第17話 アイーダの決断

前回のあらすじ
キャピタル・テリトリィで育った僕と、アメリア軍の総監の娘が兄弟だなんて、誰が信じるものか。
そんな所にガランデンが来たというのでGセルフで出たのだけれど、僕が何をやったのか知らない人に奉れられたって楽しい事はないのだから、
一人で踏ん張るしかなかった。
アイーダ
「艦長、ゴミ避けの隕石風船はもっと出せないんですか?」
ラライヤ
「これは事故ですから、瓦礫が大桟橋の方に行かないようにするんです」
「南の方のリングの修理、ちゃんとやってないんで、これは人災ですよ」
ドニエル
「文句は言いなさんな、ラライヤさん。追加の隕石風船を放出するぞ。メガファウナの瓦礫避けだ」
ラライヤ
「は、はい!」
アイーダ
「移動させます。ラライヤも手伝ってください」
ラライヤ
「メガファウナの前へ出します」
「アイーダさん」
アイーダ
「何かしら?」
ラライヤ
「こんなゴミ掃除に託けてメガファウナが出港したのって、何か訳があるんですか?」
アイーダ
「訳? モロイの港に居放しになると……」
ラライヤ
「はい」
アイーダ
「自由にならないでしょ?」
ラライヤ
「そ、それはそうでしょうね」
アイーダ
「ラライヤ! 右側!」
ラライヤ
「えっ?」
「あっ、中尉、ありがとう」
ケルベス
「ラライヤの体には、擦り傷一つ付けさせないよ」
リンゴ
「ラライヤの体がどうしたって?」
ケルベス
「リンゴ!」
リンゴ
「ラライヤちゃん、怖くなかったかい?」
ラライヤ
「大丈夫です」
ケルベス
「リンゴ!」
アイーダ
「ケルベス中尉」
ケルベス
「は?」
アイーダ
「私達は上がります。後の指揮は、中尉、お願い致します」
ケルベス
「はっ! 任せてください」
ラライヤ
「リンゴ少尉、ケルベス中尉をよくサポートしてやってくださいね?」
リンゴ
「え? そりゃまぁ、言う事聞けば……」
ラライヤ
「リンゴが言う事聞くんです!」
リンゴ
「あっ、はい!」
ベルリ
「何なの、この煩いの?」
「ふぁ……」
「あれ? あれはロルッカさん達だ」
「何なんです?」
ミラジ
「南の農業ブロックの外壁が剥がれて、土砂が流れ出しているんです」
ベルリ
「この音の事じゃなくて、この果物の木箱の事です」
ハッパ
「ワイヤーの強度は大丈夫ですよね?」
ロルッカ
「無論です」
フラミニア
「土砂が流れ出したお陰で、メガファウナは外に出られました」
ベルリ
「モロイの桟橋に居たらいけないんですか?」
ミラジ
「全員追い出されて、底の抜けた農場で開拓をやらされましたね」
ベルリ
「本当ですか?」
「果物は上でしょ?」
フラミニア
「あぁ、これ……!」
ノレド
「ネオドゥってさ、大昔から使っていた機体なんだって!」
ベルリ
「この機体の事?」
ミラジ
「スペース・コロニーの建設用に使われ続けてきて、色々に改良出来る便利な奴なんです」
ハッパ
「溶接機の後、シールドを組み立てる」
ノレド
「あらま。あれ、ビーム・ライフルじゃないの?」
ベルリ
「同じようなものさ」
ノレド
「あ、頭痛はいいの?」
ベルリ
「今は、何ともない。このモビルスーツは何なの?」
ノレド
「ラライヤが使うって」
ベルリ
「ラライヤが? 今、どこに居るの?」
マスク
「何で、あんなものが持ち込まれたんです?」
クンパ
「Gセルフを取り返したいと言ったら、ここの軍があれを貸してくれたのだ」
マスク
「ちょっと扱いが厄介です」
クンパ
「使えるのか?」
バララ
「操作手順、調べました。2・30分慣らし運転させてくれれば出来ます」
マニィ
「トワサンガの伝票って……あぁ、嫌だ!」
「あの人……」
クンパ
「ドレット軍があれを貸してくれた意味を考えたか?」
マスク
