第5話 敵はキャピタル・アーミィ

ウィルミット
「法皇は、タブーは守られていると言うだけで……私のクラウンは、アーミィ・カラーに塗られてしまっているのだぞ」
「そもそも、キャピタル・アーミィがタブーを破っているじゃないか」
チア・ガール
「世界を守れ! キャピタル・アーミィ! ニュー・マシンで守れ! キャピタル・アーミィ! エルフ・ブルック!」
マニィ
「あれが、エルフ・ブルックなんだ」
デレンセン
「あれが正式採用になったんで、我々に後退命令が出たんですかね」
ベッカー
「貴公がエルフ・ブルで出したデータを元に、量産した一号機だ。いい出来だろう」
チア・ガール
「マスクだって!」
 〃
「格好いい!」
 〃
「いいんじゃないの?」
 〃
「だっさ〜」
マスク
「出撃に当たり、お見送りありがとうございます」
ジュガン
「期待しているぞ」
デレンセン
「あのマスクは何です?」
ベッカー
「モニタになっている。一つ二つの操作も助ける」
ジュガン
「調査部から出た資料のものを、試作させた」
マニィ
「今日のキャピタル・ガードの中にも、ルインは居なかったな」
ジュガン
「大佐には、前世紀の資料『ヘルメスの薔薇の設計図』を」
クンパ
「タブー破りをやれと仰るなら、スタッフと予算は数倍必要ですな」
ウィルミット
「そういう事で、キャピタル・ガードから人員を引くのは、やめて頂きたい」
クンパ
「息子さんを救出する事で、アーミィは必死なのですがね」
ベルリ
「教えてください! クリム中尉の言っていた『宇宙からの脅威』って何なんです?」
アイーダ
「本人から聞かなかったのですか?」
ベルリ
「この海賊部隊に入れば、教えてくれるって」
アイーダ
「なら、入隊しなさい」
ベルリ
「そんなの」
ノレド
「補給艦は来るし、新型のモビルスーツはあるし……」
ラライヤ
「ほら、お友達」
ハロビー
「よっ!」
ラライヤ
「ねーっ!」
ノレド
「どうみても軍隊だよね」
アイーダ
「クリムは、キャピタル・タワーの運行長官の息子が、トワサンガの情報を知らないという話を信じます?」
クリム
「キャピタル・ガードの生徒は、時刻表の事しか頭にないのでしょう」
ベルリ
「トワサンガって、フォトン・バッテリーを運んでくれるスコード教の聖域……神聖な場所なんですよね?」
アイーダ
「それを信じているんですか?」
クリム
「Gセルフが、トワサンガで建造されたものだとしたら、どう考えるのだ?」
ベルリ
「え?」
ノレド
「トワサンガ?」
ラライヤ
「トワ? トワ、トワ!」
ハロビー
「トワ、トワ、トワサンガ!」
ラライヤ
「チュチュミィ!」
クリム
「ラライヤは好きなのだな」
ラライヤ
「チュチュミィ!」
アイーダ
「Gセルフの事、確かなのですか?」
クリム
「ドニエル艦長は、この子が証言してくれるのではないかと言っています」
「おう」
ミック
「中尉、この受取票にサインを」
クリム
「ご苦労だな、ミック・ジャック。今日もまた違う機体じゃないか」
ミック
「ヘカテー……見た目よりは、ずっと取り回しのいいモビルスーツですよ」
「では、次を」
ノレド
「駄目なものは駄目なの!」
ドニエル
「本艦は唯今をもって、アズマッチからの荷揚げは中止する」
副長
「何でまた急に? え、本隊の予定が繰り上がった?」
ベルリ
「え? それ、出たままになってんですか?」
ハッパ
「色々やる事あるんだよ!」
ベルリ
「あら」
アダム
「ハッパ中尉は、こいつに惚れ直したみたいだな」
ベルリ
「この警報、何です?」
アダム
「宇宙艦隊が弾道飛行をするのが早くなったんだろ。こっちは囮をやらされるんだから」
ベルリ
