第20話 フレームのある宇宙

前回のあらすじ
フラミニアさんは医者だったけれど、戦う人でもあった。ジット団を呼び込んだのは、あの人と助手のヤァンさんだ。
エル・カインド艦長さんはヘルメス財団の人なんだろうけど、ただのいいおじさんだった。
僕はフラミニアさんに眠らされてしまって、後の事など何も覚えてはいない。
ベルリ
「ジット団ってさ……」
「お邪魔様」
アネッテ
「いや……」
ノレド
「ジット団、何か緊張してるみたい」
ベルリ
「そうなの?」
ラライヤ
「艦長さん、このままだとメガファウナに乗り込んできますよ」
ドニエル
「分かってる」
「このマップ、本当に信用できるのですか?」
ミラジ
「これを見たフラミニアが青くなった事があるから、信用できるんですよ」
アイーダ
「この円盤が直径100キロメートルで、水深150メートルの海があるんですって?」
ドニエル
「そのデスクの天井が3000メートルってんだろ?」
アイーダ
「この海に面してジット団のラボがあるんですか?」
ロルッカ
「昔からの技術を伝える組織なのですから、マシンのテストの為には海も必要でしょう」
クン
「モビルスーツの編隊を出せるのは、ロザリオ・テン・ポリスだけです」
キア
「我々の考え方がリギルド・センチュリーの正義だという事を、ロザリオ・テンの連中はどうしても分からないと見えるな」
ベルリ
「ロザリオ・テンにラ・グーっていう偉い人が居るんなら、そこに真っ直ぐ行けばいいんでしょ?」
アイーダ
「ジット団は、その手前の自分達のラボに、クレッセント・シップを向かわせているんです」
ドニエル
「という事はだな、メガファウナはここを飛び出してロザリオ・テンに向かえば、連中はビーム攻撃をする事は出来なくなるな」
ベルリ
「なら、ジット・ラボに向かいましょうよ」
ノレド
「何考えてんだ?」
ハロビー
「何だ、何だ?」
ラライヤ
「ジット・ラボというのだから、そこは研究所でしょ」
ケルベス
「軍事施設じゃないって事は……」
リンゴ
「抵抗はないって事ですね?」
ラライヤ
「ここの人達、トワサンガ以上に外から敵が来るなんて考えていませんよ」
アイーダ
「流石、トワサンガ人!」
ドニエル
「姫様……お前らも何を考えてんだ?」
ベルリ
「ジット団は、僕達をクンタラにするって言ってるんです」
アイーダ
「私はあの人達の食料にされるのは嫌です。動き出しましたよ」
ステア
「キャプテン!」
チッカラ
「Gセルフ、まだ動かせません」
キア
「構わん。最悪、テン・ポリスのポリジットにぶっつけて爆発させる。その時にクレッセントシップのエンジンとの共振反応をチェックする」
チッカラ
「そうすれば、クレッセント・シップの高性能化の秘密も分かるってものです」
キア
「現在のクレッセント・シップは、以前と違って十数パーセントも航行時間を短縮しているのだから、我等が船、フルムーンにも応用できる」
クン
「となれば、テン・ポリスの抵抗は排除しましょ」
キア
「ま、そういうこった」
ケルベス
「研究所というんなら、接触する価値があるってもんさ」
ベルリ
「姉さんは、真っ直ぐにロザリオ・テンに突っ込んでくださいね」
アイーダ
「はい。ラ・グー総裁という人物に賭けます」
「注射を打たれた所の空気漏れは大丈夫ですね?」
ベルリ
「アネッテさんに修理してもらいました」
アイーダ
「良かった」
ベルリ
「姉さんが心配してくれるなんて……」
アイーダ
「大事な戦力ですからね」
ベルリ
「ヘヘッ……」
マニィ
「……何、いちゃついてんだ?」
ノレド
「無視、無視する!」
ケルベス
「ベルリがアルケインで、アイーダさんがグリモアでいいですね?」
アイーダ
「無茶をやりますけど、アルケインの性能を出してくれますから」
ケルベス
「そうですよね」
「良かったな、お姉ちゃんに認められて!」
「ラライヤさん、リンゴ少尉、集合!」
リンゴ
「何です? ケルベス中尉」
ラライヤ
「あぁ、やるんですね?」
アイーダ
「キャピタル・ガードの伝統の……!」
ベルリ
「ウォークライ!」
ケルベス
「ジット・ラボ経由で!」
一同
「ラ・グーという偉い人に会いに行くぞ! ファイトー!」
マニィ
「覚悟が付いたんだね」
ノレド
「そう思うよ」
マニィ
「ゴム、凄いね」
ノレド
「凄いよ、ここでも使えるんだから」
ケルベス
「レックスノーは行けるな?」
リンゴ
「俺の方はいいんだよ。ネオドゥのメンテはちゃんとやったな?」
ハッパ
