第11話 テリトリィ脱出

前回のあらすじ
メガファウナをキャピタル・テリトリィから脱出させる為の戦闘で、僕は自信を付けた。けれど、そんなものが役に立つような事はなかった。
現実は次々に変化していくから、それに合わせるだけで必死。どっちを向けば明日があるんだ。
ドニエル
「本艦は周回軌道まで上がる! 空気漏れが無いかキチンと調べろよ!」
アダム
「出撃するかもしれないマシンの事を考えて整備しろってんだろ?」
ハッパ
「補強のコーティングは圧力を掛けないといけないの! 厚みを平らにしていくんでしょ!
Gセルフも、窪みにコーティングを叩き込んで圧力を掛ければ船体の材質と同化してくれるんだから、しっかりやれ!」
ベルリ
「まぁ、Gセルフがやる方が早いけど……」
「あっ! 危ないですよ!」
ハッパ
「力を入れ過ぎるな! 穴が空くでしょ!」
ケルベス
「修理道具の使い方は武器とは違うんだよ、戦友!」
ベルリ
「分かってます!」
アイーダ
「動くからキツくなっちゃうでしょ!」
ノレド
「ノベル、ラライヤが逃げたら報せるんだよ!」
ハロビー
「報せる!」
アイーダ
「Gセルフに抱き着きに行かれたら困るでしょ」
ドニエル
「そりゃまぁ、そうですけどね」
「サラマンドラが先鋒でキャピタル・タワーに向かったと言うんだな?」
副長
「アメリアの国営放送はそう言ってました」
アイーダ
「そのサラマンドラの動きを止めに行きます」
ドニエル
「何て言いました?」
アイーダ
「サラマンドラの戦闘指揮を、アメリア軍を自分の物だと思っているような青年に任せられますか?」
ドニエル
「ニッキーニ大統領の息子には、そういう所はありますけど……」
アイーダ
「カーヒル大尉のキャピタル・タワーを占領する作戦は、もうやる意味がないんです。キャピタル・タワーが守りに入ったんですから」
ノレド
「そっ! 宇宙戦争反対!」
ハロビー
「ラライヤ、生体活動低下」
グシオン
「このナビゲーション・システムで、一気にニューヤークに到着するか」
「大統領が勝手に宇宙艦隊を発進させるのなら、それは統帥権の侵害である」
ウィルミット
「アメリアの国営放送のニュースと言うのなら、キャピタル・アーミィへの威しです。私達のタワーへは関係ありません」
運行員
「本当にキャピタル・タワーは大丈夫なんでしょうか?」
ウィルミット
「アメリアだってタブー破りはしませんよ、絶対に」
運行員
「何だ、いまのは?」
パイロット
「メッサメー、離脱!」
 〃
「ブレイボーバル、異常無し!」
バララ
「バララ、良好!」
パイロット
「アウエーテン、追尾良!」
マスク
「よし、一挙に降下するぞ! マックナイフの性能の見せ所である!」
グシオン
「何? 艦艇が二隻だと?」
「本気か?」
「サラマンドラめ、キャピタル・タワーから出たものは何でも敵だと思っている!」
マスク
「スペース・ガランデンは海上とは違っていい姿をしているではないか」
ガランデン艦長
「マスクめ、新鋭機をキャピタル・タワーからここまで運んでくるとは見直したよ」
マニィ
「マスク大尉が帰ってきてくれた!」
新兵
「怖そう……」
マスク
「自分は、このマックナイフで連敗の汚名は注ぐ覚悟であります!」
士官
「新兵はデッキ・チェック!」
マニィ
「はい!」
マスク
「しかし、クンパ大佐とジュガン司令の手際の良さは異常だと感じるな……」
マニィ
「ビス一本、ゴム・パッキン一個浮いていたらモビルスーツに傷付くんだから!」
マスク
「ここの仕事にも慣れたようだな」
マニィ
「はい!」
マスク
「マックナイフの運び込んできたコンテナの整備は宜しく頼む」
マニィ
「はい!」
マスク
「バララ、当面の敵は二隻らしい。ブリーフィング・ルームへ集合」
マニィ
「ルインはクンタラの名誉を賭けた筈なのに……」
クリム
「先程の機銃の演習はなんだ! グライダー一機を落とせなかったとは、大隊長として恥ずかしいぞ!」
「よし! 次に紹介するのは、第二小隊のミック・ジャック!」
