第2話 G・セルフ起動

クンパ
「キャピタル・アーミィが捕えたパイロットがラライヤ・マンディで、
彼女が搭乗していた機体を、アイーダ・レイハントンと名乗るパイロットが使っていたのか」
士官
「はい」
クンパ
「その機体を宇宙海賊はGセルフと言うが、デレンセン大尉はそれを『みんな出任せだ』と言ったのだな?」
士官
「はっ」
クンパ
「ご苦労」
「ベルリ・ゼナムか……全て偶然だろう。こんな事、仕掛けて出来る事ではない」
チア・ガール
「イェーイ! 昼休み!」
ノレド
「ちゃんと走れるんでしょ?」
ラライヤ
「うん」
ルイン
「宇宙海賊のモビルスーツを調べているんだったら、ウチの港の25番ハンガーだろう」
ベルリ
「え? そこって、学術研究ライブラリでしょ?」
生徒
「ベルリ……運行長官の息子の癖に、そういう事、分かんないの?」
ベルリ
「だって、学内の施設とキャピタル・ガードの施設は、全然別で……」
生徒
「新設されたキャピタル・アーミィも、別物だものな」
ルイン
「だからアーミィは、学内施設の25番ハンガーに隠して調べる事にしたのさ」
ベルリ
「隠して調べるって?」
生徒
「女海賊が乗っていたモビルスーツが、アメリア軍の物じゃないのが分かっても、動かせないんだもんな」
チア・ガール
「海賊をやっつけた! 偉い! 女海賊を捕まえた!」
ベルリ
「うおぉ! ありがとう! ……っと?」
ルイン
「年下を苛めるんじゃない!」
生徒
「ルインこそベリルを庇って、ベルリのお袋に取り入ろうなんて、流石クンタラ……」
ルイン
「てめぇ!」
ベルリ
「あれ! あれ!」
ノレド
「ステップ、ステップ!」
生徒
「クラウンに居た子じゃない?」
 〃
「キャピタル・アーミィが監視している女子なんだろ?」
ノレド
「ほら」
マニィ
「ノベルもやってるよ?」
チア・ガール
「凄い! 宇宙海賊やっつけた!」
ルイン
「マニィ、彼女どうしたんだよ?」
マニィ
「私達のクラスに編入してきたんだよ。記憶が戻るまで面倒見ろって」
生徒
「クンタラかい?」
ノレド
「何処から来たのかも喋れないんだよ。体まともなのに……」
生徒
「そうみたい」
ノレド
「やめなさい!」
生徒
「ラライヤ・マンディって、本名じゃないんだろ?」
ノレド
「月曜日に発見されたから、マンディだって……」
ベルリ
「クラウンに居た、キャピタル・アーミィの連中だ」
スピーカーの声
「ルイン・リー! ベルリ・ゼナム! 以上の者は、直ちに校長室へ集合!」
ルイン
「みんなで優しくしてやるんだぞ」
生徒
「へへっ」
ノレド
「触らないの! ……あら?」
マニィ
「法皇様よ」
ノレド
「みんな! 礼!」
ハロビー
「礼!」
ゲル法皇
「うーん……空から来た、お嬢さん?」
ノレド
「そういうので覗くから!」
ゲル法皇
「すまなかったね、ノレド・ナグさん」
ノレド
「はい! 法皇様」
ゲル法皇
「あんな年頃の娘では、考えられんが……」
ベルリ
「じゃあ、あれが噂のキャピタル・アーミィのカットシーですか?」
ルイン
「そうだよ」
「お前さ」
ベルリ
「え?」
ルイン
「囚人の塔に入れられている女海賊を助け出したいんだろ?」
ベルリ
「そこまで素っ頓狂じゃありませんよ」
ウィルミット
「あら、駆り出されたのね。ご苦労様」
−−
「クンパ・ルシータ大佐、ご到着」
ウィルミット
「あっ、大佐……」
ベルリ
「こんばんは」
クンパ