「ラライヤさんみたいにピカピカでしょ」
ラライヤ
「何です?」
マニィ
「んんっ……!」
アダム
「それでいい。次は下だ」
マニィ
「あ、はい!」
「人使い荒いなぁ」
「ノレドの奴……」
ベルリ
「ノレド! どうした、具合悪いのか?」
ノレド
「また、モビルスーツ戦をやるんだろ?」
ベルリ
「こんな所でやるつもりはないよ。ノレドは安全な場所に隠れているんだ、いいな?」
ノレド
「うん、私は隠れる」
アダム
「メット着用、メット着用!」
マニィ
「ファスナーをして。宇宙で暮らすとね、やる事がいっぱいあるんだよ」
リンゴ
「ノレドはさ、後方支援以外に歴史政治学もやるんだろ?」
ケルベス
「接触回線、聞こえますよね?」
ドニエル
「おう、何だ?」
ケルベス
「格納庫の赤い光も消しときましょうよ」
ドニエル
「そうだな」
キア
「現在、只今接近しているテン・ポリスを叩く必要がある。が、クレッセント・シップは真っ直ぐジット・ラボの鉄骨桟橋へ向かえ。
艦長に被せてある爆弾とその席はこのカメラで監視している。迂闊に動いたら人間爆弾になって、このブリッジごと吹き飛ぶ」
エル・カインド
「わ、分かっている」
キア
「副艦長殿もだ。宜しいな?」
C・S副長
「りょ、了解です」
ジット団
「Gセルフを動かすっていってるの、どうなってるんだ?」
フラミニア
「やってますから」
「ヤァン、急いでください」
ヤァン
「これで済む筈です」
警備員
「クレッセント・シップの進路がロザリオ・テンに向いていないのは何故か?」
キア
「クレッセント・シップは技術的問題が発生している。ロザリオ・テンの港で爆発事故でも起こしたらどうする?」
警備員
「降臨祭を済ませずに帰国した件の尋問もある」
「あっ!」
キア
「始めたからには中途半端では……!」
チッカラ
「レコンギスタ作戦は実行できない!」
クン
「そうだ。バッテリーとオーシャン・リングにビームを向ける事は絶対に禁止だ」
キア
「テン・ポリスが武器を使っただと? そこまで嫌うか!」
ステア
「キャプテン! メイン・エンジン、クリティカル・ポント!」
副長
「ちょい待ち、コース特定!」
ドニエル
「やってる! ようし、ステア!」
ステア
「イェッサー!」
船員
「艦長……!」
エル・カインド
「分かっている、堪えなさい。本物の悪人などは居ないものです」
C・S副長
「し、信じております……」
ステア
「アプローチ・ザ・バウ!」
ドニエル
「ベルリは?」
ギゼラ
「総員、第一戦闘態勢!」
ベルリ
「順序なんだから、やります!」
リンゴ
「いや、ラライヤさんは出なくていいでしょ」
ラライヤ
「私は、一人で地球に降りた経験があります。」
ジット団
「地球人が来た!」
フラミニア
「え?」
ベルリ
「フラミニア先生は退いてください!」
フラミニア
「キャーッ!」
ヤァン
「な、何? 動いた?」
ベルリ
「出てくださいって!」
ヤァン
「わっ!」
ラライヤ
「やった、ベル!」
ベルリ
「よし、移動する!」
ラライヤ
「えぇっ?」
ステア
「メイン・ノズル、ファイア!」
ドニエル
「メガファウナの目標は、ビーナス・グロゥブの上にあるオーシャン・リングのジット・ラボ!」
ノレド
「ベルリは?」
ハロビー
「ベル、ベル」
アイーダ
「ベルリとラライヤは、Gセルフを取り戻しました」
ベルリ
「やった!」
ギゼラ
「何してんの?」
マニィ
「すみません」
ノレド、手伝って」
ノレド
「何?」
マニィ
「ベルリの仕事の後始末」
ノレド
「え?」
マニィ
「人を突き飛ばした筈なのよ」
ノレド
「そうか」
「レッセルさん、モニタの拡大ってどうやるの?」
キア
「どうした?」
部下
「申し訳ありません。Gセルフを……」
キア
「奪い取られたというのか?」
船員
「回収作業に入っています。き、緊張してまして……二人に気付いていなくて。もう大丈夫です。ありがとう」
マニィ
「良かった」
ノレド
「じゃあ、フラミニア先生とヤァンさんは宜しく」
船員
「は、はい! 実は……!」
C・S副長
「余分な事は喋らない!」
一同
「えっ?」
フラミニア
「ヤァン!」
ヤァン
「先生!」
部下
「自分は何とでもします! 隊長殿は作戦を!」
キア
「よし。貴様はクレッセント・シップに合流して、ラボへ戻れ」
部下
「はい!」
キア
「クン・スーン!」
クン
「我らがジット団は、レコンギスタを目的に決起した。以後、邪魔をする者は、テン・ポリスと言えども容赦はしない!