「我々の内輪揉めの状況を調べる為と、こちらの能力チェックでしょう」
クンパ
「ドレット艦隊は、一隻でも戦力が欲しいんだよ。だがな、トワサンガをキャピタル・アーミィの物にする事も考えられる」
マスク
「おぉっ……!」
バララ
「フフッ!」
マスク
「マニィ! 今の話、聞いたか?」
マニィ
「はい?」
「バララ中尉、ビフロンの整備、終了したようです」
バララ
「あぁ、ありがとう」
「メガファウナの動きは?」
マニィ
「リングから流れる土砂と一緒に、シラノ−5を周回しています」
クラーゲン
「これから出るのか?」
バララ
「お陰様であります」
クラーゲン
「この船はかなり出来が良い。後々の為に証明書を出しておく」
クンパ
「ありがとうございます。噂の設計図が出回った頃のものですから……」
クラーゲン
「大したものだよ、薔薇の設計図は」
クンパ
「マスク大尉をメガファウナに接触させますが、宜しいですな?」
バララ
「発進、ちょい待ってください」
マスク
「何でだ?」
バララ
「組み立てが甘いんです。発進後、慣らし運転やりますからね」
サラマンドラ副長
「ガランデンのビフロンっていうの、発進します!」
マッシュナー
「やるかい?」
サラマンドラ艦長
「ほう。流石、トワサンガ開発のモビルスーツですな。あのような型でも使えるというのに感動しておるのです」
クリム
「ちゃんと動いた!」
ミック
「フフッ!」
ロックパイ
「実用テスト?」
バララ
「ジェル・カーテンを通過する!」
ロックパイ
「実験機を地球人にテストさせるなんて……」
クリム
「マスクが後見人として出るようだな」
ミック
「お優しい事で……肖りたいものですね?」
クリム
「誰の事を言っているんだ?」
マスク
「ステファン、続け!」
ステファン
「はっ!」
マニィ
「そうか! マスク大尉は、バララ中尉を兵器として使っている? そこまでクールな大尉ではない筈よ……」
仕官
「お気を付けて!」
「そこの、下がれ! ランチが出るぞ!」
マニィ
「はい!」
マッシュナー
「あの3機にも、土砂と瓦礫掃除をさせられないのですか?」
サラマンドラ艦長
「地球人同士といっても、彼らは敵ですよ?」
ロックパイ
「司令! ビフロンは実験機でしょ?」
マッシュナー
「だから、掃除出来るかどうかの試運転だって言うのだ」
ロックパイ
「うわっ!」
クリム
「先程の命令は取り消してもらいたいな、マッシュナー司令殿!」
マッシュナー
「何の命令だ?」
クリム
「土砂・瓦礫の掃除をしろという命令だ!」
マッシュナー
「命令に従わないのなら……」
「はい。……カシーバ・ミコシから直接クレームですか?」
ミック
「ガランデンから出たビフロンは、Gセルフを取りに行ったんですよ?」
ロックパイ
「そのヘカテーも、トワサンガの技術者が建造したモビルスーツだ!」
ミック
「それが何だってんだ? 建造したのはアメリア軍だぞ!」
サラマンドラ艦長
「我々は……」
マッシュナー
「ヘルメス財団の使者が、クレッセント・シップにも傷が付くと怒鳴り散らしているのだ!」
サラマンドラ艦長
「どういう連中なんですか?」
マッシュナー
「地球人は知らなくていい!」
サラマンドラ艦長
「クリム大尉! キャピタル・アーミィに、メガファウナとGセルフには触らせるな! あれはアメリア軍のものだ!」
クリム
「おうよ! ミック、出るぞ!」
ミック
「そのつもりです!」
マッシュナー
「……あのな、ロックパイ。貴様は瓦礫の掃除をしてみせろ」
ロックパイ
「冗談でしょ? 司令!」
マッシュナー
「ロック! ドレット軍としては、ヘルメス財団の顔を立ててやる必要があるんだ」
ロックパイ
「了解、了解……了解!」
マッシュナー
「サラマンドラはいい船だと分かったが、手空きのモビルスーツには瓦礫の掃除をさせろ」