「ああ、ベルリ君。御子息が海賊のモビルスーツを捕まえたとは、流石ですな」
ウィルミット
「偶然でしょう。負けず嫌いで、手が早いだけで」
クンパ
「そうなのかな?」
ベルリ
「母の期待に応えようとしたら、こうなります」
クンパ
「長官のご気性こそ、御子息には毒の様ですな」
ウィルミット
「嫌ですよ」
−−
「礼!」
ウィルミット
「法皇様は、もういらっしゃって……!」
ゲル法皇
「どうぞ、お座りになってください」
外交官
「おお、運行長官がいらっしゃった」
ウィルミット
「何で、このようにお早く……?」
外交官
「こちらの花火が見たかったのです」
ウィルミット
「恐れ入ります」
「こちらが、クンパ・ルシータ……」
ゲル法皇
「イザネル大陸の方々に、穏やかにな……」
クンパ
「はい。調査部は、世界情勢の助言をするだけですから」
デレンセン
「何のノイズだ?」
クンパ
「宇宙海賊だと?」
デレンセン
「ミノフスキー粒子を散布されたようです」
ノレド
「ノイズばっか」
ハロビー
「ノイズばっか、ノイズばっか」
ノレド
「ノベルは黙るの!」
マニィ
「どういう事?」
ノレド
「うーん、あれじゃない?」
ラライヤ
「おウチ、おウチ」
ノレド
「混信していた時、GのパイロットやGを奪い返すって言ってなかった?」
ラライヤ
「あっ……」
マニィ
「何?」
ノレド
「えぇっ?」
−−
「空襲だって! 爆発だって!」
デレンセン
「アーミィは、まだ出来上がっちゃいないんだ!」
ベルリ
「あれ、海賊のモビルスーツじゃない?」
ルイン
「地上戦をやろうっていうのか」
ベルリ
「あのレクテン、無茶でしょ」
ラライヤ
「うっ!」
ノレド
「ラライヤ!」
マニィ
「大丈夫?」
ノレド
「……ラライヤ?」
マニィ
「乗りな?」
ベルリ
「囚人の塔か、25番ハンガー?」
ルイン
「そうだろうが」
マニィ
「ルイン!」
ノレド
「ベル!」
ラライヤ
「G! Gの……」
ルイン
「何だって?」
ベルリ
「わ、分かりません」
ルイン
「お前達は家に帰れ!」
ノレド
「25番ハンガーに行くんでしょ?」
ベルリ
「囚人の塔が狙われてるって思わないか?」
ルイン
「お前……運河はどうするんだよ」
「あいつら」
マニィ
「ベルリ達がやるなら!」
「女の力で!」
「ルイン! そっち、危なくないの?」
ルイン
「分かってる! 逃げ遅れてんじゃないのか?」
ベルリ
「だったら、あの人は……」
ルイン
「え? レクテンで海賊?」
マニィ
「ベル! やめなさい!」
ベルリ
「行ってやる!」
「アイーダ・レイハントン! 返事して!」
ノレド、マニィ
「女に気を取られて!」
ベルリ
「ライト消して」
−−
「当番兵は動くんじゃない!」
−−
「出足が遅過ぎるんだよ!」
−−
「アメリアのモビルスーツじゃないのか?」
−−
「宇宙海賊って話だ」
マニィ
「もっと前に行って。しゃがんで……」
−−
「奴等は何も言ってないんだから、勝手な思い込みで喋るな!」
−−
「怪我人、居ませんか?」
−−
「奴等、正気じゃないぞ!」
−−
「カットシーは、ちゃんと戦え!」
ベルリ
「外に逃げるんだ! 聞こえているだろ?」
ノレド
「外に逃げて!」
ベルリ
「あれ? こっちか!」
ノレド
「ベル? ベル!」
「階段だけ? ベル?」
ベルリ
「迷路のつもりなんだろ」
「個室がある」
ノレド
「何? 光の棒?」
ベルリ