この無線、オーシャン・リングのロザリオ・テンにも聞こえているな?」
チッカラ
「ビーナス・グロゥブの前は飛び道具はタブーだ。ジャスティマに任せてもらう!」
「邪魔するなって宣言しただろ!」
ベルリ
「えぇっ? あんなに遠いの?」
キア
「ポリジット! こんなに素早かったか!」
「クン! Gセルフが地球人の手に渡ったようだ!」
クン
「フラミニア先生だって付いていたんでしょ? 取り戻します!」
ベルリ
「やるしかないでしょ!」
「わ〜っ!」
ラライヤ
「え? 何、遊んでいるんです?」
音声
「レイハントン・コード、確定」
ベルリ
「知らない人に弄らせて、ごめんなさい!」
ラライヤ
「誰に謝ってるんです?」
「あっ!」
クン
「私は何を迷っていたんだ!」
ラライヤ
「メガファウナへ合流します!」
ベルリ
「頼みます!」
「Gセルフは、ロザリオ・テンの警察と接触します」
ドニエル
「了解だ。現在、コンタクトを取りつつある」
ステア
「方位、オーシャン・リング!」
ドニエル
「どうなんだ?」
副長
「こちらを認識してくれています」
ギゼラ
「アダム! ネオドゥがGセルフを連れ戻す!」
マニィ
「下に降ります!」
ノレド
「私も!」
リンゴ
「ラライヤ! 体は大丈夫かい?」
ラライヤ
「はい。ジット団は破壊が目的じゃなかったから……」
キア
「何で泣いてるんだ?」
クン
「泣いちゃいません」
キア
「だったら、さっさとビッグ・アームを持ってこい」
クン
「はい!」
ベルリ
「あれ? あっ……」
「そうか。ビーナス・グロゥブの中では、ビーム戦はやらないんだ。やれないんだ。タブーって事か!」
アイーダ
「アイーダ、アルケインへ移動します」
ドニエル
「了解します」
「オリバーはグリモアへ移動だ。レクテンは……」
「何か?」
ロルッカ
「クレッセント・シップはオーシャン・リングへ直進するという以外、応答がないのです」
ドニエル
「エル艦長も、応答なしですか?」
ロルッカ
「副艦長もだんまりです」
アイーダ
「オリバー、ありがとう」
オリバー
「姫様も無茶しないでください」
マニィ
「水、空気の玉はありますか?」
アイーダ
「え? ありがとう」
マニィ
「これも」
アイーダ
「何です?」
マニィ
「金平糖。ノレドが『甘いもの要りますよ』って」
アイーダ
「じゃ、ラライヤにもね」
ギゼラ
「ステア! もっと北角!」
ステア
「イエス、マダム!」
アイーダ
「ルアン、間違ってもバッテリーには傷付けないで」
ルアン
「姫様も傷付けさせません!」
ラライヤ
「ケルベスさんもリンゴさんも、もっと離れてください! これだと、みんなが一緒にやられてしまうでしょ?」
ケルベス
「それでいいじゃないですか」
リンゴ
「ラライヤの盾になるんですよ」
ラライヤ
「それで軍人ですか!」
ケルベス、リンゴ
「うわっ!」
ドニエル
「海の魚を食わせる?」
ロルッカ、ミラジ
「魚?」
ノレド
「魚を食べられるって? 何?」
「ジット団の親分!」
キア
「すぐにジット・ラボに入ってくれば、海の魚を食わせてやると……」
ドニエル
「条件は何だ?」
キア
「まぁ、地球人の建造した船を見せてもらえば……」
ドニエル
「磁気嵐だ」
クン
「ジット・ラボには援軍を出すように言いましたから、地球人は叩けます」
キア
「だから、テン・ポリスを出してくるロザリオ・テンが問題なのだ」
「このビーナス・グロゥブを抜けたら、また、テン・ポリスが仕掛けてくるぞ。各員、覚悟して排除しろ」
クン
「はっ!」
キア
「自分は、ロザリオ・テンで千年の夢を貪っている連中を、現実というのは戦いとるものだという事を教えてやる!
