第48話 クロス・ファイト

リムル
「ルーザ・ルフトは……」
クの兵士
「第三ブリッジじゃないの?」
リムル
「そう」
「あっ……!」
「すぐ戻ります。お前達はいつでも脱出出来るように、ドロで待機してなさい」
アの兵士
「はっ!」
ビショット
「ドレイクに伝えろ。グラン・ガランは予想以上のオーラ・バトラーを……うわっ!」
「先鋒だからといって、援護がなければこの空域を脱出するとな!」
クの兵士
「はっ!」
ビショット
「そうさ……私はいつまでも、ドレイクの盾にはならん」
ドレイク
「ゲア・ガリングへ伝えろ。我がウィル・ウィプスは、全速力で戦闘空域に接近しつつあるとな」
アの兵士
「はっ!」
ドレイク
「ビショットの奴、ワシに脅しを掛けるのか?」
「後退はさせん。ワシの盾になって頑張ってもらう」
ショット
「分かったか、ミュージィ? お前を、ビアレスで出さなかった訳を」
ミュージィ
「はい。ブブリィの接収に、時間が掛かっていたなぞ……」
ショット
「ビショットの奴は、ブブリィの使い方を知らんのだ。上手く牽制してやってくれ」
ミュージィ
「はい」
ショット
「リーチを取りつつ、各個に目潰ししていく。ビアレス隊はいつでも発進出来るように」
アの兵士
「はっ!」
ナの兵士
「来るぞ、うわぁぁっ!」
シーラ
「うぅっ……!」
カワッセ
「シーラ様」
シーラ
「大丈夫です」
カワッセ
「ウィル・ウィプスが来るまでに、何としても……」
シーラ
「落とせます」
「我が方には、命賭けて悔いのない大義があるのです」
「欲だけの敵に対し、我が方の心を集中すれば、抜けます」
ベル
「ね、私達も何かしなくちゃ。何が出来るかな?」
エル
「キャーキャー言って、抱き付いてきたりしない事ね」
ナの兵士
「シーラ様」
シーラ
「何か?」
ナの兵士
「お体をお休めになりませんと」
シーラ
「今は戦いの最中です。余計な心配などせず、戦いに集中なさい」
ナの兵士
「失礼しました」
シーラ
「カワッセ」
カワッセ
「は?」
シーラ
「私は良い兵を持ちました」
カワッセ
「浮き足立たぬゆとりさえあれば、この戦いは必ず勝てます」
シーラ
「その上で、全てのオーラ・バトラーを破壊しなければなりません」
「それが、ショウ・ザマとの約束ですから……」
チャム
「ショウ、スプリガン!」
ショウ
「分かってる」
「あのガラバは、黒騎士か!」
「どこだ?」
「邪魔だ、チャム。どいてろ!」
チャム
「いやんっ!」
ショウ
「何だ? バリアが効いてる筈なのに、衝撃が強過ぎるぞ!」
黒騎士
「うっ……何だ、この不安感は?」
「くっ……!」
チャム
「敵のオーラ力が消えて行く」
ショウ
「そうなのか? 初めはプレッシャーが掛かったぞ」
チャム
「迷ってるわ、あのガラバ……バーン・バニングス!」
ショウ
「ん?」
チャム
「今よショウ、突っ込めぇ!」
ショウ
「突っ込んでるだろ!」
黒騎士
「ショウめ!」
ショウ
「オーラの光が……!」
チャム
「ハイパーだ!」
黒騎士
「ふふっ、ははっ……!」
ナの兵士
「ガラバが巨大になった!」
シーラ
「ハイパー化したというのか」
チャム
「大砲が……!」
黒騎士
「とどめよ!」
「何だ、うっ……!」
「何故だ? しかし、確かに俺にも、ハイパー化が出来た」
「持続さえすれば、ショウなど物の数ではない!」
ショウ
「黒騎士は、何故、撃つのをやめたんだ?」
チャム
「事情があったんでしょ?」
ショウ
「何の事情だ?」
チャム
「知らないわよ」
副長
「分かりませんな……オーラ・パワーですか?」
スコット
「そうだ。さっきの輝きは、オーラ・パワーによる輝きだと思える」
副長
「もう、手は出せないのですかね?」
スコット
「戦死者を増やす必要はない。彼ら同士でケリを付けるつもりだろう」
「そうでなければ、ホワイト・ハウスはとうに焼かれている」
テレビ音声
「ゲア・ガリングとグラン・ガランは対峙したまま、動く事はないようです」
「戦線は膠着状態のまま、共に援軍を待っているようです」
「ゴラオンとウィル・ウィプスの動きが、この状況を……」
テレビ音声
「……変えると推測されます。ゴラオンの動きが分からないようです」
「人工衛生からの情報を、アメリカがカットしているようでありますが」