ミック
「ありがとう、諸君! キャピタル・タワーを占領すれば、世界もキャピタル・タワーもアメリアの物になる!」
クリム
「その暁には世界の女王はミック・ジャックだ! その王になれる者は……!」
兵士
「大隊長殿! 尊敬します!」
クリム
「自分ではない! この中で手柄を立てたものだ!」
ミック
「海賊船に居た時とは違いますね」
クリム
「パイロットなど、煽てて使うのがコツだろ?」
ミック
「アハハッ……!」
ズッキーニ
「我がアメリアが建造した宇宙艦隊は、久しく続いているゴンドワンとの大陸間戦争に決着を付けると共に、
アメリアが地球と宇宙を制覇する為の作戦であるからして、ラトルパイソン以下の艦隊の……」
グシオン
「大統領め!」
ズッキーニ
「宇宙艦隊の出陣式なんだぞ!」
「グシオン? 遅かったではないか。今までどこで何をやっていたのか?」
グシオン
「我が優秀なスパイ組織が調べた事実を確認してきたのです」
ズッキーニ
「事実を調べていただと?」
グシオン
「はい、キャピタル・タワーにアーミィが上がってはいますが」
ズッキーニ
「キャピタル・タワーを足場にしてゴンドワンを叩くというのは、貴公の立てた作戦である!」
グシオン
「そうではあるのですが、何故サラマンドラをこの時期に出動させるのです? それも、私の許可もなく……」
ズッキーニ
「キャピタル・アーミィがタワーを占拠したというから、大統領権限で発進させたのが何故悪いのか?」
グシオン
「今は中止にして頂きたい!」
ズッキーニ
「宇宙艦隊には後方支援をしろと号令を出してしまったのだ! 今更取り消せる問題ではない!」
グシオン
「今更取り消せない……軍令に従う義務が自分にはあります」
ズッキーニ
「アメリア帝国の威信の下、キャピタル・タワーの独占を阻止して世界を解放してみせろ!」
グシオン
「はっ!」
管制官
「サラマンドラとガビアルを追っているのは、我がガランデンと海賊船」
ジュガン
「モビルスーツには、キャピタル・タワーから離れると戻れなくなると警告しておけ」
管制官
「はっ!」
ジュガン
「おや、いつ御到着で?」
クンパ
「法王様と御一緒させて頂きました」
ジュガン
「ここは修羅場になるかも知れませんぞ?」
クンパ
「私には、マスク部隊の首尾を見届ける義務があります」
ジュガン
「アメリア軍の即席の宇宙艦隊など一気に撃沈して、ズッキーニ大統領の鼻をへし折って見せますよ」
ウィルミット
「メガファウナが宇宙に上がっているという事は、ベルリも……?」
「まさかね」
「あ、法王様……」
付き人
「あぁ、ご心配なく」
ウィルミット
「ベルとアイーダさんが乗ったメガファウナが宇宙に上がってきて、Gセルフは宇宙から落ちてきた……」
「そんな……ベルは私が育てたのよ。誰が他人に渡すものですか」
ズッキーニ
「そうかい、グシオン総監はスコード教の法王をザンクトポルトで人質にする事もできる、と言ったのだな?」
「はい、その様です」
ズッキーニ
「伊達に遅刻をしてきた訳ではなかったか」
「はい、その通りで」
ズッキーニ
「うむ」
「来ますよ」
ズッキーニ
「私の息子クリムが戦闘指揮をするサラマンドラを、この艦隊に守らせる事ができる」
「ならば、出来たばかりのキャピタル・アーミィなど物の数ではない」
ラトルパイソン艦長
「周回コースより衛星軌道に入り、それ以後の針路は?」
グシオン
「最上角度でザンクトポルトへ向かう」
ラトルパイソン艦長
「そんな無茶な……!」
グシオン
「キャピタル・アーミィの戦力を分散させる為です。そこで法王を人質に取る……という方法もあります」
ラトルパイソン艦長
「となれば、一方的な展開になりますな」
グシオン
「まあ、そうなりましょう」
ベルリ
「アイーダさん!」
アイーダ
「何でしょう?」
ベルリ
「もうサラマンドラへ辿り着けませんよ」
アイーダ
「宇宙海賊をやった経験があります」
ハロビー
「ラライヤ、焦れた!」
ノレド
