キーン
「ミュージィ・ポー、何が狙いなの?」
ミュージィ
「しまった……」
「はっ……!」
ショット
「ミュージィ!」
キーン
「嘘だわ……敵意を消す事なんて出来はしないわ。ミュージィは意識のコントロールも出来るというの?」
ミュージィ
「た、頼みます……投降させてください」
チャム
「そろそろ時間じゃないの?」
ショウ
「ああ」
マーベル
「私達、上手く支援出来るかしら?」
ショウ
「してやらなくちゃ」
軍人
「キャパレルA、キャパレルA、目標キャッチ」
 〃
「了解。第一波、第二波、手順通りだ」
スコット
「今の判断はキャパレルAに任せる。偵察中隊はコードをワン・シックスに展開」
ウィリアム
「全機、波状攻撃に入る。隊形を崩すなよ」
クの兵士
「これは……」
「ビショット様、地上軍の戦闘機隊の接近です」
ビショット
「直衛のオーラ・バトラーを展開させればいい」
クの兵士
「はっ!」
ビショット
「ふん、蚊トンボに何が出来るというんだ」
「それより、各部署の整理を急がせろ」
ウィリアム
「第一、第二派は、ミサイルで波状攻撃を掛ける。後は各々の判断で作戦を実行せよ」
軍人
「ラジャー」
 〃
「ラジャー」
クの兵士
「生意気な……え?」
ビショット
「何? オーラ・バトラー隊の防衛網を破られただと?」
クの兵士
「今までの戦闘機とは違います。オーラ・バトラー隊をかわして、一直線へこちらに来ます」
ビショット
「奴ら、何をやろうというんだ」
クの兵士
「うわっ……!」
ビショット
「接近したとはいえ、ミサイルなどは、バリアの前には意味はないわ」
「むっ……!」
クの兵士
「うわっ!」
ビショット
「何だ、この爆発は!」
クの兵士
「分かりません!」
 〃
「ビショット様、バリア内に戦闘機が飛び込んできます」
ビショット
「何、くっ……!」
クの兵士
「うわぁぁっ!」
クの兵士
「第四十二ハッチ、被弾!」
ビショット
「対空砲火、何をしている? 艦を上昇させろ!」
「地上の奴らめ、このような戦い方を……!」
ウィリアム
「やったぜ! ベイビー、キティ、後一、二発だ!」
「うわっ!」
軍人
「う、うわぁぁっ!」
ラナ
「だ、大丈夫ですか?」
リムル
「だ、大丈夫です。急ぎましょう、ラナさん」
クの兵士
「地上の戦闘機を、ゲア・ガリングに近付けさせなけりゃいいんだ!」
黒騎士
「出られるな?」
リムル
「……ラナさん!」
ラナ
「出ろと言ってるわ」
クの兵士
「何やってんだ、急げ!」
リムル
「分かってるわよ!」
「バーン」
ショット
「何? ゲア・ガリングが地上の戦闘機に大破させられたと?」
アの兵士
「はっ! 戦闘機は、体当たりを掛けてきたとの事です」
ショット
「おのれ、原始的な戦法を……」
「ミュージィに作戦中止の合図だ。急げ!」
キーン
「執拗い!」
ミュージィ
「離れた……ん?」
「作戦中止?」
「ならばキーン・キッス、撃たせてもらうぞ」
キーン
「ミュージィ!」
シーラ
「ミュージィ、投降は罠だったのか」
「オーラ・バトラー隊、攻撃を」
カワッセ
「はっ!」
キーン
「ミュージィ、やはり意識をコントロールしてたのね」
ミュージィ
「何故、作戦を中止されたのですか、ショット様」
ショット
「ゲア・ガリングに地上軍の奇襲があった」
「それに、あのボチューンは、お前のオーラ力に探りを入れてきた」
ミュージィ
「確かに」
シーラ
「グラン・ガランは発進可能か?」
カワッセ
「はっ! しかし、最低限度の艤装がまだ……」
シーラ
「構わぬ。艤装は戦闘空域に入るまでに行え」
ベル
「シーラ様、無理よ」
エル
「修理終わってないのですよ?」
シーラ
「グラン・ガラン、発進急げ」
ビショット
「落とせ! これ以上の破損は、艦の存続に関わる!」
「近付けるな、落とせ!」
「機体が傾くぞ。(?)の用意!」
軍人
「やったぜ、ベイビー!」
「うわぁぁっ!」
ショウ
「止めはまだだ! あと一機か二機だ!」
ビショット
「まだ来る! 阻止しろ!」
黒騎士
「戦闘機の一機ぐらい、落とせんのか!」
クの兵士
「うわぁぁっ!」
黒騎士
「誘爆するのか」
「まだ居たのか」
「ゲア・ガリングから離れた」
リムル
「地上軍に、こんな命知らずが居るなんて」
ラナ
「そりゃそうよ。オーラ・マシンの力は、私達の……」
リムル
「想像以上のマシンだった……」
ラナ
「そう」
リムル
「このまま脱出するわ」
黒騎士
「地上軍め」
クの兵士
「ビルバインとダンバインが侵入した」
黒騎士
「何?」
ショウ
「マーベル、大丈夫か? 数が多い」
マーベル
「ええ、グラン・ガランの隊がすぐ来るわ。それまでは持つわ」
「はっ……!」
「ショウ、今のは……!」
ショウ