「ウィル・ウィプスが近くに来ているようです」
書記長
「スミノフ、北方からの情報は、最優先で私の所へ持ってきてくれよ?」
スミノフ
「はっ!」
テレビ音声
「専門家筋の推定によれば、ウィル・ウィプスには、戦線に参加出来ない事情があるようです」
「ゴラオンの出現を待って、出動するという可能性もあります」
エイブ
「エレ様を見てこい。エレ様はシーラ様達に手を貸そうと、お部屋に篭られたままだ」
ラウの兵士
「はっ、艦長!」
ラウの兵士
「エレ様、エレ様……!」
エレ
「今、参ります」
ラウの兵士
「はっ!」
エレ
「敵は、力を増して……」
「あれはやはり、黒騎士だったのか」
エイブ
「マーベル殿、出られましょうか?」
マーベル
「はい、オーラ・バトラーの編成は終わりました」
エレ
「マーベル」
マーベル
「エレ様」
エレ
「敵の核だけを狙うように……無駄な戦いは、死を早めます」
マーベル
「それはもう。私も、聖戦士と言われた事に自惚れを持っております」
「では、皆様のご武運を」
ドレイク
「相変わらずか。出しているな、グラン・ガランは……」
キーン
「ニー、聞こえて? ウィル・ウィプスが出て来たわ」
ニー
「了解だ。ボチューン隊で、ウィルの足を止める」
キーン
「了解」
軍人
「ウィル・ウィプスが接近してきたぞ!」
 〃
「退避しろ! 戦闘に巻き込まれるぞ!」
 〃
「(?)が、ウィルの下に巻き込まれた! 退避!」
ミュージィ
「ショット様は何も仰らぬが、ドレイクを殺せと願っている筈。戦いの最中に……」
アの兵士
「何をやってる、あのブブリィは? 戦う気があるのか?」
ミュージィ
「ええい!」
「煩いのに捕まった。ニーとキーンか」
「ドレイクをやれば、お前らにも益となろうものを」
キーン
「きゃぁぁっ!」
ニー
「キーン!」
ショット
「敵の動きの中核に、シーラが居る事は確かだ」
「シーラの居所を探せ。核であれば、オーラ力も、より輝く筈だ」
アの兵士
「はい」
ショット
「シーラさえ倒せば……」
「ビショット、ドレイクの、心の乱れでのオーラ力の拡散も、恐れる事もない」
アの兵士
「ショット様、これです。この光、シーラに間違いありません」
ショット
「うむ……よし、あの場所へ集中攻撃だ。スプリガンを突っ込ませる」
「スプリガン隊、出撃!」
ベル
「あぁっ、エル……!」
カワッセ
「シーラ様!」
「お怪我は?」
シーラ
「大丈夫です、うっ……!」
カワッセ
「ビルバインを呼び戻せ!」
シーラ
「それはいけません!」
カワッセ
「このままでは沈みかねません。攻撃は最大の防御です。一気にゲア・ガリングに突撃を!」
シーラ
「宜しい、任せます」
クの兵士
「わっ、グラン・ガランが……!」
ビショット
「ショットの猛攻を避ける為か?」
「一戦闘帯だけ後退。ウィル・ウィプスへ近付き……」
ルーザ
「ビショット殿……リムルが来たという事だが、どう処置をなさいましたか?」
ビショット
「処置? まだ会ってはおらん」
ルーザ
「何故?」
ビショット
「知らん。ゲア・ガリングとて直撃を受けておる。ここまでは来れんのだろう」
ルーザ
「はっ、ビショット殿……!」
ビショット
「誰か、このご婦人を部屋にお連れしろ」
クの兵士
「ルーザ様」
ルーザ
「触るな!」
ビショット
「ゲア・ガリング、動きが遅いぞ!」
ショウ
「黒騎士の力が、益々アップしている」
チャム
「グラン・ガランが、ゲア・ガリングを……!」
ショウ
「ん、ハイパー化してくるぞ」
チャム
「え?」
黒騎士
「ショウ、今度こそ、私のオーラ・パワーで……!」
ショウ、チャム
「わぁぁっ!」
黒騎士
「後一撃で……!」
チャム
「ショウ、来るよ! どうする?」
ショウ
「どうするって言ったって、俺には、ハイパーは出来ない……」
「ハイパー化は、悪しきオーラ力を太平洋上に残して、地上人を迷わせるんだ」
「これ以上は……!」
ショウ、チャム
「あっ、くっ……!」
黒騎士
「ふん、後一撃はグラン・ガランを沈めてからだ」
シーラ
「ハイパー・ガラバが来る!」
エル
「あ、ぶつかる……!」
シーラ
「グラン・ガラン、急速降下!」
カワッセ
「降下しろ!」
ショウ
「させるか!」
シーラ