サラマンドラ艦長
「了解です。お互い、友好的に……」
マッシュナー
「行こう」
アイーダ
「あのピンク、宇宙船なんですか。シラノ−5の構造物かと思いました」
ロルッカ
「スコード教の御神体とも言うべきカシーバ・ミコシです」
ノレド
「本当、まるでカーニバルの山車……あれがザンクトポルトに来る、フォトン・バッテリーの運搬船なんだ」
ラライヤ
「私は始めて見ます」
アイーダ
「……今、仰ったじゃないですか! クンパ・ルシータ大佐を見たと!」
ロルッカ
「い、いや。ニュース画面で、アナウンサーがそういう名前を言っていたのを……」
ミラジ
「マスク大尉というような人物も居たじゃないですか」
アイーダ
「クンパ大佐については、知っている人物だと……」
フラミニア
「違うのですか?」
ロルッカ
「キャピタル・アーミィの軍艦に乗ってきた人物ですよ?」
ベルリ
「ご老人は何を知っているんです?」
ミラジ
「いや、我々はニュースで報じられている……」
ベルリ
「気になる事は説明してください!」
ロルッカ
「いや、まだ本人かどうか確認していないので……」
ベルリ
「大佐を知っているんじゃないですか?」
「それでガランデンの動きが分かりました。クンパ大佐はここに来た事があるか、ここの人だった!
そのクンパ大佐の居るガランデンからモビルスーツが出てくる事があれば……」
アイーダ
「ただでは済まないでしょうね。トワサンガもキャピタルも欲しがっています」
ロルッカ
「少なくとも、Gセルフは……」
「なぁ」
ミラジ
「恐らく」
ベルリ
「ラライヤ、ネオドゥを出す用意を」
ラライヤ
「はい」
ベルリ
「瓦礫の掃除もあるけど……」
アイーダ
「掃除に託けて、トワサンガを逃げ出す算段をしたいですね、艦長」
ドニエル
「クンパ大佐がトワサンガ人かい」
ロルッカ
「ベルリ皇子!」
ミラジ
「アイーダ姫様も!」
フラミニア
「若いレイハントンの後継者……」
リンゴ
「あっ、ラライヤさん! 本当にそれで出るんですか?」
ラライヤ
「私は、これで操縦、習ったんですよ?」
リンゴ
「そうだけどさ、ネオドゥなんだぜ?」
ラライヤ
「その叩き、頂きます」
アイーダ
「Gセルフとアルケインは前から出ます! ラライヤさん、ベルを頼みますね!」
リンゴ
「ラライヤは、不肖リンゴが守ります!」
アイーダ
「勿論!」
ハッパ
「総員、モビルスーツ出し! 用意!」
ドニエル
「ラライヤさんのネオドゥも瓦礫掃除に出てもらいます」
ロルッカ
「それは良かった」
フラミニア
「お役に立つといいのだけれど。溶接機は持ってるのかしら?」
ミラジ
「持っている筈です」
ギゼラ
「プラズマ・ノズルの方だよ、ステア」
ステア
「セーフティ・デバイス。これで砂は吸い込まない」
アダム
「ようし!」
「あっ! リンゴ!」
リンゴ
「出ます!」
ラライヤ
「な、何? この出力……オーバー・ワーク!」
リンゴ
「ラライヤさん、どうしました?」
ラライヤ
「コ、コントロールが! 手が、手が……!」
バララ
「何だ? トワサンガのモビルスーツ?」
リンゴ
「ラライヤさん、何てモビルスーツと……!」
マスク
「気を付けろ、バララ、ステファン! 敵は正面からだけではない!」
ドニエル
「ネオドゥは何かとぶつかったぞ! ベルリは? オリバー、ルアン、ケルベスは?」
ミラジ
「ネオドゥの整備には私が立ち会っていました!」
ロルッカ
「ミスがあったとは言っていない。ラライヤはどうなんだ?」
フラミニア
「ノイズが出て、CG画像になりました」
副長
「あっ! Gセルフはネオドゥを認めました!」
ドニエル
「うむ」
「ケルベス、オリバー! 姫様は連れ戻せ!」
オリバー
