第7話 マスク部隊の強襲

前回のあらすじ

キャピタル・ガードなら、アメリア軍の宇宙艦隊の実態を調べたくなる。その為に、嘘も吐くし海賊仲間とも付き合うけれど、

教官殿の声が聞こえたというのは、気のせいではない。間違いなく聞こえたんだから。

マスク

「私の真実を伝えよう。実は、私はクンタラ出身だ」

「選ばれた諸君達も全員クンタラ出身と分かった。クンタラとはなんだ？」

アーボガス

「今世紀以前、『人に食われるような劣った人』という意味だったと聞きます」

マスク

「このガランデンのマスク部隊として戦果を挙げれば、クンタラの地位は向上する！」

アーボガス

「そして、キャピタル・タワーを支配するまでになる」

マスク

「そういう事だ！」

隊員

「マスク部隊の」

　〃

「エルフ・ブルック隊が」

　〃

「宇宙海賊を叩く！　おおっ！」

ノレド

「そっちに行ったら邪魔になるでしょ！」

ハロビー

「駄目よ、駄目」

ベルリ

「どうしたんだ？」

クリム

「機銃を降ろせ」

ベルリ

「はい」

ハッパ

「そのまま下げろ、そのまま。オーライよ」

ノレド

「ラライヤは、『Ｇセルフで昼寝したい』って聞かなかったのよ」

クリム

「おう少年、これで上がっていいぞ」

ベルリ

「はい、上がります」

クリム

「ラライヤという娘、Ｇセルフに親しみを感じているとなれば……」

「ほう」

整備兵

「おい、膨らんでるぞ」

　〃

「本当にメガファウナになるのかよ」

−−

「着いたぞ」

−−

「第一ナットのコリオール」

おばさん

「いつも毎度！」

ウィルミット

「お互い様」

「街中にもあんな物を入れて……！」

「ダべーがなんで飛べるんです！　ジュガンめ、私に断りもなく……！」

「一番大きなホールを？」

秘書

「キャピタル政府の命令です」

ウィルミット

「ジュガンめ！」

「あははは！」

「ありがとう」

「ジュガン司令、ここはキャピタル・アーミィの前進基地ではないんですよ！」

ジュガン

「食料と水と空気の玉を運び込んでいるだけでしょう」

管制官

「司令、宇宙海賊の船を見付けました！」

ジュガン

「メガファウナが見えるのか？」

ウィルミット

「海賊船って……」

管制官

「はい、これです」

ジュガン

「暈けてるじゃないか」

管制官

「空気層の揺れをこれ以上修正すると……」

ウィルミット

「あぁ、あそこにベルがいる……」

ジュガン

「なんです？」

ウィルミット

「失礼。運行長官として、海賊の船は見ておきたかったもので……失礼」

ジュガン

「いや」

「ベッカー」

ベッカー

「はい」

ジュガン

「クンパ大佐が調達してくれたという、ガランデンは……まるで分からんじゃないか」

管制官

「これです」

マスク

「前進部隊の足場に軍艦とは、ジュガン司令も捷いものだ」

兵士

「あれか、メガファウナのダミー風船」

　〃

「総監直属の部隊が、なんの用だ？」

　〃

「補給だろ、補給。Ｇ系の部品とかさ」

アダム

「はい、Ｇセルフ用のバック・パック、来ましたよ」

クレン

「え、このアサルト、試し撃ちもしてませんよ？　ハッパさん！」

ハッパ

「そんなことだと思った！　実戦で実用テストをやれってんでしょ？　ったくもぅ……」

アイーダ

「冗談でしょ？　機銃の整備は終わっても、本国からの積荷だって今しがた届いたんですよ？」

ドニエル

「艦隊の衛星軌道へ上げるスケジュールを繰り上げるって言ってきたんですよ」

アイーダ

「だからって……」

ドニエル

「そうなれば、こちらは陽動作戦をやるしかないでしょう」

アイーダ

「なんで、モンテーロとＧセルフがあんな所に乗っているんです？」

副長

「クリム中尉が、ビレイとの連携を調整してんです」

アイーダ

「そう。さっき飛ばしたダミーの風船で、キャピタル・アーミィの目は誤魔化せます？」

ドニエル

「気休めにはなりますよ。何しろ、通信は信用できませんから。伝令に来てもらうしかないわけで」

アイーダ

「お陰で、ビレイやレイドルで貨物も届くんですものね」

クリム

「君の好きな瞳をご覧、目が覚めるよ。君の好きな瞳が見たがっているんだよ、チュチュミィもね」

ラライヤ

「綺麗な瞳……」

クリム

「ラライヤを見詰める瞳だからね」