「え? まさか、ビーム・サーベル!」
「まだ上があるんだ」
ノレド
「こっちから下だ」
アイーダ
「ベルリ・ゼナム君!」
ベルリ
「え?」
ノレド
「何だ?」
「あっ! こいつか!」
ベルリ
「あ、動かないでください!」
ノレド
「駄目でしょ! お尻を出さない!」
「あ、あんた!」
アイーダ
「あんたこそ、わざと強く当てたでしょ!」
ノレド
「ハンティング用のパチンコだよ。本気で使ったら、あんたのお尻に穴が空く」
ベルリ
「何で僕の名前を知っているんです?」
アイーダ
「Gセルフを動かした飛び級生って、取調官から教えてもらいました」
ベルリ
「貴方が奴らを呼んだんでしょ?」
アイーダ
「身包み剥がされて、呼べる訳ないでしょ」
ベルリ
「何で貴方のような人が、宇宙で海賊なんかを……」
アイーダ
「地球上に太陽光発電のパネルを貼ればいいのに、キャピタルはそれを禁止しています。それって独裁でしょ?」
ベルリ
「地球(聞き取れない)……からなんですよ!」
「うっ!」
ノレド
「あんたは! ベルを引っ叩いた!」
ハロビー
「引っ叩いた!」
ルイン
「ここは、出るぞ!」
ノレド
「狙われてるんだ」
ベルリ
「先輩!」
ルイン
「ミノフスキー粒子が撒かれる前に、あんたを返せという通信が入っていた」
アイーダ
「流石、カーヒル大尉が来てくれて……」
ルイン
「ほら」
ノレド
「宇宙で海賊をやれば、そりゃ死刑でしょ」
マニィ
「ルイン、ボートは出してもらえるって」
ルイン
「そうか、ご苦労さん」
ベルリ
「ボートって?」
ノレド
「25番ハンガーに行きたいんでしょ?」
アイーダ
「モビルスーツの所へ行くんですか?」
マニィ
「何で分かるの?」
ノレド
「マニィ、迂闊だよ!」
ルイン
「この橋じゃ渡れないぞ」
アイーダ
「渡りましょう!」
ルイン
「えぇっ?」
ノレド
「何、あれ?」
ベルリ
「ケルべス教官?」
ルイン
「何ですか、これ」
ケルべス
「さっさと乗ってくれ。海賊を追い返すんだろ」
ルイン
「そりゃそうです」
ケルべス
「海賊のモビルスーツは移動させたいんだとよ」
「よし、やれ」
ルイン
「マニィ!」
ケルべス
「アーミィの連中はまだ、海賊のモビルスーツを動かせないでいるんだ。それで、ベルリに手伝わせろって伝言なんだ」
ベルリ
「伝言って、誰からなんですか?」
ケルべス
「デレンセン大尉……デレンセン教官殿だ」
カーヒル
「民間人が乗っている? アイーダさんのアイリス・サイン」
「間違いない。なっ、こいつは……何だ? アイリス・サインが二つも出ているだと?」
「アイーダ様! どういう事なのです!」
ケルベス
「25番ハンガーだぞ」
兵士
「はっ!」
ベルリ
「見えますか?」
ルイン
「25番ハンガーだ」
「ハンガーを調べるつもりだぞ、あいつら!」
ベルリ
「さっきの奴は来るかも」
ケルベス
「何で人が居ないんだよ」
ベルリ
「あいつ!」
ハロビー
「ベル・ノレド、ベル・ノレド」
マニィ
「ラライヤ、降りましょう」
ベルリ
「あれか!」
ケルベス
「アーミィだなんて、即席の組織だから……」
ベルリ
「あれ?」
アイーダ
「何です? ……何です?」
ベルリ
「僕が出た時のまんまの格好なんですよ、これ」
アイーダ
「Gセルフです」
ベルリ
「何で?」
アイーダ
「私が付けた呼び名です」
ベルリ
「ハッチだって開けたままだし……」
ノレド
「……えっ?」
ケルベス
