最終話 チャム・ファウ

ショウ
「エレ様……」
チャム
「ショウ、エレは死んだわ。エイブも……」
「ゴラオンを支えていたオーラ力が、なくなっていく」
ショウ
「ゴラオンだけじゃない。ゲア・ガリングを支えていたオーラ力もなくなって……」
マーベル
「オーラ力のプレッシャーが消えていくわ」
「けれど、まだある……賢しいオーラ力が」
ミュージィ
「ウィル・ウィプス、ブブリィ緊急着艦する。ウィル・ウィプス」
「いいか、オーラ・コンバータが加熱したとでも言っておけ」
アの兵士
「はっ! しかし何故……」
ミュージィ
「ショット様の特命だ」
「このどさくさにドレイク暗殺も、ショット様の望む所の筈だ」
カワッセ
「ゴ、ゴラオンが落ちます!」
シーラ
「構うな。グラン・ガランは全速前進である」
「ドレイクは勝てると踏んだであろうが、そこが隙というもの」
「全将兵に伝えよ。総掛かりである!」
ベル
「総掛かり……何だ?」
エル
「総攻撃よ」
ベル
「へえ……何だ?」
エル
「みんなで最後まで戦うの!」
ベル
「最終回だからか?」
エル
「もう、馬鹿!」
ドレイク
「ふふっ、これで勝ったな」
「ショットに伝えろ。残存艦艇をグラン・ガランの背後に回し、グランを挟み撃ちにしろとな」
アの兵士
「はっ!」
 〃
「ショット・ウェポンの伝令だと?」
ミュージィ
「はい。ドレイク陛下に急ぎ、伝言を……」
アの兵士
「何故、無線を使わん?」
ミュージィ
「戦闘中にそんな物、使えるか」
ドレイク
「ミュージィ・ポー、何か?」
ミュージィ
「はい」
ドレイク
「ん?」
ミュージィ
「あっ……!」
アの兵士
「やめんか、こいつ……!」
ミュージィ
「放せ、うっ……!」
ドレイク
「ショットの命令か?」
ミュージィ
「うぅっ……!」
ドレイク
「ショットの命令か?」
ミュージィ
「私……私の意思だ! ショット様は知らない事だ!」
ドレイク
「賢しいな、ミュージィ。音楽教師をやっていた頃の、嫋やかさはどうしたのだ?」
ナの兵士
「うわぁぁっ!」
エル、ベル
「きゃっ……!」
シーラ
「カワッセ」
カワッセ
「オーラ・バトラー隊に、前方を固めさせろ!」
ベル
「バイストン・ウェルに戻ろうよ?」
エル
「シーラ様、地上で死んでしまったらつまんないよ」
シーラ
「ベル、エル、お聞きなさい」
「バイストン・ウェルの世界……いいえ、オーラの力は、戦いさえ終われば必ず私達に報いてくれます」
「ですから、退く訳にはいかないのです」
ベル
「ここん所、ず〜っと言ってる事よね?」
エル
「でも、シーラ様にもしもの事があったら……」
シーラ
「バイストン・ウェルの機械は、地上世界を混乱に陥れています」
「私達の手で、全てを終わらせなければならないのです」
「二人だけでも、お逃げなさい」
ベル
「私、シーラ様と一緒でなきゃ、嫌だ!」
チャム
「聞こえる。ベルとエルが怯えている……」
ショウ
「よし、シーラの動きを、チャムの勘でキャッチしていてくれ」
「俺は、スプリガンの足を止める」
黒騎士
「この戦闘中に何だ、ショット・ウェポン?」
ショット
「ミュージィのブブリィが、ウィルに接触し過ぎのようだ」
黒騎士
「それが?」
ショット
「ビショットが死んだ今となっては、ドレイクはまだ使いようがある」
黒騎士
「ショット……貴様、ミュージィにドレイク暗殺を命令したのか」
ショット
「命令はしておらんが、今はやめさせたい……」
黒騎士
「策士め……この礼金は高いぞ」
「ただし、どのように止めるかは、俺のやり方でやる」
マーベル
「あの高速巡洋艦が、ショット……」
ショット
「うわぁぁっ!」
「ダンバインか!」
マーベル
「ショットめ!」
「邪魔しないで!」
「え、チャム?」
チャム
「マーベル、今そっちに行く。頑張って」
マーベル
「有難う、チャム」
ミュージィ
「うっ……!」
ドレイク