「いけません、ショウ! ハイパーは……!」
ナの兵士
「わぁぁっ!」
カワッセ
「伏せて、シーラ様!」
ショウ
「シーラ様!」
シーラ
「耐えてください、ショウ。力に力では共に自滅です。ハイパー化は……」
ショウ
「分かっています、シーラ様」
チャム
「来たよ、ショウ!」
ショウ
「ん?」
黒騎士
「ショウ、まだ邪魔する気か!」
ショウ
「黒騎士!」
「わっ、こいつ……!」
ショット
「よし、後一息でグラン・ガランは沈む。仕掛けるぞ!」
アの兵士
「シーラの生体反応が消えました」
ショット
「何? 奥に入ったのか?」
アの兵士
「上空から、オーラ・バトラーらしきもの、接近」
 〃
「見付かりました。サブ・ブリッジの脇です」
ショット
「全速前進!」
アの兵士
「わぁぁっ!」
マーベル
「シーラ様!」
アの兵士
「うわぁぁっ!」
 〃
「砲部がやられました! 航行不能です! 退艦してください!」
ショット
「機関室はどうなのか?」
アの兵士
「全壊ではありません」
ショット
「ならば、退却など以ての外だ! パワー・ダウンしても、コントロールで補ってみせる!」
「動けよ、私の操るままに……!」
アの兵士
「ショット様、ダンバインが……!」
ショット
「何?」
アの兵士
「わぁぁっ!」
ショット
「はっ……!」
シーラ
「マーベル、有難う。よく間に合って来てくれました」
マーベル
「シーラ様もご無事で。まだ、ブブリィとガラバ隊が生き残っているとか……」
シーラ
「私はいい。グラン・ガランはそう簡単には沈みません」
「私がハイパーを禁じた為に、ショウが苦戦中です。加勢を」
マーベル
「了解。ゴラオンもすぐに参ります。今暫くのご辛抱を」
黒騎士
「うっ、うぅっ……!」
「まただ。何だ、この妙な感じは……」
ショウ
「今、ガラバの力が抜けたように感じたが、気のせいか?」
チャム
「私も感じたよ」
黒騎士
「ええい、私は今は……ショウ!」
マーベル
「ショウ!」
ショウ
「マーベル!」
チャム
「遅かったじゃない〜!」
マーベル
「ごめん、遅れたつもりはないわ」
黒騎士
「また蚊トンボが増えたか。今は、私にグラン・ガランを落とさせろ!」
カワッセ
「シーラ様、下へ脱出を!」
シーラ
「あのオーラ力を放出する男を、食い止めます」
ベル
「駄目、死んじゃうよ!」
エル
「シーラ様、無茶です! おやめください!」
シーラ
「お前達だけはお逃げ。グラン・ガランが自爆をすれば、ハイパー・ガラバとて葬れます」
黒騎士
「何故、落ちない? グラン・ガラン……!」
チャム
「ショウ」
ショウ
「シーラ・ラパーナは、何を?」
マーベル
「バリアが干渉しあっていて……」
ショウ
「突っ込んでみる!」
エレ
「シーラ様、キャッチしました」
ショウ
「バリアが、持つのか……?」
マーベル
「無理よ、これでは……!」
黒騎士
「ははっ、小賢しい真似を……。ショウ、マーベル、シーラと共々落ちろ!」
「うっ……!」
ショウ
「はっ……!」
マーベル
「エレ様!」
エル、ベル
「あぁっ……!」
黒騎士
「くっ、うぅっ……!」
エレ
「その男、この世界から去れ!」
ショウ
「エレ様!」
チャム
「無茶よ、無茶無茶!」
マーベル
「エレ様!」
シーラ
「エレ・ハンム、よくも……」
カワッセ
「あぁ、ゴラオンに亀裂が……!」
ニー
「ゴラオンが……!」
キーン
「エレ様が……!」
黒騎士
「この力、うっ……オーラ力の拡散は、エレの仕業か!」
エレ
「下がれ! お前の拡散するオーラ力は、私が全て引き受ける! 下がれ、消滅せよ!」
黒騎士
「何だと? 何と言った?」
エレ
「失せろと申しておる! 悪しき、オーラ力の持ち主……!」
黒騎士
「女一人のオーラ力如きに、俺は、屈する訳には行かぬ!」
エレ
「うっ、全て私が受ける……!」
エイブ
「エレ様、いけません!」
エレ
「うぅっ、あぁっ……!」
エイブ
「エレ様の体が……!」
「誰かシーツを持って来い。急げ!」
黒騎士
「くっ、ハイパーが収まってしまった……どういう訳だ?」
エレ
「エイブ……」
エイブ
「エレ様……」
エレ
「リムルに、親殺しをさせてはなりません」
エイブ
「リムル様が、親殺しを……」
「エレ様、おぉっ……!」