「その為に来たんだろ。ルインは、艀のエンジンをスタートさせろ」
ルイン
「はい」
ケルベス
「ベルリはそいつを動かせ」
ベルリ
「えぇっ? はい!」
カーヒル
「Gセルフと姫様……」
「組み立て? いや、レクテンの整備か」
ノレド
「その女!」
ラライヤ
「誰かさんが持ってきた……」
マニィ
「ラライヤ?」
ケルベス
「ベルリ! そいつは叩き落せ!」
ベルリ
「落とせって言ったって……」
「あっ!」
「んなろっ!」
「僕だって、動かせるんですからね」
カーヒル
「前世紀のクラシック・コレクションかい」
G・セルフ
「レイハントン・コード、確定」
アイーダ
「貴方……!」
ベルリ
「バック・パックをセットして」
G・セルフ
「ユニバーサル・マルチ・コンタクト、セット・アップ」
ベルリ
「この音声が出たら、僕、追い出されちゃって」
アイーダ
「でも、これは動き出した……カーヒル大尉にも、クリム・ニックにも出来なかったのに」
G・セルフ
「バック・パック、フィックス」
ベルリ
「あ、これでいいみたい。でしょ?」
アイーダ
「えっ?」
カーヒル
「ジョバンニ、隣を頼む」
ジョバンニ
「はっ! カーヒル大尉!」
マニィ
「ルイン、出たら目立つんじゃない?」
ルイン
「どの道、見付かっちまうんなら……」
ケルベス
「まだ、ミノフスキー粒子が邪魔しやがって」
「保護観察の子は喋れるようになったのか?」
ノレド
「喋ってない、喋ってない。ねぇ?」
ラライヤ
「誰かさんが、誰かさん……♪」
アイーダ
「何で、ここで取り付けたバック・パックが?」
ベルリ
「みんな国際基準なんだから、そりゃ合いますよ」
アイーダ
「カーヒル、何処なんです……!」
カーヒル
「ぬっ、Gセルフだよな……」
ベルリ
「あっ!」
カーヒル
「アイーダ! 姫様!」
アイーダ
「カーヒル!」
ベルリ
「あいつ!」
カーヒル
「アイーダ様がバック・パックを背負って動かすか? 敵対行為!」
ノレド
「ベル!」
ジョバンニ
「カットシーか?」
ベルリ
「うぉぉっ!」
カーヒル
「そいつをキャピタルに渡すわけにはいかんのだ!」
アイーダ
「きゃあぁぁっ!」
ベルリ
「仲間を殴り殺すのか!」
カーヒル
「姫様!」
ベルリ
「あっ!」
アイーダ
「返してください! カーヒル大尉を生き返らせて、私に返してください! 貴方は殺さなくていい人を殺したんです!」
ベルリ
「僕は、殺しちゃ……!」
アイーダ
「大尉は、アメリア軍を背負っていける人だったんです! 熱血漢で優しくて、優れた大人だったんです!」
ノレド
「何よ、あの女! ベルが人殺しする訳ないのにね!」
マニィ
「そう! 自分で仕掛けた結果なのに……」
ラライヤ
「パーパ、パーパ……」
ルイン
「一発でしょ?」
ケルベス
「中は完全に焼き切れているな」
ルイン
「ベルは、彼女を庇ってやったって言ってますよ」
ケルベス
「それで、あれかよ……」
アイーダ
「そのコックピットを元に戻してください! そして、カーヒルを生き返らせて! カーヒルと戦えた貴方なら、
そのくらいのこと出来るでしょ! ベルリ・ゼナム!」
ベルリ
「そりゃ、無理です……」
アイーダ
「ああっ――!」
ケルベス
「はい、聞こえます、デレンセン大尉。そのまま真っ直ぐに来てください」
「え? 何ですって?」
デレンセン
「承知したって言ってるだろ!」
ケルベス
「調査部の連中も来てるってんですか?」