「どうしたんです? この空気の玉……ナット1クール分ですよ?」
アダム
「なに、年代物なんで、使えるかどうか調べていたんだ」
ベルリ
「クラウンから盗んだんじゃないんだ」
アダム
「この島で……」
アイーダ
「貴方は駄目です」
「貴方も!」
ラライヤ
「チュチュミィ」
ベルリ
「すみません。メガファウナって、本物の軍隊なんですね」
クリム
「なぁ貴様、アメリア軍に入隊しないか?」
ベルリ
「中尉の位をくれるのなら、入隊します」
クリム
「それでは、私の階級と同じだ」
ベルリ
「だって、苛められたくありませんから」
部下
「デレンセン大尉のコースをなぞっています」
マスク
「この辺りには、船が隠れられる場所はあるのかな?」
部下
「かなりあります」
アイーダ
「艦長、どういう事なのです?」
クリム
「メガファウナが囮作戦に入る予定は……」
ドニエル
「予定が早くなったんだよ」
「ん?」
ラライヤ
「チュチュミィ」
アイーダ
「あの子達は金魚の糞みたいなものですから、居ないものだと思ってください」
ドニエル
「本艦は現在、アンノウン機に対して動き出しました」
副長
「姫様、こちらで……ん?」
ハロビー
「こりゃ失礼、こりゃ失礼」
クリム
「正体不明機は何機なのか?」
副長
「二個戦隊くらいでしょう」
アイーダ
「ゴンドワン軍じゃないんですね?」
副長
「これ、キャピタル・アーミィのコースですね」
ベルリ
「キャピタル・アーミィって、そんなに戦力があるんですか?」
クリム
「それはこちらが聞きたいくらいだ」
「やめんか!」
アイーダ
「その正体不明機を叩いてメガファウナが囮になれば、カーヒル大尉が計画した作戦は出来るのですね?」
ドニエル
「本艦の性能なら、囮作戦をやった後で宇宙艦隊がキャピタル・タワーを占領するという、カーヒル大尉の……」
ベルリ
「キャピタル・タワーを占領するんですか?」
アイーダ
「君は一々、カーヒル大尉の作戦を目茶目茶にする!」
ベルリ
「それについては謝り切れないでしょうけど、謝ります!」
アイーダ
「謝って済む事ではありません!」
ベルリ
「代わりにはなれませんが、この船は守ってみせます! パイロット・スーツを貸してください!」
ドニエル
「どうなんだ? 天才中尉の意見は」
クリム
「我慢しましょう。今は戦力が必要です」
アイーダ
「艦長……!」
ドニエル
「彼は使える少年です、姫様」
アイーダ
「中尉、宜しく……」
クリム
「はっ! 少年」
ドニエル
「ん……?」
アイーダ
「着替えます」
ミック
「エフラグは、キャピタル・アーミィのダべー・タイプにカットシーかい。こいつが分からないが、クリム中尉のお手並み拝見といくか」
ギゼラ
「ハッチは離水後、ただちに開くぞ!」
ステア
「フィン・オール、展張、あります!」
ドニエル
「ミック・ジャックの通信は?」
副長
「向こうから切れました。フライスコップはいつでも接触してくれます」
ドニエル
「それでいい。アンノウンを叩いて、囮の陽動作戦をやろうっていうんだから」
「クリム中尉、いつでも出られるようにしろ」
クリム
「モンテーロは準備完了。グリモア各機、空中戦になるぞ」
アネッテ
「後は、自分でやる!」
ベルリ
「は、はい」
「うわっ、ぴったり!」
アネッテ
「シートとこっちのアタッチメントの調整が面倒だったんだよ。メットはそれね」
ベルリ
「ありがとうございます!」
ノレド
「ねぇ、いつGセルフで逃げ出すの?」
ベルリ
「戦争になるんだから、今は無理だ。この船と約束した事もあるだろ」
ノレド
「あの女に惚れっ放しなんだ」
ラライヤ
「チュチュミィも!」
ノレド
「チュチュミィは着ないの!」
ベルリ