「えっ? ケルベス中尉、何で出したんです?」
ケルベス
「艦長、命令したんじゃないんですか?」
ステア
「ハリー・アップ!」
メディー
「え? ただのカナリアにはなりたくない?」
キラン
「どうしたの?」
ノレド
「分かんない……」
ラライヤ
「はぁっ!」
バララ
「ヨツデ・ユニフィケーション・アタック!」
ラライヤ
「そんなまやかし!」
リンゴ
「ラライヤさんは俺が守る!」
マスク
「バララ、頭を冷やせ! 天才パイロットまでもが来るぞ!」
「となれば、目の前のメガファウナからは、来るべき者が来るか!」
ミック
「Gセルフとトワサンガのものと、キャピタル・アーミィ!」
クリム
「事のついでではあるが、奴は狙撃する!」
マスク
「天才クリムだ!」
ステファン
「迎撃します!」
「プラズマ・クローなら!」
クリム
「やるかっ!」
ミック
「こっちはトワサンガのモビルスーツだ!」
リンゴ
「アメリアのモビルスーツに、あのデカブツ!」
アイーダ
「分かりました。ケルベス中尉とオリバーも360度警戒!」
オリバー
「了解!」
アイーダ
「それぞれの任務か……私の役割は何だろう……」
ラライヤ
「数が多いだけで!」
バララ
「逃がすか!」
「あっ!」
ノレド
「ラライヤは、ネオドゥに乗ったら輝き出しているもの……」
メディー
「ふむ。あーんして」
ノレド
「あー……」
メディー
「別に、腫れもない」
キラン
「ラライヤさんが自立したんで、寂しくなったのよ。ね?」
メディー
「そんな暇はないぞ。アイーダ様のブレーキ役とか、ロルッカさん達に持ってきてもらう不足品のリストアップとか、やる事はいっぱいある」
ノレド
「そうか」
ハロビー
「そう、そう」
ラライヤ
「ネオドゥは、1000年使われている頑丈な機体なんだから!」
バララ
「モニタまでやられる?」
ラライヤ
「溶接ビームの方が強力……という事はないけど!」
「あっ!」
ベルリ
「駄目ですよ! まだ敵は力がありますし、シラノ−5の北から別の部隊が来ます!」
ラライヤ
「網を持っているなら、お掃除部隊です!」
マスク
「撃つな、ステファン! 瓦礫を掃除する部隊の警告だ!」
ステファン
「掃除をする? こ、この土砂をですか?」
ロックパイ
「地球人はどこでも戦争をするな! トワサンガに、クレッセント・シップでヘルメス財団の使者が来ている意味を考えるんだ!」
ミック
「接触回戦で聞こえる?」
クリム
「トワサンガのモビルスーツの通信?」
ロックパイ
「彼らを怒らせたら、フォトン・バッテリーは配給されないんだぞ! そうしたら地球上の電気は全て消えて、お湯のシャワーなど使えなくなる!」
ラライヤ
「そ、それは本当です! ベル!」
ロックパイ
「宇宙の道理というのはだな! クレッセント・シップとカシーバ・ミコシは、フォトン・バッテリー運搬の為のヘルメス財団の船であるのだからして、
石塊一つぶつける訳にはいかんのだ! 貴様達も瓦礫掃除を……」
パイロット
「手伝っていただく!」
ロックパイ
「行けっ!」
パイロット
「おおっ!」
ロックパイ
「うぉぉっ!」
ベルリ
「ならば人類の平和の為に!」
ラライヤ
「ベル! ベルリ!」
リンゴ
「うわっ! ラライヤさんまで!」
ロックパイ
「111が来るか?」
「もっとシラノ−5のメティオ・ピラー側で網を使え!」
マスク
「しまった、先を越された!」
バララ
「マスク、やるのか?」
マスク
「Gセルフに負けていいのか!」
バララ
「負けたくないけど……一体どこの回路だ?」
ミック
「クリム大尉!」
マスク
「おう、ミック! やるからには負けられん!」
ミック
「戦いがどうであれ、エネルギー源は生命線ですからね」
ラライヤ
「ベル、ベルリ! もっとシラノ−5に寄ってください!」