「お前を餌に、ショット・ウェポンの息の根を止めてやるよ。永遠に私に跪かせてな」
黒騎士
「親方様」
ドレイク
「何か?」
黒騎士
「ミュージィは、親方様の命を狙っております」
ドレイク
「ほう……ウィル・ウィプスに入り込んでいるのか?」
黒騎士
「はっ……」
ドレイク
「戦闘中に何故報せる? 軍規違反を犯してまで……」
黒騎士
「私の意地です」
ドレイク
「ショットへの恨みか?」
黒騎士
「親方様のご想像にお任せします」
ドレイク
「ショットの策を知らせる、バーン・バニングスか……」
「それをさせるショットという男、よくよく徳のない男だな、ミュージィ」
ミュージィ
「くそっ……!」
ドレイク
「ルーザに、お前のような可愛さがあれば、こうは……」
「第二ブリッジへ移動するぞ」
アの兵士
「ドレイク様!」
ニー
「キーン、雑魚には構うな。ドレイクだ」
キーン
「ドレイクらしい人影が、右奥のハッチに向かったわ」
ミュージィ
「まだ私にも、ツキがある……」
ニー
「どけよ!」
ミュージィ
「ブリッジに敵が侵入した! 行くぞ!」
アの兵士
「はっ!」
 〃
「出るのかよ、あっ……!」
ミュージィ
「艦内で、白兵戦用意だ!」
アの兵士
「え、白兵戦……?」
ニー
「あれは、ブブリィ……また出て来たのか」
キーン
「あぁっ、ブ、ブブリィ……!」
ミュージィ
「しまった、この距離では砲撃が……!」
キーン
「あぁっ、ニー……!」
ニー
「キーン!」
「ブブリィめ……!」
テレビ音声
「グラン・ガランは、持ち直したようであります」
「ゴラオンの残存戦力が、予想以上の数を残していた為に、戦線は移動しておりません」
テレビ音声
「第七艦隊からの発表によりますと、オーラ・バトラーが残った場合には」
「自爆機と体当たりさせても、葬る用意もあるとの事であります」
「その為に、各国の……」
カワッセ
「左舷、弾幕が薄いぞ! オーラ・バトラー隊、どうした!」
ベル
「シーラ様、行こうよ〜」
エル
「シーラ様」
シーラ
「地上にも、バイストン・ウェルと同じような所が……」
ベル
「嫌よ、一緒でなければ……!」
シーラ
「ベル、エル……」
エル、ベル
「きゃっ……!」
ナの兵士
「わぁぁっ!」
カワッセ
「各艦は前へ出て、シーラ様の盾となれ!」
アの兵士
「わぁぁっ!」
ドレイク
「グラン・ガランが、最後の勝負を掛けてきたか」
アの兵士
「スプリガンの動きが見えんぞ。どうなっている?」
 〃
「はっ!」
ドレイク
「ショットめ……」
ショウ
「あれは……」
チャム
「ガラバよ」
黒騎士
「捕まえた!」
ショウ、チャム
「わっ……!」
黒騎士
「捕まえた、ショウ・ザマ!」
「何?」
ミュージィ
「黒騎士……!」
黒騎士
「な、ブブリィが……うっ!」
チャム
「同士討ち?」
ショウ
「らしいな」
黒騎士
「逃がした」
「ミュージィか。ドレイクから逃れてきたのか」
ミュージィ
「何故、私の行動を知ったのだ?」
黒騎士
「俺はバイストン・ウェルの人間だ。ショット如き、地上人の言いなりにはならんという事だ!」
アの兵士
「ショット様、ウィル・ウィプスが総攻撃を始めました」
ショット
「このまま動くな」
アの兵士
「援護をせずとも良いのですか?」
ショット
「構わん」
アの兵士
「しかし……」
ショット
「この時の為に、ドレイクを生かしておいたのだ。共に潰れてくれればいい」
アの兵士
「ビルバインが、突出してきました!」
ショット
「何?」
ショウ
「マーベル、遅くなった」
マーベル
「ショウ、スプリガンは速いわ。気を付けて」
ショウ
「出て来た。オーラ・バトラーだ」
チャム
「ショウ、私もやる」
ショウ
「分かった、チャムのオーラ力を貸してくれ」
ミュージィ
「はっ、オーラ光がスプリガンに……!」
黒騎士
「何だと?」
ショット
「ハイパー化せずに、パワーを上げたというのか」