「あぁ、ラライヤはトワサンガから来たんだ」
ノレド
「何でそんな事が分かるの?」
ベルリ
「こういう姿に驚いたりしていないじゃないか」
マスク
「これだ……海賊船め、宇宙に上がろうという魂胆か」
ステア
「総員! フィン、展張する! いいか、ミノフスキー・フライト!」
ハッパ
「わっ! しっかり押さえとけ!」
ベルリ
「何やってんです?」
ハッパ
「見りゃ分かるだろ!」
ベルリ
「これ、宇宙用の成形ラバーじゃないですか」
ハッパ
「こんな所に水の玉があるんだよ」
「閉まった」
ベルリ
「あの、僕、出撃しろって……」
ハッパ
「分かってるって。こいつをコンパネで確認しろ」
「クレーン下ろせ!」
クリム
「ハッチ開くぞ、グリモアは前へ」
「アイーダ様は、甲板で防戦していただきます」
アイーダ
「アルケインだって飛べますよ!」
クリム
「冗談はやめていただく! テストはしていないでしょう」
アダム
「強風、要注意だ! 後部ハッチも開くようになるぞ!」
ベルリ
「ああっ……!」
ハッパ
「分かったか?」
ベルリ
「はい! 水の玉と空気の玉の回線はレスキュー用なんで、推進剤とかにも使えて」
「あれ? ハッパさん?」
ハッパ
「ドッキング・センサーのチェックだ!」
乗組員
「モンテーロ、出るぞ!」
アダム
「姫様、接触回線で聞こえていますね? 対艦ライフルを持ち出すのは無理です。やめましょう!」
アイーダ
「照準合わせをすれば使えます! 何が私に戦わせないよ!」
ベルリ
「ハッパさん、こっちのセンサー合わせ、終わりました!」
アイーダ
「人助けなど、当てにしません!」
「三機……当たれ!」
ギゼラ
「機銃は上空! 真上!」
クリム
「本隊は下から来る! ここは私が牽制をする!」
部下
「中尉の言う通りだ! 海面から来た!」
マスク
「こちらのタイミングが遅いように見えるだろうが、我々のカットシーの編隊は伊達ではない!」
クリム
「やられた? 何っ!」
「変形して、武器無しで来るとはな!」
マスク
「ふざけているのか!」
クリム
「こいつ! ライフルを直撃!」
マスク
「ハハッ! これで死ねや、宇宙海賊!」
クリム
「ジャベリンはまだある!」
ラライヤ
「コア、コア!」
ノレド
「ラライヤ!」
「ベル、何やってんの? メガファウナを守るんじゃなかったの?」
ハッパ
「ベルリ・ゼナム君! それをGセルフの後ろに付けるんだ!」
ベルリ
「そんな事、言われ……言われたって、こいつは……!」
「よし!」
「何だ?」
アイーダ
「直撃できない!」
ギゼラ
「接触回線で姫様に要求してください!」
ドニエル
「おう! 姫様、聞こえますね? ベルリ少年をGセルフに突っ込んでやってください!」
アイーダ
「え? それは無理です……無理ですよ!」
ドニエル
「戦闘中は、好き嫌いは言わないでいただく!」
アイーダ
「コア・ファイターが勝手に動き回っているんです!」
「飛んじゃってぇ!」
ベルリ
「うおおっ!」
「あれ? 天才さんのモンテーロ……!」
クリム
「とどめは後ろから!」
マスク
「ね、狙いが定まらん!」
「な、何だ!」
クリム
「馬鹿めが! 中身だけ見せても、どうしようもないだろ!」
ベルリ
「今、機銃が出たか?」
「うっ!」
副長
「援軍のスコップも、よくやってくれてます!」
ドニエル
「ギゼラ! 対空射撃は遠慮させるな!」
ギゼラ
「了解! この後の仕事もある。各機銃座、蝿は追い払え!」
副長
「それ、不味いっすよ!」
ドニエル
「次の囮作戦には、弾丸は要らん!」
ベルリ
「そりゃ、駄目でしょ!」
クリム
「頭を……!」
ベルリ
「水の玉だ!」
マスク
「な、何の攻撃だ? 海に落ちたのか? み、水だと?」