ラライヤ

「チュチュミィ……」

クリム

「チュチュミィも私も見たがっているんだよ。これをラライヤが操縦するのを」

ラライヤ

「操縦？　出来るのかな……チュチュミィ……」

クリム

「出来るのだよ、君は」

ウィルミット

「使える」

兵士

「大尉！　開いてます！」

「大気圏グライダーじゃないか」

ベッカー

「グライダーだと？」

ウィルミット

「キャピタル・タワーでは、あらゆる用意がしてあるのです」

ベッカー

「アグテックのタブーに触りませんか？」

ウィルミット

「歴史的価値のあるものの機能整備は続けなければならないんです」

ベッカー

「下に降りるだけのグライダーに使いようがあるのか？」

兵士

「偵察とかには使えますよ」

ウィルミット

「あっ！　閉じちゃって……！」

兵士

「大尉！　エア・ロックへ退避です！」

「開くぞ！」

ベッカー

「あのおばさん……！」

ウィルミット

「開いちゃう、開いちゃう！　どうして開いてしまったの？」

管制官

「ベッカー大尉からです」

ジュガン

「俺だ」

ベッカー

「ウィルミット長官が乗ったまま射出されて、今は無線も切れているのです」

ジュガン

「婆さんが機体点検をしていたとでも言うのか？」

ベッカー

「あれは、一度出たら戻ってこれません」

ジュガン

「え？」

管制官

「ああ、地球への進入角度を間違えたら、大気の摩擦熱で機体は燃えちゃいます」

ウィルミット

「上手く芝居をやったつもりだけど……」

「無い、宇宙服が無い……落ちているの？　飛んでいるの？」

クリム

「ラライヤにやってもらう」

「出来たか、素晴らしいな」

「ラライヤ、私はモンテーロに行くから……」

「Ｇセルフにライフルを持たせて、ビレイに向けられるかな？」

ラライヤ

「ビ！」

クリム

「チュチュミィも私も見ているからな」

ラライヤ

「見ている？　チュチュミィ」

マスク

「この島の向こうに敵がいる！　エルフ・ブルックは、ビーム・サーベルの発進テストをやる！」

副長

「アンノウン飛行物体、キャッチ！」

ドニエル

「何？　ギゼラ！」

アイーダ

「ダミー風船との位置関係をチェック、教えてください！」

−−

「警報が出ました！　」

クリム

「よし、ラライヤちゃん、シールドを持たせることが出来るかな？」

ラライヤ

「シールド？　シールド……」

クリム

「この動き、正常に見えるが……」

ラライヤ

「私んだ、私んだ。チュチュミィご覧、私んだよ」

ベルリ

「自分も出ます！」

ドニエル

「どこに居るんだ？」

ベルリ

「飯食ってました」

ハロビー

「飯食った」

ノレド

「え？　ベル！」

「え？　ねえ、Ｇセルフも出撃したって……」

ベルリ

「え？　どういう事？」

マスク

「空中変形、遅いぞ！」

−−

「島の向こう側から来るっていうのか！」

アネッテ

「上の事は上に聞かなくっちゃね」

アイーダ

「まだ、そんな事をやっている？」

ベルリ

「食事はパイロットにとっては大切な仕事でしょ」

アイーダ

「急いでください」

「自分はアルケインで出ます！　ベルリ・ゼナムに乗ってもらう機体はありますか？」

アダム

「デッキのレイドルの上のジャハナムなら使えますけど、使わせていいんですか？」

アイーダ

「彼の実力は知っているでしょ？」

「ベル！」

ノレド

「はい！」

ベルリ

「でも……！」

アイーダ

「甲板に出ているジャハナムへ、走る！」

ノレド

「苛めているでしょ！」

アダム

「レイドルのパイロットはジンジャーだ。行け！」

ノレド

「はい！」

アダム

「お前はここまで！」

ベルリ

「行きます！」

アダム

「当てにしているぞ！」

ベルリ

「ジャハナムって、アメリア軍の正式モビルスーツ……！」

整備兵

「ベルリ・ゼナム、乗れ！」

ベルリ

「押忍！」

整備兵

「よし！」

ハッパ

「ユニバーサル・システムだ！　君なら使える！　船を守ってくれ！」

ベルリ

「任せてください！　って言えるようになるまでは、二・三年掛かりますよ……！」

ジンジャー

「ベルリとか、出るぞ！」

「定位したな？」

ベルリ

「はい」

ジンジャー

「やれるか？」

ベルリ