「ビルバインと……ショウ・ザマと、回線を繋げ!」
チャム
「ショウ、聞こえた? エレ様の声……」
ショウ
「ああ、リムルを止めろと言っていた」
マーベル
「エレ様はどうなのです、エイブ艦長?」
エイブ
「安らかにいらっしゃる」
チャム
「エレ様でしょ、その抱いてるの?」
エイブ
「戦闘中です。ショウ・ザマ、マーベル・フローズン」
チャム
「嘘、ショウ……嘘だよね?」
ショウ
「そ、そんな……エレ様が……!」
チャム
「ショウ!」
ショウ
「黒騎士め、逃がさん!」
マーベル
「ショウ!」
シーラ
「いけません!」
「今、貴方がハイパー化したら、エレは何の為に身を犠牲にしたのか分からなくなります」
「そのままの、在るがままの姿で戦うのです」
ショウ
「し、しかし……しかし、シーラ様……! 俺は、俺は……!」
テレビ音声
「アメリカの第七艦隊、ソ連の北方艦隊は、静観する模様であります」
「この戦いの経験者、スコット艦長は、現在は戦闘機を出撃させる必要はないと明言しています」
テレビ音声
「ショウ・ザマのビルバインは、まだ戦闘中の模様でありますが……」
民間人
「まだやってるよ。こっちには来ないかな?」
チヨの部下
「先生、時間がありません」
テレビ音声
「ビルバイン、ダンバインの動きをキャッチする事は出来ません」
「しかし、ゲア・ガリングは後退を続け、ウィルとの合流を意図しているようです」
クの兵士
「二十八区に、消火班を呼べってんだよ!」
リムル
「お母様のお部屋はどこ……?」
ルーザ
「全く、ビショットのやる事は歯痒い。私がもっと若ければ……」
「ん? リムル……ビショットに会いにいったのではないのか?」
「リムル、どういう事か? そ、その目付き……何か?」
リムル
「お母様、全ての混乱の元は、お母様……貴方です!」
「貴方が、お父様やビショットを扇動して、このような……!」
ルーザ
「お黙り!」
リムル
「お覚悟! 全てが収まるのならば、地獄へも落ちます!」
ルーザ
「今更私を殺したとて、事は収まりはしない!」
リムル
「いいえ! ビショット王を騙し、お父様を裏切った貴方は、罰せられるべきです!」
ルーザ
「ほほっ……手玉に取られた男共が悪いとは考えぬのか。偉そうな事を言っても、まだまだ子供ね!」
ニー
「リムル、どこだ? どこに居る?」
ショウ
「ええい、どけ!」
チャム
「ハイパー化出来なくなったんなら、すっこんでろ!」
ショウ
「リムルを探すんだ、チャム!」
クの兵士
「うわぁぁっ!」
ショウ
「チャム、リムルを感じないか? 大体の検討でいい!」
ルーザ
「餓鬼が!」
リムル
「お覚悟!」
「あっ……」
ニー
「リムルだ。あの光、あのオーラの色はリムルだ……リムル・ルフトの光だ!」
ルーザ
「敵……!」
ニー
「リムル、返事をしろ! リムル、居るんだろ!」
ルーザ
「きゃぁぁっ!」
ニー
「リ、リムルが……」
「お前がやったのか……母親のお前が、我が子を殺したのか……!」
ルーザ
「た、他人に、お前呼ばわりされる私ではない。私はルーザ、ルーザ・ルフトである……!」
「きゃぁぁっ!」
ショウ
「駄目だ!」
チャム
「やめて!」
ショウ
「何をしたんだ、ニー!」
ニー
「リムルがルーザに殺されていた。リムルは、ルーザの返り討ちに遭っちまったんだ!」
ショウ
「返り討ちだと?」
チャム
「じゃ、帰ってくるの?」
ショウ
「ニー、脱出する! ゲア・ガリングに近付き過ぎた!」
「ニー!」
シーラ
「リムルが死に、ルーザが死んだ……。この空域に止めようもなく、憎しみが渦巻いています」
「最早、私には何の方法も残っていません。ゲア・ガリングと討ち死にを敢行します」
「グラン・ガラン、全速前進!」
「はっ……!」
カワッセ
「ゴラオンが突出します!」
エイブ
「グラン・ガランは、ウィル・ウィプスに対して散開戦を取ってください」
「ゲア・ガリングは、我が方で止めを刺します」
シーラ
「エイブ艦長!」
エイブ
「エレ様、バイストン・ウェルへ帰りましょう」
「そして、あの地を再び、争いのない平和な世界に致しましょう……」
ビショット
「ゴラオンの突撃だと? 躱せばよい!」
「うぉっ……!」
クの兵士
「わぁぁっ!」
ビショット
「うっ、わぁぁっ……!」