「ラライヤ! 何で解けたの?」
アイーダ
「あら?」
ベルリ
「えぇ?」
ノレド
「わあっ!」
ガランデン艦長
「本艦スペース・ガランデンの護衛は、ウーシァとカットシーだ!」
通信兵
「ウーシァ発進! マックナイフの邪魔をするな!」
マスク
「ジュガン司令は両面作戦を要求しているが、こちらは宇宙での戦闘は初めてなんだぞ!」
「出るぞ!」
バララ
「はい! バララ・ペオール、出ます!」
クリム
「ガランデンからモビルスーツが出たと言って、私がキャピタル・タワーに先制攻撃を掛ければ、戦力を分散させる事になる」
ミック
「仕方無いじゃありませんか、迎撃は私がやりますよ」
クリム
「そうしてくれ!」
ミック
「では、ヘカテーはサラマンドラの後ろに位置して……ガランデンから出た連中を相手にするさ!」
クリム
「サラマンドラは……ちっ、ミノフスキー粒子だ! という事は、敵との距離は一戦闘距離になった」
「何だ? ガランデンから出たモビルスーツ部隊の動きが妙だな」
「キャピタル・アーミィの奴、速いが、こちらだって!」
ミック
「キャピタル・タワーからもモビルスーツが出て、ガランデンは向こうから?」
ケルベス
「アイーダさんは駄目だって!」
ルアン
「姫様はメガファウナの護衛です」
アイーダ
「ルアンまで……!」
ケルベス
「キャピタル・アーミィの連中なら、俺が止めてみせます!」
アイーダ
「聞こえません、聞こえません!」
「あら?」
ハッパ
「宇宙用バック・パック、ラジャー!」
ベルリ
「ありあとやす!」
「混戦になります! そこから抜け出した奴をここから狙撃して下さい!」
アイーダ
「ああ、そうか! そりゃそうよね……」
サラマンドラ艦長
「キャピタル・アーミィにも味方機にも当てちゃならん!」
「何故、撃たない?」
サラマンドラ副長
「だって、ナットの手前で敵味方が入り乱れてるんです!」
クリム
「ミノフスキー粒子を撒いたってのはだな!」
「接近戦でやられるって事よ!」
ミック
「宇宙で羽根まで使って逃げるのか!」
クリム
「初めての宇宙戦で蝶のように舞い、蜂のように刺す!」
ミック
「流石、天才クリム!」
クリム
「ミック、ガランデンから出た部隊はどうした!」
ミック
「こちらに合わせて出て来ましたが、追い掛けてきます!」
クリム
「どこだ、キャピタル・アーミィの連中は!」
マスク
「キャピタル・タワーから出た部隊には、味方だと報せろ!」
「海賊船の方位から出たモビルスーツがあるだと?」
「これか? キャピタル・ガードのレックスノーじゃないか」
「どういう事だ!」
ケルベス
「うわっ!」
マスク
「私の盾になってもらう!」
ケルベス
「何だと?」
マスク
「貴様は海賊船から発進してきた!」
ケルベス
「そちらの機体だって、どこのものなんだ?」
マスク
「キャピタル・ガードの素人が! ハハッ……!」
ケルベス
「何だ? こいつは……!」
バララ
「海賊船でも光信号は読めるよね?」
ベルリ
「光信号?」
アイーダ
「キャピタル・アーミィのモビルスーツは、何て言ってきたんですか?」
ドニエル
「『Gセルフとラライヤを差し出せば攻撃はしない』と言ってきました」
アイーダ
「え? Gとラライヤ……」
ベルリ
「どうする、ベル? やるか、やめるか……」
「あっ! 保った!」
「指までビームの銃身か!」
マスク
「よう、Gセルフ! 当方に投降しろ!」
ベルリ
「何だと?」
マスク
「そうすれば、ケルベス中尉のレックスノーはこのまま返還する!」
アイーダ
「えっ……?」
ベルリ
「そちらさんはどちらさんなんです?」
「出てきた……」
「あっ! ワイヤー?」
マスク
「これが実弾だったら貴様は即死している。これで投降は決まりだ。ラライヤ・マンディも寄越せばこのまま見逃してやる」
ベルリ
「メットの下もマスク!」
マスク
「データ・ファイルとセンサーが内蔵されているんでな!」
ベルリ
「ラライヤは、まだ記憶喪失のままなんだ!」
マスク
「分かっている!」