アイーダ
「ベルリ・ゼナム! 戻ってきてドッキングしなさい!」
クリム
「少年! メガファウナがGセルフを出している! 戻れ!」
ベルリ
「Gセルフを出してくれたって、対空砲撃をやっている間をすり抜けろって言うの?」
アイーダ
「あれでは無理でしょ……えっ、やるつもり? あの子……!」
ベルリ
「何、オート? 何で? ぶつかる!」
「来た! エレクトリック・システム・フィックス!」
「よし、行けるか? わっ!」
ハッパ
「さっさと上がって撃退しろ!」
ベルリ
「バック・パック無しで、どうするんです?」
ハッパ
「一撃離脱! 45秒間なら飛べる!」
ベルリ
「なら、どいてくださいよ! 何も見えません!」
ハッパ
「わ、悪い!」
マスク
「出てきたか! Gセルフは海賊のものにはさせん!」
ベルリ
「モンテーロの頭を取られて、何が天才パイロットだ!」
アイーダ
「飛んだ!」
ベルリ
「45秒!」
マスク
「歯向かうのか!」
「ビーム・サーベルを網にして防ぐのか!」
ベルリ
「守るだけでは勝てないから……!」
マスク
「何っ!」
ベルリ
「キャピタル・アーミィが、そんなもの使っちゃいけないんですよ!」
マスク
「あのビーム、伸びたか? あんな性能、調査部のクンパ・ルシータ大佐からも聞いていない……が、この戦いのデータは取れた!」
ベルリ
「だ、駄目だ!」
ハッパ
「腰と膝のノズルを使って、落下速度を遅くするんだ!」
ベルリ
「こ、こうか!」
アイーダ
「増援も来てくれています! 頑張ってください! メガファウナは次の作戦があるのですから」
ベルリ
「そんなの無茶でしょ!」
ハッパ
「あっ! アルケインが来てくれてる!」
副長
「Gセルフが入ったんだから、さっさとメイン・ゲートは閉めなさいよ!」
ギゼラ
「総員! これから弾道飛行に入るんですからね!」
アイーダ
「何を言いたいんです?」
ドニエル
「私からも礼を言うつもりですが、姫様からも、ベルリ・ゼナムを褒めてやってください。それが姫様の任務です。義務かもしれません」
アイーダ
「義務ですか……?」
ドニエル
「貴方は、姫様になられる方だからです」
ハロビー
「空気濃度、コンマ005、空気濃度、薄い、薄い」
ノレド
「もういいの!」
ラライヤ
「チュチュミィ、お帰り」
ベルリ
「ラライヤ、良くなってるみたいだね」
ラライヤ
「チュチュミィ」
ノレド
「そうなの。この子、この光景を見て安心しているみたい」
ベルリ
「こういうのに慣れているんだね」
「意外に酷いんだ」
ノレド
「頭無しで戻ってきたんだから、流石、天才じゃないの?」
クリム
「部品はあるじゃないか!」
ハッパ
「ただ置けばいいってもんじゃないんですよ!」
クリム
「それが貴様達の仕事だろ!」
ベルリ
「敵の新型が……本当にありがとうございました!」
アイーダ
「私達こそ、貴方の働きで助かりました。メガファウナのクルー全員に代わってお礼を申し上げます」
ベルリ
「僕らだって死にたくありませんから、おあいこでしょ?」
アイーダ
「おあいこ? そうですね……」
クリム
「よう、少年。少尉でならアメリア軍に推薦してやるぞ」
ベルリ
「中尉でなけりゃ駄目ですよ」
クリム
「なら、私が大尉になってからだな」
「姫様」
ラライヤ
「チュチュミィ」
ドニエル
「総員、本艦は弾道飛行に入る! 各部署、空気漏れチェック! モビルスーツの再出動も有り得る!」
アイーダ
「カーヒル、ごめんなさいカーヒル、ごめん……貴方の敵だったパイロットに、私はお礼を言わなければならなかった!
悔しい、カーヒル……!」
レッセル
「まだ固定するものがあるんだって!」
乗組員
「痛ぇじゃねえか!」