「ビーム・ライフル、試し撃ちさせてください」

ジンジャー

「やってみせろ」

ベルリ

「はい」

ジンジャー

「なんで上に向けて撃たないんだ！」

ベルリ

「敵にビームを見られていいんですか？　ミノフスキー粒子、撒かれちゃってんでしょ」

ジンジャー

「ん、了解だ」

ウィルミット

「角度……これで、なんとか誤魔化せた筈だけど」

「あ、ベルが好きなバナナとシナモンのビスケットを持ってくるのを忘れた！」

「耐熱と気密、大丈夫なのかしら。スコード……」

ベルリ

「本当なんですか？」

ジンジャー

「機体を戻せ。クリム中尉の『ラライヤちゃん』って猫撫で声を聞いているんだよ」

ベルリ

「ラライヤが操縦席に？　まだ記憶は戻っていない筈なのに」

アイーダ

「接触回線、聞こえますね？　ベルリ・ゼナム」

ベルリ

「本気ですか？　そんな大きなライフル持ち出して」

アイーダ

「貴方の指図は受けません。西からのアンノウンの飛行物体って、キャピタル・アーミィですか？」

ベルリ

「キャピタル・アーミィに海上戦力なんてありませんよ」

アイーダ

「今ここに来ているんですよ」

クリム

「ラライヤちゃん、しゃがめ。落ちるぞ」

ラライヤ

「光った。光っている」

クリム

「光った？　アンノウンと戦っている？」

「ラライヤ！」

「どちらがやられたんだ？」

ラライヤ

「光った！　チュチュミィ！　綺麗な瞳さん！」

マスク

「来たかよ、Ｇセルフ！」

クリム

「変形をするとでもいうのか？」

マスク

「大尉が捕獲為損なった機体は、キャピタル・アーミィではまだ解明されていないのだ！　奪い取るぞ！」

「アメリアのモビルスーツなど！」

クリム

「な、なんと！　なんと！」

ラライヤ

「溺れちゃう、沈んじゃう！　チュチュミィ！」

ベルリ

「あ、まるで出来ていないじゃないか！」

「力を抜いて！」

アイーダ

「クリムのモンテーロを助けます！」

ゲッツ

「了解！」

ベルリ

「ララ！」

ラライヤ

「ベル！　リン、リーン！」

ベルリ

「ああ、チュチュミィはお外を見たいんだね」

ラライヤ

「お外？」

ベルリ

「嬉しがっているじゃないか」

ラライヤ

「あ、お目々は赤いんだ」

ベルリ

「すみません、この子を頼みます！」

ジンジャー

「いいけど、貴様はどうするんだ？」

ベルリ

「中尉とアイーダさんを助けにいきます！」

クリム

「落ちてくれれば！」

「モビルスーツ形だと飛べないと見た！　ならばさ！」

マスク

「手負いは逃がさない！」

クリム

「逃げ切れない！」

マスク

「新型の助っ人か？」

アイーダ

「キャピタル・アーミィが編隊を持っているなんて……！」

アーボガス

「アメリアのエリート面した連中なんか！」

「ふ、エリートが海賊を気取ったってな！」

アイーダ

「狙われた！」

「不味い！　クリム！」

「私は……！」

アーボガス

「こいつは頂く！」

「斬られた？」

マスク隊隊員

「マ、マスク大尉！」

　〃

「あ！」

マスク

「Ｇセルフ、海の中から出て来たか！」

ベルリ

「接触回線、開いた！　アイーダさん、ブースターを使って！」

アイーダ

「ベルリ・ゼナム！　こう？」

ベルリ

「アイーダさん、迎撃します！」

アイーダ

「あ、はい！」

マスク

「Ｇセルフは海賊が使っていいものではない！」

ベルリ

「貴様達はＧセルフが空から降ってきた意味が分からないのか！」

マスク

「落ちろ！」

ベルリ

「レイハントン！　コントロール……出来る！」

マスク

「落ちないのか？」

「バリアだと？　とは言え、あとひと押しで捉えられる！」

アイーダ

「ベルリを助けないと……！」

クリム

「姫様、無茶です！　Ｇセルフは万全ではありません！」

ベルリ

「え？　後退します、みんなで！　手傷を負ってるんでしょ？」

マスク

「なら、束にして落としてやるよ！」

「何？　何だ？」

「アメリア軍の援軍か？」

クリム

「姫様、アーマーザガンです！」

アイーダ

「あんなものまで、父は開発させていたんですか？　けど、命拾いはした……」

ベルリ

「アメリア軍のモビルアーマーだってのか？　けど、あの部隊は全滅してはいない」

ウィルミット

「あの島の何処かに、ベルは居るはず」