ミュージィ
「ショット様を狙うなどと!」
ショット
「うわっ!」
マーベル
「うっ……!」
黒騎士
「まだ、ショットを殺す訳には行かん! 利用価値がある!」
ミュージィ
「わぁぁっ!」
ショット
「ミュージィが……!」
ミュージィ
「ショ、ショット様……」
ショット
「ミュージィ……」
マーベル
「やったわ、ショウ……ショットをやったわ……!」
チャム
「やったやった、やった!」
ショウ
「マーベル、俺達、ハイパー化しなかったな?」
「マーベル、どうした?」
チャム
「マーベル……マーベル、どうしたの?」
マーベル
「ううん、何でもないわ。大丈夫よ、うぅっ……!」
「ショウは、ウィル・ウィプスへ……」
ショウ
「了解。しかし、マーベル……」
マーベル
「貴方は聖戦士でしょ? まず、ドレイクを落としなさい!」
ショウ
「了解。すぐに救援を回させる」
マーベル
「全く、人が慰めて欲しい時は、知らん顔していてさ……」
「うぅっ……!」
「あっ……!」
黒騎士
「確実だな、ダンバイン!」
「ビルバインは……!」
軍人
「ウィル・ウィプスが、ジリジリ距離を詰めている……」
 〃
「何かあるんだ」
 〃
「ドレイクの戦力は、まだまだ出切っちゃいないからな」
スコット
「バイストン・ウェルが、地上人の造ったオーラ・マシンを排除したんだな」
副長
「しかし、地上をこうまで巻き込む事は、ないじゃありませんか」
スコット
「バイストン・ウェルは別世界じゃないんだ。我々の魂が戻るとこなのだとさ」
「この精神世界が、我々地上界の人間に、テキストの戦争を演じさせているのさ」
副長
「テキスト戦争……?」
スコット
「そうじゃないかね? ここには、世界中の軍事力が集まっている」
「最終的には彼らは、この軍事力を全滅させる為に遣わされた、バイストン・ウェルの代表選手かもしれんのさ」
シーラ
「戦えるオーラ・バトラーは全て出しなさい。ウィル・ウィプスのブリッジだけを潰せばよい」
「ドレイクのみを」
黒騎士
「ビルバインめ、まだウィルのブリッジに取り付いていないのか」
ショウ
「ドレイクは居るか?」
チャム
「居ると思うけど、違うかな?」
ドレイク
「妙だ……妙だな。一方的に我が方の被害が増えているようだ」
「ウィル・ウィプスのオーラ・バリアは、働いておらんのか?」
アの兵士
「グラン・ガランに確実にダメージを与えておりますし、そんな事はありません」
ドレイク
「楽観論では、戦に負けるぞ。事実を認めろ」
アの兵士
「はっ!」
ドレイク
「オーラ力とは、人の生体エネルギーと言ったが……」
「ビショット、ルーザが死に、我が方のオーラ力が弱まったのか」
ナの兵士
「むざむざやられるか!」
カワッセ
「防火壁を降ろせ! 誘爆を防ぐのだ!」
シーラ
「カワッセ、力押しでは被害は大きくなるばかりです。雲を盾になさい」
カワッセ
「雲を?」
「操舵手!」
ナの兵士
「うわぁぁっ!」
カワッセ
「ぬぅっ……!」
チャム
「私達は、ドレイクをやっつければいいのよ! 死に急がないで!」
ショウ
「この下か」
チャム
「前へ回り込んで」
ショウ
「よし」
チャム
「ガラバだ!」
ショウ
「うぉっ……!」
黒騎士
「ドレイクだけを倒せば済むなどとは、思わせん!」
ドレイク
「歯痒いな……まだ、グランを黙らせる事は出来ないのか?」
アの兵士
「はっ……グランは、雲の中に逃れた模様です」
ドレイク
「馬鹿を言うな。シーラのオーラが、確実に私に投影されている」
アの兵士
「は?」
ドレイク
「シーラは、バイストン・ウェルの意志を呈して、私に臨んでいるのだ。逃げはせん」
「認めねば、貴公も巻き添えを食らうぞ」
ベル
「シーラ様!」
エル
「シーラ様!」
シーラ
「くどい! もうお前達の顔は見たくもない! 下がれ!」
「ドレイク……!」
ベル
「シーラ様!」
シーラ