ケルベス
「マスク野郎を蹴飛ばしてやる!」
バララ
「はっ! しまった!」
アイーダ
「ルアン! オリバー!」
マスク
「どこに居ても飛び級性は邪魔をする!」
「バララ! メガファウナに揺さぶりを掛けて……!」
バララ
「船にはラライヤが居るってので……!」
「マスクのドジ! Gセルフが戻った!」
マスク
「ラライヤを手に入れるまでは、メガファウナを攻撃できない!」
バララ
「もう!」
ベルリ
「この宇宙用バック・パック、レスポンスがいい!」
マスク
「バック・パックにメガファウナか……攻撃のしようがない!」
ベルリ
「アイーダさんに宇宙戦争をやらせる訳にはいかない!」
バララ
「落ちろって!」
アイーダ
「ビームが弱い……!」
バララ
「何故、落ちない!」
「あっ! 何だ!」
アイーダ
「動きが止まった!」
バララ
「私がドジか、相手が出来過ぎ?」
マスク
「バララ、下がっていい! 光り物に騙されたな!」
ベルリ
「マスク!」
ハッパ
「ショートしている所は電源を切るんだ!」
ノレド
「ケルベス中尉! ラライヤを寄越せって本当なの?」
ケルベス
「本当だ。だから敵はメガファウナを攻撃してこないんだ」
ラライヤ
「ラライヤ、私……」
ケルベス
「しかし、いつ流れ弾にやられるか分からないんだから、気を付けるんだ」
ノレド
「どう気を付ければいいの?」
ハロビー
「どーすんのさ? どーすんのさ?」
ベルリ
「変形が隙になる!」
マスク
「うっ!」
ベルリ
「だぁっ!」
マスク
「ぬっ! バララ!」
バララ
「マスク大尉! 相手はGセルフですか?」
マスク
「大した事はない……が、メガファウナに侵入できなかったが……」
サラマンドラ艦長
「モビルスーツには帰投信号を。ここからキャピタル・タワーに向かうには、周回軌道を戻る事になるので無理だ」
ミック
「メガファウナが妙な動きをしてくれたお陰で……!」
クリム
「ガランデンから出たモビルスーツ部隊がメガファウナと接触したようだが、沈められなかった」
ミック
「そのようでしたね。何故なんです?」
クリム
「キャピタル・アーミィが戦艦で上がってきての初陣だったのだ。それでみんなでとっ散らかったんだろ? ハハッ……!」
ミック
「ああ、そりゃそうか。フフッ……」
ガランデン艦長
「ざまあないな、メガファウナに接触してそれかい」
マスク
「自分のミスであります。低軌道コースの癖も忘れておりました」
ガランデン艦長
「クンパ大佐からの通信なら、マスクに届けてやれ」
マニィ
「マスク大尉のマックナイフがあんなに傷を受けて……」
ジュガン
「マスクの部隊は、まだチームワークが出来ていないようですな」
クンパ
「いきなり両面作戦を押し付けたのが祟りましたな」
ジュガン
「祟りましたか……」
クンパ
「ガランデンには、このままザンクトポルトへ上がれと命令を出しておきました」
ジュガン
「宇宙からの脅威から法王を守る為ですな?」
クンパ
「無論そうです」
グシオン
「アイーダもメガファウナに戻れたのだな?」
ラトルパイソン艦長
「はい、Gセルフも帰投、損失損害は一切なし、です」
グシオン
「本艦隊はこのままザンクトポルトまで上がるが、いいな?
ラトルパイソン艦長
「はい、補給艦も上がってくる予定ですし、本艦ラトルパイソン以下クロコダイル級五隻、キャピタル・タワーのクラウンより速いです」
グシオン
「恐るべきものだな、ヘルメスの薔薇の設計図の実力は……」
ドニエル
「グシオン総監はアメリア宇宙艦隊を指揮してザンクトポルトへ上がります」
アイーダ
「ザンクトポルトって、キャピタル・タワーの一番上のナットでしょ?」
ドニエル
「フォトン・バッテリーを受け取る聖なる場所だ」
ベルリ
「軍隊が上がったりしたら、最大のタブー破りで祟りますよ!」
アイーダ
「祟る……?」
ドニエル
「ん、祟りかよ……」
ノレド
「そりゃ、祟りますよ!」
ラライヤ
「宇宙だ……」
ハロビー
「宇宙って言った、言った」