ベルリ
「了解!」
ラライヤ
「ベル、早過ぎます! 網は、ネットは広げるんです! リンゴさんは遅過ぎます!」
リンゴ
「Gセルフが早過ぎるんですよ、ラライヤさん!」
ケルベス
「Gセルフだけじゃない! みんなで掃除を始めたぞ!」
オリバー
「トワサンガのモビルスーツは信用出来るのかよ?」
アイーダ
「ベルリは反射神経であれをやってしまう。けど私は、お馬鹿な馬鹿姫にしかなれない……」
ギゼラ
「入りました!」
ドニエル
「ん、来た!」
ロルッカ
「おぉ」
ステア
「来た!」
ミラジ
「瓦礫集めもいいが、風船隕石も瓦礫避けにもっと要りますよ?」
ロルッカ
「モロイから運んでくるさ」
フラミニア
「メガファウナで不足しているもののリスト・アップも、艦長」
ドニエル
「有難いですな」
ノレド
「リスト・アップの仕事が終わったらさ、看護師になる勉強したいな」
キラン
「貴方は、歴史政治学をやりなさい」
ハロビー
「ノレド!」
クンパ
「何をやってるんだ?」
兵士
「瓦礫集めでしょ?」
クンパ
「反対方向に回るとか、カシーバ・ミコシの周りにネットを張るべきだろう」
「ん? ほう、気付いて方向転換か」
兵士
「カシーバ・ミコシの方に戻るんですよね?」
クンパ
「入れるのか?」
兵士
「非常口は、ユニバーサル・スタンダードですから繋がるんですけど」
「開きました」
「では、後程」
クンパ
「手間を掛ける」
「トワサンガのランチか……」
フラミニア
「全部教えてしまえばいいのですよ」
ロルッカ
「時期早々だよ」
フラミニア
「ノレドさんがリスト・アップしてくださるというし……」
ロルッカ
「はっ……!」
「ト、トイレだ!」
フラミニア
「はい?」
ロルッカ
「……ニュースを見てまさかと思ったが」
クンパ
「ロルッカ・ビスケス殿がご健在であれば、Gセルフには核の自爆装置も仕込みましたかな?」
ロルッカ
「貴公こそ、ヘルメスのタブーを破って、何をしようとしているのです?」
クンパ
「私は、争いの種を揉み消す為に地球に降りたのです」
ロルッカ
「貴公が地球に降りた頃から、ゴンドワンやアメリアでは宇宙世紀時代の武装が拡大をしたのだぞ!」
クンパ
「ここから地球に流れ込んだ技術者達が、薔薇の……」
ロルッカ
「貴公ぐらいのタブー破りが出ない限り、地球人には宇宙戦艦などは建造出来なかった!」
アイーダ
「あ、フラミニアさん!」
フラミニア
「あぁ、どうなさって……」
アイーダ
「あの緊急用のハッチから、誰か入りませんでした?」
フラミニア
「誰かって……」
クンパ
「私はGセルフが現れるまでは、私が地球に捨てた赤子がどこで育てられているか知らなかったのです」
ロルッカ
「何っ……?」
クンパ
「貴公がやった事の方が、悪辣なタブー破りでしょう! 旧世紀の人類そのままに、憎しみ合いを増大させるだけで……!」
ロルッカ
「そ、それは……」
クンパ
「違いませんよ! 専門家といわれる人々の物の考え方はいつも一直線で……」
アイーダ
「クンパ・ルシータ大佐!」
クンパ
「ご活躍を!」
ロルッカ
「ピアニ・カルータ!」
アイーダ
「ピアニ・カルータ……?」
「ロルッカ・ビスケスさん!」
ロルッカ
「ひ、姫様……!」
アイーダ
「レイハントン家とドレット家の争いの素もヘルメス財団にあるというのなら、財団のある所へ行ってみる必要はあります!」
ロルッカ
「ビーナス・グロゥブですよ?」
アイーダ
「クレッセント・シップは、そこと行き来しているのでしょ?」
ロルッカ
「あっ、はい。連携論はあるのですが」
ノレド
「フラミニアさん! リスト・アップの事で相談!」
アイーダ
「Gセルフのバック・パックの予備もあると、ミラジさんは言っていましたよ?」