「お気付きか、貴下の成した事……」
「カワッセ、ウィル・ウィプスへ突撃! グラン自爆により、全てを殲滅する!」
ドレイク
「既に、私の迷いは消えた……ルーザは死んだのだからな」
「ウィル・ウィプスで、グラン・ガランを受けろ!」
アの兵士
「はっ!」
ドレイク
「私と来い!」
アの兵士
「ドレイク様……!」
チャム
「いけない……シーラ様、早過ぎます!」
ショウ
「何? グラン・ガランが特攻を掛けたのか?」
チャム
「ベル、エル、どうしたの? シーラ様を止めなくちゃ……!」
ショウ
「ドレイクも、特攻を覚悟したんだ」
チャム
「違うわよ!」
ショウ
「何で、違うって言えるんだ?」
チャム
「ドレイクだって、ルーザやシーラ様と同じぐらい、オーラ力があるのよ?」
「ドレイクに騙されちゃ駄目よ!」
ショウ
「騙しか」
チャム
「私、グラン・ガランに行く」
ショウ
「お、俺も……!」
チャム
「ガラバのバーンが居るでしょ?」
ショウ
「行ってくれ」
チャム
「開けて」
ショウ
「チャム……」
「黒騎士!」
「バーン・バニングス!」
バーン
「ハイパー出来なくとも……!」
ドレイク
「ブル・ベガー1隻と、数機のオーラ・バトラーがあれば、再建は可能だ」
アの兵士
「アメリカの力を借りるというのですか?」
ドレイク
「ルーザの意思に取り込まれぬ所で、もう一度、自分の力を試してみたいのだ」
「やってみせるさ。それが、オーラ・マシンを発明した、ショットの夢でもあろう?」
「やれ」
アの兵士
「はっ!」
ドレイク
「最大戦速だ」
シーラ
「ドレイク……!」
「ショウ・ザマ、ニー、ドレイクが逃げる! グラン・ガラン、ウィルを飛び越えろ!」
ショウ
「ドレイクか!」
黒騎士
「やった!」
ショウ
「まだまだ!」
黒騎士
「そうかな?」
ニー
「あれか!」
「ドレイク・ルフト!」
ドレイク
「うっ、うわっ……!」
ニー
「貴様のような奴が居たから……!」
ドレイク
「ニー・ギブンか!」
「わぁぁっ……!」
「き、貴様に討たれるとはな……」
ニー
「キーン! ドレイクを……うわぁぁっ!」
シーラ
「ニー、よくやってくれました!」
「人々よ、バイストン・ウェルへ帰還します!」
チャム
「ベル、エル……!」
「あぁ、グラン・ガランが……あぁっ!」
シーラ
「後は、己の憎しみの心を、地上に残さぬように……ショウ!」
ショウ
「貴様は、その怨念で何を手に入れた!」
黒騎士
「力と、狡猾さだ!」
「さすれば、勝つ!」
「ショウ!」
ショウ
「俺は、人は殺さない!」
黒騎士
「くっ……!」
ショウ
「その怨念を殺す!」
黒騎士
「くっ、ぁっ……!」
ショウ
「うぅっ……!」
「シーラ・ラパーナ、浄化を……!」
副長
「な、何です?」
スコット
「これはオーラだ……人のオーラの光だ……」
軍人
「何で、みんなが同じ所に集まるんだ?」
 〃
「ボイジャー、近付き過ぎる。離れろ」
 〃
「いや、しかし、ここに来いと言ったろ」
 〃
「誰がだよ?」
 〃
「呼ばれたから来たんだ。協同捜索の筈だ」
 〃
「グラン・ガランが落ちた辺りだろ?」
 〃
「北に百五十キロ離れてる……あれだよ、俺達を呼んでるのは。あの光だ」
 〃
「光?」
テレビ関係者
「チャム・ファウの生存が確認されました」
「バイストン・ウェルの唯一人の生き証人、ミ・フェラリオのチャム・ファウが」
「エンター・プライズに収容された模様です」
「全世界の皆様、今、チャム・ファウが将兵の手に抱かれて……」
「あっ、チャムです。間違いなく、チャム・ファウです」
ナレーション
チャム・ファウは、地上人の手厚い看病を受けながら、バイストン・ウェルの事々を語ってくれた。
そして月夜の晩、チャム・ファウはその軍艦を抜け出して、二度と帰る事がなかった。
それ故に、ミ・フェラリオの伝える、バイストン・ウェルの物語を伝えよう……。