地球人は地球の寄生虫なのだから、殺菌するだけだ!」
ベルリ
「ロザリオ・テンのある所も検討が付いてきました。けど、テン・ポリスはこの空域では姿を見せません。
メガファウナ、どういう事なんです?」
ドニエル
「あのな、今は……」
アイーダ
「想像しなさい!」
ベルリ
「想像しなさい? 聞いた事ある台詞……」
「あっ!」
「ジット団のサーベル使い?」
クン
「対モビルスーツでもあるのがジロッドなんだよ!」
ベルリ
「ジット団とか! まだビーナス・グロゥブの側だぞ!」
「あっ!」
「ジット団の親玉!」
キア
「Gセルフよ、そのGセルフ共々ジット団に入ってくれればジャイオーンのフル装備を見せる必要もなくなるが、どうだ?」
ベルリ
「え? 貴方達は、オーシャン・リングのお仲間を何機破壊したんです?」
キア
「何ぃっ!」
ベルリ
「貴方は!」
キア
「あの機体、フラミニアとヤァンの言う通りだ。何としてでも捕えて、ジット・ラボで調べなければならん。」
クン
「キア隊長、被弾したんですか?」
「チッカラ!」
チッカラ
「分かってる!」
ベルリ
「手強い!」
アイーダ
「それはさせません!」
「何? あのバリアの強さ……」
チッカラ
「こちらがビームを発射できないからといって!」
ベルリ
「逃げろ、アイーダ!」
船員
「入港用意、低圧運転に入ります」
C・S副長
「あっ! 寝てたのね、私……」
エル・カインド
「ジット・ラボへの進路でな」
船員
「は、はい」
ヤァン
「本当に自分が情けなくて……」
フラミニア
「全ての事が分かっている人なんて、居ないんですから……」
「あら?」
C・S副長
「わ、私、もう……艦長!」
エル・カインド
「良い結果を想像しましょう」
フラミニア
「どうしたんです?」
船員
「あぁ、喋っていいのかどうかも……」
フラミニア
「はぁ?」
ベルリ
「だからって、シールドの性能はまだ生きてるし、あの人の戦闘力を奪えば周りは黙る!」
キア
「Gセルフの外観の画像データがあれば機体分析は出来るが、コックピット構だけは回収しなければブラック・ボックスは手に入らん」
「クン・スーンはメガファウナを監視! 自分はGセルフの胴体を奪う!」
クン
「胴体だけを?」
キア
「モビルスーツの頭と手足などは飾りだ。コンピュータだよ!」
ベルリ
「白兵戦? シールド!」
「な、何だ? この!」
キア
「ち、地球人が建造したものに、ジャイオーンがやられる訳がない!」
「シー・デスクのフレームの中に逃げ込んでもだな!」
ベルリ
「これじゃ、やられないかもしれないけど……!」
「この上に海があるってんだろうに!」
「見境いのない奴!」
ドニエル
「ポリジットの誘導に従ったら、シー・デスクの下じゃないか!」
副長
「ジット団に攻撃されないからでしょ」
ロルッカ
「海水の重さを支えるフレームの中ですから、発砲は厳禁ですぞ」
ミラジ
「ポリジットは、ロザリオ・テンのあるシー・デスクだと言ってましたね」
ドニエル
「あぁ、そうだ」
「ギゼラ、方位分かるか?」
ギゼラ
「ロルッカさん」
ロルッカ
「その地図……」
ステア
「前方、ビーム・ファイト!」
副長
「えぇっ!」
ミラジ
「馬鹿な……!」
ドニエル
「ビーム?」
ベルリ
「こんな人達のお陰で! 姉さんの邪魔などさせるか!」
「ここが海の底……」
「後退!」
キア
「ここで止まるかな!」
「う、海の底に傷付けた!」
「駄目だ! これは駄目だ! これはやっちゃならん事だ!」
ベルリ
「こ、この隙にやっつけられるなら……!」
キア
「流れ出るんじゃない!」
ベルリ
「追い付けない!」
「うっ! ……えっ?」
「こ、これって……僕は月を飛び越してきたんだぞ。何だよ、これ?」
「渡り鳥までが居る」