「分かってる! 奴だ!」
チャム
「黒騎士!」
黒騎士
「やるな!」
ショウ
「速さだけで勝てると思うなよ!」
チャム
「こっちだって速くなってんだから!」
クの兵士
「ビショット様、スプリガン隊が戦闘しつつ接近しております」
ビショット
「ショットか」
「ショットめ、悉く……悉く遅い! どういうつもりだ!」
マーベル
「ショウ、グラン・ガランの隊が……」
「あれは……!」
「戦艦……?」
「ショウ、ブブリィがそっちへ!」
ショウ
「何?」
チャム
「ミュージィ・ポーよ、ミュージィ・ポーが来る!」
ショウ
「ミュージィ……!」
チャム
「あっ!」
ショウ
「しまった!」
チャム
「しっかりしてよ!」
黒騎士
「ミュージィ、上手いぞ。止めは任せろ」
「何をするミュージィ、避ける事はなかろう!」
ミュージィ
「お前などに手柄を横取りされるものか。ビルバインは私がやる」
「やったか……むっ!」
「しまった……!」
「黒騎士か」
黒騎士
「ミュージィ、礼を言って欲しいものだな」
ミュージィ
「何を言う、私も一緒に落とすつもりだったのだろうが」
黒騎士
「ん、ミュージィ……!」
「うっ……!」
ショウ
「黒騎士(?)……!」
チャム
「ショウ、後ろ!」
ショウ
「ん?」
ミュージィ
「黒騎士、これで貸し借りなしだ。もう手は借りない」
「もう一撃!」
ショウ
「何だ、今まのミュージィのオーラ力とは違うぞ」
チャム
「違うわね、何?」
ショウ
「怒りや憎しみだけじゃない」
ミュージィ
「ショット様……!」
ショウ
「わっ、捕まった……!」
ミュージィ
「これでお仕舞いだ、ショウ・ザマ!」
ショウ、チャム
「わっ、ぁっ……!」
「こ、このパワーは何だ?」
ミュージィ
「ショット様、これで敵の元凶は討てます。これで……!」
「落ちろ、ショウ! ショット様の為にも……!」
ビショット
「オーラ・バトラー隊、前線を固めろ。グラン・ガランが接近中。目の前の敵は各個に撃破しろ」
ショット
「ビショット殿」
ビショット
「何故、ゲア・ガリングに入った? 今は戦う時だぞ!」
ショット
「ここからでは、ゲア・ガリングの損傷がどの程度のものか、分からぬからそう仰る」
ビショット
「分かっておるわ。しかしグラン・ガランとて同じ……」
ショット
「ビショット殿、ここ一帯に強いオーラ力を感じるのです。これは、敵のオーラ力が集中し始めたという証拠です」
ビショット
「戯けた事を、これしきを恐れて……」
ショット
「このオーラ力は、ハイパー化の恐れがあります。味方がハイパーすればよし、そうでなければ……」
ビショット
「どうするというのか?」
ショット
「この空域を脱出します」
ビショット
「敵戦力の分断か」
ショット
「はい。地上軍を敵としない為にも、太平洋上へ出ます。ドレイク閣下がアメリカ合衆国を押さえている間に……」
アの兵士
「グラン・ガラン接近」
ビショット
「ええい、シーラ・ラパーナめ……!」
ショット
「どうなされます?」
「シーラとかグラン・ガランのハイパー化は、見たくはないものですな」
シーラ
「オーラ・バトラー隊を、主砲の弾道より下がらせろ」
「主砲、発射準備」
エル
「準備!」
ベル
「準備!」
シーラ
「目標ゲア・ガリング、主砲発射!」
クの兵士
「艦隊戦、弾幕を張れ! 各砲座、任意に……!」
ビショット
「ショットの忠告に従おうか」
ショット
「御身の為に」
ビショット
「全艦、全速で後退する! 戦線を縮小させろ!」
ショット
「ブブリィの回線確保を願う。ブブリィの戦線離脱を命令しろ」
ミュージィ
「後退だと?」
アの兵士
「はっ!」
ミュージィ
「後退など出来るか。漸く……漸く、ビルバインを捕捉した!」
ショウ
「オーラ力が緩んだ!」
チャム
「チャンスよ、押し切れる!」
ミュージィ
「な、何だ……ビルバインの力が増しているのか?」
「ハイパー! いや、違う……あの輝きは何だ?」
ショウ
「ミュージィ、オーラ力が弱まったぞ!」
ミュージィ
「くっ……!」
ショウ
「逃がした!」
チャム
「あのブブリィには、特別な戦い方をしなくちゃ」
ショウ
「そうだな」
マーベル
「了解、パイロットの救助をオーラ・バトラー隊にやらせます」
ショウ
「ゼラーナは、ゲア・ガリングの兵員の救助を」
ニー
「やっているよ」
シーラ
「カール・ビンソンにはお礼の通信を」
カワッセ
「はっ!」
シーラ
「ゲア・ガリングとウィル・ウィプスは、合流すると思われる。追跡を」
カワッセ
「はっ!」
「全艦に第一戦速、追撃戦闘隊形を執らせろ!」
アの兵士
「はっ!」
スコット
「帰還機一機、生存者は十三人のみ」
「ホワイト・ハウスは、未だ人質に取られたままか……」